風祭文庫・モラン変身の館






「彼女の帰宅」


作・風祭玲

Vol.1033





「ただいま…」

一日の疲れを引きずるようにして僕は自宅マンションのドアを開けると、

「おかえりなさい…」

ふっと甘い匂いと女性の返事が響いてきた。

「!!っ」

予想してなかったその声に僕は驚いて急いでキッチンに飛び込んでいくと、

そこには一人の女性が夕飯の支度をしていたのである。

「清美…」

背を向ける彼女に向かって僕はそう呟くと、

「ただいま」

と彼女は振り返りにこりと笑みを見せた。

僕と清美は互いに見つめ合った後、

ぎゅっ

僕は清美を抱きしめ

「おかえり」

と囁いた。

そして清美の華奢な身体をしっかりと抱きしめながら、

「いつ戻ってきたの?」

と尋ねると、

清美は乱れ掛けたスカートの裾を手で押さえながら、

「んーと、夕方かな…

 あっいや、こっちの時間でね」

と答えて見せる。

「じゃぁ、ついさっきなんだ」

それを聞いた僕はそう指摘すると、

「まぁねっ」

僕に向かって彼女はウィンクをしてみせる。

その後、辺りを見回しながら

「向こうから着てきたものは?」

と尋ねると

「ベランダにまとめて置いてあるわ、

 見るの?」

と聞き返す。

「いやいぃよ」

首を横に振ってみせると、

「そうよね、

 ここであんなものを見てもしょうがないよね」

と清美は言い、

「さっご飯食べよう」

そう促した。



二人で取る久々の夕食。

以前は毎日のことでこれて言って思うことがなかったけど、

でも、それが自由に出来なくなったとき、

僕はこの時間の大切さを知った。

夕食後、暫くして僕が

「なぁ向こうはどぅだった?」

と尋ねると

清美は一瞬黙ってしまったが

「うん、まぁまぁよ」

と答える。

「それなら良いけど、

 ほら、こっちのTVではだいぶ騒々しい事になっている。

 ってことを言っていたので、

 ちょっと心配になってね」

と理由を言うと、

「それは都会の方よ。

 詳しいことはよく分からないけど、

 あたしが居る村では長老達がしっかりと見張っているから、

 至って平和よ」

と答える。

「そう…」

彼女のその返事に僕はそれ以上の事は聞かなかった。



その夜、僕と清美はお互いに愛し合った。

無論、彼女も”女”として男性に愛されるのが久しぶりだったせいか、

貪るように腰を振り、

搾り取った僕の体液をその体内へと流し込んでいく。

はぁはぁ

はぁはぁ

二人の吐息がベッドルームにこだまし、

ギシッ

ギシギシッ

ベッドは久しぶりに軋み音を奏でる。

「あっ

 あぁぁぁんっ」

「うっ」

幾度も絶頂を迎えた清美がギュッと挿入している僕のイチモツを締め上げると、

それを合図にして僕たちはフィニッシュを迎えようとした。

しかし、

ピッ!

清美の首筋に当てた僕の指が

彼女の体から突き出ていたあるものを引っかけてしまうと、

ピッピッピッ

清美の首筋が縦に一直線に引き裂けていく。

「しまった」

後悔しても遅かった。

「あっ!」

清美はスグにそのことに気がつくと体の動きを止め、

慌てて首筋を押さえてみせる。

しかし、

ピピピッ

首筋に出来た裂け目はさらに下へと伸び、

首筋から背中へと向かっていったのであった。

「ごっごめんっ」

目を丸くする清美に向かって僕は謝ると、

彼女は口を真一文字に結び、

今にも泣き出しそうは表情で僕を見つめる。

「ごめん…

 本当にごめん」

そんな清美に向かって僕は手を合わせて再度謝ると、

「もっ

 ばかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

部屋一杯に彼女の怒鳴り声が響き、

ビィィィィィィ!!!!

清美の背中に出来た裂け目は一気に腰まで届いてしまったのであった。

その途端、

ムワッ

背中から土と汗が混じったような独特の体臭が漂いだすと、

「もぅ…

 せっせっ折角、

 あっあたしに戻ったのにぃ」

言葉を詰まらせながら清美は濁ったような野太い声を上げて文句を言う。

「これって元に戻らないのか?」

背中の裂け目に指を這わせながら僕は尋ねると、

「いっいっいじらないで」

清美は強い口調でそれを静止させると、

体を大きく捩って見せた。

すると、

グシャッ!

