風祭文庫・モラン変身の館






「ボディの秘薬」


作・風祭玲


Vol.737






『起きて…

 ねぇ起きてってば』

響き渡るウシの鳴き声をバックにして、

隆は幾度も呼びかけられる声とともに、

激しく体を揺さぶられる。

「うっなんだよぉ…

 あと10分寝かせてくれぇ」

深い眠りの底より呼び起こされた隆は

そう言いながらゴロンと背を向けると、

『起きてよぉ、

 お願いだから…』

隆の耳元でトーンの低い男の声が甘く囁いた。

「うっ」

ゾクッ

それを聞いた瞬間、

隆の背筋を悪寒が走り、

と同時に、 

「だっだれ…

 だれだ?」

怒鳴りながら飛び起きると、

『ひっどーぃ

 あ・た・し・よっ

 法子よっ』

と言う声と共に、

漆黒色の肌に覆われた顔が迫り、

ムッ

っと怒った表情をする。

「うわっ!」

突然の出来事に隆が悲鳴を上げかけると、

目の前の顔から見る見る怒りの表情が消えてなくなると、

代わりに困惑した表情へと代わっていく、

そして

『隆ぃ、

 オチンチンが…

 このオチンチンが怒っているのっ

 何とかしてぇ』

と泣きながら抱きついてきたのであった。

「え?

 えぇっと…」

無理やり自分に抱きつく裸体の男の姿に

隆は困惑するが、

だが、一昨日起きたある事件のことを思い出すと、

「(あっ、

  そうだ…

  コイツ、法子だっけ…)」

といま抱きついている男が自分の妻であることに気がついた。

そして、

「あっ法子…

 それって、

 チンコが勃起していることなんだろう?」

と尋ねると、

『うっうん、

 起きたら、

 オチンチンがおっきくなって、

 硬くなって、

 とっても痛いのよ』

男は隆の顔を見上げながらそう訴える。

「そ・そうか、

 ちょっと見せてみろ」

その訴えに隆はそう答えると、

『うん』

男はゆっくりと起き上がり、

自分の股間を開いて見せた。

すると、

ビクン!!

男の股間からは色といい、大きさといい

まさに棍棒を思わせる巨大なペニスが反り返り、

隆に向けて黒く光る亀頭を突きつけた。

「うっでかい…

 俺の何倍はあるんだよ?

 つーか、

 ボディ族のチンコでか過ぎだよ」

人間の性器の姿を大きく逸脱しているその姿に隆は息を飲み、

「…というか、

 これが、夕べ俺のケツにブッ刺さったのか、

 俺、よく平気で居られるな…」

といまだにシクシクと痛む自分の肛門を庇った。

『ねぇ、隆

 こういう時っていつもどうしているの?』

ペニスを勃起させながら男は上目遣いで尋ねてくると、

「あぁ…そうか、

 昨日は変身したことに気づいて大騒ぎしたから

 この辺は気がつかなかったか。

 まぁ、これって男の生理現象だから、

 放って置いても問題ないけど、

 気になるなら一発抜けばいい」

と隆は答えた。

『一発抜くって?』

「はぁ?

 知っているだろう、

 オナニーをするんだよ、

 チンコを扱いて、

 精液を飛ばすんだよ」

思いがけない男からの質問に隆は面倒くさそうに返事をすると、

『そんなの出来ないよぉ

 隆ぃ

 代わりにして』

と男は隆に懇願をしてきた。

「えぇ!」

男の懇願に隆は困惑した表情を見せるが、

「女だったときには俺に散々してきたくせに

 仕方が無いな…」

と諦めの表情をすると、

「いいか、

 一回だけだぞ」

そう念を押すと、

男の股間へと手を伸ばした。

アフリカ・サバンナ…

そのサバンナの北部にある高原地帯にボディ族の集落がある。

そして、

隆が妻の法子と共にこの集落を訪れたのは昨日のことだった。



「えぇ?

 海外旅行に行く?」

帰宅したとたん、

妻の法子から告げられた言葉に隆が驚くと、

「なによっ

 文句があるの?」

と旅支度をしながら法子は言い返した。

「いやっ

 だって、

 何も明日からだなんて…」

突然の出発であることを隆は指摘するが、

「なぁに、情けないことを言っているのよ。

 出発まで12時間も時間があるんだから、

 問題ないでしょう?」

と法子はそっけなく言う。

「いや…

 そういう問題じゃなくて…

 第一、会社に有給の届けを出してないし、

 それにいきなり休んだらみんなに迷惑が掛かるし…」

と隆は自分が突然の休暇を取ったことで

周りに迷惑をかけはしないか、と心配をすると、

「余計な気を使わないのっ

 まったく、他の連中が旅行で休むときは

 ニコニコしながら休日返上で仕事を引き受けて、

 挙句の果てには疲れた。といってベッドに直行。

 それでどれだけバックがあったの?

