風祭文庫・モラン変身の館






「太鼓」


作・風祭玲


Vol.697






「はぁ〜っ」

「ふぅ〜っ」

いまにも沈もうとする夕日をバックに2人の男子高校生が、

公園のベンチにグッタリとしながら座り込むと、

がっくりと肩を落とした。

「今日でもう3日目か…」

あかね色の空を見上げながら松沢剛が呟くと、

クシャクシャ

っと短く刈り込んだ髪をかき上げる。

その一方で、

「明美さん、

 一体、何処に行ったんだろう…」

とメガネを光らせなつつ、東野将夫は俯くと、

数日前から行方不明になっている幼なじみの羽生明美の身を案じ始める。

「なぁ…」

空を見上げながら剛が声を掛けると、

「居なくなる直前に明美のヤツ、

 なにか言ってなかったか?」

と将夫に心当たりを尋ねた。

「さぁね、

 あの日は部活だったから明美さんには会ってないよ」

剛の質問に将夫は突き放したように返事をすると、

「ちぇっ、

 役に立ねぇーな」

それを聞いた剛はそう言い返す。

すると、

「しっ失礼なっ、

 大体、あの日

 明美さんと最後に会ったのは剛の方だろう?

 君こそ、何か情報を隠してないのか?」

と将夫は怒鳴り声を上げた。

「判かんねーから聞いて居るんだろう?」

将夫の声が耳に響いたのか、

剛は耳に人差し指を突っ込みながら言い返すと、

「はぁ…

 一体何処に行ってしまったんだ。

 まさか、帰宅途中に”萌えぇ〜”とか叫ぶ

 変態野郎にさらわれたんじゃないかな?

 明美さん、今どこでどうしているんだ」

長く伸びた髪を激しくかき上げ、

将夫はその頭の中で妄想を拡大させていく。

「けっ、

 電車男のような顔をして良くそう言うことを言えるもんだ」

そんな将夫を横目に見ながら剛は呟くと、

「!!っ

 なんだとぉ!

 いまの言葉取り消したまえ!」

とそれを聞いた将夫が剛につかみかかるが、

「おもしれぇー

 ココでやろうていうのかっ?」

剛も怯むことなく将夫の胸元を掴み上げる。

まさに一触即発、

張りつめた緊張感が辺りを支配したとき、

サワ…

どこからわき出したのか霧がたなびきだし、

見る見る2人の周囲を包み込んでしまった。

「え?」

「霧?」

良く晴れた晩秋の夕暮れ、

とても霧が湧いては来そうもない気象条件でありながらも、

自分たちの周囲を取り囲んでしまった霧に、

2人は目を見張っていると、

トントン…

タタタッ

トントン…

タタタッ

どこからか太鼓の音色が響いてきた。

「太鼓か?」

「祭りでもあるのか?」

響き渡る太鼓の音色に2人は聞き耳を立てていると、

『剛ぃ〜…』

『将夫〜…』

っと太鼓の音色に乗るように微かに女性の声が響いてきた。

「!!っ」

「これは…」

「明美(さん)の声!」

微かに響いてくる声の主が

探し続けてきた羽生明美の声であることを確信すると、

ダッ!

2人はダッシュでその声が響いてくる方向へと掛けだしていった。



タッタッタッ!

「はぁはぁ」

「ひぃひぃ」

太鼓の音と声を追って剛と将夫はひたすら走った。

タッタッタッ

タッタッ…

ザザッ

ザザッ

砂利が敷かれキチンと整備されている公園の小道が、

次第に草が生い茂る獣道に変わっても2人は走り続ける。

そして、空気も次第に熱を帯びてくると、

ザザザッ!!

霧の中から木の枝が現れるようになり、

やがてそれが続き始めたとき、

ガッ!

「あぁっ」

何かにけ蹴躓いてしまったのか

将夫が声を上げながら倒れてしまった。

「ちっ、

 ドンくせぇーな」

倒れてしまった将夫に気づいた剛が引き返すなり、

「ほらよっ」

将夫を助け起こすと、

「あれ?

 こころで、ココは何処だ?」

「え?

