風祭文庫・モラン変身の館






「シンバ」


作・風祭玲

Vol.251





ヒュォォォッ…

サバンナに一陣の風が吹き抜けていく、

「ふぅ…」

その中であたしは浮き出た額の汗を一気に拭うと大きく深呼吸をした。

その途端、

「おいっ、スングっ、ちゃんと聞いているのか」

あたしの行動を咎めるようにして同じ年齢組のサンカンが声を上げる。

「あっ、ごめん…」

あたしはそう言うと再び腰を下ろすが、

「でだ、いいか、スングとルンカはこっちから、

 俺とサンモはこっちからシンバに気づかれないように近づき、

 そして、包囲したらスング・サンモはシンバの注意を引きつけ、

 その隙に俺とルンカは後ろからシンバを一撃で仕留める
 
 どうだ」

と自信たっぷりにサンカンは計画を告げるとあたし達を見る。

「うん…それなら大丈夫そうだな」

「まぁまぁかな?」

サンモとルンカは頷きながらそう言うが、

しかし、あたしはこのサンカンの計画には乗り気ではなかった。

「なんだ、スング、俺の計画に文句があるのか?」

あたしの冴えない表情を見たサンカンがムッとした表情で言ってくると、

「そううまくいくかなぁ…

 それに”長”もそこまではする必要はないって言っているじゃないか」

サンカンに向かってあたしがそういうと、

「あのなっ、スングっ

 オレ達は割礼を受けたモランなんだぞ。

 俺の爺ちゃんなんかモランになったその日のウチにシンバを仕留めて、

 婆ちゃんを娶ったんだ

 俺も爺ちゃんの様になりたいんだよ」

っと言いながらサンカンは拳で地面を叩いた。

ザワッ

その拍子で自分の頭の上に乗せてある

シンバの鬣で作られたかぶり物を大きく揺いだ。

「なんだ、スング、怖じ気づいたのか」

「モランの癖に意気地が無いな」

横であたしの話を聞いていたルンカとサンモがすかさず茶々を入れてくる。

「だっ誰が意気地が無いって」

あたしがルンカとサンモが発した”意気地無し”と言う言葉に反応すると、

「あぁ、スングは意気地無しさっ」

サンカンもあたしに向かってそう言って見せる。

「なんだと!!」

売り言葉に買い言葉…

カっと来たあたしはすぐに立ち上がると突き刺していた槍を手に取り、

「シンバなんて俺一人で仕留めてくるよ」

と捨て台詞を吐くと、

スタスタとサバンナへと歩みだしていった。

「おっおいっ、

 そうムキになるなっ

 たった一人ではシンバを仕留められないぞ」

ルンカとサンモがあわてて追いかけてくると、

「おいっ、そんなヤツほっとけっ」

サンカンの声が響いた。

「えっ…あっ…」

その声に足止めされるようにルンカとサンモは立ち止まったが

しかし、あたしはそのまま歩いていった。



長い槍を肩にかけ、

朱染めの布・シュカを巻き直して、

あたしはシンバの姿を追い求めてサバンナを歩く、

リリン…

両足にくくりつけた鈴が歩くたびにかすかな音を奏でる。

「ったくぅ、見てろよ…」

そう独り言を言いながら歩いていると、

「!!っ」

はるか先の岩場に一匹のシンバが寝そべっている様子が視野に入ってきた。

「シンバだ…」

あたしは心の奥でシンバに感謝すると

すかさず風下へと向かい、

気配を消してシンバへ近づいて行った。

シンバは熟睡しているらしくなかなかあたしの気配には気づかない。

「しめた…そのまま寝ていておくれよ…」

あたしは心の中でそう呟くと、

ギュッ

槍を握り締め、

ソロリソロリと近づいていく、

そして、槍が届く範囲内にシンバが入ったと時、

バッ!!

あたしは跳ねるように立ち上がると、

力の限りを出して槍を振りかぶった。

とそのとき、

フッ

寝ていたはずシンバが顔を上げると真っ直ぐあたしを見つめた。

「うっ」

シンバに見据えられたあたしの身体はまるで石のように固まっていく。

「動けない…」

汗が噴き出すように流れ出してきた。

すると、

『どうだ思い出したか…マサイよ』

あたしの頭の中に男の声が響いた。

「だれだ?」

動かない首の代わりに視線を動かしていく、

ガサ…

藪を踏み分ける足音と供に真っ白な毛に覆われたシンバが姿を現した。

『モラン・スング…お前を迎えに来た…

 お前がどんなに生まれ変わっても、

 私はお前を迎えに来る。

 さぁ、私の元に来るんだ…』

シンバは低い声であたしにそういった。

「生まれ変わり?

