風祭文庫・モラン変身の館






「花嫁はモラン」


作・風祭玲

Vol.295





ゴワァァァァ!!

私がハンドルを握るサファリカーは

サバンナの大地を左右に切り裂くようにして伸びていく道を突き進んでいく、

「ねぇ!!」

舗装と呼べるものが一切無い赤茶けた道はいたる所に凹凸が出来、

砂埃を上げて疾走するサファリカーは上下に激しくバウンドする中、

椅子にしがみつくように座っている助手席の裕子が私に向かって声を上げると、

「なんだ?」

その声にハンドルを握りながら私は聞き返す。

「ちょっと海外旅行って言うからついてきたのに、

 なんでアフリカなのよ」

と裕子は私にサバンナに来た理由を尋ねて来た。

「あぁ…

 私が来たかったからさ」

彼女問いに対して私はそう答えると、

「?」

裕子は一瞬合点のいかない表情をしてみせるが、

ドンッ!

と言う物音と共にサファリカーが激しく揺れると、

「きゃっ!」

小さな悲鳴を上げて私の腕にしがみついてきた。

「おいっ、

 あまり強く握らないでくれ、

 運転が出来ないだろう」

しがみつく裕子に向かって私は怒鳴ると、

「だってぇ!」

彼女は泣き顔を見せるが、

「それに…

 それにお前は私のためなら何でもするって言ったろ?」

先日の私の誕生日に裕子から告げられた言葉を指摘する。

「え?

 何かいま言った?」

騒音で私の台詞が聞き取れなかったのか裕子が聞き返してくると、

「いや、なんでもない。

 おいっ、ほら向こうの草原…ゾウが居るぞ!!」

そう言いながら私は草原の向こうを悠然と歩くゾウの群れを顎で指し示すと、

「うわぁぁぁぁ!!、

 凄い!!」

たちまち裕子ははしゃぐ様に声を上げる。



それから小一時間後

草原の中にいま走っている道と1ランク下の細い道路とが斜めに交差する交差点が見えてくると、

「これかな?」

周囲の景色と手書きの地図を見比べながら判断した私は

クッ

ハンドルを左に切り、

サファリカーを細い道へと進ませて行く。

「あれ?

 道から外れちゃったけどいいの?」

周囲の景色が90°動いていくのを見ながら裕子がやや不安そうに尋ねてくると、

「あぁ、いいんだ。

 いまマサイの村に行ってみるのさ」

車窓の奥に雪を頂くキリマンジャロの姿を横目に見ながら私は答える。

「マサイの村?

 あっマサイ族の所に行くんだ」

それを聞いた裕子は再び目を輝かせてはしゃいで見せると、

「まぁな…」

私は意味深な笑みを浮かばせつつサファリカーを走らせる。



幾度もブッシュの小枝を車体のこすりつけながらサファリカーを進めていくと、

「おいっ、

 あそこ…ライオンが居るのが見えるか?」

と私は右斜めはるか前方を指さしながら指摘するが、

「え?

 どこどこ?」

裕子にはそれが見えないのか必死になって探し始めた。

「マサイ族の戦士・モランは一人でライオンを倒しに行くそうだ。

 で、倒したライオンの数がモランの地位に繋がるんだって」

ライオンの姿を探し続ける彼女に向かって私はそう説明すると、

「ふぅぅぅん…

 大変なんだ…」

裕子は神妙な面もちになりながら大きく頷いて見せる。

「…どうだ?

 裕子、お前もモランになってみるか?」

そんな裕子に向かって私はそう向けてみると、

「ヤダったら…雅人さん、

 いきなり何を言うの?」

彼女は笑いながら私の肩を

ペン!!

と叩いて見せる。

「そうか?

