風祭文庫・モランの館






「広告」


作・風祭玲

Vol.068





「あん…あん…あん……」

とあるラブホの一室で僕のペニスを体内に飲み込んだ京子が

僕の上で激しく飛び跳ねていた。

そして、その下で、

「うっ、くっ」

僕は彼女の体が落ちないように下から支えていた。

「あ・あ・あ……」

ギュッ!!

京子は喘ぎ声をあげながら徐々に僕のペニスを締め上げ始めると、

「うっうっ…」

その快感に僕は思わず声をこぼす。

「くっ、うっ…出る!!」

ペニスの根本が痺れ、放出まであと僅かであることを感じ取ると、

グッ!!

手に入る力が強くなった。

しかし…

「あっあっあぁああああ…

 イクゥ〜っ」

僕が射精する前に彼女は絶頂を迎えてしまうと、

あれだけ激しく動いていた京子の身体の動きがピタリと止まってしまった。

「え?、あっ…」

射精するタイミングを外されてしまった僕は、

「あ・あ・あぁ…あぁ…」

そのまま不完全な状態で終わってしまった。

京子は僕の顔をチラッと見ると

「あっ」

っと言う顔をするなり、

そのまま僕の隣にゴロンと横になってひとこと

「ゴメンネ」

と僕の顔を撫でながら謝った。

「どうしたの?」

モヤモヤを吹っ切りようにして訊ねると、

彼女は困惑した表情をして、

「うん…なんだか体調が勝れなくて…」

とポツリと呟いた。

「まぁ、しょうがないよ、

 かみ合わないときもあるからな…

 しばらくコレは控えようか…」

と僕が言うと、

「うん」

京子はすまなそうにそう返事をした。



それから数日が過ぎた。

「健二くぅん……」

と言いながら僕の部屋のやってきた京子が

付箋を貼ってあるページを開いて見せるなり、

「ねぇ…コレどう思う」

と僕の意見を聞いた。

「どうって、言われても」

そう呟きながら僕が開かれたページに目を通すと、

そこには動物の角のようなものが掲載されていて

「アフリカのパワー!!、これ身につければあなたの力は100万倍」

と言うキャッチフレーズの広告が載っていた。

「う〜ん、なんかインチキ臭くて怪しいなぁ」

と言いながら僕が首を傾けると、

「やっぱり、そう思う?」

京子は考える振りをしながらそう言うと、

ポン!!

「そんなもんにいちいち頼らなくっても大丈夫だって…」

僕は彼女の肩を叩きながらそう言い聞かせたものの、

「う゛〜ん…」

京子は唸りながらしばらくの間そのページを眺めていた。



ところが、1週間が過ぎた頃…

「あっ…健二?

 あのね、この間のあれ、買っちゃたよ。」

電話に出た僕に開口一番京子はそう言ってきた。

「えっ、なに?、

 アレ、買ったのぉ?」

僕は驚きながら聞き返すと、

「うん、

 バイト代でたしさ、

 それに、健二にイヤな思いさせたくないし」

と京子は買うのを決めた理由を僕に喋ると、

「そりゃぁまぁ、

 僕のことを気にしてくれるのはありがたいけど

 でも、効き目の方はどぅなの?」

と僕は彼女の投資が無駄になっていないことを祈りつつ訊ねると、

「そう、

 そうなのよ、

 これ、すごいのよ!!

