風祭文庫・モランの館






「アボクの夢」


作・風祭玲

Vol.067





キーンコーン

試験の終了を告げるチャイムの音が校舎内に響き渡ると、

「ふぅぅぅ〜っ」

「あぁ終わった終わった……」

安堵の声とため息が教室中のあちらこちらから響き渡った。

「では答案用紙を後ろから集めるように…」

監督をしていた教師の指示であたしは後ろから回ってきた答案用紙の束の上に

自分の答案を重ねると前へと送り出した。

するとそれを待っていたかのようにして、

「陽子っ」

ポン!!

と肩を叩たきながら親友の美和子と早苗があたしに声をかけると、

傍に駆け寄ってきた、そして、

「ねぇ、いまの現国…どぅだった?」

と試験の成果を尋ねてきた。

「うん、まぁまぁかなぁ…」

ちょっぴり笑みをこぼしながらあたしはそう返事をすると、

「うわぁぁ、自信があるんだ」

「ホント…あたしなんて…」

と言いながら二人は顔を見合わせるとガックリと頭を垂れた。

「えへへ…」

あたしは頭をかきながら作り笑いをしていると、

「おぉぃ、三枝っ」

「え?」

突然かけられた声に思わず振り向いた。

すると、あたしの後ろからクラスメイトの日輪智貴君が手を挙げながら、

あたしに近づいてきた。

「日輪君っ」

あたしはそう言いながらちょっと驚くと、

「明日はヒマ?」

と彼は聞いてきた。

「え?

 えぇ、まぁ…」

あたしは顔を真っ赤にするとそう言いながら頷くと、

「そうか、じゃぁ、明日十時、中央公園で待ち合わせしない?」

日輪君の表情が一瞬パッと明るくなるとあたしに向かってそう告げた。

「はいっ」

あたしは反射的に答える。

「実はこの間面白い店を見つけたんだ…」

と彼は鼻の頭を掻きながら言うと、

「うわぁぁぁ、熱いねぇ〜っ」

早速、早苗達が茶々を入れる。

「あっ、でも…」

あたしは何かを思い出した様に声をあげると、

「どうしたの?」

とみんなが聞いてきた。

「…うっうん実は明日…狩りに行かなくっちゃいけないの」

とあたしが答えると、

「狩り?」

日輪君と早苗達がそう言いながら怪訝そうな顔であたしを見た。

「うん、ヤリンバと…」

とあたしが言いかけたところで、

ドクン…!!!

あたしの身体が大きく波を打った。

「え?」

あたしは一瞬それに驚くと、

ニューーーゥ…

あたしの鼻から頬に向けて白い角のようなモノが伸び始めた。

「あっ」

それに驚いたあたしが両手で鼻と口を隠したが、

しかし、

グンッ!!

すぐにあたしの身体が変化し始めた。

ググググググ……

見る見る大きくなっていく身体。

ミシミシ…

バリバリバリ…

その身体の変化についていけず無惨に引き裂けていくセーラー服。

ビシッ!!

ムリムリムリ…

突如体中の筋が張ると筋肉が発達し、

黒く染まっていく肌に、

オチンチンが成長していく股間、

そして、あたしの変化を唖然としてみるクラスメイト達…

「三枝…キミは…」

あたしの姿を呆然と見ながら日輪君が声を出すと、

あたしは窓に映った自分の姿を見て驚きの声を上げた。

黒く逞しい裸体に、

極彩色の羽の冠を被り、

そして身につけているのは股間のゴザガと呼ぶペニスケースのみと言う、

そうあたしの姿はまさに裸族の勇者の姿になっていた。

ズザザザザ…

あたしの周囲から一斉に人が居なくなると、

「ひっ日輪くん…

 あっあたし…は…陽子なんて女の子じゃなくて

 裸族の勇者・アボクなのぉ
 
 お願い見て、あたしの射精を!!」

と叫びながら、

ゴザガを外すと、

シュッシュッ!!

あたしは勃起している棍棒のようなペニスを扱きはじめた。

そして、

「あっあぁ…

 出るぅ!!」

と声を上げながら、

ピュッ!!

