風祭文庫・モラン変身の館






「オレンルガイの槍」
(第2話:あたしの戦い)


作・風祭玲

Vol.805





こう着状態は半日近く続いていた。

自分の傷の手当てをしていたシンバはそれが終わったのか、

洞窟の前にやってくると、

ジッとその場に座り、

こっちを見ている。

あたしたちが出てくるのを待っているのか、

潜り込んでくる様子は無い。

そんなシンバの様子にあたしはホッとしつつも

持ってきたバッグから包帯と傷薬を取り出すと、

オレンルガイに応急処置をするが、

それはあくまで気休め程度に過ぎなかった。

ギュッ!

『ウグッ!』

『ごめんなさい、

 あたしのせいで』

入り口から入ってくる日の光を頼りに、

包帯を縛りなおしたあたしはオレンルガイにむかって謝る。

『はぁはぁ

 はぁはぁ

 シッシンバは?』

相変わらず苦しそうに息をしながら

オレンルガイはあたしにシンバについて尋ねると、

『向こうも深手を負ったはずだけど、

 でも、この洞窟の入り口の前に座って

 じっとこっちを睨みつけているわ』

とあたしは状況を説明する。

『そうか…

 俺達を食い殺すまで奴は死なない』

説明を聞いた彼はそう呟くと、

『死なないって、

 そんなこと…』

あたしは驚くが、

『それがシンバという奴だ』

なぜかオレンルガイは自信満々そうにニヤリと笑った。

『こんなときによく笑えるわね』

笑って見せる彼の様子にあたしは呆れると、

急にまじめな顔になり、

『いいか、よく聞け、

 僕は間もなく死ぬ。

 そして、アケミ。

 君一人がここに残されることになる。

 この意味は判るか?』

とオレンルガイは初めてあたしの名前を呼んで尋ねた。

『やめて、

 そんなことは言わないでよ』

すかさずあたしはその言葉を否定するが、

『よく聞いてくれ、

 君一人ではたとえ手負いになっているとは言え、

 シンバを倒すことは出来ない。

 ただし一つだけ、

 助かる方法がある』

オレンルガイはあたしに告げた。

『助かる?』

その言葉にあたしは思わず聞き返すと、

『僕の全てを君にあげる。

 君は僕になるんだ。

 そうすればシンバと戦うことが出来る』

と彼は言う。

『あたしがオレンルガイになるって…

 それってどういうこと?』

思いがけない言葉にあたしは驚くと、

『秘術があるのさ、

 マサイの…

 モランの…全てを受けつぐ秘術が…

 それを君に施す…

 君は僕の全てを受け継いで…

 シンバを倒す』

グッ

あたしの手を掴んでオレンルガイはそう力説した。

『そんなことを言われても…』

下手をしたらあたしがあたしで無くなってしまうかも知れないその提案に

あたしは躊躇すると、

『グゥゥっ!!』

オレンルガイは辛そうな顔をした。

彼の命は間もなく尽きようとしている。

もしこのままオレンルガイが絶命してしまえば、

あたしは一人でシンバと戦うことになり、

そして、満足に抵抗できずに食い殺される…

もはや迷っている時間は無いのは明白だった。

シンバに睨まれたその時からあたしには選択の余地など最初から無かったのだ。



『わっわかったわよっ

 受け継いであげるわよ、

 オレンルガイの全てを…』

覚悟を決めたあたしはそう返事をすると、

『そうか、

 すまない』

彼はあたしに謝った。

『なっ何で謝るのよっ、

 こうなったのもあたしの責任なんだから』

そんなオレンルガイにあたしは小声で言い、

『で、どうすればいいの?』

とその方法を尋ねた。

すると、

『僕の胸を飾っているモランの飾りに中に大きな赤い玉があるだろう、

 飾りを切ってその玉を取ってくれ、

 この玉は僕がモランとなった時、

 長から授かり常に僕とともに歩んできた』

とあたしに言う。

『わかったわ、

 これね』

彼の言うとおりにあたしは彼の胸元にある飾りの中から

もっとも彼の肌に密着している飾りを引っ張り、

そして、飾りを形作っている紐を切った。

すると、

バラバラバラ!!

