風祭文庫・モラン変身の館






「モランの呪い」


作・風祭玲


Vol.016





もぅスグ終わるアフリカでの赴任生活の締めくくりにと、

僕は妻の奈緒子を伴ってサバンナの観光に来ていた。

勤務先で用意させたクルマで色々なところを見て回り、

とあるマサイの村に立ち寄ったのは観光も終わりの頃だった。

村で様々なデモンストレーションを見た後、

土産物をあれこれと物色していたとき、

ふと横に居た奈緒子の姿が消えた。

「おい、奈緒子どこだ…」

僕が妻の名を呼びながら村の中を探していると、

彼女が村外れにある塚に近づいていく様子が見えた。

「あいつ、あんな所で何やってんだ?」

そう言って僕が走り出そうとした時、

『そこに近づいてははいかん!!』

奈緒子の姿に気づいたマサイの古老が飛び出してきた。

「え?」

まだ現地語をよく理解していなかった彼女は、

古老が何を言っているのかが判らない様子だった。

古老の只ならない様子に僕が慌てて、

「おいっ、奈緒子っ、そこで何やってんだ、こっちに来い!!」

と叫んだ瞬間。

彼女の手が塚に刺さっている槍に触れた。

すると、

パァァァァン!!

突如雷が落ちたような光が塚を覆った。

「奈緒子っ」

私が叫び声をあげながら慌てて塚に駆け寄ると、

奈緒子は塚の傍に倒れていた。

「おいっ、しっかりしろっ」

私は倒れている彼女を抱き起こし頬を幾度も叩くと、

「うっ、う〜ん」

彼女はそう言いながらうっすらと目を開け、

「あれ?、あなた…どうしたの?」

キョトンした顔で私に言った。

「おっ、お〜ぃ、『どうしたの?』じゃないだろう」

安心感からか一気に顔の緊張を解きながら私が文句を言うと、

ズィ!!

マサイの古老がやって来るなり塚の様子を丹念に調べはじめた。

「じいさん、その塚はなんだ?」

私が古老に尋ねると、彼は奈緒子を指差し、

『この人…あんたのカミさんかい?』

と尋ねてきた。

「そうだけど」

そう答えると、

『う〜ん、ひょっとしたらモランの呪いを受けたかも知れない』

とひとこと呟いた。

「モランの呪い?…呪いって…」

首を傾げながら私が古老に聞き返すと、

「ココは昔、戦いに傷つき命を落としたモランを葬った所だ」

と古老は塚を指しながら説明した。

「ってことはココはそのモランの墓か?」

墓を眺めながら私が尋ねると、

『まぁ、そういうトコだが』

古老は私に鋭い視線を浴びせながらそう答えた。

「じゃぁ、そのモランの呪いって?…」

と言う私の問いに古老は、

『以前、オロイボニ(呪術師)がこの塚を見たとき、

”未だ生への強い執着を持っている者がいる。”

