風祭文庫・モラン変身の館






「キス」


作・風祭玲

Vol.1099





『…今日も暑くなりますので、

 熱中症には十分お気を付けください…』

ラジオの天気予報から高温注意情報が流れると、

ギラッ

まだ朝にも拘らず太陽の光はしっかりと熱を帯びていた。

”みーんみんみん…”

日が高くなるにつれ

あれほどまで鳴きまくっていた蝉の声が

次第に聞こえなくなってくると、

ほぼ真上からの日差しの中。

校庭に設けられたのトラックを一人の少女が黙々と走り続けていた。

少女の名前は今野麻衣。

高校2年の夏を迎えていたところだった。

「おーいっ、

 今野っ、

 上がれというのが判らないのか?」

トラック内の気温は既に40℃を越え、

練習をしていた陸上部のメンバーはみな日陰へと避難していた。

にもかかわらず麻衣は何食わぬ顔でトラックを走り続けている。

そんな彼女に向かってシビレを切らした顧問が声を上げるが、

「私は大丈夫でーす」

の返事と共に麻衣は走り続ける。

「大丈夫なわけないだろう。

 上がれと言っているんだ。

 俺の言うことが聞けないのか」

意に介さない彼女の返事に顧問はキレかかりそうになるが、

「先生、

 あいつの体は特別製ですから大丈夫ですよ」

と練習を切り上げてきた男子部員が涼しい顔で言う。

「特別製って言ってもな、

 何かがあったら責任問題だぞ」

「なんか特異な体質とかいうやつで、

 この程度の気温では暑く感じないそうなんです。

 うらやましい限りだ」

「去年の夏、39℃になった時でも、

 平然としていたもんなぁ」

「あぁ、

 でも50℃を越えるとヤバイとか言っていたっけ」

「どんな体質なんだか」

他の部員たちも麻衣についてそう口をそろえる。

「けどなぁ…

 こんな光景誰かに見られたらどうするだ」

部員たちの話を聞いた顧問は短く刈り上げた頭を掻きながらそうボヤくと

「何かあったら俺の責任になるんだぞ」

と小言を言う。



その日、

気温はこの夏の最高気温を更新したが、

炎天下の中、麻衣は一人で練習を続け、

彼女が練習を切り上げたのは

日が西に傾いたころであった。

「みんな帰っちゃったのか、

 薄情モン」

”先に引き上げる。

 鍵をよろしく”

の書置きと鍵を見下ろしながら、

麻衣は文句を言うが、

しかし、その顔は”待ってました”と言わんばかりの表情をしていて、

ウーン!!

誰もいない更衣室の中で大きく背伸びをして見せると、

ツクンッ

麻衣の胸に黒いモヤモヤしたものが突きあがり、

催促を始め出した。

「はいはい、

 じゃぁ、

 なっちゃおうか」

それを感じながら悪戯っぽく呟いて見せ、

そして、下腹に手を当てると、

「っとその前に…」

そう言い残して更衣室から周囲を気にしつつ

男子トイレへと入り込み、

手慣れた感じで小便器の前で股を開くと、

ゴソゴソとショートパンツを引き下げた。



「んんっ」

小便器の前で麻衣は眉間にしわを寄せて体を震わせると

ニュクッ!

