風祭文庫・モランの館






「ある夜の出来事」


作・風祭玲

Vol.147





プルルルルルル…

お袋からの電話が来たのは娘の楓を寝かしつけた頃だった。

…あの話のことか、

私はそう思いながら受話器を取ると、

まるで決壊したダムのようにして怒濤の言葉の洪水が僕を耳を襲った。

その中をかき分けながら

「あぁ、母さんか…

 相変わらず騒々しいなぁ…」

と楓を起こさない程度で叫ぶと、

「ん?…あぁ、おまえも元気そうね…

 楓ちゃんはどう元気してる?」

とようやくお袋は娘のことを言い出した。

「あぁ…元気だよ…

 元気すぎて幼稚園の先生から目を付けられているけどね」

『そりゃぁ良かった…

 子供はそれくらいじゃなくっちゃ

 で、この間の話だけど、

 どぅ?』

っとお袋は先日持ってきた見合い話を始めだした。

「いや…僕は…」

と俺は断りの台詞を言おうとすると、

『そりゃぁ、

 おまえが月乃さんのことを忘れられないのは判るけど、

 でもねぇ…

 楓ちゃんも来年にはもぅ小学校でしょう?

 いつまでも片親ってワケには行かないでしょう』

とすかさずお袋は先手を打ってきた。

「あぁ、それは判っているよ…」

楓のことを出されると持ち出されると私のトーンが下がる。

『だからこそよ、

 楓ちゃんのためにも月乃さんのことは諦めると言うか…

 もぅおまえも1年間も待ったんだろう

 それで十分じゃない…

 だから…明日…まぁ会うだけでいいんだから……』

「うっうん…」

そう、お袋が指摘しているとおり

楓の母親であり、俺の妻でもある月乃が姿を消して既に1年の月日が流れようとしていた。

「あぁ、判った判った…

 じゃぁ、明日行くだけ行くから…

 そうすれば母さんも満足なんだろう…」

チラリと時計を見た僕はそう言うと、

『あっ…ちょちょっと…』

と話を続けようとするお袋の声を無視して受話器を置いた。

「ったくぅ…お袋のヤツもぅ時間じゃないか…」

私はそう文句を言うと大急ぎで散らかっている部屋の後かたづけを始めた。

そして、ようやく部屋が片づいたとき、

ひゅぅ〜っ

カタカタカタ…

一陣の風が吹ぬけ玄関のドアが音を立てた。

「えっもぅ来たの…?」

俺がそう思うまもなく…

…コン…コン…

っと躊躇うような小さなノックが聞こえた。

「おぅ」

僕はそう返事をすると、

玄関に立ち、

一呼吸を入れるとゆっくりとドアを開けた。

さぁ…

熱風ではないが乾いた草の香りとともに、

獣のような臭いが部屋に入ってくる。

「お帰り…月乃…」

外に向かって俺がそう声をかけると、

「…抜け出して…来ちゃった……」

と言う言葉とともに闇の中から一人の人物が僕の目の前に現れた。

月乃だ。

「相変わらずいい体つきをしているな…」

外灯に照らされた月乃の身体を眺めながら俺がそういうと、

「そっそう?」

言われた月乃は恥ずかしそうにそう返事をするなり顔を背けた。

「あぁ、とってもセクシーだよ月乃…」

「いやだ…そんなに見つめないでください…」

「そうか?