 思い出すって…なにを…

 あたしは何を思い出さなくてならないの?…

 え?、なに?

 あっあたしは…………」

あたしはそう叫んだ途端、

あたし視界は徐々にフェードアウトして行った。



ハッ

目を覚ましたあたしは思わず目を開けると、

あたしの視界にはカーテンから差し込む薄明かりに照らし出された

いつもの自分の部屋の天井が見えていた。

「夢?」

そう思いながらあたしはゆっくりと起きあがると、

「…また…あの夢か…」

そう呟きながらそっと片手を自分の身体に当てた、

ゴリッ

手に異様な感触が伝わってくる。

「!」

あたしはベッドから飛び起きると、

真っ直ぐ鏡の所に直行した。

そして、鏡の前でパジャマの上着を脱ぎ捨てた。

すると、鏡に映し出されたのは、

日焼けしたような褐色の肌と、

お腹のところで浮き出るように筋肉が作る陰影の筋だった。

「あぁ…もぅこんなになっている…」

まるで筋肉トレーニングによって鍛えたような自分の身体を眺めながら、

あたしはガックリとその場に跪いた。

「どうしよう…

 このままだったら、あたし…」

言いようもない恐怖があたしの心を包み込んでいく、

そのとき、

コン!コン!!

「亜里砂…時間よ…起きなさい…」

ドアを軽くノックしながら母さんが声をかけた。

「はっはぁーぃ」

あたしは母さんの声にそう返事をすると、

大急ぎでパジャマの上着を被り、

そして、カーテンを開けた。



「あれ?、

 亜里砂…あなた…そんなに日に焼けていたっけ?……」

朝食を食べるあたしに母さんはマジマジと見つめながらそう尋ねてきた。

ドキッ

あたしの心臓は一瞬、縮み上がると、

「そっそう?

 ここんところ表で部活をしているから、そのせいじゃないかなぁ」

と軽く笑いながら答えた。

「そぅお?」

母さんは腑に落ちない表情をしながらあたしに背を向けた。




…もしもこのまま身体の変化が止まらなければ、

 あたしはココには帰れなくなる。

 そうなったとき、あたしはどうすれば…

「よっどうした?

 ボケッとして」

ホームの隅でそんなことを考えていると、

その声とともにあたしの肩がポンと叩かれた。

「あっあれ?」

あたしはハッとすると思わずキョロキョロすると、

「なに、ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしているんだよ」

といつの間にか隣に立っていた三島裕樹が

笑いながらあたしの肩を再びに叩いた。

「あっ三島君…あたし…いやだ…」

彼の笑顔を見た途端、

あたしは急に恥ずかしくなって

思わずそこから逃げだそうとすると、

「おっおいっ

 なにも逃げることはないだろう」

と言いながら裕樹はあたしの手を掴んだ。

「どうしたんだ?、

 お前ここん所ちょっとおかしいぞ」

心配そうな表情で裕樹はあたしを見つめる。

…やだ…そんな顔であたしを見ないで…

そう心で叫びながらあたしは俯いてしまった。



あたしの名は斉藤亜里砂…

1週間ほど前から毎晩奇妙な夢を見るようになり、

そして、朝起きると自分の身体のどこかがこうして変化している。

そんな誰にも言えない悩みを抱えていた。

「本当に、どうしたの?

 もしも、何か悩みがあるのながら力になるけど」
 
「うっうん…ありがとう、

 でも、なんでもないよ」

あたしは握り棒に身体を寄せながらそう答える。

タタンタタン…

「…………」

電車が単調なリズムを刻む中、

お互い黙ったままの気まずい雰囲気が流れた。

すると、

「あっ」

何かを思いだしたように裕樹が声を上げた。

「なっなに」

彼の声を聞いてあたしは一瞬ドキッとしながら訊ねると、

「そうだ、明日暇ある?」

と裕樹はあたしに尋ねてきた。

「う…うん…まぁ」

頷いてそう答えると、

「じゃぁ、さぁあそこの動物園に行ってみないか?