 そういえば…」

ようやく2人は身の丈ほどの草に取り囲まれていることに気づいた。

「なんだ?」

「さぁ

 それにしても無茶苦茶暑いなぁ

 まるで真夏になったみたいだ」

首元を締めるネクタイを緩めつつ将夫は周囲を見回していると、

「明美の声が聞こえない」

耳を澄ませていた剛が声を上げた。

「なに?」

剛の指摘に将夫も耳を澄ますが、

・・・・・・・

あれだけ呼び続けていた明美の声はピタリと止まり、

ザワザワ

ザワザワ

風になびいているのか周囲の草から乾いた音が響くだけだった。

「明美ぃ!!!」

未だ立ちこめている霧に向かって剛が声を張り上げると、

「明美さぁーん!!」

続いて将夫も声を張り上げる。

「明美ぃ!!

 ココに居るんだろう」

「明美さぁん!

 どこですかぁ?」

見つけ出すことが出来ない明美に向かって2人は声をかけ続けていると、

トンッ!

トトン…

トトトントト…

再び太鼓の音が響き始めた。

しかも、さっきよりもハッキリときこえてくる音色に、

「え?」

「!」

2人は顔を見合わせると、

ザザザ…

太鼓のする方へと向かい始めた。

トトン…

トトトントト…

トトン…

トトトントト…

響き渡る太鼓の音色はまるで2人を招くようになり響き、

その音色に惹かれるように2人は招かれていく、

「近づいているぞ」

「あぁ…もぅ直ぐだ、

 この藪を越えたところだ」

次第に大きくなる太鼓の音に2人の足に力が入る。

そして、

ザザッ

一際大きな藪を抜けた途端、

サッ!

剛と将夫の視界が開け、

白い霧が立ちこめる広場へと飛び出してしまった。

「こっここは?」

いきなり視界が開けたことに

2人は驚きながら立ち止まると、

キョロキョロと周囲を見始める。

その途端、

トトントト!

直ぐ間近で響いた居た太鼓の音が鳴りやんだ。

「止まった…ぞ」

「あぁ」

静寂が辺りを支配する。

そして、このときを待っていたかのように

立ちこめていた霧がゆっくりと晴れてくると、

「剛君、将夫君、久しぶり」

と人の声が響き渡った。

「え?

 明美?」

「明美さん?」

その声に2人が振り返ると、

真後ろには漆黒の肌を輝かせる裸体の男が

太鼓を抱え込むような姿で座っていて、

ニコリ…

と白い歯を浮かび上がらせるように笑みを見せた。

「うわっ」

「なっなんだお前は

(外人か?)」

突然の裸体の男の登場に2人は声を上げると、

「うふっ

 やっぱり判らないみたいね。

 あたしよ、

 明美よ…」

と男は2人に告げる。

「なに?」

「おっお前が明美だってぇ?」

明美とは似ても似つかない姿の男から言われた言葉に、

剛と将夫は驚くと

「そっか、

 そんなに変わっちゃったか、

 うん、無理もないもんね。

 あたし、ボディ族の勇者になっちゃったら…」

と男は言いながらゆっくりと立ち上がった。

すると、

「うわっ…」

「フルチンかよ…」

男の股間で剥き出しのまま揺れるペニスを見るなり、

2人は距離を空けた。

黒く光る肌、

腰に撒いているトンボ玉で出来た紐と、

同じトンボ玉で作られた首飾り、

そして、手首と足首に巻いている飾りのみの

文字通り全裸である男の姿に

2人は驚いていると、

「剛君、将夫君、

 こんな姿で言ってもなかなか信じて貰えないかも知れないけど、

 あたしは紛れもない羽生明美よ。

 あたし…

 ボディ族の勇者になってしまったのよ、

 でも、別に後悔はしていないわ、

 これまで内緒にしていたけど、

 私、前々から男の人になりたかったの…」

と男は笑みを見せながら告げる。

「え?」

「は?」

思いがけない男の言葉に2人は驚くと、

「うーん、

 なんて言うのかなぁ…

 女の子であることに違和感を感じていた。

 って言うのかな?

 ほら、性同一性障害っていうのがあるでしょう?
 
 あたし、それだと思っていたのよ」

と男は黒く輝く顔から白い歯を浮き立たせながら説明をする。

「ほっ本当にお前は明美なのか?

 なっなんで、土人なんかに…

 いくら、せっ性同一性障害だからって、

 そんな姿になぜ……」

それを聞いた途端、剛が声を上げると、

「土人じゃないわよ、失礼ね。

 ボディ族よ、ボディ族!