 似合うと思うけどなぁ…

 モランになった裕子って」

ブッシュの向こうで

サファリカーを見つめているマサイ戦士の姿を見つけた私は彼を横目にそう言うと、

「悪い冗談は言わないでよ。

 大体あたしは女の子よ、

 女のあたしがなんでマサイ族になれるのよ」

と裕子は笑って見せる。



程なくして進んでいく道と草原との見分けがつかなくなった頃、

行く手に牛糞と泥で作られたマサイ族の集落が見えてくる。

私が目指していた村である。

「うわぁぁぁぁ」

それを見て裕子は感嘆の声を上げると、

「ここか…

 カリカラと言うオロイボニ(呪術師)が居る村は」

そう呟きながら私は意を決しながらサファリカーを止め、

そして裕子と共に車から降りた途端、

『マサトか、

 久しぶりだな。

 何しにきた?』

村の出入り口で見張りをしていたマサイ戦士・モランが駆け寄るなり私に尋ねてきた。

朱染めの布・シュカを身体に巻きつけただけの鍛え上げた逞しい身体。

赤土で結われた髪。

そして獣を思わせる鋭い光を放つ目が

彼が人の姿をした獣であることを訴えるが、

『オレ・ナムスか、

 久しぶりだなっ、

 元気そうじゃないか』

私は臆することなくモランに向かって挨拶をすると、

『また、ここに住みに着たのか?』

と意外にもモラン・ナムスは笑ってみせる。

しかし、裕子はナムスの姿に臆したのか私の腕に抱きつき、

じっと身体を寄せて見せていたのであった。

『カリカラは元気か?

 私は彼に会いに来た』

ナムスに向かって私はマサイの言葉で告げると、

『カリカラに?』

それを聞いたナムスは訝しげに私を見つめ、

『少し待ってろ』

と告げるなり村の中へと入って行く。

「ねぇ…いま何って言ったの?」

マサイの言葉がわからない裕子は私とモランがした会話について尋ねると、

「あぁ、村に入れてくれって言ったんだ」

と私は返事をする。

「ふぅぅん、

 そうなの?」

それを聞かされた裕子は頷いてみせると、

村に入っていったモランが戻り、

『カリカラはお前に会うと言った。

 ついてこい』

と告げるなりモランは村の中へと私たちを案内していく。

集落は10軒近い土饅頭のようなマサイの家屋で構成されていて、

カリカラの小屋はその奥にあった。

『ここだ…』

案内してきたモランはカリカラの小屋を指さして見せると、

『ありがとう』

私は感謝の言葉を述べると、

以前の記憶とは形が変わっている小屋の中に入り、

続いて裕子も入って来た。

『マサトか…』

私が小屋に入った途端、奥から嗄れた男の声が響き渡り、

闇に中で大きく見開いた目が私を見据える。

「!!!」

さすがの私もそれを見たとき少しは驚いたが、

『お、お久しぶりです。

 カリカラさん』

と気持を落ち着けつつ、

久々に顔をあわせるカリカラに向かって挨拶をして見せると、

『…連れてきたのか?』

彼は言葉短く私に尋ねる。

『えぇ…よろしくお願いします』

とカリカラに向かって言い終わる前に

ドサッ!!

私の隣にいた裕子がまるで崩れ落ちるように倒れてしまったのであった。

「!!」

突然のことに私は少し驚くと、

『本当にいいんだな』

念を押すようにカリカラが私に尋ねる。

『…頼みます』

一瞬言葉に詰まりながらも私はカリカラを見据えて答えると、

『判った』

と返事をしながらカリカラは徐に腰を上げて見せる。



私がカリカラと出会ったのは数年前のことだった。

学生時代の締めくくりにとこの地を訪れていた私は、

このマサイ村でキャンプを張り、

悠然とそして逞しく生きる彼らの姿に感銘し、

予定を大幅に越してマサイの村に住み着いてしまったのであった。

そんな私の姿を見てか村に住むあるモランから

”いっそマサイにならないか、カリカラに頼めばお前をマサイにしてくれるぞ”