 まっ、そんなところで立ってなくて早く中に入れよ」

と言いながら俺は月乃を部屋の中に招くと

「でも…あたし…」

月乃は中に入るをためらった。

「何を言ってんだよ…

 ここは君と俺の居場所じゃないか」

俺はそう言って月乃の手を握ると、

グィ

っと引っ張った。

「……そっそれじゃぁ…」

月乃は躊躇いながらも頭を下げて中に入ってくると、

俺の絵の前に漆黒の裸体が迫ってくる。

「お帰り…月乃…」

俺はそう言うと入ってきた月乃の身体をギュッと抱きしめた。

俺の視界一杯に厚く盛り上がった胸板が迫った。

「あぁっ…ダメ…です…離れてください」

驚いた月乃が僕の肩をつかむなり引き離そうとすると、

「なんで?…」

そう言いながら引き離されまいとして僕は力を込める。

「だって…

 あたしの身体…見ての通り汚れているから…」

恥ずかしげに月乃が囁くと、

「それがどうした」

「あなたの服が汚れます…」

「僕はいっこうに構わないよ…

 それより、月乃とこうしていたいんだ」

と俺が月乃に言うと、
 
「そっそれは…」

月乃の躊躇する言葉が返って来た。

「イヤか?」

そう言って僕は見上げて月乃の顔を見ると

「………」

彼女は何ともいえないような顔つきをした後に

ぎゅっと僕を抱きしめた。

そして、ひとこと

「あなた…会いたかった…」

と漏らした。

しばらくの間立ったまま抱きしめ会っていた俺と月乃は

ゆっくりと離れると、お互いの姿を確かめるように眺めた。

部屋の明かりが妻の姿を照らし出す。

私より頭2つ程高い背。

無駄な肉を削ぎ落としたスリムで筋肉質の身体の股間には、

俺のよりも二周り以上も大きい男のペニスと陰嚢が力なく垂れ下がり。

また黒い光沢をもった肌に覆われた体には衣服と呼べるモノは一切身につけていなく、

腰に深い青色の一本のひもが巻かれているだけの姿だった。

ディンガ族…

そう妻・月乃はアフリカに住むと言われる裸族の勇者の姿をしていた。

「少しやせた?」

彼女の身体を眺めながら俺が訊ねると、

「ううん、判らない…」

月乃は軽く首を振る。

「そうか…

 まぁ、立ってないで座ろうや、

 いろいろとつもる話もあるだろうから…」

俺が先に座って勧めると、

月乃はばつが悪そうな顔をしながら俺の目の前に座った。

「向こうの暮らしはどぅ?」

と俺が訊ねると、

「相変わらずよ、

 毎日ウシたちの世話をしているわ」

月乃は俺が差し出したお茶を飲みながら答えた。

「そうか…」

そう返事をすると、

「うわぁぁぁ、懐かしい味…」

月乃は感激をしたような台詞を言う。

「そっそう?」

彼女の反応に俺は聞き返すと、

「うん、だって向こうではお茶なんて飲めないもん」

そう言いながら月乃はお茶を味わいながら飲む。

「それで、どうなんだ…」

頃合いを見計らうようにして俺は月乃に尋ねた。

すると、

「え?」

月乃は俺の言っている意味が判らないような表情をすると、

「おまえをそんな姿にしたディンガの勇者はおまえから離れていきそうなのか」

と俺がもっとも重要なことを尋ねた。



そう、思い返せば1年前…

俺たちを襲ったのは突然現れたアフリカ・ディンガの族の勇者の亡霊だった。

亡霊は最初、生まれたばかりの楓を襲ったが、

月乃の機転で難を逃れたものの

しかし、身代わりに月乃がその亡霊に取り憑かれ、

俺の目の前で彼女は漆黒の肌に逞しい肉体を持つディンガの勇者と変身していった。

さらには心も亡霊に乗っ取られ、

ついに俺をも襲い始めた月乃に、

その亡霊を追って現れたディンガの呪術者が

格闘の末になんとか亡霊を滅したものの、

けど、月乃の体は元の姿に戻ることはなかった。

しばらくはディンガ族の姿のままここで暮らしたが、

しかし、いつまでも居るわけには行かず、

月乃は呪術者とともにディンガの村へ元の姿に戻る方法を探すために旅立っていった。

そして、その日から妻は周りには行方不明になったと言うことになったが、

月乃がアフリカ・ディンガ族の村にいることは俺だけが知る秘密だった。



「……うん…そのことなんだけど…」

そう口を開いた彼女の顔が急に曇る。

「…向こうのいろいろな呪術者にも看てもらったんだけど…

 あたしとあのディンガの勇者・ナギってヤツの波動と言うかそう言うところが

 すごくよく似ているんだって…

 だから、ナギの霊体がバラバラに砕けて

 あたしとガッチリくっついて一つになってしまった以上、

 離すのは無理って言われたのよ…」

と月乃は俺に言った。

「えっ?

 それじゃぁ…」

その言葉に驚いた俺が聞き返すと、

「うん、恐らくずっとこのまま…」

「ディンガ族の勇者として生きていくしかないのか…」

月乃が途中まで言いかけた答えを俺が先回りして言った。

「………」

すると月乃はすまなそうな顔で俺を見る。

「う〜ん…」

俺は頭を軽くかきながら腰を上げると、

「お腹が空いているんだろう…何か作るよ」

と言うと俺は台所に立った。

すると、

「え?、それはあたしがやります。あなたこそ座って…」

そう言いながら月乃もすかさず腰を上げると俺の隣に並んだ、

「いいのか…?」

隣に立った月乃に言うと、

「ここにいるときぐらいは妻らしいことをさせて…」

月乃は片目を瞑ると率先して支度を始める。

俺はそのまま台所を離れると居間から

台所に立つ黒い肌をした裸の男のミスマッチさをしばし眺めていた。



「ごちそうさま…」

久々に食べた月乃の手作り料理に満足をしていると、

「あたしの腕、落ちでいないでしょう」

と月乃がにこやかに言う、

「あぁ、1年も向こうにいてよく落ちないなぁ」

俺が感心すると、

「イメージトレーニングよ」

と言って月乃はガッツポーズをするが、

それと同時に、

ムリッ!!