 お人好しも程々にしてよね。

 隆に任せておくと

 あたしのことはほっぽらかしにして

 定年まで他人の仕事を続けかねないから、

 ここで、あたしのために動いてもらいます。

 判ったらグズグズしないでさっさと支度をする」

元々の気の強さからか、

語気を強めながら法子は怒鳴ると、

「はっはいっ」

その気迫に押されるようにして隆は旅支度を始めだした。

だが、

「はぁ…

 恐らく僕を気遣ってのことと思うけど…

 でもなぁ

 もぅちょっと僕の立場と言うのも考えてほしいよなぁ…」

と法子の荒っぽい気遣いに隆は感謝しながらも、

愚痴をこぼしていたのであった。



隆と法子が結婚をしたのは5年ほど前。

元々負けん気が強くわが道を突っ走る法子と、

周囲に気配りばかりして他人の仕事を背負い込んでしまう隆との意外な組み合わせに、

臨席をした者達は皆首をひねったが、

だが、結婚してこれまで、

離婚に至るようなトラブルは起きてははなかった。

ただ、一点。

法子になかなか子供が授からない点を除いては…

無論、それをそのまま放置しておく訳ではなく、

法子が先頭に立って様々な不妊療法を試してみたのだが、

だが、効果はなかなか現れず、

次第に焦りの色が見えていたのであった。

そんな中、二人は海外旅行へと旅立っていったのであった。



「いっ行き先はアフリカだったの?」

「そうよっ

 って言うか…

 いま気づいたの?

 鈍すぎよ、あ・な・た」

広大なサバンナを見下ろす高台に止まる一台のクルマの中で

驚いたようにして尋ねてきた隆に向かって

探検隊を思わせる姿の法子は呆れたようにして返事をした。

「いや…

 なんかおかしいとは思っていたけど…」

ハンドルを握る法子の姿を見ながら

隆は慌てて言い繕い始めると、

「あのね、

 クルマでいけるのは少し先までよ、

 そこから先は歩いていくことになるから、

 隆にもこれ背負ってもらうわ」

と法子は言うなり、

後部座席に置かれている丸々太ったリュックサックを指差した。

「あっ歩きって?

 一体何所まで行く気なんだよ」

それを聞いた隆は困惑しながら聞き返すと、

「何所って…

 このサバンナの高原地帯に住んでいる

 ボディ族っていう野生部族の集落よ」

と法子は答えた。

「ボディ族?

 何でそんなところに?」

ニヤッ

隆に向かって法子は笑みを見せると、

「決まっているでしょう?

 赤ちゃんのためよっ

 隆っ

 あなたがもっと野性的になってもらわなくっちゃね」

そう念を押すようにして法子は隆に言うと、

「さっ、いくわよ!」

と声をあげ、道なき道をクルマを走らせて行った。



二人がボディ族と言う野生部族の集落に着いたのは

その翌日のことであり、

50km以上に及ぶ徒歩は

隆にとってまさに強行軍そのものであった。

「はぁ…

 疲れたぁ…」

青息吐息状態の隆に対して、

「なぁに弱音はいているの

 ついに到着したんじゃない。

 ボディ族の集落に…

 ほら見なさいよ、

 この集落の男たちってみんな裸っ

 うわっ、

 すごい」

元々スタミナのある法子は疲れなど感じさせず、

集落の中を闊歩する男達のいでたちを見るや否や、

興奮した口調でまくし立てた。

「はぁ…

 よくまぁ…

 っていうか、

 筋肉ムキムキの男の裸を見ても、

 俺は何も感じないが…

 っていうか、

 ここの連中…

 脚が長いなぁ…」

そんな法子に対して隆は覚めた口調で言い返すが、

獣の毛皮を纏うスタイルの良い女性を見た途端、

「おっ」

思わず声を漏らしてしまった。

「よしよし、

 少しは元気になったようね、

 さて、

 長老のところに行きますか」

そんな隆の姿を見た法子はヤキモチを焼かず、

逆に満足そうにうなづくと、

突然の異邦人の訪問に興味津々な人たちを掻き分け、

集落を治める長老の元へと向かっていった。



「おいっ、

 長老になんか会ってどうするつもりだ?」

集落の中を進んでいく法子に隆は理由を聞くと、

「赤ちゃんのためよ、

 赤ちゃんのため」

と法子は答える。

「その、なんだよ、

 赤ちゃんのためって?」

核心をぼやかした法子の返事に

半ば苛立ちながら隆が聞き返すと、

「まだ判らない?

