風祭文庫・モラン変身の館






「カード」


作・風祭玲

Vol.703





「なぁ、どうしても行かないとならないのか?」

賑やかだったクリスマスが終わり、

年の瀬も押し迫った大晦日。

正月の準備であわただしい街中を余所に

高山真美に連れられた香山悠三がブツブツ文句を言いながら歩いていく。

「仕方がないでしょう?

 そんなに嫌なら来なくてもいいわよ」

文句を言い続ける悠三に向かって真美は怒鳴ると、

「なぁ、真美っ、

 このままフケないか?

 向こうには気づかれないって」

と悠三は誘いをかけてきた。

「はぁ?

 何を言っているの?」

スカートを大きく開かせながら真美は振り向くと、

「いや、だってなぁ…」

と悠三は困惑した表情をして見せる。

「いいわよっ、

 あたし一人で行くから」

悠三の表情を見た真美は一瞬、寂しそうな表情をして見せた後、

そう言うと再び歩き始める。

「あぁっ

 真美っ」

そんな真美を見た悠三は慌てて彼女を追いかけはじめると、

「なによっ、

 来なくていいわよ。

 あの時、長に泣いて頼んだのは誰だったの?

 そんな悠三の願いを聞き届けてくれた長を裏切るの?

 ふぅぅん、偉いんだ」

追いかけてきた悠三を追い払うように真美は言う。

「だれも裏切るとまでは言ってないだろう?

 それに、

 お前を一人で行かせるわけには行かないだろう?」

真美に向かって悠三はそう言うと、

「ふんっ、

 なんだかんだ言っても、

 結局ついてくるんじゃない」

と真美は皮肉を言う。



二人の行く手にやがて一軒の廃屋が姿も見せてきた。

「はぁぁぁ…」

廃屋を見上げながら悠三が驚いていると、

「あーぁ、

 1年たったらさらに酷くなったわね…」

と言いながら真美は腰に手を当てると、

ギィィ…

閉じられていた門扉を開けて敷地内へと入ると、

伸び放題に伸びて鬱蒼と茂る枯れ草の中へと消えていった。

「おっおいっ

 真美っ」

自分を置いてさっさと敷地に入っていってしまった真美を追いかけ、

悠三も入っていくと、

先を行く真美は躊躇いもなくその中に建つ廃屋へと入って行く。

ガタン!

ゲホッ

「かぁぁ、すごいなぁこれは…」

1年ぶりに二人が踏み込んだ廃屋は荒廃が進み

壁を突き破って木が枝を伸ばし、

床も至る所で腐り落ちていた。

そんな中を真美は進んでいくと、

やがて突き当たりの部屋へと入っていく。

フワッ!

突然、空気が変わり、

コトッ

コトッ

靴音を鳴らしながら踏み入れたその部屋は、

荒廃しきっている廃屋の中とは思えないくらいに整然としていて、

今にも住民が姿を見せてくるようなたたずまいだった。

「へぇぇ、

 この部屋だけは相変わらずか…」

部屋を見回しながら悠三が感心していると、

「あった」

部屋の真ん中に置かれた古風な丸テーブルの前に立った真美は何かを見つけると、

「悠三、

 ちゃんとあったわよ」

と嬉しそうに声を上げる。

「わかっているよ」

真美の声に悠三は返事をすると、

丸テーブルへと向かっていった。



丸テーブルを挟んで真美と悠三の二人が立ち、

そして、ゆっくりとテーブルを見ると、

そのテーブルの上には2枚のカードが置いてある。

「はぁ…」

カードを見ながら悠三は小さくため息をつくと、

「じゃぁあたしから先に…」

と言いながら真美は手前に置かれた一枚のカードを捲る。

すると、

彼女が捲ったカードには朱染めの衣を身に纏う

野生の戦士を思わせる男が描かれていて、

続いて悠三が捲ったカードには

同じ黒い肌を晒す裸の女が描かれいた。

そして、

「・・・・・・・・・」

自分が捲ったカードに手を翳しながら

真美が呪文らしき言葉を詠唱し始めると、

ポゥ…

彼女が手を添えるカードがほのかに赤い光を放ち始め、

モワン…

いきなりカードより黒い煙の様な物が吹き出てくると、

瞬く間に真美の体を包みこんでしまった。

しかし、そのことに真美は怖がることなく

さらに呪文を詠唱してゆくと、

ジワッ

ジワジワ…

カードに翳した彼女の肌が黒く変色しはじめ、

程なくして墨汁を垂らしたかのような漆黒色へと変わってしまった。

さらにその色の変化が真美の体全体へと広がっていっているのか、

首元やスカートから覗く足の肌の色も染まっていくように色が変わっていく、

「・・・・・・」

肌の色が変わっても真美は呪文を詠唱し続け、

それどころかさらに高揚した声で詠唱し始めた。

すると、彼女が着ていた衣服が埃を吹き払うように消え去ってしまうと

小振りながらも存在していた乳房が急速に姿を消し、

瞬く間に胸が平らになってしまうが、

モリモリモリ!!!

