風祭文庫・モランの館






「ヌエルの腕輪」


作・風祭玲

Vol.247





ひゅぉぉぉぉ…

地平線の彼方まで続く広大な荒野に一陣の風が吹き抜けていく。

ザッザッザ…

俺はその中をただひたすら歩き続けていた。

「一体ここはどこなんだ?」

周囲を見渡してもいま自分がいるところの目安になるモノなど何もなく

ただ、背の低い潅木が赤茶けた大地の所々に生い茂っているだけだった。

「はぁ…英明ぃ…もぅ一歩も歩けないよぉ!!」

俺の後ろから着いてきていた朋坂好美がそう叫ぶと、

ペタンとその場に座り込んでしまった。

「なんだ、好美っもぅバテたのかぁ?

 ほぉらっ、

 そんなところに座り込んでいないでサッサと立てよっ」

俺は振り返るなり腰の両側に手を当てやや疲れた口調でそう言ったが、

「そんなこと言ったって、もぅ脚が痺れてあたしダメ…」

好美はそう言い残すとバタンと仰向けに寝っ転がった。

フワァァ…

地面を這うように流れる風が好美の髪の毛を微かに揺らせる。

「まったくぅ…」

そんな好美の姿を眺めていた俺も彼女に付き合うようにして

その場に腰を下ろすと雲が流れていく空を眺めた。

「もぅ日が暮れるね」

地平線に近づきつつある西日を指さしながら好美が囁く、

「………ねぇ…」

「ん?」

「知っているんでしょう?」

「ナニが?」

「ココって何処なの?」

「さぁ?」

「さぁって…、英明は何も判らないの?」

「当たり前だろう、ココがどこだか判っていればこんなに苦労はしないよ」

「そんな…じゃぁなんで丸一日歩き続けたのよ!!」

僕の答えを聞いた好美が上体を起こすなり語尾を荒げながら突っかかってきた。

「そんなこと言ったって、

 今更何を言ってんだよ、

 大体”こっちの方へ行こう”

 って最初に言ってきたのは好美っお前の方じゃないか?」

「だぁって…

 英明がこっちに向かって歩き始めたからあたしは着いてきたのよ、

 こんな事だったらあたし…

 あのままあそこにいれば良かったわ」

好美はそう言い放つとプイと横を向いてしまった。

「あぁそうですかっ、

 だったら、好美一人で戻ればいいじゃないか、

 俺はこのままこっちに向かうから」

「あぁそうして貰いますよ」

現状を覆す答を見つけられない苛立ちをぶつけるように

僕と好美は言い争っていた。

しかし、

ぐぐぅ〜っ

っと二人のお腹から響き渡った音に、

「はぁ…お腹空いたね…」

「あぁ…」

たちまち休戦と相成ってしまった。

「……もしも、何かの糸口があるとすれば、

 やっぱりコレかなぁ…」

そう呟きながら好美は自分の両手首にしっかりと填まっている

腕輪をシゲシゲと眺めながら呟いた。

「…う゛〜ん……かもな…」

それを眺めながら俺も素直に頷いた。

そう、あれは今日の午前中のことだった。

昨日終わった学園祭の後片づけ要員として男女両バレー部から駆り出された

俺と好美は生徒会の指示に従って体育倉庫の後片付けをしていたとき、

「…ねぇねぇ、これ、なにかな?」

突然彼女の声が響いた。

「なに?」

俺は片付けものの手を休め、好美の方へと向かっていくと、

ドーン!!

突然俺の視界全体を異様な物体が覆い尽くした。

「うわぁぁ!!

