風祭文庫・モラン変身の館






「サバンナの果てで」


作・風祭玲

Vol.979





ユラ…

真上から容赦なく陽の光が降り注ぎ、

陽炎が揺らめくサバンナ。

その光と暑さのために生き物達は皆草陰などに隠れ、

ジッと息を殺して日差しが西に傾くのを待っている。

そして、そんな中を

リリン

リリリリン…

サク

サク

足首に巻いた鈴から鈴音を響かせながら、

漆黒の肌を朱染めの布・カラシャの中へ隠し、

一本の槍を携えながらあたしは一人で歩き続けていた。

サク

サク

まるで時間が止まったようなサバンナの中を

脂と赤土で練り上げ縒り分けた髪を日光に晒し、

日よけのカラシャの中では

首から胸元にかけて巻きつけてあるトンボ球とビーズでくみ上げた飾り紐が

体の動きにあわせてかすかに音を立てる。

その様な音を響かせながらあたしは歩き続けるが、

さすがに疲れを感じてくると、

ふと立ち止まると顔を上げ、

「ふぅ…」

と大きく息を継いでみせる。



「はぁ…

 もぅどこまで来たのかしら…」

携えていた槍を地面に突き刺し、

陽に当たっていない手ごろな石に腰掛けてあたしはそう呟くと、

スッ

両手を上へと掲げ、

「あーぁ、

 すっかり戦士の腕になっちゃったな」

カラシャの中からから覗く黒い腕を見ながらぼやいてみせる。

そして、改めて地平線へと視線を動かしていくと、

地平線の先にうっすらに岩山が見えていた。

「うーん、

 あそこみたいね」

今の視力は一体いくつあるんだろう、

かつての自分なら見分けることが出来ない岩山の姿を確かめながらアタシはそう呟くと、

「あの岩山の向こうにディンガ族の村があるって聞いたけど、

 西嶋さんは本当にいるのかしら」

と続け、

腰に下げていたギブユを手に取りだすと、

クピッ

牛の血液とミルクで作ったマサイミルクを一口飲み込む。



数ヶ月前、

西嶋さんが掛けた呪術によってマサイのモランへと姿を変えられたあたしは

ディンガのモランとなった彼女の姿を求めながらサバンナの中をさすらい続けていた。

なぜこのようなことになってしまったのか、

たまたまその場にいただけでこんな仕打ちを受けた理不尽さを感じつつ、

あたしは元の理美に戻るためのカギを握る西嶋さんを探しているのである。

そして、サバンナをさすらい数多くの村々を訪れていくうちに、

このサバンナの北のはずれにディンガ族と呼ばれる部族の村があると教えられ、

あたしは北に向かっていた。



サバンナでの放浪生活の間であたしは見た目も内面も逞しくなっていた。

サバンナに来たときは姿だけはモランであり、

内面は殆ど理美のままであった。

でも食べ物を得るために狩を行い、

血を啜り、

肉を食べ、

そして、溜まった”モノ”を吐き出す生活を送るうちに

あたしは内面から逞しく変貌し、

すっかりモランとしての風格が出ていたのであった。



「さて、

 行くか」

パンッ!

