風祭文庫・モラン変身の館






「届けられた品」


作・風祭玲

Vol.213





「長崎さん、宅配便でーす」

ドア越しにその声が響いたのは

勤め先から帰宅した宏美が着替えを始めた矢先のことだった。

「はーぃ」

着替えをしながら彼女は返事をすると、

「すみませーん、ちょっと待っててください」

宏美はそう声を上げて手早く着替えると、

印鑑を片手にドアを開けた。

「あっ、ありがとうございます。」

ドアの外にはいかにも清潔そうなユニホームに身を包んだ青年が

さわやかな笑顔を浮かべながら立ち、

宏美がドアを開けるなり軽く一礼をして見せる。

「えっと、長崎…宏美さんですね」

彼は伝票を見ながら再確認した後、

手にしていた箱を宏美に手渡すと、

「では、これに印をお願いします」

そう言いながら伝票を彼女に見せた。

「あっはいはい」

宏美は渡された伝票に手際よく印を押すと配達員の青年に手渡す。



「ありがとうございました」

一礼して去っていく彼の薬指にキラリと指輪が光って見せる。

「はぁ…いい男だと思ったら、

 やっぱり奥さんが居るのか」

宏美はちょっとため息を付くと荷物の送り主を確かめた。

「あっこれ、佳美からだわ」

そう、彼女の妹である佳美は一足先に結婚し、

先日、商社に勤めている旦那のケニア転勤と共に引っ越していったばかりだった。



『前略…宏美姉ちゃんへ…

 元気にしている?…』

早速荷物を開梱すると、

彼女宛への手紙が同梱されており、

早速、宏美はそれを広げていたのであった。

『…というわけで、

 彼氏なしのお姉ちゃんには少しは役に立つだろうと思って、

 この木彫りの人形を送ります。』

――へぇ男縁が増す人形ねぇ…

  マサイ族も大変なのかなぁ…

と感心しつつ宏美は現地の新聞紙に包まれた塊を取り出すと、

ガサガサ

っと新聞を広げて行く。

やがて、

「ほー…」

彼女が感心しながら出てきたのは、

獲物を前にして槍を構えて見せる、

躍動感のあるマサイの戦士・モランの彫像だった。

――これはこれは…すごいねぇ…

  こうやって男をゲットしろって言うのか?

そう呟きながら宏美は様々な角度から彫像を眺めると、

「まるで生きているみたいだね…」

と言いつつ、

勃起している股間を表現しているのであろう、

朱染めのシュカから突き出している突起を指先で軽く叩いた。

そのとき…

ビクッ!!

一瞬、彫像が脈動したような感覚が彫像を持っている手に走った。

「きゃっ

 動いた?」

反射的に宏美は彫像を放り出すと、

ゴトッ

彫像はそう言う音を立てて畳の上に転がったが、

しかし、何事も起きなかった。

――気のせい?

宏美は首を捻りながら彫像を見ていると、

パキン!!

突然、部屋の中に木の棒をへし折るときのような音が鳴り響いた。

――なっなに?

慌てながら宏美が部屋中に視線を送ると、

コトコトコト

彫像が独りでに動き始めた。

――やっ、やだ…

ザザザ…

宏美は部屋の隅に這いずって行くと動く彫像をじっと見つめていた。

すると、

スゥゥゥ…

彫像は一瞬浮き上がった瞬間、

パン!!!

と言う音を立てるとまっぷたつに割れてしまった。

ボトっ、パラパラパラ…

二つに割れた彫像が畳の上に転がり、

そして破片がその周りに降り注ぐ。

「なっ何よこれぇ…」

怯えながら宏美が声を上げると

『…………』

どこからか呪文の様な声が部屋に鳴り響き始めた。

「ひぃっ!!」

すっかり怯えている宏美は目だけを動かして、

呪文の発生源を探り始める。

フッ

突然、蛍光灯の明かりが消えた。

「!!!!!」

襲いかかってくる恐怖に宏美の声は出なかった。

『…………』

そしてさらに呪文の声が大きくなると、

スゥゥゥゥゥ…

彼女の前に半透明の姿をした一人の老人が胡座を組んだ姿で姿を現した。

街灯の明かりに照らし出された老人の姿は、

深く刻まれた皺だらけの裸体に腰に腰巻きのような朱染めの布・シュカを巻いた姿で、

首や胸にかけてたくさんの首飾り・マシパイが巻き付けてあった。

「…だっ誰よ…」

絞り出すような声で宏美が訊ねると

『…………』

老人は呪文を唱えながら…

『マサイよ…』

っと宏美の頭の中に話しかけてきた。

『わたしを闇のそこから呼び覚ました…マサイよ…』

「そんな…あたしはマサイなんかではありません」

恐怖心を押さえながら宏美が反論すると、

『私を呼び覚ますことが出来るのは、

 マサイでしか出来ないこと…』

老人が宏美にそう告げたとたん。

グググググ…

宏美の股間が突然突っ張り始めた。

「へっ?