 なっなんだ?!」

突如現れたそれに俺が声をあげて驚くと、

「きゃははは…

 なに驚いているのよ」

”それ”が俺の視界から消えると同時に好美の馬鹿にしたような笑い声が響き渡った。

「驚くって…あのな…そんなもんいきなり見せられたら誰だって驚くわ!!」

彼女の笑い声に俺はムッとしながら怒鳴るようにして叫ぶと、

「なによ…もぅ、そんなに怒らなくたっていいじゃない」

俺に怒鳴られたのが気に障ったらしく好美はちょっと膨れ気味に反論した。

彼女が持っていたのは、以前、この学校にいた地理の教師が教材にと持ち込んだ

アフリカに住むという裸族のお面だった。

「もぅバカやってないでサッサと片付けちまおうぜ」

ふざけている好美にそう注意をしながら俺が背を向けると、

「もぅ…余裕がないとハゲるよ」

好美は文句を言いながら手にしていたお面を

それが入っていた段ボール箱へと戻した。

そのとき、

「あっ、腕輪…」

と段ボールの中で何かを見つけた好美は、

不思議な幾何学模様が施された2つの腕輪を取り出すと

「へぇ…まぁまぁじゃない」

とその腕輪を見比べるとそのまま自分の両腕にはめてしまった。

「おいおいっ、遊ぶなって言っているだろう」

いつまでたっても仕事を始めない彼女に俺が注意すると、

「いいじゃない…

 へぇぇ…

 なかなか洒落ているのね」

好美は手首をくるりと回しながら填めた腕輪を眺めはじめた。

そのとき

『…ウヤガニ・キセルミカ…』

と言う声が倉庫の中に響き渡った。

「う…うやながに……なんじゃ?」

突然響いた声に俺は周囲に気を配りながらその言葉を復唱しようとすると、

「違うわよ…ウヤガニ・キセルミカ…って言ったのよ」

何時の間にか俺のそばで怯えている好美がそう言った途端、

ピチッ!!

パァァァァァ!!

突然、好美の両手首に填まっていた腕輪が光り輝くと、

その光が好美の体を飲み込み始めた。

「いやぁぁぁ!!

 たっ助けて!!」

「好美!!」

俺は咄嗟に光に飲み込まれていく好美の体にしがみ付いたが、

しかし、光は好美もろとも俺の体も飲み込んでしまった。

そして、気がつくとこの荒野の真ん中にオレ達は居たのだった。



ヒュォォォォォ…

西日は最後の輝きを放つと地平線の中に隠れ、

辺りはすっかり黄昏の気配になっていた。

「寒い…」

好美が両肩に手を寄せるとブルッと震えた。

日があるときは灼熱地獄に近かった荒野が日が沈んだ途端、

一気に気温が下がって来たのだった。

元々練習用のジャージしか着ていない俺と好美は

急激に下がっていく気温に戸惑った。

クークー

クークー

夜行性の動物たちが行動し始めたのか周囲から獣の声が漏れ聞こえ始める。

「やべぇ…」

俺は周囲の気配が一変してきたことに危機感を感じたとき、

「あれ?…なんだろう…

 誰かがあたしを呼んでいる…」

聞き耳を立てながら好美はそう呟くと、

ザッザッ

っと歩き始めた。

「おっおいっ

 どこに行くんだ?」

俺を置いて歩き始めた好美に戸惑いながら俺は彼女の後を追いかけたが、

しかし、好美は後から追いかけてくる俺にはお構いなしに

闇に包まれ始めた荒野をずんずんと進んでいった。

「おいっ好美っ」

俺は好美を見失わないように彼女に追いつくと

すかさず手を握り締め、

「どこに行くんだよ!!」

と腕を幾度も引きながら尋ねたが、

しかし、好美はまるで何かに惹かれるように歩くだけで

何も返事は返ってこなかった。

「おいっ!!」

大声で叫びながら彼女の腕を思いっきり引っ張ったとき、

…タタン…トン・タタン…

微かに太鼓を叩くのような音が俺の耳に入ってきた。

「太鼓の音?…」

音は好美が向かっている先から流れてきている。

「なんで?」

俺は不審そうに音がする方向を眺めていると、

ダッ!!