彼女の両肩の筋肉が逞しく盛り上がった。



食器を片付け始めた月乃がふと何かを見つけると

「あなた…お見合いをするの?」

と俺に尋ねてきた。

「え?、あぁ…それはお袋が勝手に送りつけたんだ」

そう俺が返事をすると、

「そうね…そうよね…

 あたしがこの体になって、

 アフリカ・ディンガの村に住むようになって1年…

 お母様があなたにお見合いをさせるのも判るわ」

と言いながら月乃は写真を眺めた。

「そんなことはないよ、だってこうして君とは会えるじゃないか」

すかさず俺はそう言うと、

「だめよ…人目のつかないこんな深夜に会うだけだなんて…

 それに…あたしはまだ楓と話をしたことはないわ」

と月乃は呟くと、ふっと目を逸らせた。

「気にするなっ」

俺は強く言うが、

「うぅん、良くない…

 ねぇあなた…あたしと会うのコレでお仕舞いにしない?」

と再び俺を見た月乃はそう提案してきた。

「え?、なにを…突然…」

驚きながら俺が聞き返すと、

「違うわ…実はずっと考えていたのよ…

 あたしが元の姿に戻れないことを知ったときから…

 この宮下月乃と言う名前を捨てて、

 ディンガ族の勇者ナギとして生きてゆこうって…そう思ったときから…」

月乃はそう呟くと視線を反らした。

「しかし…」

なおも納得しない俺に月乃は

「あなたには黙っていたけどあたしには婚約者がいるのよ」

と言った。

「え?」

「ディンガの長が自分の娘をあたしの妻にしろって決めてしまって…

 無論、あたしはまだウシの世話しかさせてもらえない立場だし

 結婚をするのはまだ先だけどね」

その言葉に驚いた俺を納得させるように月乃はそう説明すると、

「それで、あたし…迷ってたんだ…

 長の娘を娶ってディンガの勇者として生きていくとき、

 あなたや楓をどうすべきか

 でも、安心したわ…

 この人があたしの代わりをしてくれる。

 それだけで気が楽になったわ…」

月乃はそう続けると、微かに微笑んだ。

「………」

俺はあえて返事をしなかった。

すると、

「ねぇ…抱いて…」

そう言いながら月乃は俺の首に手を回して来た。

「え?」

彼女の突然の行為に俺は驚くと、

「男を抱くなんて、その趣味がなければイヤかもしれないけど

 でも、今夜だけあたしを女として抱いて欲しいの…」

月乃はそう言うとそっと目を閉じた。

「………」

俺は無言で服を脱ぎ捨てると妻の身体と自分の身体を重ね合わせた。

ゴリッ!!

彼女の逞しい肉体が俺の身体を包み込む。

「ねぇ…知ってる?」

月乃は俺を抱きしめながら尋ねてきた。

「ん?」

俺も彼女を抱きしめながら聞き返すと、

「あなたのプロポーズの言葉…」

そっと呟いた。

「あぁ…」

「もぅ一回言って…」

俺の返事に月乃はそう強請ると。

「聞きたいのよあの言葉を…」

と続けた。

すると、俺は月乃の耳元に口を寄せるとそっと呟いた。

「………ありがとう」

月乃は静かに目を瞑ると俺の唇にキスをしてきた。

いままでもっとも深いキスだった。

唇をゆっくりと離すと、

ズムッ

俺のへそに勃起した月乃のペニスがつつき始めていた。

「あっ!!」

それを見た月乃は、

「ごめん、あなたに抱かれたらなんか反応しちゃって…」

と取り繕うが、

しかし、俺は

「………」

肉の槍のように伸びた月乃のペニスを俺がジッと見ていた。

「そんなに見ないで…」

恥ずかしいのか月乃はそう言うと両手でそれを隠そうとしたが

けど、その大きさ故にすべてを隠すことは到底不可能だった。

「すげぇ…俺の倍はあるな」

と俺は勃起している自分のペニスと月乃のペニスとを見比べた。

「やっやめて、そんなこと…」

そう言いながら月乃は俺に背中を見せると、

俺の両手が動くと月乃の後ろ側から彼女のペニスを握りしめた。

「あっ」

俺の行為に驚いた月乃が振り返ると、

シュッシュッ!!