 なんでも、先週、真っ白なライオンがやってきた。

 って新聞に出ていたよ」

裕樹は流れる車窓に現れた山の上にある動物園の施設を指さした。

「白いライオン?…」

裕樹からその言葉を聞いたあたしはふと夢に見た真っ白なシンバを思い出した。

…まさか…

「なっいいだろう?」

「うん、そうね…」

その時、なぜかそのライオンに会えばこの身体の変化の手掛かりが掴めそうな

そんな感じがしていた。



「へぇぇ…動物園なんて幼稚園の時以来だわ」

休日…

親子連れなどで賑わう動物園の中をあたしと裕樹が歩いていた。

「そうだな…俺もガキの時以来だけど…

 でも、動物園ってこんな感じだっけかな」

っとお互いに10年近いブランクに戸惑っていた。

「それにしても…亜里砂…お前そんな厚着をしてて暑くないのか?」

裕樹はあたしの服装を指さしながらそう尋ねた。

確かに、今日の気温は高く、園内の人も皆薄着になっていた。

「うっうん…

 あたしってホラ…寒がりだから…」

あたしは何とか理由を付けると、

「でも、そんなに日焼けした顔に、

 厚手の服とはなんか変な感じだな…」

裕樹は軽く笑いながらそう言った。

「別に良いでしょう!!」

怒った振りをしてあたしは先を歩いていく。

「おっ追い待てよ…」

後ろから響く裕樹の声を聞きながら

あたしはブラウスの先からチラリと覗く自分の手を見ると、

かつては白かった手の甲は茶褐色に染まっていた。

そう、また今朝もあたしはあの夢を見た。

そして、目が覚めたあたしの目に映ったのは

昨日よりも筋肉が発達した自分の体だった。

…あたし…マサイになっているの?…

言いようもない不安があたしの心を覆っていく、



その白いライオンが居ると言う獣舎は動物園の中央にあり、

すでに長い行列が出来ていた。

「はぁ、さすがに人気者だなぁ…」

行列を眺めて裕樹がため息混じりに言うと、

「でも、折角来たんだから見て見ようよ」

あたしはそう言うと列に並んだ。

ジリジリ

っと列はゆっくりした歩みで動いていく、

ピクッピクピクッ

…え?

獣舎が近づいてくるに連れ体の中が妙にムズムズしてきた。

…身体の中で何かが蠢いている?

あたしは自分の体の変化に困惑した。

「どうした?」

あたしの様子に気づいた裕樹が声を掛けてきた。

「だっ大丈夫よ…」

笑みを浮かべて微笑むと、

オホン!!

後ろに並んだ人から咳払いの声が、

あっ、何時の間にか列はあたしの前でとぎれ、

前の人は獣舎の前の方へと移動していた。

「すみませーん」

あたしと裕樹は慌てて獣舎の方へと走って行くと、

獣舎の中に白い影が動いているのが見えた。

「おっ、ちょうど白ライオンが出てきたところか」

それを見た裕樹は指を指しながらあたしに言う。

「ん?」

獣舎の隅に来たあたしが覗き込むように中を見てみると、

ヌッ!!

いきなりライオンと目が合ってしまった。

…シンバ!!…

夢の中で幾度も見たあのライオンの姿と目に映る。

その時

『やっと来たか、モランよ…』

あたしの頭の中に男の声が響いた。

…モラン?

 モランって何よ!!

『ん?、まだ思い出していないのか?

 モランよ、お前はこのワシを手にした槍で仕留めたではないか』

声があたしにそう告げると、

フッ

目の前に肩で息をするマサイ族の青年と

槍を突き立てられ息途絶えている白いライオンの姿が浮かんできた。

…しっ知らない…そんなの…

あたしは強い口調で否定する。

『知らない?

 でも、お前の魂はそれを覚えているようだな…

 見ろ、生まれ変わってどんなに姿を変えても、

 お前の身体はモランに戻ろうとしている。

 いいか、ワシを倒したモランとなったお前は

 何度生まれ変わってもモランとなる。

 そう言う宿命を背負ったのだ』

と声はあたしに告げた。

…知らない!!