ビーズの玉が一斉に弾けとび、

コロン…

あたしの手元にビー球を大きくしたようなトンボ球が転がり落ちてきた。

『これをどうするの?』

トンボ球を掲げながらあたしは尋ねると、

オレンルガイはあたしを見つめながら、

『…それを…

 君のお尻に穴に入れるんだ』

とあたしに言う。

『えぇ!

 おっおっおっお尻にぃ!!!!

 エッチ!

 変態!!

 なっ何を考えているのっ

 バカじゃないっ!』

それを聞いたあたしはあらん限りの言葉で彼を怒鳴り散らすが、

だけど、オレンルガイはジッと目を閉じて反論はしてこなかった。

『……これを本当にしないとだめなの?』

そんな彼の姿を見てあたしは恐る恐る尋ねると、

コクリ…

オレンルガイは無言で頷く。

『そう…』

そのときになってようやくあたしは諦めることを知り、

彼に背を向けてズボンを下げると、

ンッ!

ピタッ

生まれてから排泄しか知らない肛門にトンボ球を当て、

グイッ

と押し込んだ。

すると、

グリンッ!

あたしの肛門はトンボ球を難なく飲み込み、

グチュッゥ…

トンボ球はあたしの中をゆっくりと上りはじめた。

「んあっ、

 あぁぁんっ、

 球が…

 球があたしの中を上ってくるぅ」

まるで意思があるかのように動いていく球の動きに

あたしは思わず声を上げてしまう。

そして、

『着ている物を全部脱いで、

 ぼっ僕の…

 イリガをそこに入れて…』

と彼は懇願すると、

シュッシュッ

シュッシュッ

股間から伸びるオチンチンを扱き始めた。

『いっ、

 それってあたしにアナルセックスをしろと…』

顔を引きつらせながらあたしは返事をすると、

『早く…』

オレンルガイは苦しそうに身を反らせながらオチンチンを扱き続ける。

『わっ判ったわよ』

そんな彼の姿にあたしは着ていたシャツなどを脱ぎ、

そして、その上を跨ぐと、

瀕死の重傷のはずなのに健康体であるかのようにいきり立っている彼のオチンチンを手に取り

さっきトンボ球を飲み込んだばかりの肛門に当てると腰を沈め始めた。

ニュクッ!

オレンルガイの亀頭があたしの肛門を押し開け、

ニュルニュルニュル…

硬く締まったオチンチンがあたしの中に入ってきた。

「あはんっ

 そんな、

 初めてなのに…

 こんなに感じるものなの?」

初めての男性とのセックス。

しかも、挿入されているのは肛門というアブノーマルなセックスにも関わらず、

あたしの身体は次第に燃え上がり、

体中が熱くなり始めた。

「あはっ

 はぁはぁ

 はぁはぁ、

 なに、この燃え上がるような感じって…

 あぁ、熱いっ

 熱いよぉ!」

無意識に腰を動かして、

あたしはオレンルガイの上で喘ぎ踊る。

そして、腰を落とすごとに彼のオチンチンは硬く伸び、

まるであたしを串刺しにするかのように攻め立てた。

グチャッ

グチャッ

グチャッ

洞窟内に淫らな音が響き渡り、

そして、その音をあたしはひたすら響かせていた。

メリメリメリ!

ゴキゴキ!

あたしの身体の至る所から、

骨がきしむ音と、

筋肉が張り詰める音が響き、

グニィッ!

秘所から何かが突き出してきた。

『あはん、

 あぁん

 あぁん

 気持ちいいよぉ、

 身体が焼けるよぉ、

 あぁ、なんだか…

 あたしの奥に野生が…

 あぁ野生が芽生えていくぅ」

グニッ

グニグニ

徐々に身体が変わっていくのを感じながら、

あたしはひたすら腰を動かしていると、

『うっうぅぅぅぅぅ!!!』

あたしの下のオレンルガイが突然唸り声を上げ、

程なくして、

『うぉぉぉぉぉっ!!!』

大きく声を張り上げ始めた。

それと同時に

ドクン!

あたしの肛門に挿入されている彼のオチンチンから強い力が流れ込み始めてきた。

『んんっ

 んぁぁぁぁぁ…

 ウグッ!

 うぉぉぉぉぉぉっ!!』

それを感じながら、

いや、その力に突き動かされて

あたしもまた同じように声を張り上げたとき、

ドクン!!!!