歩いていた好美が突然、走り出し始めた。

予想外の彼女の行動に、

「ちょっちょっと待て!!」

俺は彼女に引きずられるようにして走ったが、

しかし、

ガッ

何かの拍子に足が躓くと、

「うわぁぁぁ」

スザザザザ…

とその場に倒れこんでしまった。

「ばっっかやろう…」

俺はすぐに起き上がって彼女を追いかけようとしたが、

けど、好美の姿は闇の中に消えた後だった。


…タタン…トン・タタン…

…タタン…トン・タタン…

相変わらず太鼓の音は鳴り続ける。

「そうだ、これを頼りにすれば…

 でも…下がよく見えないぞ」

満天の星空の下、

俺は悪戦苦闘しながら鳴りつづける太鼓の音を頼りに夜道を歩く、

「それにしても、好美のやつこんな夜道をよく走っていけたな…

 けど、なんか様子が変だった…」

俺は直前の好美の行動に首をひねっていると、

ボゥ…

その前方に炎に照らし出された集落らしき建物群がぼんやりと見えてきた。

「村?…

 好美のやつあそこに行ったのか?」

明かりを見て急に足取りが軽くなった俺は

まるで吸い寄せられるようにして村へと向かっていった。

…タタン…トン・タタン…

…タタン…トン・タタン…

…タタン…トン・タタン…

太鼓の音が見る見る大きくなると俺は村の中へと入っていった。

「好美っ!!

 どこにいるんだ!!」

村を取り囲む柵を潜り抜け村の中に入った俺は大声で裕子の名前を呼んだ。

しかし

それへの返事は返ってこなかった。

タタン・タタン・トン・タタン…

トン・タタン・タタン・タタン

太鼓の音は相変わらず鳴り響き、

村の奥の方にある広場では大きな篝火が焚かれ

それを輪のようにして取り囲む大勢の人影がうごめいていた。

俺は広場のほうへと向かうと、

「すみませ―ん、あのぅ…」

と声をかけると、

タンっ!!

太鼓の音が鳴り止むと同時に人影の動きが止まった。

パチパチパチ!!

篝火が燃える音が突然訪れた静寂の中に響き渡る。

ザッ

すると広場にいた人たちはいっせいに俺のほうを向くと、

「!!」

俺は彼らの姿を見て驚いた。

無言のままじっと俺を見つめる炎に照らし出された男たちの容姿は、

闇夜に溶け込むような黒い肌に

スラリとした長身と筋肉が無駄なく発達した筋骨たくましい体、

そして、身に着けている服と呼べるのは腰に巻いた一本の紐という、

文字通りペニスをむき出しの裸体の姿をしていた。

突然飛び込んできた異邦人に男たちはただ見つめたままだった。

「えっえぇ…っと」

予想外のことに俺はなんて言っていいのかわからずその場に立ち尽くしていると、

ズィッ

一人の男が俺に向かってくると、

「◇○▲☆!!」

っと怒鳴るような口調で俺に向かって叫んだ。

「なっなんって言っているんだ?」

彼らの言葉が判らないでいると、男は俺を見下ろすようにして前に立った。

目の前にたくましく盛り上がった胸板が迫る。

その途端、

ムンズ

っと俺の襟首がつかみ上げられると、

男は俺を引きずるようにして広場から連れ出そうとした。

「なっ何をするんだ、俺はただ人を探しているだけだ」

そう叫びながら抵抗をしていると、

ザザザザ!!

突如、男たちが俺を取り囲むと幾本もの槍が俺に向けられた。

「なっなんだよぉ…」

突きつけられた槍に俺が怯んでいると、

「●◇…▼☆○!!」

老人を思わせる男の声が広場に響いた。

その途端、

裸の男たちは俺を放り出すといっせいに篝火の周りに集まると、

皆その場に跪いてしまった。

「なんだ、これは?」

その光景を見て俺はただ驚いていた。

やがて闇の中から杖を突き白いひげを蓄えた老人が姿をあらわすと

『○▽■□!!』

男たちに向かって叫んだ。

すると、

『○■▽!!』

と男たちは一斉に叫ぶと次々と雄たけびをあげた。

「なんだ?、何が始まるんだ?」

俺は狂喜乱舞する男たちの様子を眺めていると、

闇の中から白い人影がゆっくりと出てきた。

「好美っ!!」

篝火に照らし出された人物が好美であることに気づくと声をあげた。

しかし、

「なっ…」

 好美なのか?

 なんだ…その格好は!!」

闇の中から出ていた彼女の姿を見て俺は驚いた。

篝火に照らし出された好美の姿は

一糸纏わぬ裸体に

腰にはあの裸の男たちと同じく腰に太目の紐を巻き

手首には昼間填めた腕輪、

足首には別の新しい輪を填めだけの姿で、

当然、胸の乳房や、股間の女性器はむき出しになっていた。

「好美っ、お前、何をやっているんだ!!」

叫びながら俺が好美の前に飛び出そうとしたとき、

ガシッ

跪いていた男たちの数人が俺を取り押さえると、

力任せに俺を地面の上に這いつくばらせられてしまった。

「はっ離せッ!!

