風祭文庫・モランの館






「真美」


作・風祭玲

Vol.176





「ふわぁぁぁぁ〜っ」

「ねぇ…優っ…」

「あん?」

退屈な授業がようやく終わり大きく背伸びをしていた俺に

幼なじみの真美が傍に立つと声を掛けてきた。

「なんだ?」

目に溜まった涙を指で拭きながら返事をすると、

「……実は…大事な話があるの…」

っと真美は妙に神妙な顔で俺に言う、

「大事な話ぃ?」

俺がそう聞き返すと、

「……う…ん」

思い詰めた様子で真美は頷いた。

「なんだよ」

「ここ…じゃぁダメなの…」

真美は俺にそう言うとギュッと俺の袖口を掴んだ。

「んだぁ?」

彼女の行為にちょっと腹を立てながら立ち上がると、

「来て…」

真美は短くそう言うとそのまま俺を教室の外へと連れだして行った。

「…よっ、お熱いねお二人さん!!」

その様子を見たクラスの連中が茶々を入れるが、

「おっおい…」

真美は無言で俺を引っ張っていく、

途中で俺は腕を引っ張って振りほどこうとしたが、

ミシッ

その時の真美は異様に力強い力で俺を腕を引っ張っていった。

「おぉっ、山科っ今日は部活はないんだろう?

 じゃぁ、いつものところで待っているから」

教室から出た俺の後ろから悪友達の声が追ってくると、

「あぁ、判った」

俺は手を挙げてそれに答えた。そして…

「おいっ、真美ぃ…どうしたんだ!!

 ほらっ他の奴が見ているだろうが」

と言うものの真美は何も言わないで俺の引っ張って行く。

「なんなんだよぉ…」

ブツブツ文句を言いながら歩いていると、

ふと俺の腕を引っ張っている真美の姿に違和感を感じた。

「あれ?…

 真美の奴…こんなに背が高かったっけ?」

そう俺は前を歩く真美の頭の位置に疑問を持った。

「確か…前は俺の目線にあいつの頭があったよなぁ…」

チラリチラリと俺は視線を真美に向けると何度も確かめた。

「それに…着ている制服も妙に小さくなっているし…」

確かに数日前には重なり合っていた真美のセーラー服の上着とスカートが

いまではすっかり離れ、身体の動きにヘソが見え隠れていた。

「………?」

俺は疑問に思いながらも彼女にエスコートされる形で廊下を歩いていった。



ガチャン…

階段を上り屋上に通じるドアを開けると、

俺の目の前に屋上の景色が広がる。

と同時に

ぶわっ!!

っと傾き掛けの日差しと共に強い風が俺たちの間を吹き抜けていった。

屋上に出ると真美は何も言わずにそのままと歩いていくと

程なくして安全フェンスの前で立ち止まった。

「………」

俺は片手を腰に当てながら、

「で…なんだ?、その大事な話って言うのは」

と訊ねると、

「………」

真美は俺に背を向けたまま何も言わない。

「おいっ真美ぃ」

半ば怒鳴るようにして聞き返すと、

グン!!

「え?」

突然、目の前の真美の身体が一回り大きくなった。

「あっあれ?、気のせいかな?

 いまお前の身体が大きくなったような…」

俺は目をこすりながらそう言うと、

「……気のせいじゃないよ」

っと真美が答えた。

「あん?

 気のせいじゃないってどう言うことだ?

 まさか、”成長期”ですっとでも言うのか?」

「………」

俺の質問に真美は答えなかった。

「気味の悪い奴だなぁ…」

呆れながら言うと、

「………あたし…

 優にさよならを言わなければならないわ」

真美は振り向くと俺にそう告げた。

「はぁ?」

予想外の彼女の言葉に俺は驚くと、

グン!!

再び真美の身体が大きくなった。

「いっ…」

俺は思わず彼女から一歩下がる。

「なっなんだよう、その”さよなら”と言うのは…」

彼女の身体の変化とその言葉の意味を探るようにして訊ねると、

真美は視線を俺から外すとひとこと

「……ズールー族と言うのは知っている?」

と聞いてきた。

「ズールー族?

 はて…」

俺が首を傾げると、

「アフリカのサバンナで裸で暮らしている部族よ…」

と説明した。

「で、そのズールー何とかって言うのがどうしたんだ?」

面倒くさそうに俺が訊ねると、

「あたしね…あたし、そのズールー族に売られたのよ」

っと真美が答えた。

「売られた?