『!!!っ』

マサイの力が一気に流れ込んできた。

そして、その次の瞬間、

あたしの身体は一気に弾けとび、

グググググ!!!

メリメリメリ!!

『あんっ

 身体が、

 あたしの身体が…

 変わって行っちゃうぅっ!』

あたしの身体は一気に変わって行った。




『あぁぁぁぁ…

 ハァハァ

 ハァハァ』

変身が一段落したのだろうか、

身体の変化が落ち着いて来たとき、

あたしは身体の動きを止めると下に居るオレンルガイを見た。

だが、

あたしの下に居るはずの彼の姿はどこにも無く、

ただ、彼がつけていたアクセサリーと血染めの包帯、

そして朱染めのシュカが置かれているだけだった。

『オレンルガイ…』

男の声色であたしは彼の名前を呼ぶが、

その声に返事をする者はこの場には居なかった。

『オレンルガイ?

 オレンルガイ?

 どこに行ったの?

 ねぇ返事をしてよぉ!』

姿を消した彼を探しながらあたしは声をあげるが、

だが、あたしの声は洞窟の中に響くだけで、

『消えた?

 オレンルガイが消えた?

 そんなぁ!』

彼の存在そのものをかき消してしまったことに

あたしは驚き、

その場に泣き伏せてしまうが、

ブラン…

あたしの股間に何がが揺れる感触が走ると、

『うっ』

あたしは顔を覆っていた手を動かし、

恐る恐る股間に伸ばしてみた。

すると、

あたしの股間からは太くて長く、

そして、先端に肉の塊を頂いている肉の棒が伸びていることに気付いた。

『…これって…

 おっオチンチン…

 男の人のオチンチンだ…

 あたし、

 男の人になってしまったんだ』

股間から伸びるオチンチンを

ギュッ!

と握り締めながらあたしはそう呟くと、

ゆっくりと起き上がり、

入り口から差し込む明かりに自分の身体を照らすと、

改めて自分の身体を見る。

漆黒の肌。

盛り上がる胸板。

力瘤を作る腕。

細かく縮れている髪の毛と、

股間から伸びるオチンチン…

『あたし…

 オレンルガイになってしまったの?』

黒い肌が覆う自分の腕を掲げながら、

あたしはそう呟くと股間に手を入れる。

そして、

真っ黒なオチンチンを改めて握り締めると、

シュッシュッ

シュッシュッ

オチンチンを扱き始めた。

ビクッ

ビクビク!

『あはっ、

 なにこれ?

 気持ちいい…』

初めて感じるオチンチンを扱く感覚にあたしはたちまち虜になり、

硬さを取り戻し長さを伸ばしてきたオチンチンを扱き続けた。

シュッシュッ

シュッシュッ

『あんっ

 んっ

 んんんっ!

 もっと

 あぁ、いいよぉ

 いいよぉ

 あははは…

 気持ちいいよぉ』

洞窟の入り口の向こうにはシンバが

ジッとあたしを待っているにも関わらず、

あたしは黒い肌を輝かせながら男のオナニーに夢中になっていく、

そして、

『あっあぁぁ…

 奥から、

 身体の奥から何かがこみ上げてきたぁ…』

ジワリジワリと身体の奥から股間へ

そしてオチンチンへと盛り上がってきたパワーを感じながら、

あたしはさらにオチンチンを扱くと、

ビクンッ!

頭の中で何かが弾けとび、

それと同時に、

ビュッ!

シュシュシュッ!

あたしの目の前を勢いよく何かが飛んでいった。

『くはぁ

 はぁはぁはぁ』

身体の奥から迸ってくるそれを見送った後、

あたしはガックリと項垂れると、

”勇者の証だよ”

と声が頭に響いた。

『え?』

その声にあたしは顔を上げると、

”君は立派なマサイの勇者だ。

 さぁ、すべきことを…”

と声は告げる。

『すべきこと…

 あたしがすべきことは…

 シンバを倒す』

その声に促されてあたしは拳を握り締めると、

オレンルガイが残したシュカを身に纏い、

シンバの毛のアクセサリーを首に重ねた。

『じゃぁ、行こうか。

 オレンルガイ…』

黒い肌をさすりながらあたしはそう囁くと、

カシッ!