 好美っ!!」

顔を上げて俺は叫んだがしかし好美はそんな俺に目もくれず

じっと篝火を見つめていた。

「好美?

 どうしたんだお前…」

そんな彼女の様子を見た俺はそう呟いていると、

ダンっ

俺の目の前に杖が振り下ろされると、

あの老人が俺の目の前に立った。

『異郷のものよ…

 ここにおわすのはお前の知っている者ではない。

 あれは、われらが勇者・ウヤガニ様だ』

という声が響いた。

「え?、なに?

 なんのことだ?」

言葉の意味がわからず俺は老人を見上げていると、

「…なによっ、そんな顔をして」

俺を眺めながらそう言った。

「好美?

 俺がわかるのか?

 何でそんな格好をしている。

 早く服を着ろ、すぐにここから逃げるぞ!!」

と怒鳴った。

しかし、好美は、

「服?、あたしにはコレがあれば十分よ」

と腰の紐を軽く持ち上げて俺に言うと、

「それに、あたし…好美じゃない…

 あたしは…ヌエルの勇者・ウヤガニ…

 そう…あたしは勇者…勇者になる」

と好美は急にたどたどしくなっていく言葉で俺にそう告げた。

「勇者?、

 おいおい、好美ッお前、どうしたんだよっ」

まじめな彼女の言葉に俺は呆れるような口調で言い返すと、

『あぁ…こんな…窮屈な体…はいや、

 もっと…勇者らしい体に…』

ゴリゴリ…

見る見る好美の喉下が飛び出してくると、

彼女の言葉は急速に男のような野太いものへと変化していった。

「好美っお前声が…」

『あぁ…早く…』

唸るような声で好美はそう呟くと空を眺めた。

との途端、

ドクン!!

好美の体が大きく脈を打った。

すると、好美は

『あぁ…』

と両手を肩に当て悶えるような仕草をした。

『あぁ…

 いぃ…

 はっ早くぅ…』

俺の目の前で悶える好美は

そのまま肩に当てた左手で自分の乳房を揉み始めると、

右手は股間へと滑り込ませた。

そして、指を生殖器の中へと差し込んだ。

チュクッ…

小さいながらも粘液の音が響き始める。

『あん…

 あん…』

好美は押し殺すような喘ぎ声を上げながら、

差し込んだ指を激しく動かし始めた。

「好美っ、お前…なんてことをするんだ!!」

彼女の行為を真直で見た俺は顔を真っ赤にすると、

それを止めさせようと飛び出そうとしたが、

しかし、俺の体を抑えている数人の男たちの力の前には俺は無力だった。

そんな俺をよそに好美は

『おうぅぅ

 おぅぅぅ!!』

と幾度も腰を前後に振りながらまるで獣のようなうなり声をあげていると、

メキメキメキ!!

彼女の両腕が腕輪のところから黒く染まりだすと、

ボコボコボコ!!

っと瞬く間に好美の両腕は広場にいる男たちと同じ

漆黒の肌に覆われ、筋肉が盛り上がった腕と化してしまった。

『あぁ…

 いいっ』

自分の体には不釣合いな腕を動かしながら好美はオナニーを続ける、

すると、

グリュリッ!!

女性器に指を入れていた腕が何かをつかむとそれを引っ張り始めた。

その途端、

ニュキッ!!

その中から肉の塊が顔を出した。

「なっ」

それを見た俺は思わず驚いた。

それは紛れも無い男のペニスの一部、そう亀頭だった。

クニッ!

クニッ!!