乳房の代わりに筋肉が膨らんで行くと

見事な胸板を作り上げ、

その下には盛り上がった腹筋が深い溝を刻み始める。

また、縦溝が刻まれていた股間からは、

ムリンッ

ムリムリムリ!!

太くて硬いペニスが生え、

シュシュッ

シュシュッ

真美は無意識のうちにそれを扱き始める。

シュシュッ

シュシュッ

「フーッ」

「フーッ」

全身の筋肉を逞しく発達させ、

さらに背も悠三より高くさせて真美はペニスを扱き続けていると、

「ちっ、

 真美は真面目なんだから」

真美の姿をあきれた視線で見ながら悠三はつぶやき、

「・・・・・・・」

真美に遅れて自分のカードに手を翳し呪文を詠唱し始めた。

すると、

モワン…

悠三が手を翳した女の描かれたカードからも黒い煙の様な物が出て来ると、

瞬く間に悠三の体を包み込み、

その中で悠三は肌を黒くさせると、

いつの間にか裸へとなっていく。

そして、

ムクムクムク!!

次第に彼の胸が膨らみ始めだすと、

腰はくびれ、

ヒップが大きく張り出してゆく、

また、体の変化に合わせて股間のペニスが小さくなっていくと、

ついには体に吸い込まれる様に消え、

ミシッ!

その跡には女の縦溝が刻まれていった。

『はぁ…』

プルン!

と見事に膨らんだ黒い乳房に手を当てながら悠三がため息をついていると、

スッ

裕三の手を真美が握りしめ、

『ふぅふぅ』

と鼻息を荒くしながら厚くなってしまった唇を近づけてきた。

『真美…』

『裕三…』

漆黒の肌の戦士と魅惑的なボディラインを見せる女が顔を見つめ合わせ、

そして、唇を重ね合わせる。

その一方で、

シュッシュッ

クチュッ!

2人の手は互いの股間に潜り込み、

それぞれの性器を刺激始める。

しばらくして、

『やっやらせて…』

裕三の縦溝を広げながら真美が囁くと、

『ふふっ

 いまはダメよ、

 あたし達にはしなくてはならないことがあるでしょう?』

と裕三は告げ、

『その代わり、

 証を立ててあげるわ』

真美のペニスを握っていた手に力を入れ扱き始めた。

『うぅっ』

裕三の手業に真美は顎をあげ、

大きく膨らんだヒップに手を当てると、

フフッ

裕三は笑みを浮かべながら

スッ

真美の前に跪き、

キュッ

見事に膨らんだ自分の乳房を寄せると、

真美のペニスを挟み込んだ。

『うふっ

 パイズリしてあげる。

 うわぁぁ、

 イリガがとっても熱くて固くなっているわ』

乳房で真美のペニスを感じながら、

裕三はそう言うと、

キュッキュッ

キュッキュッ

乳房を使ってペニスを扱き始めた。

『あうっ

 あうっ
 
 でっでるぅぅぅ』

その途端、真美は腰を小刻みに振り始めると、

直ぐに、

ビュッ

ビュビュッ!!

っと裕三に向けて己の熱い精液を放ってしまったのであった。

『もぅ、

 相変わらず早漏なのね』

顔から胸にかけてべっとりと付いてしまった白濁した精液を

口に運びながら裕三は文句を言うが、

『くはぁ…

 はぁはぁ、

 あぁ、この味…

 とっても美味しい…』

と言いながら精液を口につけた。

すると、

スッ!

キュッ!

この時を待っていたかのように

真美の身体に朱染めの衣・シュカが巻き付き、

手には槍が濁られる。

また、裕三には眺めの衣が腰に巻き付き、

トンボ玉でできた大きな首飾りが首回りを飾る。

『さぁ、行こう、

 サバンナへの里帰りよ』

変身が終わったことを感じ取った悠三は

そう言いながら真美に向けて手を差し伸べると、

『えぇ、行きましょう』

差し伸べられた手をとり真美はそう返事をする。

その途端、

ブワッ!

熱い風が一気に吹きぬけると、

二人の前には一面の大草原が広がっていた。

そして、それを見た二人は大きくうなづくと、

大草原・サバンナへと第一歩を踏み出していった。



そう、1年前、あの廃屋で見つけたカードによって、

真美はマサイの勇者へと変身し、

悠三もまた、マサイの女に変身してサバンナに連れてこられた。

だが、帰りたいという二人の願いをマサイの長は聞き届け、

年の初めの日に必ず長の元に駆けつける約束と共に、

二人を元の姿に戻し、そして帰したのであった。

そして、それから1年が過ぎ、

二人は約束を果たすために、

このサバンナに戻ってきたのであった。



おわり