風祭文庫・モラン変身の館






「鏡の向こうへ」


作・風祭玲

Vol.148





すっかり夜の帳が降りた頃。

勤め先を引けた僕はクルマを走らせていた。

「ヤバ…ちょっと遅れたか…」

東の空に昇り始めた満月を眺めながら僕は独り言を言うと

自然とアクセルを踏む足に力が入った。



ザザザ…

それから小一時間後、

砂利を踏みつけながらクルマはある建物の駐車場に静かに入っていく、

県立博物館…

その建物の名前である。

閉館時間が過ぎてから大部時間が経っているせいか建物から灯りは消え、

駐車場には職員のクルマの姿も無くなっていた。

タム…

僕が車からを降りると

ザザッザザッ

手にしたコンビニの袋の音をさせながら僕は博物館に向かって行った。

手慣れた手つきでゲートのドアを押すと

キィ…

まるで僕を招くようにしてドアが開く…

館内には人の気配がまるでない。

コツンコツン…

靴の音を鳴らせながら僕が目指すところはただ一つ

それは博物館の傍らにひっそりと建つ「民族館」だった。



不思議にも館内に入ってからどの警報装置も作動せず、

また巡回しているであろう警備員にも出くわさずに

僕は併設してある民族館の建物に着いた。

ふと時計を見ると既に夜の10時を回り、

月は空高く上っていた。

「ちょっと遅れたかな…」

月を見上げて僕はそう呟くと足早に民族館の中へと入っていった。

昼間でも陰気な感じがするところだが夜になると、

その不気味さがいっそう増した感じがする。



しかし、僕はそんなことは一切気にせず、

ある物が置いてその場所へと向かっていった。

「あれか…」

僕が目指していた”それ”は窓から差し込んだ月の光を受け

キラキラと輝いていた。

”それ”とは、民族館のアフリカ・コーナに置いてある一枚の鏡だった。

やや楕円形をした鏡はガラス板に銀を蒸着させたものではなく

磨き上げた金属で出来た鏡で相当昔に作られた物らしく

中心の鏡の周りには動物やら植物の装飾が施された様子は

まるで異世界への扉のようだった。

「えっと、コレくらいかな…」

僕は月の位置を確かめながらその鏡面に月の姿が映るように向きを変える。

そして

鏡面に手を置き

「彩…来たよ…」

と囁くと

ポゥ…

ゆっくりと鏡が光を放ち始めた。

『敬一さん……』

と同時に私を呼ぶ声が聞こえ始める。

「…彩…」

私が再び声を上げると

『敬一さん……』

私の声を探すようにして徐々に声が大きくなっていく、

「彩…ここだよ…」

私が声を誘導するようにして言うと…

鏡の光が徐々に増し、

やがて…

パァァァァァァ!!