しかし、好美の手はその亀頭をまるで撫でるかのようにしごき始める。

すると、

ニュニュニュゥ…

亀頭は体の動きに合わせながら成長していくと、

瞬く間に一本の太いペニスが好美の股間に姿を現してしまった。

「ゆっ好美にチンコが生えた?」

俺は目の前で起きたことがとても信じられなかった。

一方、

『うぅぅぅぅ…

 うぅぅぅ…』

ペニスを成長させた好美は大きく肩で息をすると、

両手を生えたばかりのペニスに添えると、

シュッ

シュッ

っとまるで子供の腕のような黒いペニスをしごき始めた。

「やっやめるんだ好美っ

 止めろ!!」

俺は力の限り叫んだが、

しかし好美は俺の叫びには耳も貸さずにオナニーをしつづける。

それどころか、

『どう?…

 あたし…オチンチン…

 勇者…らしいでしょう』

と俺に告げると、見せつけるようにして激しくペニスをしごいた。

すると、

ビシビシビシっ

好美の体に幾重もの筋が立つと、

ビキビキビキ!!

その体に陰影を刻むようにして筋肉が盛り上がり始めた。

ベキベキベキ!!

小ぶりな乳房を飲み込むように胸板が発達し…

盛り上がる腹筋は腹部に溝を掘りはじめた。

そして、

その一方で好美の身長がグングンと伸び始めた。

「そんな…そんな…」

変身していく好美の様子に俺はただ呆気に取られていた。

『うぉぉぉぉぉ!!』

変身の苦しさを紛らわすかのように好美はペニスをしごきながら声を張り上げる。

すると、

ジワッ

好美の白い肌を蚕食していくように腕の黒い肌が彼女の体に広がっていった。

そして漆黒色の肌が全身を覆ったとき、

俺の間の前に居る好美は

文字通りヌエル族の逞しい体をもった勇者へと変貌をとげていた。

「うぉぉぉぉぉ」

変身していく好美を見ながら男たちは雄たけびを上げる。

「くそっ離せ!!」

俺はこのまま黙って好美が男たち同じ姿になっていくのを我慢できず、

足で抑えている男たちを蹴り上げた。

そして男たちが一瞬怯んだ隙に好美に飛び掛ると、

ペニスをしごく手を思いっきり捻り上げた。

『邪魔をするなっ』

好美は男の声をあげて俺の体を突き放そうとしたが、

しかし俺は好美の腕にしがみつくと、

「こいつがすべての…」

と彼女の腕に填まっている腕輪に手をかけると思いっきり引きちぎた。

パッ!!

腕輪のビーズが闇夜に舞い上がる。

しかし、

それと同時に、

ピュッ!!

好美の股間に生えたペニスの先より白濁した精液を激しく吹き上げた。

ピュッピュッ!!

好美は精液を吐き続けながらガックリとその場にうずくまると、

突然、両手で顔を覆うと泣き出してしまった。

「好美?」

突然の彼女の変化に俺はオロオロすると、

「…何度も…何度も助けてって叫んだのに、

 なんで助けてくれなかったの?」

「なんだって?」

その言葉に俺は驚くと、

「遅いよ…

 遅かったよぉ…」

好美は何度も同じ言葉を呟くとゆっくりと顔を上げた。

「あっ!!」

そう、好美の顔は彫りの深い精悍なヌエル族の勇者の顔に変化していた。

「そんな…」

『ふふ…

 たったいま、

 勇者・ウヤガニは勇者の証を立てた。

 男よ、お前はウヤガニを目覚めさせるのを邪魔しようとしたが

 しかし、勇者・ウヤガニは見事復活を果たした。』

と言う老人の声が広場に響いた。

「てめぇっ」

俺は老人に飛びかかろうとしたが、

しかし、すぐにヌエルの男たちに捕まってしまうと、

そのまま村はずれの小屋へと押し込まれてしまった。

「こらっ出せ!!」

俺は小屋の土壁を壊すような勢いで壁を叩いたが

しかし、硬く締まっている壁はびくともしなかった。

「ちっ畜生!!」

俺は自分の目の前で好美の変身を許してしまったことが許せなかった。



「英明…」

どれくらい時間がたっただろうか小屋の中で眠ることが出来ず、

悶々としている俺に男の声が外から響いた。

「ん?その声は…好美か?」

とっさに俺はそう訊ねると、

「違うよ、いまは勇者・ウヤガニだよ」

と言う返事が返ってきた。

「そんなことはどうでもいい

 なんで、お前は自分からあんな事をしたんだ?