 もぅ身につけただけで、

 なんだか力がわき上がってくる感じなのよ」

と喜ぶ京子の返事が返ってきた。

「へぇ…インチキじゃなかったのか、

 それは、良かったじゃないか、

 んじゃ明日にでもそっちへ行くよ」

彼女の返事を聞いた僕がそう言うと

「あっ、いまはちょっと待ってて、

 身につけてひと月すると逞しく変身する。

 って言うから、

 ひと月経ったら来てよ、

 すっかり変身した私を見せてあげるからね、

 それまで待ってて…」

と言うなり京子は電話を切った。

「ふ〜ん、ひと月ねぇ…」

僕はカレンダーを見ながら独り言を言うと携帯電話を畳んだ。



それからほぼ一月が経とうとした頃、

僕の携帯が鳴った。

「はい、もしもし…」

そう言って電話を取った僕の耳に

「健二?……」

っと言う男のような声が響いた。

「…だっ誰ですか?」

聞き覚えのない声に訝しげながらがら僕が聞き返すと、

「……あ・あたしよ、

 京子よ……」

と抑揚がまるでない声が響いた。

「京子ぉ?」

僕はその返事を容易には信じられず聞き返すと、

「……そぅ……京子」

確かに、京子のようだが、

でも声色が男みたいに変に低いし、

またしゃべり方も片言の言葉を喋っているみたいで妙におかしい。

「…本当に京子なのか!」

念を押すかのようにして聞き返すと、

「あたし……

 変身しちゃったの…」

「変身?」

向こうの言葉に思わず聞き返すと

「あたし……

 力がでたの……

 そして……

 もっと……

 そしたら……

 ……………」

声は堰を切るようにして続けざまにそう言うと、

そこで沈黙してしまった。

「……そしたら…、どうした?」

黙ってしまった相手に聞き出すようにして言うと、

「…そしたら………

 そしたら………

 …………」

と再び喋ったものの、

しかし、進展のないコトを言ったところでまた黙ってしまった。

「ん?

 で、どうしたんだ」

なかなか埒のあかない状態にちょっとイラついた言葉で聞き返すと、

「お願い…会いに来て……

 あたし…健二に会いたいの」

と京子を名乗る相手は僕に訴えた。

「会いたいって、今どこにいるんだ?」

「あたしの部屋……」

そう言ったところで電話は切れてしまった。

「?…何があったんだ…?」

僕は取りあえず京子の部屋に行ってみることにした。

「そう言えば、京子のヤツ、

 雑誌に載っていたヤツを買ったけど…

 それが…

 いや、よそう」

心の奥底から沸き上がってくる不安を僕は必死にうち消していた。

やがて、彼女の部屋のドアの前に立つと、

コンコン

2回ノックして、

「京子、いるのか?」

と聞いたが中から返事はなかった。

「おい、居るんだろう?」

そう言いながらドアのノブを思わず回してみると、

カチャ…

意外にも扉は簡単に開いた。

僕は一瞬躊躇ったが、

思い切って中に入ってみると、

部屋の中はカーテンて閉め切られていて真っ暗だった。

が、それ以上に凄いのは

獣の体臭の様な気味の悪い臭いで充満していることだった。

「(げほ)うわっ、なんだこの臭いは…」

咽せながら歩いていくと、

不意に部屋の中に人の気配を感じた。

目を凝らして部屋の様子を探ってみると、

確かに部屋の隅に人影が座り込んでいた。

ビクッ!!

驚いた僕が声を出す前に相手が

「健二……なの?」

と人影が尋ねてきた。

「そっそうだけど………、

 きっ京子か?」

恐る恐る僕が人影に訊ねると、

「そうよ、あたしよ……

 京子よ……」

と人影は返事をした、それを聞いた僕は一瞬安心したものの、

でもやっぱり声の様子がいつもと違うことに不安を感じた。

「これは、一体どうしたんだ?、

 それにこの臭いは……」

と鼻を押さえつつ僕は京子に訊ねると、

「あたし……

 変身…しちゃったの……」

と人影は呟いた。

「あぁ、電話でもそう言っていたけど、変身ってなんだ?」

しばらく沈黙したのち、人影が口を再び開いて、

「わかったわ……

 いま……

 カーテンを開けるわ、

 そのほうが…スグに…説明がつくから、

 そのかわり……

 あたしの…体を見ても…驚かないでね」

と僕に言うと人影は窓の方へと動きだし、

そして、

サッ

とカーテンが開けられた。

パァァァァッ!!

部屋の中に光が差し込む。

「うっ」

思わず僕は目を瞑ったが、

徐々に慣れてくると目の前にいる人物の全容が見えてきた。

「きっ、君は……」

僕は自分の前に立っている者の姿に驚きのあまり声が出なかった。


 2m近い背丈

 炭のように黒く光沢を放つ皮膚

 赤茶色に変色し短く縮れた頭髪

 眼の縁は大きく張り出し

 頬も張り

 大きく裂け咎り突き出した唇

 細身でありながらもゴツゴツした筋肉質の体

 そして、身につけているものは股間の黒ずんだペニスケースとのみ

と言う姿はまさに灼熱の大地を闊歩する「裸族」と言う言葉がぴったりの様相だった。


「これで、わかった?

