風祭文庫・モランの館






「本の中」
(前編)


作・風祭玲

Vol.077





放課後の校舎裏、

1人の内気そうな少女が4人の少女に取り囲まれていた。

「あたし達を無視するなんて言い度胸じゃない」

「………」

取り囲まれた少女・敏江は何も言わず

じっと、

目の前に仁王立ちをしている和葉を見つめていた。

パシっ

その敏江の顔に平手打ちが飛んだ、

「なんだよ、その目は…」

続けて数発の平手打ちがとんだ

「オラっオラっオラっ」

「何とか言ったらどうなんだよっ」

セーラー服の襟元を捕まれた敏江は和葉のなすがままだった。

「やっちゃえ、いいぞ」

周囲にいる、一美や保奈美が和葉をけしかける

「ちょっと、和美っ、ケガをさせるとヤバイよ」

和葉のエスカレートぶりに驚いた佳奈が止めさせようとしたとき。


バサッ

一冊の古びれた本が敏江の足下に落ちた。

「なんだ?、これは」

和葉が本を拾おうとしたとき、

「ダメっ」

突然、敏江が和葉に飛びかかって本を奪い返そうしたとき、

「おっと、なんだ、言葉がしゃべれるじゃねぇか」

和葉はまるで余裕があるような素振りで敏江の髪を掴み上げると、

「引っ込んでいろっ」

と言って思いっきり突き飛ばした。

「きゃっ」

ドタン!!

敏江は尻餅を突くとその場に蹲ってしまった。

「ったくぅ…」

「何の本?」

スカートの埃を払う和葉から保奈美が本を受け取ると

そう言いながらパラパラとその本のページをめくった途端、

パァァァァァァ

本から発せられた強烈な光が彼女たちを襲った。

「うわぁぁぁぁぁ………」

「いやぁぁぁぁ」

「なに?」

「きゃぁぁぁ」

たちまち4人の悲鳴が周囲に響き渡ったが、

しかし、光が収まると同時に声は途絶え

そしてそこには和葉達の姿はなく閉じた本のみが落ちていた。

「うふっ、馬鹿な人たち…」

起きあがった敏江は制服の埃を叩きながら、

その本を拾うと、

「和葉…保奈美…

 あなた達がこの本の中で変身していく様子を

 しっかりと見せて貰うわ」

そう笑みを浮かべながら敏江は校舎へと向かっていった。




ギャアギャアギャア…

けたたましく鳴く鳥の声に和葉は気づくとうっすらと目を開けた。

「ここは…何処だ?」

上体を起こして周囲を見ると、

辺りはまるで熱帯のジャングルのような様子になっていた。

「そんな…

 なんで?」

和葉は直前の記憶を賢明にたどり始めた。

「……そうだ、敏江のヤツが落とした本を開いたら

 あっ、コラッ、敏江っ何処だ、出てこいっ」

と和葉が叫んだが

しかし、何も返事は変えてこなかった。

「ちくしょう、どうなってんだ?」

そう文句を言いながら歩き始めると、

倒れている保奈美達の姿が和葉の目に飛び込んできた。

「おっおいっ、しっかりしろ!!」

ペチペチ!!