 相変わらず鈍いのね。

 いいわ、教えるわよ。

 ここの集落の長老が持っているとされている

 ボディ族秘伝の精力剤を分けてもらうのよ、

 ふっ、

 あなたのフニャチンはなかなか直りそうも無いからね。

 思い切って改造しようと思ってね」

あっけらかんと法子はそう答えると、

「なっ!

 なんだそれは!」

同時に隆の声が響いた。

だが、

気迫で勝る法子に勝てるはずも無く、

その10分後には、

ジロリと二人を見据えるボディ族の長老の前に、

法子と二人、大人しく並んで座っていたのであった。





『○○○○○○!』

『●●●●●●!!』

最初に口火を切ったのは法子のほうだった。

無論、長老も何か言うのだが、

だが、

「(あはっ

  なに言っているのか、

  全然判らねーや)』

二人が交わす言葉が全く理解できない隆は一人で笑い、

そして、自分の前にふてぶてしく座る長老へと視線を動かしていく

すると

「(すげーな…

  長老というんだから、

  結構な年なんだろうけど…

  筋肉モリモリの体に、

  なおも半勃ちのチンコかよぉ…

  一体、何を喰えばそんな体でいられるんだ?)」

漆黒の裸体にトンボ玉で出来た腰紐のみという、

ほぼ全裸の姿をした長老を見詰めながら隆は感心していると、

ジロッ

一瞬、長老と目が合った。

「(うわっ)」

長老の鋭い眼光に隆が慌てて目を逸らすと、

『ふんっ』

長老は鼻を鳴らし、

『●●●●●●』

法子に向かって何かを言い始めた。

それからしばらく長老と法子との話が進み、

長老が何かを決断すると、

外に向かって声を張り上げた。



「で、これがその秘伝の精力剤って奴かよ」

日もとっぷりと暮れた宵の口、

ボディ族が住む一つの小屋の中に隆の声が響いた。

「やっと手に入れたわ…」

黒く光る小振りの甕を見詰めながら

法子は笑みを浮かべ

そう呟くと、

「さっ、

 あなた。

 これを飲んで」

と言いながら隆に向かって甕を差し出した。

「えぇっ」

思いがけないその言葉に隆は思わず声を上げると、

「何を言っているのよっ、

 隆がこれを飲むに決まっているじゃない。

 これを飲んで、

 長老のようにマッチョで、

 ビンビンに反り立つオチンチンを持って貰わないと、

 あたしが困るのよっ

 さぁ、飲んで

 飲みなさいっ」

ビシッ

半ば命令調に法子は甕を差し出すが、

「いっいやだぁ!

 誰が飲めるかっ

 そっそんなに言うなら、

 法子っ

 まずお前が飲んで見せろ」

なんとか甕の中身を飲まずに済むようにと

隆は法子が拒否をするであろう条件を出した。

ところが、

「…判ったわ…

 飲んでみせるわ、

 たたし、あたしが飲んだら、

 ちゃんと飲みなさいよ」

意外にも法子はそう答えると、

手にした甕に口をつけ、

グッ

っと中の物を飲み始めだした。

「おっおいっ

 本当飲む奴があるかよ、

 それって…

 男が飲むものなんだろう?」

グイッ

っと甕を煽る法子に隆は困惑しながら尋ねるが、

「グッ!」

突然、法子の目がまん丸に見開くと、

ボトッ!

手から甕が滑り落ち、転がっていく。

「うぐぐぐっ」

「のっ法子?

 おいっどうした?」

息苦しいのか、

盛んに喉を掻き毟り始めた法子の姿に、

隆は驚き右往左往していると、

モリッ!

彼女の喉仏が一気に膨らんだ。

そして、それを合図に、

メリメリメリ

ムキムキムキ

体の筋肉が一斉に蠢き始めると、

ボコンッ

ボコボコボコ!!

体の内側から皮膚を突き上げ始めた。

「なっなんだ…

 何がおきているんだ?」

急速に筋肉を盛り上がらせていく法子の様子に、

隆は何も出来ず、

ただ傍観しているが、

ジワッ

その間にも法子の肌は黒く染まりだし、

メキメキメキ!

手足の長さが長く伸び始めだした。

「ふぅ

 ふぅ

 ふぅ」

唇を厚く膨らませ、

眼窩を深く刻ませつつ、

法子は荒い息をしてみせる。

そして、

ググググ…

乳房を飲み込み、

胸板が一段と膨らんだ時、

ガシッ!