俺は月乃の槍のようなペニスを扱き始めた。

「あっ…うん…」

驚いた表情をしていた月乃の表情が徐々に変わり息が荒くなっていく、

「なんだ…月乃…お前、オナニーしたことがないのか?」

彼女の表情を見ながら俺がそう囁くと、

「…だって…

 オチンチンなんて触れない…もん」

息を荒げながら雪乃が返事をすると、

「じゃぁ、お前にオナニーの方法を教えてあげるよ、

 こうやって扱いてみろ」

俺はそう言いながら月乃の右手を掴むと、

そっと、彼女のペニスを握らせると上下に動かしてあげた。

「あっ、あん…

 ダメっ、

 止まらない」

シュッシュッ!!

自分のペニスを握った月乃はそう言いながら激しく腕を動かしていく。

シュッシュッ!!

シュッシュッ!!

「あん、あん…

 あぁ…何かがでるぅ…」

口をパクパクさせながら譫言のように月乃が言うと、

「さぁ、月乃…

 思いっきり出して見ろ」

俺は彼女の後ろから手を添えるとそう囁いた。

「出る!

 出る!!

 出るぅ!!」

徐々に声を上げながら月乃が叫ぶと、

プシュゥゥゥゥッ!!

天井に向かって突き出していた月乃のペニスから白濁した精液が吹き出した。

ムワッ!!

っとした臭いが部屋の中に広がっていく…

「(はぁ)どうだ、

 コレが男のオナニーだ…

 一度味わうとなかなか止められないぞ」

手に付いた月乃の精液をテッシュでふき取りながらそう言うと、

「はぁはぁ」

月乃はしばらくの間、肩で息をしていると、

再び自分のペニスを握りしめた。

「あん…まだ溜まっているみたい…」

そう言うと再び月乃はペニスを扱き始めた。

シュッシュッ!!

シュッシュッ!!

徐々に手の動きが激しくなり、

「うぉぁぁぁぁぁ…」

ほどなくして月乃は動物が唸るような声を上げると、

シュッ!!

っと精液を飛ばした。

「くはぁぁぁぁ…

 ああ…

 まだ出る」

勃起し血管が浮き出たペニスを握りしめながら月乃は俺を見つめると、

「あなた…お願い…

 あなたの中にコレを入れさせて…」

と懇願してきた。

「入れるってお前…」

月乃の言葉に俺が驚くと、

ギュッ

月乃の腕が伸びるなり俺の肩を掴んだ、

そして、

「お願い…

 今度はあたしに入れさせて」

月乃は血走った目で俺にそう言うと、

俺をまるで子供を抱くようにして抱き上げると、

自分の股間へと落としていった。

「ヤメロ!!

 月乃!!」

俺は抵抗しながら叫んだが、

しかし、ディンガ族となっていた月乃の腕力から逃げることは出来ず、

ニュッ!!

俺の肛門に月乃のペニスの先が潜り込み始めた。

ズキン!!

強烈な痛みが俺の腰を襲って来た。

「いてぇぇぇ」

おれは声を上げると、

「力を抜いて…あなた…」

囁くような声が後ろからする。

「ヤメロ!!

 早くコレを抜け!!」

俺は夢中になって命令するが、

ニュニュニュ…

精液まみれになっていた月乃のペニスは難なく俺の体内深く侵攻してきた。

「あぁ…

 いぃ…

 熱い

 締め付けるぅ…」

悶えるような声を月乃が上げる。

しかし俺は

「うぉぉぉぉぉっ」

目を剥いて挿入された痛みを堪えていた。

すると、

ズン

ズン

月乃が腰を動かしてきた。

ズニュッ

ズニュッ

それに合わせて俺の中を貫くペニスが上下に動いていく、

「うぉぁぁぁぁぁぁ!!」

俺はひたすら悲鳴を上げていた。

「アァァ…

 アナタ…

 ワタシ…

 イクゥ…」

流暢だった月乃の日本語が徐々に片言になっていくと、

いつの間にか、

「・ウォ・・・ウォ・・・」

ディンガの言葉と思える言葉をしゃべり始めだしていた。

「あぁぁぁ…」

その頃から俺の下腹部に

ズゥーン

ズゥーン

と言う異様な感覚が走っていくと、

俺はまるで階段を駆け上がっていくような快感を覚え始めていた。

そして、

「ウォォォォォ!!」

二人の雄が雄叫びを上げると果てて行った。



翌朝…

「うっ!!」

肛門の痛みに目を覚ました俺は目を覚ましたとき

「さようなら、祐二さん…

 楓のことよろしくお願いします」

と言う月乃の言葉が頭に響いたと思ったとたん。

ブワッ!!

一陣の風が部屋の中を吹き抜けていった。

それに驚いた俺は

ハッ

と飛び起きると、居間のテーブルの上にルージュで

「ありがとう…さようなら…」

と書かれた紙が一枚置いてあった。



おわり