彼女の股間から赤黒くツルリとした肉塊が顔を出した。

「あふんっ、

 んっ

 んはっ、

 んくっ」

喘ぐような声と鼻息を荒くしながら、

麻衣はさらに体を震わせると、

ヌヌッ

ヌヌヌヌッ

顔を出した肉塊が前へと突き出し、

さらに陽に向かって伸びる草茎の様に伸び始めた。

「ふんっ

 んふんっ

 はうっ」

ビクビクと体を小刻みに震わせて、

麻衣は股間から肉の棒を伸ばし

そして、

「ふぅ…」

大きく息を吐くと、

ブラン…

麻衣の股間から30cmにもなろうかと言う、

漆黒色の巨大なペニスが下がっていた。

「うふっ、

 生えちゃった。

 マサイのおちんちん」

ブランブラン

と左右に振りながら麻衣はその感触を感じているが、

スグにその動きを止めると、

シャァァァァァ

小便器に向けて放水を始めだす。

「はぁ…

 立ってするのって気持ちいいわぁ」

放水しながら麻衣がそう呟くと、

「居残り女子が男子トイレで立小便とは感心しないな」

不意に男子の声が響いた。

「ひっ」

その声に麻衣は縮み上がるが、

しかし、放水は出し切るまで止まらない。

すると、

彼女の横にウェア姿の男子が立ち、

「止まらないんだろう、

 連れションしてやるよ」

の声と共に麻衣の横から放水の音が響き始める。



「………」

放水の音を横で聞きながら麻衣は言葉に困っていると、

「なんだよっ

 いつもの事だろうが。

 ンベバムシシ」

と横の男子は話しかけてくる。

「その名前で呼ばないでよ」

「呼ぶなって、

 お前のもぅ一つの名前だろうが」

「ここでは聞きたくない」

「そんなデカイちんちん晒してよく言うわ、

 なるつもりだったんだろう。

 ンベバムシシに」

「そうだけど…」

「だったらなっちまえよ」

「え?」

「だから、

 さっさとンベバムシシになれ。

 って言っているんだ。

 お前だってそんなハンパな姿で居たくはないだろう」

と困惑する麻衣に向かって男子は言う。



「う…ん

 ありがとう」

彼のその言葉に背中を押されたか、

放水を終えた麻衣はそう言うと、

股間からペニスをぶら下げた姿で小走りになって更衣室へと戻るが、

既に彼女の変身は第二段階へと進んでいた。

「はうっ」

ムリッ!

股間のペニスが勢いよく勃起すると、

「んんっ」

メキッ!

お腹に腹筋が盛り上がって凹凸を作り、

「あんっ」

ビキビキ!!

手足が長く伸びていく。

そして、

「くはぁ」

グギギギギギ…

彼女の背が伸びていくと、

「うぉわぁぁぁぁ!!!」

その表情が厳つく変わっていった。



「はぁはぁ

 はぁはぁ」

すべてが終わり、

漆黒色の肌が覆う肩を汗で光らせながら、

麻衣は呼吸を整えると、

持ち上げた手をこめかみに当て、

グッ

朱に染まり長く伸びた縮れ毛を梳いて見せる。

梳き終わった後、

麻衣は変化した自分の腕を眺め、

そして、

ギュッっとその手を握りしめると、

決意したように息を吐き、

そして、自分が持ってきていたバッグを開くなり、

チャラ

首から胸元にかけて

ビーズでできたアクセサリ・マシパイを飾ると、

そのうちの数本を額にも巻き、

さらに乱れている髪を後ろで縛った。

股間を覆う程度の朱布を巻いて

麻衣はマサイ戦士・ンベバムシシになると、

悠然と更衣室のドアへと向かい、

チャッ

それを勢いよく開けて見せる。

「おっおでましだな」

外で待っていたのはさっきの男子だった。

そして、ンベバムシシが更衣室から出てくると、

パンッ

腹筋が盛り上がる腹をワンパンチするなり、

「今夜は負けないよ」

とけしかけてくる。

『マサイ・モランに勝てるの思うの?』

彼の言葉にンベバムシシは余裕で返事をすると、

「今日のために鍛えてきたんだ。

 お前に勝って麻衣を取り戻させてもらえるよ」

と男子は言う。



夏の遅い夕日が沈み、

夜の闇が覆いつくそうとしているトラックに、

ンベバムシシと男子が立つと、

「勝負は400mだからな。

 判ったな」

と男子はンベバムシシに言う。

『いいだろう。

 お前が私に勝てるのか』

「うるせーっ

 行くぞ!」

男子がそういうのと同時に二人は一斉に走り出した。

200mのトラックを二周する二人の勝負。

最初の100mは男子がやや優勢だったが、

だが、後半となると男子のスピードが落ち始め、

ンベバムシシと並ばれると一気に追い抜かれてしまう。

そして、差は縮むことなくンベバムシシに独走を許してしまい、

結果、男子の負けでこの勝負は終わってしまった。



「ちっくしょうっ」

負けた悔しさから男子は地面を叩いていると、

その前にンベバムシシが立ち、

『お前の負け』

と言いながら指をさした。

「わかったよっ

 好きにしろ!