黒く染まった手を胸にかけると、

法子は一気にそれを引き裂いた。

ムワッ!

ボディ族の男達が漂わせている体臭と同じ匂いが

瞬く間に充満し、

その匂いの中、

『ふぅふぅ

 ふぅふぅ』

法子は身に着けているものを全て剥ぎ取ってしまった。

そして、

ビクッ!

「うっ嘘だろう?」

法子の股間に聳え立つ漆黒の肉棒を目にしたとき、

ショックからか隆の腰の力が抜けると、

その場にへたり込んでしまった

「のっ法子が…

 ボディ族の男に…

 そんな…

 法子が真っ黒でマッチョな男になってしまっただなんて、

 どういえばいいんだよ、

 誰が信じるって言うんだよ」

法子の身に起きている変身劇を目の当たりにして、

隆は思わず頭を抱えていた。

だが、

『ふぅ

 ふぅ

 ふぅ』

ボディ族の男への変身を終えてしまった法子は、

ジロリと隆を見据えると、

『うへへ…』

言いようも無い笑い声を上げながら、

近づいてきた。

そして

ムンズッ!

隆の腕を掴み上げると、

ギュッ

後ろから抱きついてきた。

「なっ何をするんだ」

法子の突然の行為に隆は声を上げるが、

次の瞬間、

隆のズボンが強引に引き下げられると、

ピタッ!

肛門に熱く丸い何かが押し当てられた。

「ひっ

 まっまさか…」

メリ

メリメリ

まるで硬く閉じるドアをこじ開けて来るかのような圧迫感に

隆はこれから先に起こるであろうことを想像し、

「やっ

 やめろっ

 法子っ

 正気に戻るんだ!」

と叫ぶが、

『うぉぉぉっ』

そんな隆の背後で法子は雄たけびを上げると、

メリッ

メリメリメリメリ!!

「うがぁぁぁ!!」

法子の熱くて太くて硬い肉棒は

隆の障壁を突き破り

体内へと挿入されて来たのであった。



それ以降のことは隆はあまりよく覚えていない。

自分の妻だった女性が、

漆黒の肌を持つ裸族の男と化し、

そして、自分を犯す。

あまりにも衝撃が強すぎて、

突かれるごとに記憶を失っていったのであった。



「うっ」

隆が目を覚ましたのは翌朝になってのことだった。

ズキッ!

ズキズキ!

目を覚ました途端、

猛烈に痛み出した肛門を庇いつつ、

隆は起き上がると、

その横では巨根を勃起させながら眠りつく、

裸体の男の姿があった。

「法子…

 お前、本当に土人になってしまったのか」

ボディ族の男達とほとんど同じ姿になってしまった

法子の姿に隆はうなだれていると、

『うっ』

気がついたのか男の表情がかすかに動いた。

「法子?」

それに気づいた隆が声をかけると、

『あっ

 あれ?

 隆?』

白目をくっきりと浮かび上がらせながら

男は尋ねてきた。

そして、ゆっくりと起き上がり、

自分の姿を見た途端。

『肌が黒い…

 なに?

 この体?

 え?

 うそっ

 オチンチンが…

 あっあたしが男?

 え?

 いやだ!、

 こっ来ないで!』

と悲鳴を上げながら、

その場で縮こまってしまった

「のっ法子?