槍を手に取り立ち上がる。

もぅ迷っては居られない。

もぅ逃げては居られない。

オレンルガイより男の肉体を

鍛え上げたモランの肉体を授かったあたしは覚悟を決めると、

シンバが待つ表へと向かい、

飛び出して行く。

ンガオォォォン!

威嚇だろうか、

槍を手に洞窟からとび出してきたあたしに向かってシンバは吠え掛かるが、

『んんんんっ、

 怖くないっ!』

あたしは涙目になりながらもその場に踏み留まると、

カッ!

迫るシンバに向かって

『てめぇ!

 ネコの分際でデカイツラをするんじゃねぇ!』

と声を張り上げ怒鳴り返した。

そして、

『あんたのやってきたことをとくと見せてもらったわよっ、

 さぁ、どこからでも掛かってきなさい!!!』

槍を構えながらあたしはそう言うと、

タタッ!

シンバに向かって走り始めた。

大丈夫っ

負けない。

なぜならあたしはマサイの戦士・オレンルガイなんだから!



シンバに向かって走り、

そして、ある距離に来たのと同時に、

『でぇぇぇぃ!』

渾身の力を振り絞ってシンバに向かって槍を放つと、

その槍は一直線にシンバの眉間めがけて突き進んでいく、

ガシッ!!

ゴワァァォン!!!

眉間に槍を突き立ててシンバは絶叫を上げるが、

だが、シンバは倒れなかった。

眉間から血を吹き上げつつも、

シンバはあたしをにらみ付けると、

なおも飛び掛って来た。

まさに執念の塊である。

『そこまでして…』

シンバが見せる執念にあたしは飲み込まれそうになるが、

”何をしているっ、

 槍を拾え”

一瞬、オレンルガイの声があたしの脳裏に響くと、

カラン

あたしの足元で噛み跡も痛々しい一本の槍が転がていく。

『これは、

 オレンルガイの槍…』

それを見たあたしは素早く足で槍を拾い上げると、

手に持ち替えた。

そして、

爪を立たせ牙を剥きだしにして飛び掛ってきたシンバの懐に飛び込むと、

声にならない声を張り上げながら、

開かれた口の中に槍を押し込んだ。

ズゴッ!

何かが切れ破れる音が響き、

シンバの頭の向こうから槍が突き出すと、

ゴバッ!

シンバの口から鮮血が噴出し、

あたしを頭から真っ赤に染めあげていく、

そして、シンバの身体から次第に力が消え、

ズシン!

崩れるようにしてあたしの横に倒れ落ちると、

あたしは血を滴らせせながらその場に座り込んでいた。

終わった。

全てが終わった。

黒と赤が織り成す自分の手をあたしは見つめ、

そして、顔を上げると、

『ふふふ…

 ははははは…

 あはははは…』

日が暮れようとする岩場にあたしの笑い声が響き渡り、

そして、あたしは立ち上がると、

大声で笑い続けていたのであった。



『よしっ、

 これでいいかな…』

翌日、

あたしは剥ぎ取ったシンバの巨大な顔と、

尻尾を背中に括り、

闘いを収めたビデオと共に岩場を後にする。

戦いが終わってもあたしは元の姿に戻ることはなく、

マサイの戦士・モランの姿のままだった。

いま思えば元に戻る方法を確認してから

変身をすれば良かったのだけど、

いまとなっては”後の祭り”である。

『どうしよう…

 このままモランとして生きていくことになるのかなぁ』

相変わらずの黒い肌に

シンバの血をたっぷりと吸った飾りを輝かせながら、

あたしはサバンナを歩いていく、

本当に戻れなかった場合。

あたしは八幡明美ではなく、

一人のマサイ、

一人のモランとしてこのサバンナを生きていかなくてはならない。

『はぁ…』

厚く膨らんだ唇が微かに開き、

ため息がもれる。

ハッキリ言って自信が無い。

確かにシンバはこの手で倒した。

それだけでもマサイの世界では立派な勇者・モランとして

認めら称えられることはオレンルガイから聞いた。

でも…

でもである。

あたしはマサイとして生まれ育ってきたわけではない。

もし、マサイとして生まれてきたのなら、

まさに大手柄、

胸を張って村に帰ることが出来る。

でも、いまのわたしには帰るべき村が無い。

戻るべきところが無いのである。

糸が切れた凧のようにあたしはサバンナを歩き、

自然とあの荒廃したマサイ村へと足が向けていた。

わたしが帰るところはそこだけなのだから、



モランの身体になって気付かされたのがいくつかある。

立ってするオシッコはもちろん、

オレンルガイが残してくれたマサイミルクを美味しいと感じる

特に味覚の変化にはあたしは大いに驚かされた。

こうして快適とは言えないものの

サバンナの旅はスムーズに進み、

数日を経ずしてシンバとオレンルガイに出合った。

あのマサイ村にたどり着いたのであった。

『ここしか帰るところは無いか…』

相変わらず荒廃している村のたたずまいを見ながら

あたしはそう思いながら村の中に踏み入れると、

『あれ?