 あたし、このボディ族の勇者に選ばれたの」

と男、いや、明美は言い返すが、

「勇者に選ばれたって、

 大体何で選ばれたんだよ、
 
 選ばれたぐらいでなんでそんな身体になったんだよ」

将夫は怒鳴り声を上げた。

すると、

「この村…

 人食いのシンバに狙われているの、
 
 それで、長老がジャングルの神に向かって

 シンバを退治してくれる勇者を求めたら、
 
 あたしが召還されてしまったのよ」

と明美は事情を説明した。

「なんだって…」

「だからって」

その説明に2人は驚くと、

コツリ

杖の音が響き渡せながら

明美と同じ姿をした裸の姿の老人が出てくるなり

『・・・・・・』

と2人に向かって何か話しかけた。

「なんだこの爺さん?」

「いまの…言葉?

 なんて言ったんだ?」

老人が話しかけた言葉の意味が判らない2人は顔を見合わせると、

「2人とも控えて、

 ボディ族の長老よ…
 
 ここはボディ族の村なのよ」

と明美は囁いた。

「なにっ」

「こっコイツが、

 明美を土人にした張本人か」

と剛と将夫は声をそろえて怒鳴った。

「なんてことを言うのっ

 それに土人じゃなくてボディ族だって」

2人が上げたその声に明美は即座に注意をするが、

「おいっ、

 明美を元に戻せ!」

「そうだ、

 こんな土人じゃなくて

 さっさと女の子に戻せ!」

と長老につかみかかろうとした。

その瞬間、

ザクッ!!

ザクザクザク!!

剛と将夫の目の前に、

何本もの槍が突き刺さると、

『・・・・っ!!!』

いつの間にか回りを取り囲んでいたのか、

ボディ族の男達が興奮した声を上げながら槍を突き刺すと、

さらに別の男達が一斉に手にした槍を2人に突きつけた。

「いっ!」

「こっこんなに仲間がいたのか…」

まさに多勢に無勢といった有様の状況を2人は認識させられると、

「いやっ

 別に危害を加えようとは…」

「そうですそうです」

冷や汗を吹き出しながらそう言い訳をすると、

『・・・・・・』

その言葉を翻訳したのか、

明美は男達に向かってボディ族の言葉で説明をする。

すると、

『・・・・・・』

明美が告げた言葉に長老が答えると、

ザザッ!

向けられていた槍は一斉に下ろされていった。

「ふぅ」

「はぁ」

「なっなぁ、

 いまなんて言ったんだ?」

直面していた危機を乗り越えたことに安堵しつつ、

将夫は言葉の意味を尋ねると、

クル…

明美は後ろ手に手を組みながら2人に背を向け、

「ねぇ、

 剛君に将夫君。
 
 ここで暮らしてみない?」

と話しかける。

「はぁ?」

「なんで?」

突然の申し出に2人は驚くと、

「あたし、以前から二人のことが好きだったけど、

 でも、どっちか一人を選べなかったの。

 そうしているウチにあたし、

 長老からボディ族の勇者に選ばれてしまって、

 この村に連れてこられて勇者に変身したんだけど、

 けど、剛君と将夫君のことが忘れられなくて…

 思い切って長老に相談したんだ。

 そうしたらね、

 2人をこの村に招いても良いって言ってくれたの」

と明美は事情を説明した。

すると、

「あっ明美っ

 そんなことよりもみんなの所に返ろう。

 戻れるんだろう元の姿に?
 
 なっ、
 
 こんなところで、
 
 こんな格好をしていないで、
 
 みんなとまた同じような生活をしよう」

と将夫は明美の肩を掴みながら説得をし始めるが、

だが、

「ダメよ…

 元の姿には戻れないわ、
 
 だって、あたし…
 
 ボディ族の勇者としての証を立ててしまったのよ」

と明美は答えた。

「証?

 証って何だよ」

それを聞いた剛が明美に迫ると、

「こっこれよ…」

明美はそう言いながら、

シュッ

シュッシュッ

っと股間に下がる漆黒のペニスを扱き始めた。

「!!っ」

「おっ女とせっセックスをしたのか?」

それを見た将夫は声を上げると、

「セックスまではしていないわ、

 でも、オナニーをさせられて、

 精液を…証を立ててしまったの。

 ボディ族にとって精液はとても神聖なもの…
 
 その精液を自分のイリガから吐き出すことは、
 
 勇者の一員になったことの証と、
 
 後戻りはしないという宣誓でもあるの」

と説明をした。

「そんなぁ」

それを聞いて剛ががっくりと膝を折る横で、

「そんなの…関係無いじゃないか」

と将夫は言う。

しかし、

「ううん…

 ダメなのよ、
 
 精液を出してしまった以上、
 
 あたしはボディ族の勇者よ!!」

明美はそう言い放つと、

シュッシュッ

シュッシュッ

っと固く勃起するペニスを激しく扱き始めた。

「やっ止めろ!」

「止めるんだ、明美!!」

ペニスを扱く明美に2人は声を上げるが、

「あはっ、

 いいっ
 
 感じる、
 
 あぁ…
 
 これが男の…
 
 あぁ…」

大きくのけぞりながら明美は譫言のように呟き、

さらに激しくペニスを扱いた。

そして、

「あぁんっ

 でっ出るぅ!!!」

と叫び声を上げた途端、

プシュッ!!!