 あたしはモランなんかじゃない!!

 あたしは斉藤亜里砂と言う女の子よ!!

と叫ぶと、

『ふふふ…

 さぁどうかな?

 もぅスグお前の身体は…』

と声が告げたとき、

ズニュゥゥゥゥゥゥ!!

あたしの股間で何かが勢いよく伸びていく感覚が走った。

そして、それの先がスカートに触れた途端、

ウゾゾゾゾゾ…

体中の毛が逆立つような触感に襲われた。

「あっあぁ…」

思わずあたしはその触感に酔いしれる。

すると、

「おいっ、亜里砂…どうしたんだ?」

裕樹の声と共にあたしの肩が激しく揺らされた。

「え?、

 あっ裕樹?」

ハッと我に返ると、

フワァァァァ

あの白いライオンは大きなあくびをしているところだった。

「おいおい、昨日もそうだったけど何ボケっとしている…

 ん?なんだそれ?」

心配そうにあたしを見ていた裕樹の顔色が見る見る変わると、

下の方を指さしながら声を上げた。

「なにって…

 え?、

 いやぁぁぁ!!」

そう、あたしの股間には棒のようなモノが聳え立ち、

そしてそれがスカートを押し上げていたのであった。

ダッ!!

股間を押さえながらあたしは獣舎の前から逃げ出すが、

「まっ待てよ!!」

裕樹の声が後ろから追いかけてくる。

ムリ…ムリムリムリ…

走りながら体中の筋肉が蠢くと、

ミシミシミシ…

まるで、粘土細工のようにあたしの骨格が変わっていく、

「やだやだやだ!!

 誰か助けてぇ!!」

夢中で走りながらあたしは人気の無い方へと無い方へと向かっていった。

やがて、花が散り見頃を終えた桜並木の隅にある休憩用の東屋にたどり着いた時、

ドッ

っとあたしは膝を落とすと両手を床に着けたのであった。

ハァハァハァハァ…

肩で息をするあたしの身体から

ムワッ

っと土と汗が混じったような臭いが立ち上ってきた。

ムリムリムリ…

その一方で身体の変化は更に続き、

ミシッ!!

体型が変化したためか上半身がきつくなっていった。

あたしは無意識に手を胸元に持っていくと、

ビリィ!!

っとブラウスを引き裂いた。

コゲ茶色に染まった肌が視界に入ってくる。

磨かれた東屋の床にあたしの姿が映し出されていたが、

しかし、そこに映っているあたしの姿は、

亜里砂とは別人に近い人相をしていた。

そう、それはまさしくマサイ…そのものだった。

…あたし…マサイ…

 そうだ…アタシハ…マサイダッタンダ…

グググ…

喉に喉仏が盛り上がっていく。

「はぁ…はぁ…」

手足が伸び、ブラウスの袖口は肘に近い所まで上がっていた。

その一方で、

パン!!

っと言う音共に、履いていたブーツが弾け飛んだ。

「おぉぃ、亜里砂何処だ!!」

裕樹の声が響くと、

徐々に近づいてきた。

「なんだそこにいたのか」

東屋の中で這い蹲っているあたしの姿を見るなり駆け寄ってくると、

「一体何があったんだよ」

と言って中に入ってきた。

「コナイデ!!」

あたしは咄嗟に声を上げると、

「え?、

 なんだ…だっ誰だ?

 お前は…」

裕樹の足が止まると後ずさりを始めた。

あたしは無言で立ち上がり始めると、

ビリビリビリ!!

なんとか張り付いていた服が次々と引き裂け、

そして、ついには

あたしの上半身が露わになってしまった。

ムキッ!!

乳房を飲み込んで横に広がるようにして盛り上がった胸板が眼下に見える、

無論その下にはデコボコに盛り上がった腹筋が続いている。

「…………」

あたしはそれを無言で見つめた後、

ゆっくりと振り向いた。

「うっわあぁぁ、なっなっなっなんだぁ!!」

すると裕樹はあたしの顔を見て腰を抜かした。

「ユウキ…

 アタシ…ヨ…」

あたしはたどたどしい言葉でそう言った。

「え?え?え?…」

裕樹の表情は明らかに混乱しているようだった。

「アッアタシ…ネ…

 ジツハ…モランノ…

 ウマレカワリナノ

 コノママ…モランダッタトキノコトヲ

 ワスレタママデ…

 イキテイキタカッタケド

 デモ…

 オモイダシテシマッタ…

 アタシハ…イカナクテハイケナイ…」

と裕樹に言うと、

「そんな…亜里砂っ

 もっとわかりやすく説明しろよっ」

裕樹の絶叫に近い声が響いた。

ビクン!!