 なに?」

恐る恐る股間を見ると、

ムクムクムク…

見る見る股間が盛り上がって行く。

「やっ、やだ、

 ヤメテ!」

宏美は叫びながら自分の股間をおさえると、

ゴリッ

股間から巨大な肉の棒が成長していくのを手のひらで感じた。

「やだ…やだ…」

宏美はそう叫びながら首を振る。

『さぁ、マサイよ、お前の体をワシに見せるのだ』

老人の声がそう告げると、

ビリビリビリ!!

突如、宏美の服が引き裂けると彼女の白い肌が露出する。

と同時に、

それは宏美に股間で成長していく物の正体を彼女に知らしめた。

ビクン!!

ムクムク…

カリ首を広げそして赤ん坊の腕ほどに成長したペニスだった。

「ひぃぃぃぃ

 あっあたしに…おちんちんが…」

信じられない表情で宏美は股間に生えたペニスを見つめる。

『さぁ、マサイよ、モランである証をわたしに見せろ』

老人の声が響くと、

スゥゥゥ…

宏美の両手が独りでにペニスへと導かれて行く。

「だっだめぇぇぇ」

宏美は必死になって抵抗したものの、

しかし、

ソッ

っと彼女の両手は大きく勃起したペニスに手を添えると、

スー

スー

っと扱き始めた。

ゾクゾクゾク…

宏美の背中を言いようもない感触が走っていく。

「あっあっあぁぁぁ…」

彼女は目をむいて初めて味わう快感に溺れ始めた。

シュッ

シュッ

勃起する太いペニスを宏美の細い指が上下に扱く、

「あっあっ…

 おちんちんが熱い…
 
 あぁ、脈を打っている…
 
 そんな…
 
 そんな…」
 
男性経験が無い宏美にとってのこの行為はあまりにも強い刺激であった。

シュッ

シュッ

シュッ

徐々に手に動きが早くなっていく、

「あぁ…なに?

 何かが出る!

 あぁだめ!

 だめぇ!!」

宏美がそう叫んだ途端、

ジュッ!!

股間のペニスの先より液体が一直線に吹き上げた。

ピチャピチャ…

吹き上げられた液体は放物線を描くとそのまま家具などに付着していく。

栗の花に似た臭いが部屋の中に漂うなか、

「はぁはぁはぁ」

宏美は射精後のまどろみの中にいた。

『もぅおしまいか?』

老人の声が響くと、

ムクムクムク…

再び宏美のペニスは鎌首をもたげ始めた。

「あ・あ・あ…」

宏美の両手が無意識に復活したペニスに絡みつくと扱き始めた。

シュッ

シュッ

シュッ

「うっ」

ブシュッ!!

扱いた後、宏美のペニスは液体を吹き上げる。

そして、それは幾度も幾度も続いたのであった。



シュッ

シュッ

プシュッ!!

何度も噴出させられ次第に手慣れた手つきでペニスを扱きはじめ出すようになると、

裕美の身体は精液を吹き上げるごとに筋肉が発達し、

そして肌が褐色からさらに黒みを帯びた黒炭色に染まって行く、

ビキビキビキ!!

グググググ…

骨が太くなり、

手足が伸びていく、

柔らかい曲線を描いていた乳房は、

筋肉が盛り上がっていく胸板に飲み込まれ、

ピンク色の乳首は小さく萎縮して胸板の陰に隠れた。

シュッ

シュッ

しごき続ける宏美の変身はさらに進み、

電車の中で痴漢に触られたこともある臀部は小さく引き締まり、

そして発達していく筋肉によって出来たへこみが現れ、

さらに自慢の長い黒髪は茶褐色の髪へと代わり、

そして、顔は彫りが深く精悍なマサイの顔へと変わっていった。

こうして漆黒の肌に覆われた、

逞しい肉体を持つマサイとなった宏美に老人は

『さぁ、マサイよ、

 次に、精を吹き上げればお前はモランになる。』

そう告げた途端、

「だっダメぇ!!

 いっイクぅぅぅぅぅ」

ジュッ!!

ジュッ!!

宏美が叫ぶと同時に股間のペニスが白濁した精液を高く吹き上げた。



最後の射精をして呆然としている宏美に老人は

『これで…お前はモランになった…

 さぁ、その槍を抜くのだ』

と告げると、

ドカッ!!

一本の槍が宏美の前に突き刺さした。

ヨロ…

宏美は老人に促される様にして立ち上がると、

槍に向かって手を伸ばした。

――ダメ…

宏美の心は一瞬の躊躇ったが、

しかし

ゆっくりと右手を差し出すと槍に手を触れた。

その途端、

ビクン!!

強烈な衝撃が宏美を襲った。

「あっあぁ…」

体中の筋肉が脈動する。

シュルシュルシュル…

裸体の彼女の身体に朱染めのシュカが巻き付き、

首や手に胸にモランの証であるマシパイが付けられていく、

「………」

パッ

再び蛍光灯の明かりが灯ると、

部屋には輝く漆黒の肌に覆われたたくましい裸体にシュカを腰に巻いた、

そう、マサイ族の勇者・モランの姿となった宏美が呆然と立ちすくんでいた。

ビクン

ビクン

再び大きく勃起し始めたペニスが腰巻きを押し上げてきているのを感じつつ、

「そんな…

 マサイのモランだなんて…

 あたし…どうすればいいの?」

宏美は呆然と目の前の姿見に映る自分の姿を眺めていたのであった。



おわり