シュシュシュッ!!!

黒い明美の手に握られたペニスから、

白濁した粘液が空高く吹き上がっていったのであった。



「あっ明美が射精を…」

「まっまるで土人だ」

のけぞりながら精液を噴き上げる明美の姿に剛と将夫は衝撃を受ける。

すると、

「ねぇ…

 あたし…

 言われたの。
 
 長老に私のこの精を剛と将夫上げればいいってね。

 ぜひ、受け取ってくれる?」

と明美は囁き、

ドロリ

とペニスから精液を滴らせながら近づいてきた。

「明美…」

「明美さん…」

そんな明美を見ながら2人は声をそろえると、

明美の姿をしみじみと見る。

色白で小柄なれど、

でも、ピリリと山椒のような魅力があったかつての面影はすっかり失われ、

縮れ毛に覆われた頭、

自分たちよりも遙かに高い身長、

スリムで長い手足、

野生動物を思わせる発達した筋肉と、

乳房を失い筋肉に引き伸ばされたかの様に平らな胸、

そして股間には剛と将夫のよりも

一回りも二回りも大きなペニスを下げる姿になってしまった明美に

剛と将夫は呆然とするが、

ザッ…

剛よりも先に将夫が明美に近づくと、

「これを嘗めればいいのか?」

と明美のペニスを握りながら尋ねた。

「おっおいっ

 マジかよっ」
 
それを聞いた剛は驚きの声を上げるが、

スッ

将夫は明美の頬に手を寄せると、

「明美さん、

 僕はいつもあなたの傍にいますから」

と告げると、

ゆっくりと腰を落とし、

チュパッ!

明美の未だ萎えないペニスを口に含んだ。

「あぁっ

 将夫君があたしのイリガを…」

ペニスをしゃぶられた明美は

ゾク

っと身体を震わせると、

将夫の顔に手を添え、

そして、

クイクイクイ!

っと腰を動かし始めた。

そして、

「あうっ!」

小さな声を上げると、

ジュッ!

腰を震わせながら将夫の口の奥深くに向けて精を放つ。

プハァ…

「うげぇ」

明美に精を注がれた将夫は口を押さえながら離れるが、

だが、

「あはっ

 身体が熱い…

 身体が変だ
 
 あっあぁん」

身体で起き始めた変化に喘ぎながら、

着ていた制服を脱ぎ始めた。

すると、

プクッ!

将夫の胸に二つの膨らみが膨らみ始めると、

見る見る将夫の肌が黒くなり、

腕は細く、

腰は引き締まり、

そして、腿は太くなっていく。

「おっおいっ

 お前、女に…
 
 女になっていっているぞ」

それを見た剛が変身してゆく将夫に向かって声を上げると、

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

髪が抜け落ち、

黒い肌の坊主頭となった将夫は顔を上げると、

ニヤリ

と笑う。

「!!っ

 おっお前…」

それを見た剛が驚くと、

「ふふっ

 いいんだ、このままボディ族の女になるよ、
 
 女になれば明美の妻になれるからな…」

と言うと、

「さぁ、明美…

 どう?」

と尋ねながら女の唇が開く股間を大きく広げて見せた。



トンタタン

トトンタタン

ボディ族の村に太鼓の音色が響き渡る。

『じゃぁ、行ってくるね』

剥き出しのペニスを揺らしながら狩りの支度を終えた男がそう告げると、

『いてらっしゃい、あなた…』

『狩り、頑張ってきてくださいね』

漆黒の肌に覆われた女が2人、

乳房を揺らしながら声をそろえて送り出す。

『ふぅ』

男が去った後、

女達は膨れ始めたお腹をさすりながら、

「はぁ、二人共女になって、

 勇者になった明美さんと結婚するなんてな」

と片方が呟くと、

「そして、今、

 このおなかに明美の子が宿っているのね」

ともっ片方が呟いた。



おわり