風祭文庫・モラン変身の館






「夕日の中で」


作・風祭玲

Vol.867





昼間、大地を焦がすかのように照り付けていた太陽が地平線へと近づいていくと、

西の空が真っ赤に染まっていく。

「ふぅ…」

そんな景色の中に俺は運転していたサファリカーをある場所に停車させ、

クルマから降りると、

タバコの煙を揺らせながら目の前に広がる壮大な光景にしばしの間、見入っていた。

と、そのとき、

『ミスター』

不意に誰かが俺に向かって話しかけてきた。

「ん?」

少年から男へと変わる途中と思える鼻に掛かる声色に俺は振り向くと、

ニコッ

ぎこちなく朱染めの衣をまとい、

槍代わりだろうか

皮を剥いた木の棒を手にした中学生ほど思えるマサイの少年が

3・4人俺に向かって笑みを見せる。

『何か俺に用か?』

マサイの少年達に向かって俺は尋ねると、

『連れている牛が病気なんだ』

と彼らの一人が一歩前に出て訴えかけてきた。

『で?』

その訴えに俺は無関心そうに装うと、

『牛の病気を治すためにはお金がいるんだ』

と別の少年は声を上げる。

『で?』

なおも俺は無関心な返事をすると、

少年達のリーダーと思えしきマサイの少年が

『あの僕達、

 マサイの歌を歌います。

 ですから…』

切羽詰った表情でそう訴え、

ジッ

と俺の顔を見ると、

「やれやれ」

少年達の訴えに俺は頭をかいてみせ、

チラリ、

彼らの頭ごなしに遠くを見つめると、

近くにいるだろうと思える人物の姿を探し始めた。

そして、

”いた。”

この場から約200mほど離れたところで赤い色の小さな人影を見つけると、

「やっぱり、

 自分よりも先にこいつらをよこしたな」

と俺は人影をにらみつけながら文句をつぶやくと、

「はぁ」

小さくため息をついた後、

『いいだろう』

少年達に向かって俺は返事をする。

パァ

俺の返事を聞いた途端、

不安そうな少年達の表情は一気に明るくなり、

互いに顔を見合わせた後、

♪〜ぉ

独特の節回しでリーダー格の少年が高らかに声を張り上げると、

それに続いてほかの少年達が声を合わせた。

そして、歌を歌うにつれ少年達の体は上下に動き出し、

ついに

タン!

タン!

タン!

俺の目の前でマサイジャンプをして見せ始めだした。

「ほぉ…」

体を包みように巻かれたいた朱染めの衣は大きく肌蹴け、

黒い肌が光る華奢な体が夕日に映える。

こんな少年にもかかわらず大人顔負けの大ジャンプを幾度も見せた後、

やがて少年の歌が静かに終わると、

パチパチパチ

俺は彼らをねぎらうように手をたたいていた。

そして、

『ご苦労さん。

 チップだ』

そう言いながら俺はリーダーの少年に幾枚かの紙幣を手渡すと、

『え?

 こんなに?