 なんだ?それは…」

彼女の言葉の意味が判らず聞き返すと、

真美は俺に背を向け遠くの景色を眺めながら、

「…ずっと昔、あたしが生まれる前…

 あたしの父さんが仕事で
 
 ズールー族が住んでいるあたりの資源調査をしたことがあったの、

 で、そのとき、ズールー族のある村の傍で有望な鉱脈が

 見つかったそうなんだけど、

 その村の立ち退きを巡って、

 父さんと村の酋長がある約束をしたの」

と喋った。

「約束?」

「うん…子供の居ない酋長の為に父さんの子供を一人養子に出すって」

「なんだそりゃぁ?」

真美の説明を聞いた俺が呆れたような声を上げると、

「父さんはどうせ口約束なんだから、

 守ることはないと考えてらしく

 ズールー族の酋長とその約束をしたの…

 そしたらズールー族の人達はあっという間に父さんの前から姿を消したのよ、

 子供がズールーの年で大人になる17歳の誕生日に迎えに行く。

 と言う言葉を残して…」

「で、まさか…」

真美の説明を聞いた俺は彼女を指さして聞き返すと、

真美は俺の方を振り返るなり

「うん、昨日…あたしの17歳の誕生日だったんだけど、

 そしたら、約束通りズールー族達があたしの前に迎えに来たのよ」

と告げた。

「あっアフリカからワザワザか?」

「………」

俺の問いに真美は答えなかった。

「それで…?」

「父さんはあたしが女の子だから養子の話は無理だ、

 って説明したけど、

 ズールー族の人はあたしに呪いを掛けたのよ」

「呪い?」

「…ズールーの勇者になる呪い…」

真美がそこまで言ったとき、

グン!!

また真美の体が大きくなった。

セーラー服はすっかり余裕が無くなってピチピチの状態になり、

真美の身体に張り付きだしていた。

「あたし…もぅ…

 …優……これをみて」

と言うなり真美は履いている下着を下ろすと同時に

グィっと制服のスカートをたくし上げた。

「なっ!!」

ブルン!!

俺に目には彼女の股間には有るはずのない勃起した肉棒の姿が飛び込んできた。

「こっこれは…」

それを見た俺が驚きの声を上げると真美は、

「勇者の証…」

とポツリと呟いた。

そして、

「ねっ、見ての通り…

 あたしはもぅ女の子じゃないの…」

真美は俺から視線を逸らして言う、

「なんで…」

俺がそう言ったとき、

『そんなところで何をしている、イガリ…』

突然響き渡った言葉が被さってきた。

その言葉に真美は

ハッ

とした表情をすると周りを見回した。

すると

スッ

俺と真美以外誰も居ないはずの屋上に

黒光りした逞しい裸体にペニスケースのみといった出で立ちの

男たちが数人現れるとあっという間に俺たちを囲んだ。

「まさか…これがズールー族…」

彼らを眺めながら俺が咄嗟にそう思うと、

真美は男達を睨み付けながら、

「あたしはイガリじゃないわ、真美よ!!」

と反論したが、

『我々はズールーの勇者、

 そしてお前もズールーの勇者だ…

 いつまでもそんな姿をしているんじゃない、

 さぁ、はやくウルカをつけるんだ』

と男達の一人が真美に言った。

俺は真美に、

「彼奴らが言っている”ウルカ”ってなんだ?」

と小声で訪ねると、真美は少し恥ずかしそうに、

「あの股についているペニスケースよ…」

と答えながら男達の股間に視線を送った。

そして真美はズールーの男達に向かって

「……イヤよ!!」

と拒むと、

ズールーの男達は真美を指さして

『勇者がウルカ以外のもの身につけることは恥ずかしいことだ…

 どうしても従わないのなら我々がつけさせる』

と言うなり別の二人の男がにじり寄ってくるといきなり真美に飛びかかって来た。

「いやぁ来ないで!!

 助けて…優!!」

真美の悲鳴が上がる。

「真美に触るなっ」

そう叫びながら俺は裸の男に一人に飛びかかったが、

『ズールーの勇者でないお前には関係はない、去れ!!』

と言う男の言葉と共に片手で俺の胸元を掴みあげると

まるでネコを放る様に放り投げた。

「うわぁぁぁ〜っ」

ドサッ!!

軽く5mは飛ばされた俺は悶絶する。

「優ぅ〜っ」

真美の声のみが俺の耳に入ってきた。

「くっそぉ〜痛みで身体がうごかねぇ…」

真美の様子を見ようと必死になって俺は体の向きを変えると、



「いやぁぁぁ!!」

叫び声を上げる真美は男たちの手によって制服を脱がせると言うより、

引き裂くようにしてはぎ取り始めた。

「やっやめろぅ…」

俺はそう言葉を出すのが精一杯なのに対して、

男達は余裕の表情で真美を裸にしていく、

瞬く間に真美の上半身が裸にされると、

俺は彼女の身体がまるで筋骨たくましい男性のような身体になっている事を知った。

バッ!!

男の手がスカートを掴むとそれを取り払う、

ビン!!