和葉は保奈美を抱き起こしながら頬を軽くひっぱたくと、

「うん」

「ううん」

保奈美と共に周囲に倒れていた一美や佳奈も目を覚ました。

そして

「なっなによココ」

と周囲の様子を見て声を上げた。

「敏江のヤツが仕組みやがった」

と和葉が言う、

「え?、これって敏江が仕組んだの?」

「あぁ…」

「でも、どうやって」

「あの本に薬か何かが仕掛けてあって」

「気絶しているあたし達をどこかの温室にでも運んだんじゃないのか?」

「そう言えば、敏江の親父さんってどこかの社長をしている。って言ってたよね」

「全く、くだらないトリックを使いやがって…」

「学校に戻ったらお仕置きだ」

和葉の言葉に3人が次々と頷いた。



ハァハァハァ

「それにしても、随分と広い温室ですね」

「もぅ2時間も歩いていますよ」

「疲れたぁ」

「ごちゃごちゃ煩いぞ、お前ら」

4人は和葉を先頭にジャングルの中を歩いているが、

なかなかジャングルから抜け出すことが出来なかった。

「和葉…ちょっとおかしいと思わない?」

考え事をしていた保奈美が和葉にそう言うと、

「何が?」

和葉は立ち止まって聞き返した。

「だって2時間も歩いて、出口に出ないなんて、ちょっとヘンよ」

「別に迷っているわけでもなく

 さっきからほぼ一直線に歩いているのに、

 出口どころか壁にもぶつからないなんて…」

「まさか…」

「コラッ余計なことを考えるな」

保奈美達の議論に和葉は怒鳴ると再び進み始めた。

しかし、行けども行けどもジャングルは続いていた。


やがて日が傾き夕暮れの色が濃くなった頃、

4人は座り込んでいた。

「疲れたぁ…」

「お腹がすいたぁ〜」

保奈美達が口々に訴える。

「喧しいぞ」

和葉は怒鳴るが、その和葉自身疲れと空腹でヘトヘトになっていた。

「畜生!!…

 敏江めぇ…この借りは何倍にしても返してやる」

和葉は草むらの中で大の字になると夕暮れ空を眺めながらそう叫んでいた。

疲れからか和葉は寝入っていた。

トントコトントコ…

「!!?」

遠くからほのかに聞こえてくる太鼓の音に和葉は目を覚ますとうっすらと目を開けた。

「誰かいるのかな?」

一美も起き出して耳を澄ます。

やがて

「エイッ、ヤッ」

と言う声が聞こえてくると、

「人だ!!」

「助かった!!」

和葉達は起きあがると、

星空の下、音のする方へと歩き始めた。

徐々に音は大きくなっていく、

そして、前方にぼんやりとした明かりが見えてきた。

和葉達の脚は歩きから駆け足へと変わっていく、



そして、草の陰からその明かりの正面にでたとき

和葉達は信じられない光景を目にした。

そこには黒々とした肌をさらけ出した裸の男達が

火を取り囲んで踊っている真っ最中だった。

「へ?」

最初は意味が分からなかった和葉だったが。

裸の男をまじまじと見つめた後、

「きゃぁぁぁぁ」

悲鳴を上げて逃げ出そうとしたとき、

カッ

突然目の前に槍が打ち込まれた。

「ひっ」

仰け反る和葉…

槍はその一本だけではなかった。

和葉達の存在に気がついた男達は次々と槍を握りしめると次々と槍を放った。

そして、

カッ

カッ

カッ

無数の突き刺さった槍が和葉達を束縛していた。



「ねぇ…あたしどうなるの?」

「知らないよ」

日が昇る頃、和葉達は腕を縛られ、

裸族の男達とともにジャングルを歩いていた。

「あたし達、どこに連れて行くのかな?」

「さぁな」

「食べられちゃうのかなぁ」

「かもなぁ」

「いやぁぁぁ」

保奈美が悲鳴を上げて逃げようとしたが、

しかし男達の手から逃れることは出来なかった。

やがてジャングルの中に空間が広がると、裸族の集落が姿を現した。

「ここが、あいつらの住処か」

和葉達4人はそのまま、集落のはずれにある小屋へ監禁されてしまった。

小屋の中から表を伺っていた一美が、

「ねぇ、ここ変だよ

 男ばっかりで女がいないよ」

と言うと、

「えぇなにそれぇ」

保奈美も一美の横に立って集落の様子を観察し始めた。

「ホントだ…女性が居ない…しかも、それどころか子供の姿もないよ」

と言った。

「たまたま見えないんじゃないのか」

座り込んでいる和葉がそう言うが、

しかし、保奈美や一美の視界に見える人たちは

どれも筋骨逞しい男達だけで女や子供の姿は見えなかった。

「男だらけの中に、4人の少女か……

 運命は決まったな」

和葉が納得したようなセリフを吐くと、

「じゃぁ、なに、あたし達…」