 いいのか?』

と紙幣の額を見た少年は驚きながら聞き返してきた。

『あぁ、

 いい物を見せてもらったよ。

 それなら薬も買えるだろう』

と俺は言う。

『あっ、ありがとう。

 ミスター!』

声を震わせながら少年達は口々に感謝を言い、

そして、顔を見合わせると、

『そうだ、

 君達を指導をしているモランを連れてきてくれないかな』

と俺は彼らに言った。

『え?』

俺の言葉に彼らは驚くと、

『あそこにいるモランは君達の指導係なんだろう』

とこちらを見ているであろうモランを指差す。

『どうする』

『サエコさん呼ぶ?』

『うーん』

俺の言葉を受けて少年達は話し合った後、

『分かったよ』

リーダー格の少年は俺に向かって言うと、

タッタッタッ

少年達は足早に走り去り

俺が指差したモランと合流すると俺を指差し何かを話し始めた。

そして、モランから何かの指示を受けたのち

少年建ちはさらに遠くへと去っていくと、

一人残されたモランは俺に向かって歩き始め、

夕日の名残の光を全身に受けながら、

モランは一歩一歩踏みしめるようにして俺に近づいてくる。



そして、程なくして色があせた朱染めの衣・シュカを身に纏い、

さっきの少年達よりも黒味が増している肌を晒し、

無駄なく引き締まった筋肉を盛り上げ、

朱色に染まり細かくより分けられまとめた髪を揺らし、

彫りが深く精悍な顔つきと、

胸周りを飾り立てるビーズを集めて作られた首飾りを俺に見せ付けて、

マサイの戦士・モランが俺の前に立った。

「なんだよ、お金が欲しいのなら、

 そういえばお前を通じてくれてやったのに」

モランと目をあわせずに俺は文句を言うが、

「・・・・・・」

その言葉にモランは何も言わずにジッと俺を見つめていた。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

互いに言葉を交わさずに俺とモランは見合ったまま立っていると、

サクッ、

突然、モランは槍を地面に突き刺し、

ストッ

ひざを折ると俺の前に非ざまづいてしまった。

そして、手馴れた手つきで俺のベルトを外してズボンを引き下げると、

ヌプッ

下着の中より出てきた俺のペニスに吸い付いてしまったのであった。

「あっおいっ

 うっ

 う…ん…」

舌を俺のペニスに絡ませ、

そして、巧みに刺激を変えながら吸ってみせるモランのフェラチオに俺は思わずうめき声を上げると、

ムクムク

瞬く間に俺のペニスは最大限に大きさを増し硬くなっていく、

そして、朱に染められ、細かくより分けられている髪が覆うモランの頭に手を載せて、

「小枝子…

 マサイになっても俺のチンポの味は忘れられないか?」

と囁くと、

ビクッ!

一瞬モランは体を硬直させるが、

しかし、口を離さずに

チュプチュプ

と首を振り俺のペニスを吸い続ける。

「そうかそうか、

 そんなの俺のチンポが恋しかったか」

モランの顔を撫で回しながら俺は再度尋ねるが、

しかし、モランはそれに答えずにペニスを吸い続ける。

すると、俺は手を使ってモランの顔を押し出すようにして退けさせると、

「もぅいい、

 それよりもお前のケツをみせろ」

と凄みながら話しかける。

すると、

ノロッ

モランはゆっくりと立ち上がり、

そして、後ろを向きながら中腰になってサファリカーに向かって両手を突くと、

ブルッ

衣の裾を捲り上げ、

大きく凹み真っ黒に染まっているケツの穴を見せたのであった。



「けっ、

 この間よりもさらに真っ黒になってやがる。

 おまえ、男と遊んでいるだろう」

俺は軽蔑した視線でモランに話しかけると、

フルフル

モランは黙って首を横に振り、

『ケンジサン

 アイシテマス』

ぎこちない言葉遣いでそう囁きながら、

クイッ

引き締まった肛門を見せるように尻の両側を開いて見せた。

「ちっ、

 それ以外の言葉はいえないのか?」

黒い肌に覆われているモランの尻を叩いて俺は悪態を付いてみせるが、

『ケンジサァン…

 アイ・シテマス』

『ケンジサン……

 ア…アイシテマス』

モランは同じ言葉をイントネーションを変えつつ喋るだけだった。

「小枝子…

 お前、もぅそれしか喋れなくなってきたのか…」

モランの言葉を聞きながら俺は尋ねると、

『ケン・ジサン

 アイシテ…マス』

目から涙を浮かべながらモランは振り返り、

『アァァァ…

 ウンウンウン…』

言葉にならない声を上げながら俺に抱きついてきた。

「小枝子…」

『マサイ

 ア・アタシ

 マサイ』

脂と土と汗が入り混じった臭いを撒き散らし、

首飾りの音を響かせながらモラン、いや、小枝子はそう訴えると、

俺は何も言わずに彼を抱きしめ、

彼の膨れた唇に自分の唇を重ね合わせる。

そして、満天の星空の下で俺達は一つになると、

俺は小枝子の中に自分の熱い精を放ったのであった。



翌朝、

シュッシュッ

シュッシュッ

とめられたサファリカーの中で俺と小枝子の黒いペニスを扱き、

小枝子は黒い手で俺のペニスを扱いていた。

「小枝子」

『ケンジ』

俺と話をしているうちに少しは言葉を思い出したのか、

小枝子は俺の名前を呼ぶと、

『クラン達、喜んでた。

 あたし、お金、働いて貰え、言ってた。

 クラン、それ、守った』

と夕方のことを説明しはじめる。

「そうか、

 お前も立派な教育係だな」

それを聞いた俺は小枝子の平たい胸をポンと叩いて労うと、

俺達は互い目を合わせ、

シュッシュッ

シュッシュッ

手の動きを次第に早くしていく。

そして、

「あぁ…

 出すときは一緒だぞ」

と声をかけ、

『あぁ、ぉぉぉっ

 うぉぉぉぉ!!』

車内に雄たけびが響き渡ると、

シュッ!

ビュッ!

お互いに射精をしてしまい、

それぞれの指に付いた精を相手の顔に擦り付け合ったのであった。

「野生の味か…」

『け・けんじさんの…』

余韻を味わうように俺達はそう囁きあい、

そして、別れのキスをする。



チャッ!

ストン

しばらくして

なに言わずに小枝子はクルマから降りてしまうと、

シュカを巻きなおし、

突き刺してあった槍を再び携え

振り返らずに朝靄のサバンナへと消えて行く。

そして、

「ふぅ」

俺は静かにタバコの煙を昇らせながら、

「ふんっ、ガキ共を引き連れて…

 すっかりマサイになっちまたみたいじゃないか」

モランとしての風格を兼ね備えだした元妻の姿を見送っていたのであった。



おわり