 俺がわかるか?」

そんな法子に隆が話しかけると、

『やだやだやだ』

法子はそう言いながら、

必死になって身に纏う物を探すが、

だが、その巨体を隠すことができる布など、

この小屋、いや、集落には存在はしなかった。



『どっどうしよう…

 あたし…

 ボディ族になっちゃった…』

これまでとは打って変わって妙にしおらしくしながら、

法子は隆に訴えると、

「そっそんなことは判っているっ

 て言うか、

 なんだよっ

 いつもの強気はどうした?」

と隆は変身前とは打って変わってしまった法子の態度について尋ねた。

すると、

『私にもわからないわ、

 自然とこうなっちゃうのよ、

 ねぇ、どうしたらいい?』

獰猛そうな見かけとは正反対のその姿に、

隆は思わず頭を抱えてしまい、

「そうだ、

 長老!」

とこの変身劇のそもそもの根源である長老なら、

何か知っているのでは、と隆は思いつくと、

『こんな姿で表に出るのはいやよ』

と渋る法子の手を引き、

長老の元へと向かっていった。



「えぇっ、

 戻せるのですかぁ?」

相変わらずの長老に向かって、

隆は地面に得意の漫画を書き、

法子の戻し方を尋ねると、

意外なほどにあっさりと答えが返ってきた。

コクリ…

『●●●●●』

相変わらず長老が言っていることは判らないが、

だが隆の描いた絵が通じたのか、

長老はボディの男になってしまった法子に向かって

何かを言う。

そして、

『○○○○○○』

『●●●●●●』

と法子とやり取りをすると、

ジャラ…

徐にトンボ球の紐を差し出した。

「おいっ、

 なんていっているんだ?」

突然出てきたトンボ球に

隆は法子に向かって尋ねると、

『あのね…

 ここにしばらくいるのなら、

 この紐を腰に巻け。ですって。

 これははボディ族勇者の証。

 これを巻かないのは勇者として

 とても恥すべきことだっていうの』

と法子は答えた。

「しばらくって…

 しばらくの間、

 ここにいるのかよ」

法子に向かって俺は聞き返すと、

ジッ

法子は俺を見詰め、

そして、

『あたしを戻したら、

 性格も元に戻るけど、

 それでいいの?』

と尋ねてきた。

「え?」

思いがけないその言葉に俺は声を詰まらせた。

「(そうか…

  女性に戻ったらあの気が強い法子に戻るのか、

  う…それもイヤだし、

  かと言って、

  ボディ族の男のままの法子も…

  また、お尻が狙われるののもまた…)」

思いがけないところで俺は選択を迫られていたのであった。


ンモー…

牛の鳴き声が再び響き渡る。

シュッシュッ

シュッシュッ

『あっ

 あっ

 あっ』

土の壁がむき出しの小屋の中に

野太い男のあえぎ声が響き、

漆黒の肌を汗で光らせながら

屈強の男が縮れ毛が覆う頭を振りかざしている。

そして、

シュッシュッ

シュッシュッ

その男の背後から隆は股間へ手を回し、

先走りでヌラヌラと濡れているペニスを扱いていた。

『あっ

 あっ

 あぁっ

 んっくっ

 いいよぉ

 気持ちいいよぉ

 隆ぃ

 もっと、

 もっときつく扱いてぇ』

キツイ体臭を振りまきながら、

男はそう訴えると、

「ちっ

 デカイチンコを扱いてやっている

 こっちの事も考えて言えよなっ」

男に負けずに汗まみれの隆はそう文句を言うと、

手に力を加えた。

そして、

『あぁ

 あぁ

 でっでるぅぅぅ

 ふぐぅっ』

鼻を大きく膨らませ、

厚い唇をかみ締めながら男が体を硬直させた途端、

ビュッ!

シュシューッ

天を向く男の亀頭より白い筋が一直線に飛び出すと、

長い放物線を描きながら

小屋の出入り口付近に線状に並ぶ黒いシミを作り上げた。

『はぁはぁ』

「はぁはぁ」

男が放った射精の跡を見ながら、

男と隆は呆然としていると、

『すごい…

 これ、いまあたしが出したの…』

と男は恥ずかしげに呟く。

すると、

「あぁ、そうだよ。

 しかし、

 すごい量だな…

 俺が幾らがんばってもこんなには出せないよ」

生臭い匂いを放つ射精の跡を見ながら、

隆は関心いたように呟いた。

『いやっ

 やめて…

 そんなことを言わないで』

それを聞かされた男は耳を塞き、

漆黒の巨体を小さく縮こまらせる。

「……まったく、

 ボディ族の男になった途端、

 女らしくなりやがって』

そんな男の姿を見ながら隆はため息をつくと、

ンモー

外からウシの鳴き声が再び響き渡った。

『あっ行かなくっちゃ…』

その声に押されるように男は腰を上げると、

チャラッ

腰に巻いているトンボ球の紐がかすかに鳴る。



ボディ族に伝わる秘伝の精力剤を飲み、

ボディ族の男・勇者になってしまった法子は、

長老より集落で飼っているウシの世話、

そう、牛飼いの仕事を与えられたのであった。

これも、ボディ族の勇者として勤めなえればならない仕事の一つ、

『じゃぁ、

 行って来るね』

身に着けているものは腰に巻いたトンボ球の紐一つの姿で、

法子は隆に声をかけると、

仲間達が待つ村の広場へと向かっていった。

そして、その後姿を眺めながら、

「さて、どうするかな…

 こんな裸の男よりも女に戻って欲しいのは山々だけど、

 でも、戻ったら戻ったで、

 性格が男らしくなってしまう。

 はぁ、悩む所だな」

見送る隆はそう呟きながら頭を掻いていた。



『さて、昨日ここに来た二人のうち、

 一人は我らの勇者になったか…

 今夜、残る一人にこの女の精力剤を飲ませるとするか。

 さぞかし気が強い女勇者になるであろう…』



おわり