 誰か居る…』

無人と思っていた村から人の気配を感じた。

『誰が居るのかな?』

あたしは用心しながら歩いていくと、

『オレンルガイ!』

の叫び声と共にシュカを身に纏った坊主頭の女性が

土壁の向こうから飛び出してきた。

『え?

 え?

 おっ女の人?』

突然姿を見せたマサイの女性にあたしは困惑していると、

『!!っ

 あなた、オレンルガイじゃない…』

あたしの顔をじっと見詰めた女性はそう言い、

そして、

『オレンルガイはどうしたの?』

と問いただしてきた。

『え?

 えっと、

 なんて言ったいいのか』

彼女の質問にあたしはどう説明をしていいのか

困惑しながら頭を掻いていると、

『ご苦労だったな』

の声と共に今度はシュカを身にまとった老人が姿を見せた。

『あなたは?』

老人に向かってあたしは尋ねると、

『ふむ、

 わたしを知らぬとは…

 やはり、お前は異郷の者か』

あたしを見つめながら老人はそう言う。

『え?

 えぇまぁ…』

あたしの正体を見抜いた老人の言葉に意味の無い返事をすると、

『キンサっ

 よく聞け、

 オレンルガイはシンバとの闘いに深手を負い、

 同行していたこの者に自分の全てを託しのだ』

と老人は女性に告げた。

それを聞いた途端、

『そんなぁ』

彼女の顔は見る見る泣き顔になっていくと、

その場に座り込み泣き出してしまった。

『しっ知っていたのですか?』

それを聞いたあたしは聞き返すと、

『うむ…

 数日前、オレンルガイがわたしの所に姿を見せ、

 シンバを倒したこと、

 そのときに深い傷を負ったこと、

 そして、異郷の者に全てを託したことを告げて、

 去っていった』

と老人は経緯を話す。

『そうですか』

それを聞かされたあたしは罪悪感を感じながら、

ことなげに返事をすると、

『さて、

 どうするつもりだ?』

と老人は尋ねてきた。

『え?』

その質問にあたしは聞き返すと、

『このまま、マサイとして生きるか、

 それともオレンルガイより託されたものを返して元に戻るか、

 どちらにするのか』

と老人はあたしに選択を迫った。

『返してって、

 元に戻れるのですか?』

それを聞いたあたしは思わず明るい表情で尋ねると、

『キンサっ

 お前はオレンルガイの魂を受け止める気はあるのか?』

と老人は女性に向かって強い口調で尋ねると、

『はいっ、

 あたし…

 オレンルガイの分まで頑張ります』

彼女は涙を拭いとそう返事をした。



『で?
 
 えぇ?

 なにが…

 どうして…』

シンバの頭が見下ろす小屋の中で、

全裸になって横になっているキンサを見下ろしながら

あたしは困惑をしていた。

『どうしたのですか?

 オレンルガイ…』

そんなあたしに向かってキンサは話しかけると、

『いやっ、

 これって、

 その、

 男と女の…

 その、営みというのでは』

見れば明らかなシチュエーションにあたしは声を震わせると、

『そうです。

 さぁ、あたしを抱いてください。

 そして、オレンルガイから授かったものをあたしに注いでください』

とキンサはあたしに言う。

『そっ

 そうなんですか、

 でも…』

それを聞いたあたしはなおも立ち往生をしていると、

『もぅ』

キンサは少しむくれながら起き上がると、

あたしの傍により、

そして、膝を落とすと、

ニギッ!

シュカの上から股間のオチンチンを握り締めた。

『いっ!』

キンサのその行為にあたしは驚くと、

『ふふっ、

 敏感なんですね、

 オレンルガイは…』

とキンサは笑い、

シュカの裾から手を潜り込ませると、

ギュッ!