 あたし変身しちゃったのよ」

っとその人物はたどたどしく答えたが、

しかし、僕には目の前の黒い肌をした裸の男が

あの京子だったとは容易には信じられなかった。

彼は僕が困惑している様子に気づくと、

「健二…

 信じられないのも分かる。

 あたしも…

 これが自分の姿だなんて……

 信じたくない」

と言って目を背けた。

僕は気を落ち着かせると彼に

「本当にきっ京子なのか?」

と尋ねた。

すると、

彼(彼女)は大きくうなずいた。

「どうして、こんなことに」

そう言ったとたん、

「うわっ…」

彼は泣きながら僕に抱きついてきた。

「なっ」

「あたし……

 健二に好かれようと申し込んだら……

 これ…届いたの」

そう言いながら、自分の股間にあるペニスケースを指さし、

「これを…身につけると……

 力出るって書いてあったのから、

 だから、その通りに身につけたの…
 
 すると、確かに力がどんどん出たわ……

 嬉しかった。

 でも……

 これをそのままにつけていたら……
 
 1週間程して身体が熱くなってきたの……

 そしたら……筋肉がついて…

 さらに肌も黒くなって……
 
 ……そしたら……そしたら……コレが生えたのよ」

そう言って京子はペニスケースを取ると、

ムクリ…

逞しく黒々とそびえ立つペニスを指さした。

さらに彼女は

「顔も変わったわ……

 身体も変わった……
 
 あたし……かわちゃった

 ねぇ…健二……
 
 あたし……どぅしたらいいの?
 
 教えて……」

京子はそぅ言いながら僕の胸の中で泣いていた。

「教えてって言われても…」

僕は困惑しながら京子の逞しい身体を見つめていると、

ムクッムクムクムク!!!

突如、ペニスケースの中から解き放たれた京子のペニスが大きく膨らみ始めると、

瞬く間に黒い棍棒のような姿と化してしまった。

「あぁ…また…

 …健二に見られてオチンチンがまた勃ってきちゃった」

京子はそう言うと黒く大きな手を股間に這わすと、

シュッシュッ

っと勃起しているペニスを扱き始めた。

「京子…お前…何を…」

彼女の行動に戸惑った僕が声を上げると、

京子は荒い息をしながら、

「あぁ見てぇ…あたしの…大きいオチンチン…

 もぅ何度も出したんだけど、でもスグに出したくなるの…」

と腰を落とすと僕に訴えた。

「出したくなるって、お前それは…」

その時僕は部屋中に京子が吐き出したと思える精液の跡が

無数についているコトに気づいた。

「そんな…」

唖然としている僕をよそに京子は喘ぎ声を上げてペニスを扱き続ける。

そして、

「あっあぁ

 ダメッ
 
 出るぅ!!」

彼女の絶叫と供に

プシュッ!!

黒光りしているペニスの先から白濁した精液が勢いよく吹き出すと、

ピッピッ!!

その一部が僕の頬にかかった。

「京子…お前…」

それを拭いながら僕はそう呟くと、

「あ・あ・あっ」

射精後の余韻に浸る京子の身体が

ムリッムリッ

と蠢き出すと、

ムクムクムク!!

彼女の体中の筋肉が盛り上がり始めた。

「あぁぁ…

 いやっ、
 
 止めて!!」

身体の変化に余韻から覚めた京子が悲鳴を上げる、

しかし、彼女の身体の筋肉は更に盛り上げると、

京子の姿をさらに逞しい裸族の姿へと変えていった。



それからしばらくして…

僕は京子と結婚した。

無論、彼女の身体が元に戻たわけでもない、

それよりも、京子の姿は一層裸族にふさわしい身体へと変化した。

もぅ、彼女は服を着ることもなく、

また僕と同じ食べ物を食べることもなくなった。

「ねぇ……健二……本当にいいの?……」

と二人だけの結婚式の後、そう京子が聞いてくると、

「あぁ、構わないさ…」

そう答える僕は

いつの間にか裸族となった京子の姿に欲情するようになっていたのだった。



おわり