 いつもみたいにそのデカイちんぽをしゃぶればいいのか?」

破れかぶれになりながら男子は言い放つと、

『違うっ、

 今日はもぅひとつ別のゲームをしよう』

とンベバムシシは言う。

「なんだよ」

『立って』

「あん?」

『立ちなさい』

「あぁ」

ンベバムシシに促されて男子は立つと、

ヌッ

男子に向かって黒いペニスが突き出される。

「これをどうしろって言うんだ」

『お前も出せ』

「え?」

『お前もイリガをだして、

 私のイリガの先に付けろ』

「はぁ?」

『理解できないのか?』

「わーたよ、

 言うとおりにすればいいんだろう」

ンベバムシシの指示に従って男子も自分ペニスを出すと、

「こうか?」

の声と共に、

ピタッ

二人の亀頭は向かい合わせになってくっつきあう。

『ふふっ、

 まるでキスみたい。

 でも君のは小さいね』

「うるせーっ、

 お前のがデカすぎるんだ。

 にしても変な感触がして気持ち悪いなぁ。

 で、ゲームってなんだよ」

『簡単、

 こうして、

 先に出した方が勝ち』

男子に向かってンベバムシシは言うと、

シュッ

シュッ

っと己のペニスをしごき始める。

「なるほど」

それを見た男子はゲームを理解すると、

自分もしごきはじめる。



シュッ

シュッ

シュッ

シュッ

ペニスをくっつけあうマサイ戦士と男子のオナニー勝負が始まり、

「はっはっはっ」

「ふんふんふん」

二人は鼻息を荒くしながら自分のペニスをしごき続ける。

そして、

「あっああっあぁぁ」

先に男子が口を開くと射精が近いことを暗に訴えるが、

彼が射精する直前。

『うっ…んっ!』

ンベバムシシが全身に力を込めると、

ブシュッ!

彼の亀頭から勢いよく精子が噴出した。



「うわっ!」

ンベバムシシの射精をもろに浴びてしまったのは、

他ならない男子であった。

そして、

マサイ戦士の濃厚な臭いに包まれてしまった彼は

「くせーっ!」

鼻をつまみながら訴えるが、

『ふふん、気分爽快。

 だけど君は罰ゲームね』

の声を残してトラックから去っていった。

「くっそぉ!

 また負けちゃったし、

 頭からクセーッ

 ザーメンってこんなに臭いのか?」

取り残されてしまった男子はそう声と上げると、

頭を抱えて見せる。



「はぁ、

 出したから元に戻れたけど、

 でも、俊介君大丈夫かなぁ、

 私のアレ、もろに浴びちゃたしな。

 もぅ、なんでンベバムシシになると、

 気持ちがこうも昂るのかしら。

 感情が抑えられないのよね。

 だから、あんなことをしちゃって…」

と射精後、元の姿に戻った麻衣は制服に着替えながらそうつぶやく。



今野麻衣、陸上部の中で一番足が遅く。

その克服のため、彼女は足が速くなる。呪いを受けた。

確かにその呪いによって麻衣の足は速くなり、

さらに暑さにも強くはなったのだが、

その代償として

彼女は呪いの元であるマサイ戦士に変身するようになったのである。

「あっ…また、おちんちんが…

 えぇい、しょうがない!!」

「なんだよ、

 あれだけ射精したのに戻れないのか?」

『ふふふふ、

 今度は君の穴をいただくよ』

「え?

 えぇぇぇ!」

被った精液をシャワーで流し終えた男子に向かって、

ペニスを勃起させながらンベバムシシはそう告げたのであった。



おわり