真美の黒光りしたペニスが白日の元にさらけ出された。

「いやぁぁ見ないでぇぇ」

真美はそう叫びながら両手で顔を覆ったが、

しかしズールーの男達はそんな真美の身体を取り押さえると

勃起しているペニスをつかみ上げるなり、

『さぁこれより勇者の儀式を執り行う』

と真美に向かって告げ、

そして、

シュッ

シュッ

っとまるで赤子の腕のように勃起した真美のペニスを扱き始めた。

「やっやめて!!」

真美は男の手を払いのけようとしたが、

しかし、男達の黒い手はまるで真美のペニスに絡みつくようにして扱いていく

シュッ

シュッ

シュッ

シュッ

ズールーの男はピストン運動のように手を動かし、

そして、赤黒く膨れている亀頭のところでグッと軽く握りしめる。

最初は嫌がっていた真美だったが、男達の行為に徐々に感じてきたのか

「あっ…

 あん…
 
 いやっ」

と悶え始めた。

シュッ

シュッ

男達の手は止まることなく真美のペニスを扱き続けた。

「あぁ…なに?

 あぁん、優…ジンジンしてきたよぉ」

真美がうつろな目で俺に向かって訴える。

「真美…出すな!!

 我慢をするんだ!!」

必死になって起きあがろうとする俺は彼女にそう言ったが、

「だめ、出ちゃう!!

 出ちゃうよぉ

 我慢できない!!」

真美はそう叫んだ途端、

シュシュッ!!

真美の漆黒のペニスが白濁した液体が空高く吹き上げた。

ピュッ

ピュッ

真美は最後の一滴まで絞り出させられると、

ズィ

その様子を見ていたズールーの男が放心状態の真美の前に立ち、

『さぁ、これでお前は我々の仲間でありズールーの勇者だ、

 勇者の証であるウルカを付けることを誇りに思え』

と告げると、

一本のウルカを高く掲げると

グッ

っとそれを真美のペニスに被せはじめた。

ススス…

ウルカは漆黒色のペニスを飲み込んでいく、

そしてウルカがすべてを飲み込むと

男はウルカから伸びる紐を真美の体に巻き付け縛った。

ニョキ…

真美の股間から一本の角が伸びた。

「あぁぁぁぁぁ…」

自分の股間に付けられたウルカを見て真美は呆然とする。

『さぁこれを受け取れ!!』

ウルカを身につけた真美を眺めながら男はそう言うと

ガシッ!!

と一本の槍を真美の前に突き刺した。

「なっ、コンクリートに槍を突き刺した」

俺はコンクリートに見事突き刺さった槍を見て感心する。

『さぁ、イガリよ、その槍は勇者の槍…

 お前はその槍を受け取るのだ』

と真美に迫った。

「だっダメだ真美っ、それを抜いてダメだ」

俺はそう叫んだが、

真美は立ち上がるとゆっくりと突き刺さった槍に近づき、

そしてそれに手を伸ばした。

「………」

真美は一瞬躊躇すると、

「優…ごめん…あたし…」

そう言いかけたところで、

「えい!!」

っと槍を掴むと、それを一気に引き抜いた。

パ…キン!!

何かが弾ける音がした。

そのとたん、

ビクンッ!!

っと真美の身体が波打った。

すると真美は

「あぁ…」

っとうなり声をあげるとその場にうずくまった。

やがて苦しそうな息づかいと合わせるように、

真美の身体が急速に変化していく。

「はぁはぁ…」

息づかいに合わせるように筋肉が波打ちそして盛り上がっていく、

ググググ…

筋肉が盛りあがると、体もさらに大きくなっていく、

やがて、色白の肌がまるでインクが染み出すように黒く染まりだし、

程なくして真美の身体は漆黒の肌に覆われた姿へと変貌して行く、

そして真美の長い髪がハラハラと抜け落ちると、

彼女は俺の目の前で筋骨逞しいズールー族の勇者へと変身していった。

「奈…美…お前…」

身体の痛みが引きようやく立ち上がることが出来た俺は、

すっかり姿が変わってしまった真美に近づいていった。

「……来ないで…

 あたしはもぅズールー族の勇者・イガリ

 あなたが知っている人じゃないわ」

顔を伏せながら真美は俺に向かってそう叫ぶと、

「そんなことはないよ、お前は…」

と俺がそこまで言いかけたとき、

「お願い…あたしをズールーの村へ連れて行って…」

真美はズールー族の男達に懇願した。

「なっ真美ぃ、いっいいのかよ」

彼女の言葉に驚いた俺はそう叫ぶと、

真美は顔を上げ俺を見た。

「うっ」

彼女の顔には既に真美の面影は無かった。

「…あたしの変身見てくれてありがとう…

 こうなることは仕方がなかったのよ…

 父さん達にはもぅ別れの挨拶をしてあるから大丈夫よ」

真美はそう言って微笑むと、

「しっしかし…」

納得しない俺はなおも食い下がった。

けど、真美は

「じゃぁね…優…

 いつかサバンナの大地で逢いましょう」

と言うと、

ズールーの男達に向かって手を伸ばした。

「………」

男の一人が真美の手を握った途端、

「さよなら…」

その言葉を残して真美は俺の前から姿を消した。

「そんな…」

その場に取り残された俺は真美が消えた場所をただ呆然と眺めていた。



おわり