佳奈が和葉ににじり寄ってそう訊ねると、

和葉はニッと笑うと、

「あぁ、彼奴らの今夜のご馳走かもよ…セックスの」

と答えた。

「そんなぁ…」

それを聞いた佳奈が声を上げると、

「いや、下手をすると、

 散々嬲られたあと、

 一人一人バラされて奴らの胃袋に収まることになるかもよ」

と付け加えた。

「いやぁぁ、そんなの、いやぁ」

和葉の脅しに佳奈が泣き叫ぶが、もはやどうする事もできなかった。

やがて日が落ちたころ、小屋の戸が開くと数人の男達が入ってきた。


「なんだ、おまえらは」

和葉が食ってかかるが、

逆に男達はそんな和葉と隅でおびえていた一美の二人を捕まえると、

次々と小屋の外へ引きずり出していった。

「和葉っ、一美っ」

佳奈の声が響く、

「離せっこの野郎!!」

「いやぁぁぁ離して…」

二人は散々抵抗したが、

裸族の男達にがっしりと捕まえられ引きずるようにして連れて行かれた。


そして二人が連れて行かれたのは

集落のはずれにある呪術士のところだった。

そこで二人は呪術師の前で裸にされると、

その場に座らされた。

「ちくしょう!!」

「いやぁぁぁ」

呪術師の前で和葉と一美は正反対の対応をとるが、

しかし呪術師はお構いなく和葉と一美に向って呪文を唱え始めた。

しばらくの間、和葉達にとって意味不明の呪文を唱えると

おもむろに立ち上がり、

彼の後ろに置いてあった2つの壺の片方を持ち上げると、

呪術師はまず和葉の所へと向うと、

彼女の頭の上から壺の中に入っていた黒い油状の液体を

トロトロと垂らしはじめた。

「ヤメロ!!」

和葉は声を上げて抵抗したが、

しかし、既に手足を縛られているために、

大した抵抗できずたちまち彼女の身体は液体で真っ黒になってしまった。

壺の中の全ての液体を和葉にかけると

呪術師は再び呪文を唱えながら、

彼女にかかった液体を伸ばし始めた。

やがて彼女の全ての部分を塗り終わると、

今度は別の壺を持ち一美に和葉にしたことと同じコトを行った。

「いやぁぁぁぁぁぁ」

一美の悲鳴が響く…

やがて二人は頭の先から足の先までべっとりと液体が塗られると、

呪術師は二人から離れるとさっきよりも大きな声で呪文を唱えた。


儀式が終わると、和葉と一美はそばの別々の小屋に押し込められると再び監禁された。


翌朝、和葉は体中の痛みで目が覚めた、

「くぅぅぅぅ、なんだ?、この痛みは…」

痛みは彼女の体中に広がり和葉は動けなくなってしまった。

やがて、体中の関節がギシギシと音を立て始めだした。

和葉は薄暗い天井を見つめ、

「あたし、ここで死ぬのか…」

と思っていたが

しかし昼頃になると痛みはさらにひどくなり

呼吸すら満足にできない状態になっていた。

ギュオギュオ

まるで身体を作り替えるように筋肉や骨が波を打つ音が耳に響く、

「うぅぅぅ…

 苦しい…

 いっそ殺してくれ…」

全身をバラバラにされるような痛みと、

苦しさに耐えかねて和葉はそう懇願するが、

しかし、彼女の苦しみを解き放ってくれる助けは来なかった。

が、そのころをピークに彼女の身体の痛みは徐々に引き始め、

翌朝、彼女が気付いた頃には痛みはほぼ引いていた。


「あっ、生きている…」

気付いた和葉は、体中の痛みがすっかり引いているコトに驚いたが。

さらに驚くべき事実が彼女を待っていた。

ゾク

寒さを感じた彼女が肩に手をやったとき、

モリッ

自分の肩が異様に盛り上がっているコトに気付いた。

「えっなに?」

盛り上がっているのは、肩だけではなく腕も太くなっていた。

「どういうこと?」

和葉は怖くなり、身体のあちらこちらをさわり始めた。

しかし、手には妙にごつごつとした身体の触覚が伝わってきた。

そして、股間に手を持っていったとき…

太くて長い男の一物がそこにあった。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ」

和葉の悲鳴が小屋に響く、

「そんな、そんな、そんな…」

必死になって、自分が男になっていることを否定しようとした。

しかし…


そのとき、小屋の戸が開くと、

入ってきた男達によって和葉は外に連れ出された。

「やめて、見ないで」

和葉はそう言いながら、股間と顔を片手ずつで隠したが、

そのままの状態で集落の広場まで連れてこられた。

広場には、裸族の男達が円形に座り和葉達が来るのを待っていた。

和葉が連れてこられると男達は一斉に歌い始め、

そして数人が舞い始めた。

「なっなによぉ」