と誘われたのであった。

最初は冗談だと思ったのだが、

だが、オロイボニであるカリカラは不思議な秘術を持っていて、

例え誰であろうともその秘術を使えばマサイに変身させることが出来ることを知るのと同時に

私の脳裏にある計画が持ち上がったのである。

そして私はその計画に必要な贄を求めここに連れてきたのであった。

「う…ん…」

着ていた服を全て脱がされ、

白い肌を晒す裕子がカリカラの小屋の真ん中で仰向けになって身を横たえるが、

だが、彼女は呻き声を上げるだけで意識は戻っては居なかった。

そしてその裕子の周りをマサイの槍・ムクキを手にしたカリカラが呪文の様なものを唱えつつ

ゆっくりと一周してその頭元に立つと、

ザクッ!

裕子の頭上スレスレにムクキを突き刺さしてみせ、

さらに露になっている裕子の腰を朱染めの布・シュカを広げ覆って見せる。

そして、

『このムクキには死しても未練を残すモランの魂が宿っている』

とカリカラは私に向かって言うと、 

裕子の右側に大きく胡座を掻いてみせ、

ゆっくりとした口調で呪文を詠唱し始めた。

そして呪文を唱えながら

手にした棍棒・ルングで裕子の身体を舐めるようにしてたたき始めたのであった。

ゴクッ!

噂に聞いてたカリカラの呪術を目の当たりにしながら私は生唾を飲み込むが、

だがカリカラの詠唱は一向に終わらず小一時間近く唱え続ける。

その様子を一瞬の隙も逃すまいと見てきた私もさすがに疲れを覚えた頃、

ボゥッ

裕子の頭の上で突き刺さっていたムクキが微かに光り輝いたと思った瞬間、

フワッ!!

まるで人魂のような発光体がムクキから離れた。

「なっ」

いきなり出てきた発光体に私は驚くが、

しかしカリカラが唱える呪文は乱れずに続き、

発光体はまるでその詠唱に踊るかのようにカリカラの周りを飛んでみせる。

そしてカリカラがルングを持つ手をゆっくりと起こして見せると、

その先を発光体に絡ませるように回し、

『!!っ』

唱えていた呪文が止むのと同時に

シュッ!

カリカラは裕子に向けてルングの先を振り下ろして見せた。

すると、

スゥ…

発光体はまるでピッチャーの手から放り投げられたボールの如く裕子に向かって飛び、

彼女の口元に当たるのと同時にまるで飲み込まれるが如く体内に入っていったのである。

その途端、

「くっはぁ!!!」

真一文字に結ばれていた裕子の口が微かに開き、

そこから悶えるような苦しそうな声がこぼれるが、

しかしカリカラは裕子に構わず再び呪文を唱えはじめる。

だが、再び始まったその声には鬼気とした力が篭り、

その声に応えるようにして、

「あうっ!」

意識を失っている裕子が声をあげると、

ビッ

ビシビシッ!!

その身体から不気味な音が響き始め、

ムクッ!!

ムクムクムク!!

彼女の身体がまるで蠢くように小刻みに動き始める。

「始まったのか」

それを見た私はただ息を殺しジッと変身してゆく裕子の姿を見つめているだけだった。



「あぐぅ!」

「うぐぅぅ!」

「ぐわぁぁ!」

気を失ったままの裕子が吼えるように声をあげ、

その声に合わせるように

ビッ

ビシビシッ!!

ビシビシッ!!

ムクッ!

ムクムクムク!!

変化は徐々に広がり裕子がまるで何か別の生き物に食い荒らされるかのように蠢き始める。

そして露になっている彼女の手足に次々と筋肉の盛り上がりを作っていくと、

「うぐわぁぁ」

小屋の中に裕子のうなり声が響いたのであった。

すると、

メキメキメキ!!

まるで引き伸ばされるかのように裕子の手足が伸び、

さらに

ミシッ!

ミシミシミシ!

ゴキゴキ!

今度は彼女の体中の骨格が変わり始めたのか、

不気味な音が大きく響き始める。

「裕子…」

変身してゆく裕子の姿を見ながら私はそう呟くが、

ベキベキベキ!!