カラシャに溜まった埃を払ってあたしは立ち上がると、

岩山へ向かって歩き始める。

一歩でも西嶋さんに近づきたいという気持ちがいまのあたしを支える原動力になっていた。

翌日も

また翌日も

あたしは岩山目掛けてサバンナを北上してゆく

そして、歩き続けるに連れて、

訪れる村人たちがマサイではなくなり、

最初は違和感の無く訪れるが出来た村が次第に入りにくくなっていく、

「うーん、

 ここまでやってくるマサイっていないみたいね」

村人達から奇異の目で見られることにあたしは困惑するが、

でも、このマサイの姿を解くわけには行かない。

なぜなら、あたしはマサイなんだから。



カランカラカラカラ…

岩山に近づくにつれ、

草原は荒地となり、

ごつごつした岩が行く手を阻みだす。

それでもあたしは草木の無い岩山の峠道をやっとの思いで越えると、

「あれは…」

眼下の谷に小さな集落があるのが目に入った。

「ひょっとして、あそこ?」

最後に立ち寄った村で聞いたディンガ族の村のことを思い出しながら、

理美はがけ下へ落ちないように気を配りながら、

槍を手放さず、

そして、唯一の服であるカラシャをしっかりと巻きなおして、

村へと続く坂を下りて行く、

峠を越えてから3時間近くが過ぎ、

すっかり陽が西に傾いたとき、

なんとか峠道を降りきったあたしは村に向かって早歩きで歩いて行く。

西嶋さんがあそこにいる。

早く彼女に会って元の姿に戻してもらおう。

期待に胸を膨らませながらあたしが村に近づいたとき、

『・・・・・!!!』

『・・・・・!!!』

辺りから一斉に警戒の声が上がると、

ザザザザッ!

脂まみれの漆黒の肌に灰のようなもので模様を描いた裸の男たちが一斉に姿を見せ、

瞬く間にあたしを取り囲んでしまった。

「ちょちょっと、

 あたしは怪しいものじゃないって」

村を外敵から守ろうとしているのか、

訪問者であるあたしに向かって男達は皆敵愾心丸出しにして脅し続ける。

そんな男たち向かってあたしは必死に話しかけようとするが、

『・・・・・・!!っ』

『・・・・・・!!っ』

男たちは容易には気を許さず、

木を削って作った槍を構え、

ジリジリ

とにじり寄ってくる。

「もぅ!

 ちょっと、あたしの話しを聞いて!」

手にしていた槍を地面に突き刺しあたしは訴えると、

『あら?

 笹塚さんじゃない?』

と言う男の声が響き渡った。

「え?」

あたしの名前を告げたその声は振り返ると、

『あーっ、

 やっぱり笹塚さんだぁ』

村の中より身体に灰で幾何学的な文様を描いた裸体の男が飛び出し、

『いやぁぁ、

 久しぶり』

と懐かしそうに手を握る。

「まさか…

 西嶋さん?」

文様のほかにはトンボ球でで来た紐を腰回りに巻いただけの腰飾りと

首に巻いた首飾りだけの井出たちの男に向かってあたしは話しかけると、

『えぇ、そうよ』

ディンガのモランに変身していた西嶋さんはあっけらかんと返事をする。

その途端、

クワッ!

あたしは大きく見開き、

「西嶋さんっ

 あっあたしの体ぁ、

 早く元に戻してよぉ!」

と訴えながら掴みかかったのであった。

『なっなによ急に!』

掴みかかるあたしを見ながら西嶋さんは驚くと、

バッ!

あたしは身体に巻きつけていたカラシャを剥ぎ取り、

モランとなった体を見せつけながら、

「あなたが何になろうとあたしは関係ないわ、

 だけど、あなたの変身に巻き込まれて、

 こんな身体にされてしまったあたしは迷惑なのよ!

 お願いだからあたしを元に戻して

 笹塚理美に戻してぇ」

と怒鳴りまくる。

すると、

『やれやれ…』

西嶋さんは小さくため息を付くと、

『マサイになんてそう滅多になれないわよぉ、

 まったく喜ぶべきことなのに』

と文句を言う。

「喜ぶべきって、

 あたしはぁ」

西嶋さんの言葉にカチンと来たあたしはそう言い返そうとすると、

『いいわ、

 勝負しましょう』

と彼女はあたしに向かって告げた。

「勝負?」

思いがけない西嶋さんの申し出にあたしはキョトンとすると、

『うふっ、

 この村では今日から祭なのよ、

 そして、祭の最大のイベントが腕に覚えのある男達による組み技の勝負』

と彼女はあたしに説明をする。

「組み技?」

『レスリングみたいなものよ、

 こうやって余計な飾りは全部取り払って、

 変わりに思い思いの模様を身体に書いていくの。

 こうするだけでとっても気持ちよくなっちゃうのよ』

驚くあたしに西嶋さんはそう答えると、

シュッシュッ

シュッシュッ

彼女の股間で長く伸び、

そして硬くなっている漆黒のイチモツを扱き始めた。

「西嶋さん…

 あなた…」

イチモツを扱いてみせる西嶋さんを見ながらあたしは一歩下がると、

『うふっ、

 笹塚さんも参加するならそんなビーズのアクセサリーなんて外しなさいよ、

 あたしがあなたの身体に文様を描いてあげるわ』

イチモツを扱きながら上気した目で西嶋さんはあたしに向かって告げた途端。

ガシッ!