鏡が強く光り輝くと中からにじみ出てくるようにして人影が現れた。

「彩…」

それを見た僕は思わず呟く。

スゥゥゥゥゥ…

鏡の光が徐々に弱まり収まっていくと、

「敬一さん…」

そう言いながら鏡の中から現れた人物は僕の前へと歩いてくる。

「うれしい…

 あたしを呼んでくれて…

 もぅ呼んでくれないのかと思っていたの」

そう言って私の目の前に現れたのは

黒い光沢を放つ肌が全身を覆い

頭には長く延ばした赤茶けた髪を束ね、

そして、僕よりもずっと高い背丈に

スリムで筋肉質の身体には朱染めの布・シュカを巻き付け

手には楕円の盾と長い槍を持った。

そうサバンナの勇者・マサイ族の男性だった。

「あたりまえだろう」

と僕が言うと、

「…あたしがマサイになってもぅ1年…

 この体にもすっかり馴染んだわ…

 いまでは彩だった頃のことを思い出すのも…」

そう言ったところで僕は彩をそっと抱きしめた。

「あぁ…ダメ…そんな…」

驚いた彩の手から盾と槍が床に落ちる。

トン…カン…カラカラカラ…

その音を聞きながら

「どうしたの?」

と訊ねると、

「だって………」

彩は身をよじりながらそう言うと僕はギュッと手に力を入れた。

「ぼくは構わないさ…

 あの彩がこんなに逞しくなって…」

「…………」

彩は僕の顔をじっと眺める、

そばで見る彼女の顔はすっかりマサイの勇者のそれになっていた。

「…いいの?」

念を押すように聞き返す彩に

「あぁ…」

私はそう言って頷いた。

それを見た彩は

「うれしい…」

とひとこと言うと手を僕の肩に回した。

その時僕は1年前のことを思い出していた。



1年前…

そう、彩と出会ったのはとある病院の一室だった。

酒酔い運転のクルマに追突され入院していた僕は一人の少女に出会った。

氷室彩と名乗る少女は重病に冒され今にも消えていきそうな表情をしていた。

そんな彼女の様子が気が気でなかった僕はスグに彼女の話し相手になっていた。

そんなある日、

僕は病院の隣にある博物館にある不思議な鏡のことを彼女に話した。

”満月の夜、その鏡に願い事をすると一度だけ願いが叶う…”