次第に裕子の顔が変形しはじめ、

一時雑誌のグラビアアイドルをしていたと言う顔に眼窩が突き出して来ると、

鼻筋が突き上がり顎周りが太くなって行く、

ゴクリ

それらの変化を私は固唾を飲んで見守っていると、

裕子の変身は更に進行し、

ジワッ

白い彼女の肌が墨で染めたように黒く染まっていくと、

ムワッ

っとキツイ体臭が吹き上がるかのように漂いはじめる。

そして、

グッ!

ググググッ!!!

朱染めのシュカに覆われた股間が突き上がり始めると、

「ちっチンコか…」

それを見た俺は震える手で股間が突き上がって行くシュカをめくり上げた途端、

ムクッ!

漆黒の肌に覆われた股間から勢い良く付きあがるマサイのペニスが

目に飛び込んできたのであった。

「すごい…」

自分のとは明らかにスケールが違う肉棒とその下で2つの膨らみを持つ袋の姿に

私は声を失いつつ捲ったシュカを戻そうとしたとき、

『マサト…勇者の証を』

とカリカラは私に告げる。

『え?』

その言葉に私は小さく驚くと、

『お前の手で勇者の証を立たせるのだ』

とカリカラは私に命令をしたのであった。



勇者の証…

それはそそり立つペニスを扱き、

そして男の精を高々と吹き上げて勇者となったことを皆に知らせる儀式…

カリカラからその事を聞いていた私は

裕子の股間からそそり立つペニスに手を触れるとそっと握り締める。

『熱い…

 そして、硬い』

初めて握った裕子のペニスの感触をそう呟きながら、

シュッ

シュッ

私の手はそそり立つ裕子のペニスを上下に扱き始める。

すると、

「あぅぅぅぅぅぅ!!」

それに感じたのか裕子はうめき声を上げ、

それを聞きながら、

「ハァ…」

「ハァ…」

息を荒げながら私は裕子の出来たてのペニスを扱き続ける。

そして、

「うぅ…うっ…あうううっ!!」

次第に裕子はうめき声を張り上げてくると、

ついに、

「あぁ!!

 あぁ!!
 
 あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

腰を激しく痙攣をさせながら、

ビュォッ!!

扱かれていたペニスの先より白濁した精を吹き上げてしまうと、

吹き上がった精は大きく弧を描きながら、

ピチャピチャピチャ!!

小屋の中にまき散らしていったのであった。

「ははははは…

 これは凄い、

 すごいや」

私は手にベットリと付いた裕子の精液を眺めながらそう呟くと、

『ふぅ…

 良くやった。

 このムクキに封じ込められていたモランの魂をこの者の中に根付き、

 そして勇者の証を立てたことでこの者をキジャーナへと姿を変えさせたのだ』

とカリカラは満足そうに言い切って見せる。

『キジャーナ?