いきなりあたしの腕が抱きとめられてしまった。

「ちょちょっとぉ」

慌ててあたしが振り返ると、

ディンガのモラン二人があたしの両腕を抱えていて、

『祭に出るのなら』

『相応しい姿になってもらう』

と交互に告げると、

あたしを村の中へと連れて行ったのであった。
 


ベトォ…

「うっ、

 なにこれぇ」

体中を獣の脂で塗りたくられ、

そして、西嶋さんの手によって灰の文様を描かれたあたしは

文句を言いながら自分の体を見ると。

『うふっ、

 ちょっと違うけど、

 でも、立派なディンガのモランよ』

と西嶋さんは感想を言う。

「もぅ、こうなったらどうにでもなれ。よ

 さぁ、勝負しましょう」

はにかんで笑う西嶋さんに向かってあたしは怒鳴ると、

『えぇ、

 もちろん。

 さぁ、戦う土俵は出来ているわ、

 こっちよ』

急に真面目な顔になって西島さんはそう告げ、

あたしを村はずれに設けられた特設の会場へと連れて行った。



『やーっ』

『おっ』

ドタン!

バタバタっ!

連れてこられた会場では赤茶けた砂埃を舞い上げながら、

イチモツをむき出しにしているディンガ族の男達が二人一組で組合い、

そして、技を駆使して相手を寝転がせていく。

「確かに、

 レスリングかも」

男達の姿を見ながらあたしは呟くと、

『さぁ、何をしているの、

 あたしたちもするのよ』

の声と共に西嶋さんは腰を落とし、

そして、上体を低く構えると、

『たぁ!』

立ち尽くしていたあたしに向かって飛び掛る。

「あっ」

一瞬のうちにあたしは地面に押し倒され、

そして、あたしの上に西嶋さんが圧し掛かってくると、

『勝負あり』

とあたしに告げた。

「あっ、卑怯よ!」

勝ち名乗りを上げる西嶋さんに向かってあたしは文句を言うと、

『油断していたでしょう』

と彼女は言う。

「なにを!」

その言葉にあたしはカチンと来ると、

「このぉ!」

すかさず西嶋さんに飛び掛り、

そのまま引き倒そうとするが、

『うふっ、

 お尻ががら空きよ』

の言葉と共に、

クッ!

いきなり彼女の指があたしの肛門を捕らえると、

クリッ!

と挿入されてきた。

「うひゃぁ!」

その感覚にあたしは思わず飛び上がってお尻を押さえると、

『負けたものに勝った勇者の精を注ぐのがここの掟、

 さぁ、あなたのお尻にあたしの精を注いであげるわ』

巧みな腕裁きであたしを組み伏せた西嶋さんはそう告げながら、

ピト

硬く勃起している自分のイチモツをあたしの肛門につきたてる。

「ひっ

 いやぁぁぁ!」

肛門から響いてくる感触にあたしは悲鳴を上げるが、

『そんなに声をあげないの、

 マサイのモランなら肛門は初めてじゃないでしょう』

という西沢さんの声が響くと、

「あっ…」

最近はなくなったがマサイとなったばかりの頃、

上級モラン達にお尻を犯されてきたことが頭の中をよぎり、

その瞬間、

あたしの肛門の力が緩んだ。

すると、その時を突いて、

ヌプッ!