あたしのオチンチンを掴み、

それを扱き始めた。

『あっ

 んっ』

女の子にオチンチンを扱いてもらう…

本来なら逆の立場ななずの行為に

あたしは身体を震わせると、

ムクムクムク!

見る見るあたしのオチンチンは膨れ、

そして硬くなりながら伸びていくと、

ブルンッ!

シュカの裾を持ち上げて表に飛び出してしまった。

『うわっ

 とっても元気なんですね!』

それを見たキンサはオーバーに驚くと、

チュッ!

剥け切ったあたしの亀頭に軽くキスをすると、

それをほお張った。

チュクッ

チュクチュク

『あんっ

 んんっ

 くはっ

 ハァハァ』

あたしのオチンチンを口に含んだキンサの頭が前後に動き、

そしてあわせてあたしは喘ぎ声を上げると、

その坊主頭に手を添える。

すると、キンサは口を離し、

お尻を床につけると、

股を大きく開いて見せ、

『さぁ、

 いらして下さい』

とあたしを誘った。

『ハァハァ

 ハァハァ』

痛いくらいにオチンチンを硬くし、

そして、胸を高鳴らせながらあたしはキンサを見下ろすと、

”この女性を犯したい”

という気持ちが胸の奥から湧き上がり、

そして、無言のまま膝を折ると、

一気に彼女を抱きしめる。

キンサの汗の匂いが一段とキツクなり、

その匂いに誘われるようにあたしは彼女の胸で揺れる乳房に吸い付いた。

女のあたしが…

女だったあたしが…

モランとして、

オレンルガイとして、

女の乳房に吸い付いている。

”なんでこんなことを…”

そんな思いも沸いてくるが、

だが既にあたしの理性は利かなくなっていた。

ただ、男として、

一匹の雄として、

雌の肉体を貪り食っている。

チュクっ

オチンチンの周りにヌメッとした肉が絡まって来た。

『あんっ』

耳にキンサの艶かしい声が聞こえ、

ギュッ!

とオチンチンを締め上げてきた。

もぅだめ、止まらない。

止められない。

まるで綱引きをするようにあたしは夢中になって腰を振り、

そして、精を溜め込んでいく。

ビリッ!

オチンチンの根元がしびれ、

我慢も限度に達してきた。

”出るっ”

身体に中に溜まる猛々しい気がオチンチンに集まり、

その時を待った。

”もうだめっ
 
 出させて、

 だめよ、

 我慢よ。

 出るぅ!

 だめっ!”

あたしの心の中で正反対の感情がせめぎ合い、

そして、掴みかかる。

チャッ

チャッ

チャッ

腰の動きにあわせて胸飾りや頭飾りが鳴り響き、

あたしはその時を迎えていく、

そして、

『あっ、

 出るっ』

一瞬、あたしの口からこの言葉が漏れた時、

ジュッ!

シュシュシュ!!!

ついにあたしはキンサの中に向けて

モランとしての精を思いっきり注ぎ込んでしまった。

そして、

『あぁぁぁ…

 吸い取られるぅ

 あぁぁ…』

あたしの中からオレンルガイによって与えられた全ての力が

キンサの中へと移動してゆくのを感じていると、

シュゥゥゥ…

黒い肌を持つモランの肉体が萎み始め、

胸板から乳房が姿を見せると、

腹筋が消えつるりとした肌になっていく、

さらに、手足も縮んでいくと、

バサッ!

縮れ毛は全て抜け落ち、

代わりに柔らかいストレートの髪が伸びてきた。

そして、

ズルズルズル!!!