クラスメイトが見ている前であたしは白濁した精液を吹き上げた。

「はぁぁぁ…出しちゃった…

 あたしついにみんなの前で出しちゃった」

ひとりぼっちになったあたしがそう呟いていると、

アボクッ!!」

と呼ぶ男の声があたしの耳元で叫んだ。

ハッ

とあたしは目を開けると、

視野いっぱいに皺が刻まれた厳しい表情の男の顔が迫り、

そして、口が開くと、

「ウプクマガリ」

とう言葉を喋った。

あたしは反射的に、

「ウプクマガリ」

と返事をすると彼の表情はゆるみ、

「…いつまで寝て居るんだ。

 さぁ狩りの支度をしろ」

とあたしに言うと彼はあたしの視界から消えていった。

「あれは…夢?」

思わず周囲を見ると、

あたしは粗末な小屋の土間に敷き詰めた葉の上に寝ていた。

「…そうか、夢だったのか…」

あたしはホッとすると同時に、

ゾク…

と言う悪寒が身体を突き抜けていった。

「…寒っ…」

寝ている間にあたしの身体はすっかり冷えてしまっていた。

あたしはその場に縮こまったが、

しばらくして囲炉裏の傍へと這いずるようにして移動して行く、

そして、手探りで薪と芋を取ると、

微かに赤い色が灯っている囲炉裏へと放り込んだ。

やがてパチパチと音とともに、

赤々とした炎が燃え上がると、

炎はあたしの身体と小屋の中を照らし始める。

そして炎に照らし出されたあたしの身体には衣服と言うモノは股間に聳える

ペニスケース・ゴザガ以外は何もなかった。

程なくして身体が暖まってくると、

あたしは小屋の中を見渡した。

炎に照らし出された小屋の中には、

あたしと同じようにゴザガを股間につけただけの

裸の男達が静かに寝息を立てていた。


あたしは暖をとりながら燃え盛る火をしばらく眺めていた。

やがて、起き始めた男達が一人、また一人とあたしの前を通り、

そして、小屋の外へと出て行った。

アチチ…

焼き上がった芋ですばやく朝食を取ると、

あたしも男達に続いて表に出た。


昇ったばかりの朝日があたしの身体を照らしだす。

鈍く光る黒い肌に包まれ、

筋肉が逞しく盛り上がった筋骨逞しい男の身体があたしの視界に入る。

「………」

あたしはしばらくの間黙って自分の身体を眺めていた。

そして、両手をそっと這わせると身につけている唯一の服と呼べる

股間のゴザガにそっと触ってみた。

コツン!!

固い殻のような感触が手に伝わってくる。

「あっ」

思わずあたしの口から声が漏れた。

そして、

ビン!!

そのペニスケースの中であたしのモノが固くなっていることに気づくと、

あたしはその場にしゃがみ込み、

そっとゴザガを上にずらしていった。

すると中から黒光りした肉の棒であるペニスが

剥けきった姿で飛び出してきた。

「これが…あたしのオチンチン…」

あたしはじっと自分のペニスを眺めていると、

その根本にそっと両手を合わせると、

シュッ!!

っと扱いた。

ゾクゥゥゥゥゥ

言いようもない快感があたしの背筋を駆け抜けていった。

「あぁ…」

あたしは顎を上げながら

シュッシュッ

っと扱き始めた。

「あぁ…あたし…

 男の子のオナニーをしているの…

 あぁ…こんな裸の姿で…」

そう思いながらあたしはペニスを扱き続けた。

そして…

「あっあっあっ

 出る
 
 出る
 
 出るぅぅぅぅ」

っと譫言のようにして言うと、

大きく勃起したペニスの中を何かが駆け抜けていった。

「アボクっ、何をしているんだ…」

と言う声があたしの頭の上がら降ってきたとき、

あたしは最後の一滴を絞り出しているときだった。

突然響いた声に

「きゃっ!!」

と驚くと、

さっきあたしを起こした男が体中に土を塗り込んだ姿で立っていた。

「あっ…えっと

 ヤリンバ、ごめん、スグに支度するから」

あたしはそう言うと未だ朝靄が立ちこめる集落の中を走っていった。

「おいっ、ゴザガをちゃんとしろ」

ヤリンバの声があたしの背後から追いかけてくる。

「あっ」

彼の指摘でゴザガが外れれたまま飛び出していることに気づいたあたしは、

大急ぎでペニスをゴザガの中に押し込んだ。

途中で、同じ裸の姿をした村人達に出会う。

もぅココに来てから大分経つが、

未だ村人達と出会うとあたしの視線は思わず違う所を見てしまう。

そして村人とすれ違う度に、

「ウプクマガリ」

と声をかけ、あたしは村で唯一の水飲み場へと歩いていった、

バシャッ!!

水飲み場に着くと、一口水を掬って飲み込むと、

冷たい水の塊が喉から胃へと下っていった。

「ふぅ…」

ひと呼吸すると、

その下の方にある泥だまりで体中に泥を塗り、

そして指先で模様を描く、

ヤリンバから教わったモノだが、

魔除けの意味があるらしい…

描き終わると水面に自分の顔を映しながら

持ってきた動物の骨を鼻に通す。

顔に白い髭が生えたような様子に

「これも、鼻ピアスっていうのかなぁ…」

と呟いていると、


「お〜ぃ」

とヤリンバが催促の声を上げていた。

あたしは急いで鳥の羽で頭を飾るとヤインバの元へと駆け出していった。


「すっかり日があがっちまった…急ぐぞ」

ヤリンバはそう言いながら、

スタスタ

と集落の外へと歩き出していた。

「あっ待って…」

あたしは小屋から狩りに使う弓矢を持ち出すと、

急いでヤリンバの後を追っていった。


ヤリンバの後を追いながら、

ふと

「あたしがココに来てもぅどれくらい経ったんだろう?

 美和ちゃんや早苗ちゃん、

 そして日輪くん、

 みんな元気にしているかなぁ…

 あのとき、あたしがモニ族の人形を壊さなければ…」

っとあのとき日輪くんに連れて行ってもらったお店で飾られていた

裸族の人形を壊してしまったことを後悔していた。


うっかり触れてしまった人形がゆっくりと床で砕け散った瞬間、

あたしは人形から生じた光に包まれた。

そして光の中であたしの股間に黒いペニスが生え、

そしてセーラー服姿の女の子から、

ペニスケース姿の逞しい裸族の勇者へと姿を変えられると、

この裸族の集落に連れられて来た。

それ以来あたしは裸族の勇者”アボク”としての生活を始めたのだが、

最近ふと思うことがある。

それは、以前の女の子だったあたしは

実はこの裸族・アボクがみていた夢の中の姿だったんじゃないかって…



おわり