「ウッ」

股間の肉棒・オチンチンが痺れた来た。

…ソウダ、コレヲダサナイト、アタシハ…

あることを思い出したあたしは裕樹に近づくと、

「オネガイ…

 アタシヲ、アリサ カラ モランニ シテ…」

と告げると彼の手を握りしめ、

そっと自分の股間へと導きながら、

スカートをまくり上げると、

股間の真ん中でいきり立つオチンチンに触れさせた。

「!!っ、

 そんな…」

裕樹の手がオチンチンに触れた途端、彼はあたしを見る。

「オネガイ…シテ…」

あたしは裕樹にそう告げると、

スッ

スッ

っとオチンチンを握っている彼の手を上下に動かした。

「亜里砂、お前…」

手を動かしながら裕樹はあたしを見る。

「アタシハ…イカナクテハナラナイノ…

 ダカラ…ユウキ ノ テ デ、

 アタシ ヲ モランニ…」

そう言うと、静かに目を閉じた。

「なんだよ、これって…」

裕樹はそう言いながら、あたしのオチンチンを扱き始めた。

シュッシュッ

シュッシュッ

「アッアァアァ…

 イッイイヨ」

あたしは腰を前に突き出すと、大きく股を開いた。

ビン!!

そしてその中央部には裕樹の扱かれる漆黒のオチンチンが鎌首を持ち上げる。

シュッシュッ

シュッシュッ

裕樹の手で扱かれるあたしのオチンチンの根本に

次第に何かが溜まり始めていた。

「アァ…オチンチンガ、シビレルゥ

 デッデルゥ!!」

顎を突き出し、激しく腰を痙攣させたあと、

プシュッ!!

あたしのオチンチンは白濁した精液を勢いよく吹き上げた。

シュッシュッシュッ!!

「アァァァ…」

絞りきるようにオチンチンを絞っていると、

『ようやく目覚めたか…モランよ』

と言う声が響いた。

「うわっ、ライオンが!!」

声を上げた裕樹が指し示すその先にあの白ライオンが佇んでいた。

「にっ逃げ出したんだ…早く動物園の人に知らせないと…」

這いずるようにして逃げようとする裕樹にあたしは

「マッテ…」

っと言って制すると、

スッ

ライオンに向かって歩き始めた。

「おっおいっ、何をする気だ危ないぞ!!」

裕樹の声が響き渡る。

「ダイジョウブ…」

あたしは彼にそう告げると、白ライオンの前で立ち止まった。

すると、

カッ!!

あたしの目の前に一本の槍が突き刺さった。

そして、

『何をしている、モランよ、

 さぁその槍を抜くがいい』

と白ライオンはあたしに告げると、

あたしは無言でその槍に手を伸ばした。

イィィィン…

手が槍に近付くに連れ槍から音が聞こえてくる。

「アァ…コノオト」

あたしはそう呟くと、

ギュッ

っと槍を握りしめた。

その途端、

ブオッ!!

っと一陣の風があたしの身体を包み込むと、

リーン!!

あたしは身体にはあのマサイの朱染めの衣・シュカが巻き付き、

そして、同じように朱で染まった髪を結い上げたモランの出で立ちになっていた。

「亜里砂…」

モランとなったあたしを裕樹は見つめている。

「ダイジョウブ…

 アタシハ、

 サイショ カラ イナカッタノ

 ダカラ、シンパイ ヲ シナイデ…」

と告げると、そっと白ライオンの鬣を撫でた。

「それってどう言う事だ?」

と言う裕樹の言葉にあたしは、

「サヨウナラ…

 ユウキ…」

と言った途端、

動物園の景色がグニャリッと歪むと、

サバンナの景色へと変わってしまった。

スゥ…

あたしは大きく息を吸い込むと、

ザッ

サバンナへの一歩を踏み出したのであった。



おわり