 それに、助けを呼んだって、何も聞こえなかったぞ」

壁に顔をつけながら俺がそう怒鳴ると、

「ココに来たときから

 あたしに腕輪が囁いていたのよ、

 ヌエルの勇者になれ…って

 最初は、気のせいと思っていたけど、

 そしたら、突然あたしの体の自由が利かなくなって…」

「やっぱり腕輪だったのか、

 だったらなんで、体を乗っ取られる前に俺に言わなかったんだ」

「だって、信じてくれないと思ったし、

 それに…」

「馬鹿やろう!!

 あの倉庫からここに連れてこられたのを見れば信じるだろうが」

「ごめんなさい」

「誤って済む話か」

「ごめん…

 それで、英明…

 もぅすぐ夜が明けるの、

 だから英明を村の外へ連れて行ってあげるわ」

と言う声がすると同時に、

ゴッ!!

小屋の重い戸があけられると、

薄明を背にして一本の黒い腕が伸びた。

「あっ」

反射的に俺はその腕をつかむと

グイッ!!

っと俺の体が引っ張られ、

狭い戸口から俺の体を引っ張り出していった。

「…………」

村は寝静まっていた。

「今はみんなの気が緩んでいるみたい、

 さぁ逃げよう…」

「あっあぁ…」

俺はすっかり逞しくなった好美に引っ張られるようにして

ヌエル族の村を後にした。

そして、立ち込めるもやの中をひたすら歩きつづけた。

サッサッサッ

前を歩く好美の体は動くたびに筋を筋肉がしなやかそうに動き、

まるで獣が歩いているように感じられた。

その途端、

好美の体がぴたりと止まった。

「どうした?」

思わず訊ねると、

「ねぇ…ひとつお願いがあるの…」

と好美が呟いた。

「なにが…」

「あっあのね、
 
 …いっいまここであたしのオチンチンを扱いて…

 欲しいの…」

と顔を伏せながら

まるで棍棒の勃起しているペニスを俺に向けた。

「はぁ?」

彼女の申し出に俺は思わず聞き返すと、

「本当のことを言うと

 好美でいられるのがもぅ限界なの…

 あっあたしの心の

 ほっほとんどを

 勇者・ウヤガニに取り込まれちゃっているの

 それでね…

 ウヤガニになっちゃう前に

 英明の手であたしを勇者にして…ほしいの」

と懇願してきた。

「そんな…」

「あぁ…はやくぅ…して…

 じゃないとウヤガニが出しちゃう…」

射精を我慢しているのか好美は股間のペニスを握り締めると耐える表情をした。

「くっそう!!」

俺はそういうと、自分の手を彼女の股間に伸ばすと、

そっと勃起している好美のペニスを握り締めた。

ビクン!!

「あっ、英明があたしのオチンチンを…」

好美はそういうと、

そっと俺の手の上に自分の手を乗せると動かし始めた。

シュッシュッ!!

シュッシュッ!!

好美の太くて長いペニスを扱く音が俺の耳に入ってくる。

「あっ、あっ

 いい…

 気持良いよ…

 英明が

 英明があたしのオチンチンを…

 あぁ…

 うっうれしい!!」

好美は恍惚とした表情をしてうわ言のようにそう呟きつづける。

そして、

「あっあぁいぃ…

 あっあたし、勇者…

 あぁん…

 おっ俺は勇者・ウヤガニ…」

と好美が叫んだ途端、

シュシュッ!!

好美のペニスは精液を激しく吹き上げた。

すると、

ドン!!

好美の両手が俺の肩を突き飛ばした。

「うわぁぁぁぁぁ!!」

バランスを崩した俺は尻餅をつこうとしたとき、

グン!!

一瞬、体がふわりと浮き上がったような感じがした。

しかし、それは文字通り一瞬の出来事だった。

ドシン!!

俺は激しく尻餅を突いてしまった。

「痛ってぇ…」

痛む尻をさすりながら立ち上がった俺の前には、

朝日を浴びる倉庫が建っていた。

「ここは…俺は戻ってきたのか?

 ゆっ好美?」

俺は周囲を見回しながら好美の姿を探したが、

しかし、彼女の姿はどこにもなく、

好美が放った精液が空しく俺の手についているただけだった。



おわり