風祭文庫・モラン変身の館






「瑞恵の願い」


作・風祭玲


Vol.644






ンモー

牛の鳴き声が澄み渡ったサバンナの空に吸い込まれていく、

「はぁ…」

その声を聞きながら腰を下ろしていたあたしはため息をつくと、

「どうした、

 オレティンガ」

と声が掛けられた。

「え?」

その声にあたしは振り返ると、

「なんだ、またため息か…」

いつの間にか黒い肌に朱染めの衣・シュカを巻いたマサイの戦士が数人、

あたしの背後に立ち、見下ろしていた。

「え?

 あっいや、
 
 これは…」

見られたくないものを見られた恥ずかしさを感じながら

あたしは慌てて立ち上がると、

「オレティンガっ

 いい加減、モランとしての誇りを持て」

と一番年長のラフィキが注意をした。

「そんなこと言っても…」

その言葉にあたしが口ごもると、

ムギュッ!

いきなりあたしの股間が鷲づかみにされ、

「オレティンガっ

 お前、こんなに大きいイリガを付けて居るんだろう」

と2番目の年長であるマバテテが怒鳴り、

「うっ」

その声に臆したあたしは目を思わず瞑ってしまったのであった。



確かに…

あたしのお股にはオチンチンがある。

しかも、とても大きなオチンチンで

身体に巻いているシュカの裾から先っぽが見えているのである。

これは、あたしが1日も早くマサイに…モランになれるようにと、

あたしの父さん・ヌインガが生やした特大のオチンチンだった。

グニッ

マバテテの手があたしのオチンチンを強く握りしめると、

「あっ

 うっ」

あたしは小さな声を漏らし、

そして、それに合わせるようにして

ムク

ムクムクムク

あたしのオチンチンは大きくそして固くなり始めた。

「あっ

 だっだめ」

シュカの裾を捲り上げゆっくりと鎌首をもたげてゆくオチンチンに

あたしは困惑しながら押さえ込もうとすると、

グッ

いきなりあたしの手が掴まれ、

「おいっ

 見ろ!」

とマバテテが仲間に向かって声を掛けた。

すると、

「なんだ、オレティンガっ

 この程度でカウカウしているのか」

「あはは…

 それでも誇り高いモランか」

とマサイ達が笑い始める。

「やめて…」

彼らの笑い声に向かってあたしはそう叫ぶが、

「へへへ」

そのうちのひとり、

マバテテが笑いながらあたしのオチンチンを鷲づかみにすると、

シュッ

シュッ

長く伸びてしまったあたしのオチンチンを扱き始めた。

「あっ

 いやっ
 
 ダメっ」

そう訴えながら、

あたしはマバテテの行為を止めさせようとするが、

しかし、

「もっと、扱け」

「そうだ」

他のマサイ達はあたしの両腕を拘束しさらにはやし立てる。

「う、うっ

 そんなぁ」

マサイ達の声の中、

恥ずかしさからあたしは顔を背けるが、

けど、マバテテはそんなあたしには構わずにオチンチンを扱き続けた。

シュッ

シュッ

シュシュッ

シュシュッ

次第にマバテテの手の動きが速くなり、

そして、それと共にオチンチンの根元に熱いモノが溜まり始める。

「いやっ

 やめて、
 
 出さないで、
 
 お願い。
 
 出したら、
 
 また、あたし…」

それを感じながらあたしは必死になって懇願するが、

けど、マバテテの手は止まらない。

シュッシュッ

シュッシュッ

マサイ達が手に持つ牛追いの棍棒よりも太くなってしまった

あたしのオチンチンは空を睨み、

トロッ…

その先端よりガマン汁が滴り落ち始めた。

もぅダメ…

そう観念したとき。

ビクンッ!

「あっ」

あたしの中で何かが弾けると、

ビュッ!

まるで水鉄砲の如くあたしのオチンチンは空高く向けて、

マサイの精を噴き上げてしまったのであった。

「あぁぁぁぁ…」

出ちゃった…

出しちゃった…

オチンチンの後ろに下がる袋の中で作られたあたしの精、

その精が飛ぶのを見ながらあたしは虚脱感を味わいはじめる。

ガクッ!

身体の力が抜け、

あたしはその場に座り込んでしまうと、

「あはははは」

マサイ達の笑い声が響き渡る。

そして、その笑い声の中、

メリッ

ミシッ…

身体を作り替える音が身体の奥より響いてくる。

あたしの身体は完全なマサイにはなっていない。

でも、こうして射精をするごとにマサイへとなって行く、

少し膨らみが残っていた乳房がさらに小さくなり、

代わりに胸板が突き出してくる。

身体のあちこちから筋肉が少し盛り上がるのを感じながらあたしは俯いていると、

「オレティンガ。

 お前が一人前のモランになるまで、

 俺たちが精を吐き出してやるからな」

と声を掛けられる。

そんな…

みんなであたしをマサイにしようとしているの?

その声にあたしは声を上げずに心の中で呟いた。



ンモー…

ウシたちと共にあたしはマサイ村に帰ってくる。

この村で過ごすようになってかなり時が過ぎているのであろう。

「みんなどうしているかな」

マサイになる前の昔を思い出しながらあたしはボマに入ろうとしたとき。

「瑞恵っ」

と声が掛けられた。

「え?」

その声にあたしは振り返ると、

そこにはなつかし人の姿が…

「あっ隆ぃ、来てくれたの?」

思わずあたしの口から久方ぶりの言葉がこぼれ落ちる。

木田隆、あたしがこのマサイになっているコトを知っている唯一の人間。

彼の口が動くと、

「え?

 判らなかったって、

 ひっどーぃ!!

 あたしが判らないなんてぇ!!

 どういう目をしているのよっ」

とあたしは文句を言う。

すると、彼は素直に謝り始めると、

「ダメ、

 謝っても許さないわよ」

あたしは拗ねてみせる。

けど、

でもやはり不安になり、

「……ねぇ

 …そんなにあたし見分けが付かなくなっちゃってる?

 そう…うーショック、

 マサイになりきらないように頑張ってきたのになぁ…」

ここでは判らないあたしのマサイ化の進み具合を尋ねるが、

しかし、その答えにあたしはショックを受ける。

落ち込むあたしに隆は心配そうにすると、

「大丈夫よっ

 身体はマサイになっても

 心はマサイにはならないから」

と胸を張るが、しかし、

「でも…

 でもね…

 実は最近あたし、

 これまで覚えてきた事を忘れてきているみたいなの」

といま身体の他に心までマサイ化してきていることを告げた。

「言葉遣いも変わってきているし…

 ねぇ

 仮に…仮にだよ…

 あたしがマサイになってしまっても、

 モランになってしまっても、

 こうして会いにきてくれる?」

あたしは隆にそう尋ねた。



お願い…

あたしがマサイになっても…

逢いに来て…



おわり