と言う話に彼女は目を輝かせながら聞き入り、

そして、窓から見える博物館をじっと眺めていた。

「ねぇ…その話って本当なの?」

「さぁね…

 僕も一度試して見たいんだけど…
 
 夜は入れてくれないからな」

「……あたし…マサイ族になりたいな」

「え?」

「マサイ族になって広いサバンナを思いっきり駆け回ってみたい…」

彩はそう呟くと天井をじっと眺めていた。

「そうだね…

 早く元気になって、
 
 鏡の所に行こうな…」

僕が言うと、

「うん」

彩は素直に頷いた。



やがて…

僕のケガが治り退院する前日、

彩が突然姿を消した。

しかし、慌てながら彼女の姿を探すのは病院関係者のみで、

彼女の家族の姿はなかった。

彩は自分の家族の事は何も言わなかったけど、

家族にとって彩の存在はその程度のもののようだった。



退院してからひと月が経った頃、

検診に訪れた病院で僕は看護婦に彩の消息を尋ねたみたが

彼女たちは首を横に振るだけだった。

その帰り際、ふと東の空に昇ってきた満月を見ているウチに

「まさか…」

僕は彩に話をしたあの鏡のことを思い出した。

そして、その夜博物館に忍び込み

鏡の前に立った僕の前に、

一人のマサイの勇者が現れた。

「……あっ彩なのか?」

月の光を受け立つマサイの勇者にそう訊ねると、

コクン…

彼は静かに頷いた。



「敬一さん…どうしたの?」

突然彩の声が僕の耳元で聞こえた。

ハッ

として見上げると彩が首を傾げながら僕を見ている。

「あっ、いや…

 ふと、昔のことを思い出してね」

そう言うと、

彩は僕をしばし眺めると、

「ありがとう敬一さん…

 あたし…こうしてマサイになれたのは敬一さんのお陰よ…」

と嬉しそうに僕に言った。

「いいのか?」

「うん…後悔はしていないわ」

「そうか…」

ガサ…

コンビニの袋が音を立てる。

それに気づいた僕は

「あっそうだ、今日はお土産があるんだ」

「なに?」

ガサガサと音を立てながら袋から取り出したのは

莓が入ったヨーグルトだった。

「彩…これ好物だったんだろう」

僕がそう言うと

「うわぁぁぁ…嬉しいっ」

喜びながら彩はそれを受け取ると館外に出ると、

東屋の中で美味しそうに食べ始めた。

僕はそんな彼女の姿を眺めながら横に座る。

それから僕と彩は色々なことを話した…

と突然…彩が黙り込んだので

「どうしたの?」

と訊ねると、

「…へっ、変ね…

 あたし…もぅマサイになってだいぶ経つのに

 こうして敬一さんの傍にいると

 なんだが昔の女の子に戻ったみたいになるの…」

彩はそう床を眺めながら呟いた。

「?」

僕は彼女の言っている意味が分からないでいると

何やら意を決したような表情をして彩が口を開いた。

「………一つ、おっお願いがあるんだけど」

「なに?」

「あっあたし……を…その…抱いて欲しいの…」

と彩は肩をつぼめながら囁いた。

「………」

僕は無言で彩を見つめていると

「ごっごめん…

 気にしないで…

 ちょっと言ってみたかっただけだから」

彩はそう言うと腰を上げようとしたとき、

「あっ、待てよ…」

追って腰を上げた僕が彼女の長い腕をつかむと、

キャッ

バランスを崩した彩が僕の元に倒れ込んできた。

「!!」

僕の上に馬乗りになった彩は一言

「好きです…敬一さん…」

と囁きながら僕にキスをした。

「僕も彩が好きだよ…」

彼女の耳元でそう囁くと。

「嬉しい…」

そう言って彩は強く僕を抱きしめる。

モリッ

いつの間にか勃起した彩のペニスがシュカを押し上げていた。

「!」

僕はそれに気づくとそっとシュカの上からそれを握りしめた。

「あっ」

ビクン!!

一瞬感電したように彩の身体が動いた。

「どうしたの?」

僕が囁くと、

「そっそれ…」

彩はそう呟きながらペニスを握る僕の腕を払いのけようとした。

「ダメだよ、

 あんなひ弱だった彩にこんなにでかいチンコが生えているだなんて…」

と言いながら僕は彩のペニスを扱き始めた。

シュッ

シュッ

ゴワゴワしたシュカの上から扱くことに感じたのか

彩は何かを我慢すかのように目を瞑って耐え始めた。

「どうした彩?

 マサイのモランなんだろう?

 モランならもっと堂々としなくっちゃ」

僕はそう言いながら扱くスピードを上げていく、

「………あっあぁ…」

真一文字に閉じていた彩の口が微かに開くと喘ぎ声が漏れ始めた。

「なんだ…感じてきたのか、

 モランの癖にだらしがないなぁ」

「そんなこと言ったって、

 あたし…こんなコトしたことがないんだもん」

こみ上げてくる何かを必死で我慢していながら彩が抗議すると、

「お前…男のオナニーをしたことがないのか?」

彼女の言葉に僕が聞き返すと、

コクリ

彩は頷いた。

それを見た僕は

「そうか、それなら」

と言いながらシュカの下に手を回すと、

固く勃起している彩のペニスを直接扱き始めた。

「あっ、いやぁぁぁ!!」

僕の行為に彩は慌てたが、

しかし、直接扱かれる快感に彩は抵抗をするのを止めた。

ジワッ

漏れだした”先走り”によってペニス全体が濡れてくると、

当然滑りも良くなってくる。

ヌチャ

ヌチャ

淫らな音が聞こえてくると、

僕の方も徐々に淫乱な気持ちになっていく、

「あっ

 あっ

 あっ」

彩は腰を突き出し僕の手の動きに合わせるようにして声を上げ始めた。

「どうだい?

 出したいだろう?」

僕がそう囁くと、

「あぁ…

 お願い…出させて…

 もっと強く扱いて!!」

彩はそう懇願し始めた。

僕は彩の張り出したカリの部分を執拗に攻め始めた途端、

「あぅぅぅぅ!!」

彩は腰を小刻みに振るわせながら、

シュッシュッ!!

白濁した精液を勢いよく吹き上げた。

「…うわぁぁ…

 さすがはモランだ、凄い量だ…」

床に大きな溜まりを作ったそれを眺めながら僕が感想を言うと、

「いやぁぁぁ…言わないで…」

彩はそう言いながら両手で顔を覆っていた。

「なんだ…

 そのチンコは、まだ出し足り無いのか…」

相変わらず勃起している彩のペニスを指さして僕が言うと、

再び彩のペニスを握りしめた。



月が西に傾き薄明が始まった頃

「…そろそろ、あたし行くね」

そう言いながら彩が起きあがりシュカを身体に巻き付けると整え始めた。

「そうか、もぅそんな時間か…」

と僕が言うと、

「じゃぁ…」

彩は槍と盾を持って館内の鏡へと向かって行った。

そして、鏡の傍らに立つと僕の方を振り向きながら、

「また…ね」

とひとこと言うと

フッ

彼女の身体は鏡面にとけ込むようにして消えていった。

ふぅぅぅぅ…

彩が姿を消した鏡を見ながら僕は大きく息を吐くと、

「またね…か」

そう呟きながら西に傾いた月を眺めていた。



おわり