西沢さんが勃てているディンガのイチモツがあたしの中に入ってくると、

グググググ…

あたしの腸の中で膨らみ始める。

「あぐっ、

 やめて、

 やめて」

肛門を突き刺された格好であたしは喘ぐと、

『うふっ、

 あなたはまだ心の底からモランになっていない。

 だから勝てないのよ』

と告げ、

『あたしが、染め上げてあげるわ。

 心の底から笹塚さんがモランになってしまうようにね』

そう続けると、

シュッシュッ

シュッシュッ

西沢さんに犯されながらも股間で硬くなっているイチモツを扱き始めた。

「あはっ、

 あんっ

 やっやめ…

 感じちゃう、

 感じちゃうからやめて」

お尻とイチモツの両方から犯されながらあたしは喘ぐと、

『うふっ、

 とっても可愛いわ。

 マサイの味ってどんなのか知りたかったの。

 あぁ、とっても良く締まるし、

 そして、力強い。

 これがマサイの味なのね。

 あぁ

 ゾクゾクしちゃう』

あたしの胸で黒く引き締まる乳首を弄りながら西沢さんはそう呟くと、

あたしを軽々と持ち上げ、

『うぉぉぉぉ!!!』

ディンガモランの力を見せ付けるように、

雄たけびのようなものを響かせながら、

クチョクチョクチョ!

腰を激しく上下に動かしはじめた。

「うっうわぁぁぁぁ!!!」

下から激しく突き上げてくる西沢さんの力にあたしはただ翻弄されてしまうと、

ジワ…

体の奥から野生を求めようとする疼きみたいのが沸き起こってきた。

「あぁ、

 なに?

 この感覚…

 だめ、

 これ以上大きくなっては、

 あっあたしがあたしじゃなくなっちゃう!」

その疼きを全身で感じながらあたしはそう訴えると、

『あはは、

 お前の中に産み付けられレたモランの魂が喰いたがっているぞ、

 俺の精をな』

と西沢さんは声を張り上げる。

「あたしの中のモランの魂…

 これが…」

その言葉を聞いてあたしは自分を食い尽くして新たな姿を得ようとしているものを意識したとき。

『出る

 出る

 出る』

西沢さんの声が響き、

その声と共にあたしの中から猛々しい気持ちが一気に噴出してしまうと、

「あんっ、

 あたしも

 出るぅぅぅ」

プッ

シュシュシュッ!

あたしと西沢さんは二人揃って射精をしてしまったのであった。



ジワッ

体の奥に広がっていくモランの魂をあたしは感じながらぐったりしていると、

「あぁぁ、

 なにこれぇ!」

突然、西沢さんの悲鳴が上がり、

シュワァァァァァ!!!

さっきあたしを犯したばかりの西沢さんの黒い体から湯気が沸き起こると、

まるで溶けていくように彼女の身体は解け落ちてしまい、

後には、日本人の女の子の姿をした西沢さんが呆然と座っていたのであった。

「なっ何がおきたの?」

思いがけない彼女の変身にあたしは驚くと、

『モランよ』

とあたしの心の中に男の声が響いた。

「だれ?」

その声に向かってあたしは問い尋ねると、

『…お前はマサイとディンガの魂を共に身体に宿してしまった。

 もはや元に戻ることは無い。

 これからモランとして生き抜くが良い』

と声はあたしに告げる。

「えぇ!

 それってどういうこと」

その声に向かってあたしは怒鳴ると、

「あーぁ、

 結局ダメだったか…

 またやり直しね」

と言う残念そうな西沢さんの声が響き、

スーッ

まるで幽霊が消えていくようにして彼女の姿は消えてしまったのであった。

「そんな…

 そんな…

 あっあたしはどうなるの!!」

身体を元に戻せず、

それどころか2つのモランの魂を有してしまったあたしは切望の淵に立たされながら悲鳴を上げる。

そして、それから数ヵ月後、

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

あたしはサバンナの真ん中で一人でイチモツを扱いていた。

「あはぁん、

 あぁ、

 もっと、もっと頂戴」

イチモツを扱きながらあたしはお尻に槍の柄の先を押し込むと、

まるでイチモツをねだるような声を上げながら、

「うっ」

ビュッ!

シュシュシュッ!

サバンナの乾いた大地に精を吐き出したのであった。



おわり