キンサを犯していたオチンチンが急激に縮んでいくと、

股間に縦溝が復活し、

「あっ」

あたしは元の女性の姿に戻ってしまった。



『なんだ、女の人だったの?』

女性の戻ったあたしを見てキンサはガッカリした表情をするが、

『ふふっ、

 でも、オレンルガイの魂はこの中に…』

と満足げに言いながらキンサは自分のお腹をさすり始めた。

すると、

『元の姿に戻ったようだの』

そう言いながら老人は顔を出し、

あたしたちを見下ろした。

『あっ』

老人の登場にあたしは慌てて自分の胸と股間を隠すが、

『長っ、

 あたし、オレンルガイを身ごもりました!』

とキンサは嬉しそうに老人に向かって報告をしたのであった。



『そうですか、

 キンサだったのですね、

 オレンルガイが言っていた婚約者って』

元の姿に戻ったあたしは老人、

いや、このマサイ村の長から全ての事情を聞き、

夜空を焦がすように燃え盛る炎を見る。

『そうだ、

 お前に全てを託してオレンルガイは消えたが、

 キンサのお腹の中で新しい命としてよみがえることが出来る。

 全てはお前のお陰だ』

そんなあたしに長は喜びながら背中を叩いた。

こうして元の八幡明美の姿に戻ることができたあたしは

翌朝、長の手配で村から離れることが出来たのである。

『じゃなっ、

 ここでは色々辛い目に遭っただろうが、

 それをよき思い出としてくれ』

サファリカーの中にあるあたしに向かって長はそういうと、

『えぇ、

 長も、キンサもお元気で』

車中からあたしは二人に手を振る。

そしてクルマが動き出すと、

あの二人はあたしに背を向け村から離れていくのが見えた。

そして、長の背中にあのシンバの皮が

シッカリと担がれているのを見ると、

「ふふっ

 それはオレンルガイの獲物よ」

とあたしは小さく笑い、

二人の姿をカメラに収めた。

そんな時、

ハンドルを握るガイドが

「そういえば、

 この近くの谷にクルマが落ちましてね。

 そこで瀕死のガイドを拾ったのですよ、

 なんでも、シンバに追われたとか言ってましてね、

 さっきの爺さん、

 随分大きなライオンの皮を背負っていたけど、

 退治されたんですかねぇ」

とあたしに話しかけてきた。

”え?

 あのガイド、

 死んだんじゃなかったの?”

それを聞いたあたしは呆気に取られ、

少なからずもホッとすると、

「あの皮は勇敢なモランが仕留めたものですよ」

とあたしは返事をした。

そして数日後、

あたしはなんとか無事生きて成田に降り立つことができたのであった。



「ただいま帰ってきましたぁ

 はぁぁぁぁ!!

 やっぱり日本がいいですねぇ」

空港から一直線に雑誌社に向かったあたしは

新雑誌の編集部のドアを開けながら、

思いっきり声を張り上げるが、

「あれ?」

そんなあたしを迎えてくれたのは、

創刊号の準備で忙しいはずの編集室ではなく、

ガランとた室内であった。

「あれ?

 なに?

 どうしたの?」

人っ子一人、

いや、机の一つもそこには無い空間を見ながら、

「なにこれ?」

あたしは目をパチクリさせていると、

「あれ?

 須藤さんじゃないっ」

とあたしを呼ぶ声が響き渡った。

「え?