 モランでは無いのか?』

その事を聞いた私はそう聞き返すと、

『モランは姿を変えただけでなれるものではない。

 これからモランになるための試練を受けなければならない』

とカリカラは私に言う。

確かに漆黒の肌を持ち逞しいマサイと同格の骨格とペニスを持った裕子は

マサイの若者・キジャーナになったとは言えるだろうが、

だが、他のモランと比べると肉体は貧弱であるため野生味溢れるモランとは言いがたかった。

『確かに』

カリカラのその言葉を聞きながら私は頷いた後、

『裕子ではなくなったけど、

 まだキジャーナなのですね。

 じゃぁカリカラさん、

 この者を立派なモランにしてくださいませんか』

そうカリカラに告げると、

コクリ…

『マサトの頼みを聞かないわけには行かないな、

 判った』

とカリカラは大きく頷いてみせ、

そして、

『まず、この者にマサイの名を授けよう、

 ユコ

 オレ・ユコ

 それがこのものの名前だ』

と手にしたルングで裕子の漆黒の身体を叩いて見せると、

私は再び裕子に視線を移し、

「裕子っ、

 逞しいモランになるんだぞ…」

そう囁きながらそっと彼女…いや、彼の額の汗をぬぐってあげたのであった。

そして翌日…

サバンナを去る私がこのマサイ村に出向いてみると、

漆黒の肌に黒髪を垂らすひ弱そうなキジャーナが朱染めのシュカを身体に巻いた姿で

カリカラの小屋の前で呆然と座り込んでいる姿が目に入るが、

「ふっ」

私はそんなのキジャーナの姿を眺めた後、

カリカラには会わずにそのまま引き返したのであった。



それから3年が過ぎ、

再びサバンナを訪れた私はこのマサイ村に向かっていた。

『オレ・ユコはココには居ない…』

村に入ってくる者を監視をしている新顔のモランは私に向かってそう告げると、

『わかった、

 じゃぁカリカラに会わせてくれ』

私はオロイボニであるカリカラに会わせてくれる様に頼んだ。

『判った。

 そこで待ってろ』

私の頼みにモランはそう言い残すとムクキを片手に集落の中に入って行く。

そして暫くしてそのモランが私の前に戻ってくるなり、

『来いっ』

と短く告げ私をカリカラの元へと案内して行く。

『…オレ・ユコは立派なモランになった。

 お前に返すのが惜しいくらいだ…』

3年ぶりに再開したカリカラは裕子のことをそう評して見せると、

『そうですか』

その言葉に私は満足そうに頷いて見せる。

『うむっ、

 シンバを一頭倒すだけでも至難の業なのにオレ・ユコは既に3頭も倒しておる。

 ほらそれが証だ…』

そう言いながらカリカラの黒い手が指さした先には

倒したシンバ(ライオン)の鬣で作った尾のある帽子が3つ壁に掛けられている。

『ほぅ、これは凄い…』

感心しながら私はそう呟くと、

『すまぬが、

 オレ・ユコをこのままここに置いていてはくれないか?』

カリカラは私に提案してきた。

『何でです?』

『あれほどの勇敢なモランはそう滅多には居ない…

 オレ・ユコと結婚をしたがっている娘も大勢居る』

と言うカリカラの言葉に、

『残念ですが、ユコは私の妻となる者ですよ』

私はそう返事をすると、

『なぜだ、

 オレ・ユコは既に女ではない。

 モランだ。

 男のお前と結婚は出来ないぞ。

 何のためにモランにしたというのだ?』

私の返事に驚いたカリカラは食って掛かるようにそう言うが、

『いえ、私が結婚をする相手はモラン・オレ・ユコと決めていました。

 だから彼女をココに向かわせるように仕組み、

 そして、あなたの手によってマサイに…モランにしたんです。

 本当を言いますと、

 わたしはモランの花嫁をもらうのが憧れでしたので…』

と私は理由を言う。

だが、

『その考え方は私には理解できない。

 女である自分の婚約者をマサイに…

 しかも、男にしてモランにする…

 何でそのようなことをするのか私には…』

カリカラはそう呟くとじっと下を見据えていた。

『そうですね…

 何ででしょうか?