彼女の脇に沢山の皺が寄り、

ズルッ

同時に両肩の皮が剥けてしまうと、

中から黒い輝きを放つ肩が飛び出してきた。

「うわっ」

いきなり見せられた漆黒の肌に僕は声を上げてしまうと、

「そっそっそれくらいのことで

 おっ驚かないでよ」

清美は文句を言いつつ、

同じように皺が寄る左腕の皮を引っ張ると、

ズルッ

黒い肌が覆う肘を突き出し、

さらに手袋を取るようにして手先の皮を剥いてしまったのである。

そして、同じように右腕の皮も取り去ってしまうと、

「よっ」

頭の後ろに黒い手を回すと、

グッ!

と力を入れた。



バサッ

パラ

すると、僅かの砂をまき散らしながら

朱色に染められ細かく寄られた髪が束になって背中へと落ちるが、

清美は一切気にせずに、

ズルッ

まるでかぶり物を剥ぐようにして自分の顔をはぎ取って見せる。

「うっ」

清美の顔の中から中から出てきたもぅ一つの黒い顔。

それは清美とは全く違う男の顔であり、

厚い唇に突きだした眼窩を持つその表情は

遠いサバンナの野生戦士の面持ちであった。

「やっやぁ…」

より分けている赤い髪の束を背中に回して出てきた顔に向かって、

僕は挨拶をしてみせると、

ジロッ

顔は無言で僕を見据えた後、

ベッド方降りていく、

そして、

ズルズルズル

ズル…

つなぎの服を脱ぐようにして清美の白い肌を脱いでいくと、

乳房の下からは漆黒の肌に覆われた逞しい胸板が姿を見せ、

柔らかな表情を見せていた腹は6つに割れた逞しい腹筋が顔を出す。

そして、女性の丸みのおびた体つきから逞しく角張った男性の体つきへと変わっていくと、

股間からは黒い肉塊がニュッと手の間から顔を出し、

巨大なキノコを思わせる男のシンボル・ペニスが飛び出した。

さらに、白く細い足は太くて逞しい足へと姿を変えてしまうと、

清美は頭のてっぺんから足の先まで漆黒色の皮膚におおわれた筋骨逞しい男

そうサバンナの戦士・モランへと変身したのである。

「………」

不注意で予定より大幅に早い清美の変身を見せつけられた僕は、

黙って冷や汗を掻いていると、

トタッ

トタトタ

モランを化した清美は股間に下がるペニスを揺らしながら歩き出し、

ベランダに続く窓を開けると、

手を伸ばしてそこに置いてあったものを取り出し体に纏い始めた。

ビーズで出来た飾り紐。

同じビーズ腕輪に足輪、

そして首飾りに耳飾りに髪飾り、

清美がそれらを身に着けて行くにつれ、

彼女の黒い体は飾り立てられ、

そして艶やかになっていく。

世界で最も美しい戦士…

清美が普段住んでいるサバンナではそう呼ばれていることを思い出すと、

バサッ

朱染め布を体に纏い

清美はマサイ・モランと呼ばれる戦士へと変身したのであった。

「もっもぅ…

 こっこれをどうしてくれるのよ」

チャッ

モランとなった彼女…

いや、彼は手にした槍の切っ先を僕に向けて文句を言うと、

「ふんっ」

僕は頭を掻きながらため息をつき、

そして、彼の手を握りしめるや、

グッ

と抱き寄せてみせる。

「なっなにを…する」

僕のその行為にモランは驚くと、

サワッ

朱染めの布・シュカが覆う尻に手を回し、

そのまま尻の割れ目の中へと指先を潜り込ませると、

その先にあるキュッと窄んでいる穴へと指を這わせた。

「!!っ」

その途端、モランの目は僕を見据えると、

「サバンナではここを犯して貰って居るんだろう?

 今夜は僕がここを責めさせてもらうよ、

 モランとなった君のその姿。

 とってもセクシーだよ…」

モランを眺めながら僕はそう呟き、

そのまま彼の厚い唇に自分の唇を重ね合わせたのであった。



マサイのオロイボリ(呪術師)に掛けられた呪いによって、

マサイ戦士となった清美…

月に一度、オロイボリの計らいで清美の皮を被って僕の所に戻ってきたんだ。

ふふっ、

サバンナに帰る明日の朝までたっぷりと楽しまさせて貰うよ。

夜はまだまだ長いから…



おわり