 あっ、

 あの、ここはどうなったのですか?」

その声に向かってあたしは無人の編集室を指差すと、

「あぁ…

 あの雑誌ねっ、

 廃止になったんだよ。

 なんでも編集長が経費を使い込んでいるのがバレてね、

 高飛びしたって話だよ、

 いやぁ、

 あんな顔で愛人が居ただなんて信じられないよぉ」

と声は言うと、

「元気を出して、

 そのうちいいこともあるからさっ」

と言い残して去っていく。

「そんあぁ…

 あたしの取材費用は、

 あたしの苦労は…」

目の前が真っ暗になっていく絶望感を感じながら

あたしはその場にガックリと項垂れてしまった。



それから数ヵ月後、

「はぁ…

 やんなっちゃうっ」

新雑誌の仕事を棒に振ったあたしは、

サバンナの取材に使った資金を穴埋めするために

連日に渡って仕事をこなしていた。

そして、疲れた身体を鞭打って自分の部屋に戻ると、

自分のベッドの上にゴロンと横になる。

「はぁ…

 疲れたぁ」

ベッドの上であたしはそう呟くと、

窓の外で煌々と輝く満月を見詰め、

「はぁ、

 こんなことならサバンナに居たほうが良かったなかなぁ…

 あのサバンナでマサイとして生きていく、

 裸同然の姿でね…」

とモランとして生きていたサバンナのことを思い出しながら、

あのときのことを思い出すと、

「あっそうだ!」

あたしはあることに気付き

押入れを開けた。

そして、一台のビデオカメラを見つけ出して取り出すと、

そのビデオ端子をTVにつなぎスイッチを入れる。

すると、

TVの画面にはあのサバンナの景色が映し出され、

雄大な風景があたしの目の前に広がった。

「ここに行っていたんだよねぇ」

TVの画面を見ながらあたしは感傷にふけるが、

だが、あのマサイ村のところから画面に緊張が走り、

そして、その頃から画面は途切れ途切れになっていく

無論、その裏ではシンバとの遭遇や、

オレンルガイとの出会いがあるのだが、

「そうだ今日の写真を吸い出さなくっちゃ」

今日の仕事で使ったデジイチで撮影した画像の事を思い出すと、

あたしはパソコンのスイッチを入れた。

そして、吸い出した画像の処理作業を始めたとき、

ビデオはあのシンバとの対決画面を映し出していた。

「あっ」

その画面にあたしの手がふと止まり、

画面の中の二人に注目が行く、

「…シンバってあんなに大きかったんだ」

シンバと対峙しながら槍を構える二人をみながらあたしはそう思うと、

トクン

胸の奥で鼓動が高鳴ってきた。

そして場面はあたしが傷ついたオレンルガイを運び出したところで止まった。

だが、

「あはんっ」

クチュッ!

ついあたしはあの洞窟の中での出来事を思い出してしまうと、

指を股間に入れ、

喘ぎ声を上げていた。

”止まらない…”

”指が止まらない…”

”なんで、”

”前はこんなこと無かったのに…”

一人エッチだなんてしたことが無かったあたしが、

いまそれをしている。

サバンナでのあの体験があたしを目覚めさせてしまったのか、

クチュッ

クチュクチュ

あたしは一心不乱に自分の”豆”と、

その下の縦溝を攻め続ける。

そして、

「あぁんっ

 いくぅぅ!」

ついに絶頂に達してしまうと、

ビシャァァ!

不覚にも下着とズボンを汚してしまった。

「あちゃぁ…

 あたし何をしているんだろう」

上気した肌を晒しながら

あたしはズボンを汚してしまったことを後悔すると、

そのままシャワールームへと飛び込み、

熱いシャワーを頭から浴びた。

そして、身体を拭きながら戻ったとき、

「え?」

部屋の床に一本の槍が突き刺さっているのが目に入った。

「これって…

 オレンルガイの槍…」

まさしく目の前にある槍はサバンナであたしが使い、

あのマサイ村で長に手渡したはずものだが、

なぜ、それがここにあることに驚くと、

バサッ!

今度はマサイのシュカが上から降ってきた。

「ちょっとぉ、

 どうなっているの?」

強烈な臭いを放つ

シンバの血を吸い込んだシュカを手に取りあたしは叫ぶと、

ズグンッ!

あたしのお腹の中で何かが蠢いた。

そして、

”また、あのサバンナに戻るかい?”

と言う声があたしの頭に響いた。

「え?

 え?

 なんで?

 どうして”

突然響いた声にあたしは困惑すると、

”僕の術はまだ解けないよ”

とオレンルガイの声が追って響いた。

「オレンルガイっ

 それってどういうこと?」

その声にあたしは聞き返すと、

”忘れたのか?

 君の身体に中にはトンボ球がまだあるんだよ。

 キンサと寝たときにトンボ球を返すべきだったのに、

 君はそれを持ったままだった。

 だから、

 こうすることも出来るんだよ”

オレンルガイの声があたしにそう告げると、

ドクン!

「うぐっ!」

あたしの心臓は大きく鼓動を始め、

ジワッ…

白い肌がまるで墨汁をたらしたように黒く染まり始めた。

そして、

メリメリメリ!!!

筋肉が盛り上がり、

ギシッ!

同時に骨太になっていくと、

あたしの身体は大きくなっていく、

さらに、

ピクッ!

ズルズルズルッ!

股間から真っ黒なオチンチンが聳え立っていくと、

『うごわっ!』

あたしはうめき声を上げながらモランへと変身をしてしまった。

「そんなぁ…」

漆黒の肌を見ながらあたしは愕然とすると、

”さぁ、

 槍を持て、

 シュカを巻け、

 お前はシンバを打ち倒した勇者だ”

と声はあたしをけしかけてきた。

”なんで…また…”

その声にそう答えるながらも、

あたしは槍を握った。

なぜならあたしはマサイの戦士・オレンルガイなのだから…



つづく