 私にも判りません。

 ただ、気がつけば自分の惚れた女性を

 鍛え抜かれたマサイの戦士・モランにする事が出来たらどんなに素晴らしいか…

 そのことばかりを考えていました』

『………』

私の言葉にカリカラは何も答えなかった。

『で、オレ・ユコは…』

『いまはウシと共に村の外に出ている、

 恐らく今日の夕方には戻るだろう』

『僕の依頼については?』

『いや、何も話していない…』

『そうですか、

 では、会うのが楽しみですね』

カリカラに向かってそう言うとその場を辞し小屋の外へと出て行く。

そして、私が表に出た途端、

ヒュオォォォォ…

乾いた風が集落を吹き抜けて行ったのであった。



それから私はマサイの戦士となった裕子が帰ってくるのを村のはずれでジッと待っていた。

高かった日が徐々に傾き、

次第に日差しが弱くなった頃…

ンモー

遠くからウシの啼き声がかすかに聞こえてくる。

「来たか…」

それを聞いた私は徐に腰をあげて村の外へと出ると、

地平線の彼方から迫ってくるウシの群れを見つめたのであった。

やがて、ウシ達は私の目の前を悠然と通り過ぎ、

続々と集落の隣にある柵の中に入っていくが、

不意に歌声が響き渡ると、

『…♪……』

朱染めのシュカを黒光りした身体に巻き、

そしてムクキを担いだ男達、

そう村を出てからずっとウシの警護をしていた逞しいモラン達が

手にしていたムクキを次々と地面に突き刺して円陣を組むと一斉に歌い始め、

そして次々とマサイジャンプの競い合いを始めだしたのであった。

「壮観だなぁ…」

膝を曲げることなく足首の力のみで軽々とジャンプして見せる彼らの姿に私はしばし見入るが

だが、

ザッ

私はモラン達の方へとゆっくりと近づき始めると、

「!!」

その中の一人が私に気づいたのか、

不意にマサイジャンプを止め私の方をじっと見つめて見せる。

私を見つめる彼のその顔はそれ以外のモラン達と比べると、

どこか女性的な印象を与えるが、

だが、逞しく鍛え上げられた肉体、

赤土を練って結い上げ髪、

腰に下がるシミ(山刀)と手に携えているルング

色落ちし薄汚れているシュカを纏うその姿はまさしくサバンナの戦士・モランであった。

「裕子…」

私を見つめているモランに向かってその言葉を出すと、

ハッ

モランはハッと驚いた表情をしながら口を両手で塞いで見せる。

「裕子っ!!」

私は再度大きい声で彼に向かってそう呼びかけると、

「そんな…なんで…

 なんで…雅人さんが…」

モランは目を丸くしながら声を上げたのであった。

すると、

「探したぞ、裕子!」

彼に向かって私はそう言いながら一歩一歩近づいていくと、

「……」

それを見た他のモラン達は歌とマサイジャンプを止めると一斉に散り、

遠巻きにしながらジッと見はじめた。

すると

「来ないで!」

モランは私を静止するかのように手を突き出しそう声を蟻あげると、

一歩一歩後ずさりしながら

「だっダメ…

 それ以上近寄らないで!!」

と叫んでみせる。

「なんで…って

 迎えに来たんだよ、

 さぁ裕子、僕と一緒に帰ろう」

なおも手を差しながら私は優しくモランに告げると、

「だめよ…

 見て判らない?

 あたしはマサイのモランなのよっ

 ほら股にこんなオチンチンを生やしている男なのよ」

バッ

モランは身体に巻いてあるシュカを捲り上げて見せると、

ビンッ!!

股間で勃起しているペニスをさらけ出して見せる。

その姿は大きく変わっていて3年前に亀頭を覆っていた皮はいまは無く、

代わりに白い傷が大きくエラを張るカリ首の周りをぐるりと一周している姿を見て、

「モランになるために、

 あの後、割礼を受けたのか…」

と私は呟くと、

「そんなことは関係ないよ、

 君が男だろうが女だろうが僕には大したことではない、

 裕子…ほらあの時言っただろう、

 どんなことをしても君を命を懸けて守るって…」

そう声をあげるが、

「…そんな…だったらなぜ、

 あたしがマサイにされる前に助けてくれなかったの?

 雅人さんの嘘つき!!」

とモランは私を責める。

「ごめん、

 君が大事なときに助けにいけなくて…

 でも、僕も必死で君を探していたんだ。

 突然君が居なくなってしまい、

 僕は途方にくれながら探したんだよ。

 あらゆる手を尽くして…

 ようやく君の所在を知ることが出来たんだ…

 …判ってる。

 君の身体はもぅ後戻りができなくなってしまっていることを…

 でも、僕にとって裕子っ

 君はどうしても必要なんだ。

 だから…」

と私は訴えると、

「グッ」

見る見るモランの顔が歪みだし、

ポロポロ

っとその精悍な顔には似合わない涙を流し始めると、

「うわぁぁぁぁん…

 あたし、怖かったの!!