彼らの行動に和葉は怯えたが、

しかし、炎に照らし出された自分の身体を見て愕然とした。

そう、和葉の身体はペニスケースこそはつけていないが、

目の前で踊っている裸族の男達と寸分違わぬ姿になっていた。

「そんなぁ」

和葉が自分の身体の様子に驚いていると、


「いやぁ〜っ」

と言う声がしてきた。

「一美?」

やがて、和葉同様二人の男に引きずられるように一人の裸の男が連れてこられた。

「ひぃぃぃぃぃ」

男は、歌い踊っている裸族達を見て悲鳴を上げる。

「一美ぃ?」

和葉は連れられてきた男に訊ねる。

「え?、あなたは…」

男は和葉を見ながら困惑する。

「あたしよ、和葉よ…」

「和葉?、本当に和葉なの?」

「そうよ、和葉よ、じゃぁあなたは一美ね」

「えっえぇ」

「あたし達…裸族の男になっちゃったの?」

「そうみたい…」

「そんなぁ」

するとその時、裸族達の歌と踊りが止まると、

輪が割れて道が開かれた。

「なに?」

和葉と一美は抱き合って、道を見る。

やがて、闇に中から呪術士と酋長が姿をあらわした。

呪術士の姿を見た和葉は

「ちょっと、あたし達を元の姿に戻しなさいよ」

と叫んだが、呪術士は和葉の前に立つと角のようなモノを見せた。

それは、裸族の男達がしているペニスケースだった。

「なによ、それをつけろって言うの?…イヤヨ!!」

和葉は前に出されたペニスケースを叩き落とした。

すると、数人の男達が和葉の側に来ると、

たちどころに彼女の手足を押さえつけた。

すると呪術士は落とされたペニスケースを拾い上げると

「昨夜お前達は我々の儀式の邪魔をした。

 その償いとしてお前達は我々の一員となって儀式に参加するのだ」

と言い放つと、男達に素振りで指示を出した。

その途端

ジリッ、

見る見る数人の男達が和葉と一美に近づいてきた。

「なっなによ…

 あんた達あたしに何をしようというの?」
 
裸族達の行動に和葉が怯えながら訊ねると、

ヌッ!!

男達の手が和葉のペニスに次々と絡みつくと、

シュッシュッ!!

っと扱き始めた。

「え?、そんなこと止めて!!

 止めてよ」

和葉は腰を振って男達の手から逃れようとしたが、

しかし、男達の手から逃れることは出来なかった。

「あっあぁぁあっあっ」

一美の喘ぎ声が響き始めた。

「一美っしっかりしろ!!」

それを聞いた和葉はそう叫んだが

しかし和葉も、

「うっ…いぃ…だめ…

 出ちゃう!」

生えたばかりのペニスを扱かれるその刺激に悶え始めていた。

シュッシュッ

シュッシュッ

「アァ…だめ…

 ジンジンしてきた。

 出る
 
 出る
 
 出ちゃう

 止めてくれぇぇぇ!!」

ついに和葉はそう叫ぶと、

ブルルル…

っと腰を振るわせながら

シュシュッ!!

ペニスから白濁した液体を吹き上げてしまった。

そしてそれは、隣で同じような攻めを受けている一美も

ほぼ同時に精液を吹き上げていた。

「はぁはぁ…」

射精後グッタリとしている和葉のペニスに

裸族達はペニスケースをかぶせ始めた。

ズズズズズ…

ペニスとケースのこすれる感覚に和葉はハッとすると、

「イヤァァァ」

っと声を上げたが、

しかし、ペニスケースをかぶせ終わり、紐で固定された途端、

和葉の様子に異変が起こり始めた。

「ぁぁぁぁぁぁぁ」

そう、いま彼女の心は徐々に裸族の男へと変わりつつあった。

「和葉…」

一美は心配そうに和葉を見る、

しかし、その一美も呪術士等によってペニスケースを被せられた。

「あっあたしはかずは…裸族の男ではない…」

和葉は流れ込んでくる意識に必死になって抵抗した。

「違う、あたしは裸族じゃない…」

しかし

「アァ…ハヤク…カリ…ニ…イカナクテハ」

徐々に裸族の心が和葉の心を浸食していくと、

ついに

「ウォォォォォ」

大声を張り上げ、和葉は裸族の踊り始めてしまった。

続いて一美も声を上げると踊り始めた。

ウォォォォォ

それを見ていた裸族達から一斉に歓声が上がった。

こうして和葉も一美も身も心も裸族の男になっていた。


そのころ

「よしっ開いた」

保奈美と佳奈が小屋から抜け出すのに成功し

そして、集落から逃げ出そうとしていた。

「和葉…一美…」

保奈美が振り返りながら言う。

「二人のことは忘れて…さっ早く」

佳奈が立ち止まっている保奈美の手を引いてジャングルの中へと消えていった。



つづく


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