 気がついたら雅人さんはいなくなっているし、

 それにあたし…マサイの男にされているし、

 もぅ、どうして良いのか判らなかったの、

 それでカリカラさんに言われるまま、

 あたし、マサイの一員として生きてきたけど、

 でも、このまま本当にモランになってしまうんじゃないかって…

 そして、2度と雅人に会えないかも…

 って思ったとき、寂しくて寂しくて…」

と訴えながらモラン、いや裕子は私に抱きついてきた。

「そうか、そうか…」

抱きつく裕子に向かって私はそう言いながら

嗚咽をしながら訴える彼女をずっと抱きしめていたのであった。



夜…

私と裕子は彼女がお世話になっているカリカラの小屋の裏で

燃え上がる火を前にしながら二人並んで座っていた。

「え?、

 本当に…?」

そして私の説明に漆黒の肌を晒す裕子が驚きの声を上げると、

「あぁ、既に手配をしてある」

私はレンガ色に地面に小枝で日程を書きながらそう説明をした。

「そんな…」

それを見ながら裕子が困惑すると、

「どうした?」

私はそのわけを尋ねた。

すると、

「だって、あたしは男…」

身を引きながら裕子はそう言うと

グッ

「あっ」

そんな彼女を私はそっと抱き寄せると、

「さっき言っただろう、

 君がどんな姿でも関係ないって」

と言いながら私は裕子の顔に自分の顔を寄せると

彼女の厚い唇に軽くキスをして見せる。

「!!」

私の行為に裕子は目を丸くすると、

「なにをそんなに驚いているんだい?」

「だって…」

困惑した表情で裕子はそう呟くと、

「いや?」

と私は聞き返した。

ブンブン

私の言葉に裕子は首を強く横に振ると、

チャラチャラ…

彼女の髪を止めるモランのアクセサリーが軽い音を立てる。

すると私は裕子の股間がシュカを持ち上げているのを確認すると、

「ふふ…ここは既にビンビンだね」

そう囁きながら私は彼女の股間で起立している極太のペニスに手を伸ばし、

シュカ越しに

ギュッ

っと握り締めて見せた。

「(ビクッ)

 あっ、だめっ

 男同士でそんな…」

股間からの感触に身をよじりながら裕子は私に訴えると、

「なにを嫌がっているんだ?

 村を出るとモラン同士、

 こういうことをしているんだろう?」

と私は指摘する。

「そっそれは…」

私の指摘に裕子は明らかに触れて欲しくないような顔をすると、

「お尻は経験したのか?

 どれだけのモランのチンコを舐めた?」

と追い討ちをかけるように私は尋ねながら、

シュッシュッ

シュカ越しにそそり立つペニスを扱いてみせる。

「いや(はぁ)、

 それは聞かないで(くはぁ)…」

私にペニスを握られて次第に上気してきたのか

荒い息を吐きながら裕子はそう訴えるが、

「さぁ本当のことを言うんだ、オレ・コユ

 お前は何人のモランに抱いてもらった?」

私はそっと彼女の耳元でそう告げながら、

ヌプッ!

シュカの中に手を入れ、

お尻の穴の周りを指先で刺激してみせる。

「あふんっ」

ギュッ!

と目を瞑り裕子は堪える表情を見せると、

それを見ながら私は頭を下げると

シュカから覗く彼女の厚く盛り上がった胸板に舌を這わせた。

ザラッ

裕子の肌に付いている砂の感触とピリピリと来る塩の刺激が舌に響く、

「!!っ

 あっだめ…

 そんな…

 あたし…身体を洗っていないから、

 きっ汚いです…だから…」

両手で私の身体を引き離そうとしつつ裕子はそう言うが、

「前はいつ洗ったの?」

舌を這わせながら私は裕子に尋ねる。

すると、

「うっうん…

 …えっと…いまの月のその前のその前だから…」

顎を上げながら裕子は私の質問にそう答えると、

「そうか、そんなに洗っていないんだね」

「だって、暫く雨が降らないから…」

私の言葉に裕子はそう説明をすると、

「なぁ、これ気持ち良いか?」

シュッシュッ

私は彼女のシュカの中に手を忍び込ませると再びペニスを扱きはじめた。

「んあ…あぁん…いっいぃ…」

直接扱かれることが感じているのかかつて裕子の女陰のなかで

小さく固まっていたクリトリスであったペニスからの刺激に

裕子は幾度も腰を突き上げ酔いしれる。

「出しても良いよ…」

裕子の耳元で私はそう囁くと、

「え?」

裕子は一瞬、困惑した顔をした。

「女の子とはセックスをしたの?」

私はそう尋ねると、

ブンブン

裕子は首を横に振り、

「幾度も誘われたわ、

 でも、マサイの女の子しちゃうとあたし…

 あたし…本物のモランになってしまうような気がして全部断ったの」

と答えて見せる。

「そうか、

 じゃぁ…オナニーは?」

「すっ少しだけ…」

恥ずかしいのか裕子は私から目をそらしながらそう呟くと。

「恥ずかしがることはないよ、

 みんなやってきていることだよ」

私はそう言いながら、

シュッシュッ

とさっきよりも勢いをつけて裕子のペニスを扱く。

「あっ…

 いっいぃ…

 もっと…もっときつく扱いて」

あれがけ嫌がっていた裕子だったが、

しかし、ジワジワくる男のオナニーの快楽に身を委ねはじめると、

逆に催促を始めだした。

「はぁはぁ」

「はぁはぁ」

夜空に私と裕子の荒い息の音が響き渡らせながら、

「あぁ…

 いっいぃ…

 イクゥ…」

鍛え上げられた黒い身体を海老反らせながら裕子は声を上げると、

「あぁ…出ちゃう」

「出ちゃう」

っと射精が近づいてきていることを訴え始めてきた。

「ふふ」

シュッシュッ

シュッシュッ

そんな裕子を私は笑みを浮かべながら

次第に扱くスピードを上げていくと、

「あっだめっ

 でっ出ちゃう!!

 お願い!

 手を離して!!」

と慌てながら訴えるが、

しかし、私は裕子の意に反してさらに扱くスピードを上げていくと、

「出る出る出る出る!!」

裕子は幾度もその言葉を並べ始めた。

すると私はその裕子の唇と自分の唇でふさいだ途端。

「うぐっ」

プッ

ビュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

っと上に向けた裕子のペニスから白い粘液が高く吹き上げ、

夜空に向かって飛んでいったのであった。

「んんっ」

股間に溜まったものをすべて吐き出すように

裕子は目をきつく閉じると力み続けると、

ピュ

ピュ

私の手が動くたびに裕子のペニスから白濁した粘液が噴出し、

「おぉ…

 凄い…

 流石はモランだ…こんなに濃いのがでるなんて」

私は裕子が吐き出した精の粘度に感心しながらそう囁くと、

「やめて…そんなことを言わないでぇ」

と言いつつ裕子は顔を振ってみせる。

そしてその夜の私と裕子の営みはいつまでも続いていったのであった。



カラン…

「あっあのぅ…本当に良いの?」

「あぁ…」

「でも…」

「なにをそんなに恥ずかしがっているんだい?」

「だってあたしは…」

カラン…

鐘の音が響く教会の中で正装した私の前に

困惑した表情をした筋骨逞しいモランが立っていた。

「………」

そんなモランを私は優しく見つめていると、

「さぁ、その手を出して…」

とモランにそう告げると、

「うっうん…」

私の言葉に恐る恐るモランはそっと手を差し出し、

「ふふ…僕だけのマサイ…

 裕子、君は僕の宝物だよ」

僕はそう思いながらモラン・裕子の手を取るとその指にそっと金色の指輪を填めたのであった。



おわり