 と告げてな、

 それで、生きている者へ悪さをしないように、封印をしたのだが、

 どうやら、さっきのでその封印が解けてしまって、

 その者があんたのカミさんに憑いてしまったみたいだ』

と古老は奈緒子を見ながら言った。

「憑くと…どうなる…」

イヤな予感を感じながら私が古老に尋ねると、

『そこまではワシにはわからん』

古老は手首を振りながら答えた。

すると、

「ねぇ、あなた…

 さっきから呪いがどうしたとか言っているけど、

 あたし、祟られちゃったの?」

と奈緒子が不安そうな顔しながら尋ねてきた。

「心配するな!!」

不安を払拭するかのように私は奈緒子の目を見ながらそう言うと、

『オロイボニに見てもらえば判るかもしれないのだが、いまはこの村には居ない』

と古老は私に告げた。

『いつ合える?』

その言葉に私がすかさず聞き返すと、

『明日、ココにくると聞いていたが…』

顎をしゃくりながら古老が答えた。

『明日だな、判った!!』

私は明日また来ることを古老に伝えると

奈緒子を促すようにして村を去った。

車中の奈緒子の表情は深刻そうな顔をしていたが、

「呪いなんて気にするな、

 とにかく、明日、そのオロイボニに見てもらえば白黒がハッキリする」

と言うのが私に出来る精一杯のことだった。



そして、翌朝。

それは奈緒子の悲鳴から始まった。

「どうしたっ!!」

部屋中に響き渡った悲鳴に驚いた私は反射的に飛び起きると

隣に寝ているはずの奈緒子を姿を探した。

しかし、彼女の姿はそこには無く、

間髪をいれずに続”ドン”と言う物音がバスルームの方から聞こえて来ると、

「!!っ

 奈緒子っ!!」

私は彼女の名を叫びながら急いでバスルームへと急行した。

そして、

「奈緒子!!、どうした!!」

と叫びながらドアを開けると、

そこには下着姿のまま鏡の前で座り込んでいる彼女の姿があった。

「何があった!!」

奈緒子の無事な姿に私は安堵しながらもそう声をかけた時、

「なっ…」

私は思わず絶句してしまった。

そう、露になっている奈緒子の肌の色が浅黒く変色していたのだった。

「あっあなた…」

「奈緒子…お前、はっ肌の色が………」

私の声に奈緒子は顔を上げて見つめるが、

しかし、その顔の色も黒く染まりつつあった。

「おっ落ち着け、落ち着け」

私は自分に向かってそう言い聞かせながら

あのマサイの古老のことを思い出すと、

「行くぞ!!」

と叫びながら

呆然としている奈緒子の頭の上から上着を被せるや否や

彼女を抱き抱える様にしてクルマに押し込むと、

朝が明けきらぬサバンナをあのマサイ村へ向けてクルマを走らせた。

ガコン

ゴンッ

荒れた道を思いっきりアクセルを踏みしめて私は車を走らせた。

そして、私の横では上着を握りしめるようにして奈緒子が震えていた。

やがてマサイ村に到着すると、

突然の来訪者に驚いている村人達を後目に一直線にあの古老のいる小屋へと向かった。

『おいっ、爺さんっ、居るか、大変だ!!』

小屋の前で私が大声を出すと。

『ん?、何がどうしたって?…

 …あぁ昨日のお前さんか』

そう言いながらのそっと出てきたマサイの古老の前に

私は自分の後ろに居る奈緒子を出すと、

『なっ…これは…』

古老は奈緒子の様子を見るなり驚きの声を上げ、

『やはり…呪いが掛かってしまったていたか…』

と言いながら奈緒子をジッと見つめた。

そして、

『オロイボニなら、昨夜ココに来た。

 行こう』

と言うと私たちをオロイボニの元へと連れて行った。



そして引き合わされたオロイボニは目の前に立つ奈緒子を一目見るや否や、

『これは”ナグ”が出てきてしまった様ですね』

と私達に告げた。

『その奈緒子にかけられた呪いとは、どういうものなんだ?』

オロイボニの言葉にすかさず私が聞き返すと、

『ナグは傷つき槍が折れてもなおも戦おうとした勇敢な勇者。

 ナグの呪いを受けるというとは、ナグとして再び戦うこと…』

とオロイボニは答える。

『ナグとして戦うこと…?』

私はオロイボニの言葉を復唱した後、

『まさか…』

ハッとあることに気づくと奈緒子を見た。

そして、

『じゃじゃぁ、奈緒子はマサイの勇者になってしまうとでも言うのか?』

と聞き返すと、オロイボニは静かに首を縦に振り、

『この者の運命はそう決まった』

と答えた。

『そんな…冗談じゃない。

 奈緒子をマサイになんかにしてたまるか

 この呪いを解く方法があるんだろう。

 それを教えてくれ!!』

オロイボニに食ってかかるようにして私が尋ねると、

オロイボニは目を閉じ、そして静かに首を横に振る。

「そんな…」

呆然とする私にオロイボニは奈緒子にかかった呪いは強力で、

おそらく彼が一生かかっても解くことは無理だろうと答えた。

そしてそれからしばらくの間、

奈緒子に掛かった呪いについて私とオロイボニが論議をしていると、

クンクン

私の袖を引っ張られ、

「あなた…もぅいぃわ、帰りましょう」

と奈緒子が私にそう言ってきた。

「えっ、いっ…いぃって奈緒子…お前…」

奈緒子の言葉に私は驚きながら彼女を見つめると、

ニコッ

奈緒子はうっすらと笑みを浮かべながら、

「この人がかわいそうだよ」

と言うと、

オロイボニに向かって辿々しい言葉で、

『本当にあたしにかかった呪いって解けないの』

と尋ねた。

すると、オロイボニは

『あぁ可哀想だが、わたしの力ではどうにもならない』

と答えると、

その言葉に奈緒子はしばらく黙っていたが、

やがて

『判ったわ、ありがとう』

とオロイボニに礼を言うとその小屋から先に出て行ってしまった。

「あっ、おいっ!!」

彼女の後を追うようにして私も小屋から出ると、

村の外に止めてあるクルマの方へと歩いて行く奈緒子の後を追いながら、

「奈緒子!!、ほっ本当にいいのか?」

と尋ねた。

すると、

「もぅ、あの人たちにいくら言っても無理よ、

 それに、あたしが呪いを受けてしまったのは、

 あのおじいさんのせいではなく、

 私の不注意、仕方がないわ」
 
と呟くように返事をした。

「でも、このままじゃぁ、お前は…」

奈緒子の言葉に私が彼女の行く末を案じながら尋ねると、

奈緒子は私たちの様子を遠巻きに見ている半裸のマサイ達に視線を向けながら、

「あたし…あの人達のようなマサイになっちゃうのね」

と呟くとそのままクルマに乗り込んでしまった。

そして、私も続いて車に乗ると、

「早く出して…」

と奈緒子は私に告げるとそのまま俯いてしまった。

「奈緒子…お前…」

俯いたままの奈緒子を見ながら私はそう呟くと、

ジワッ…

その時の彼女の肌は朝よりもさらに黒くなり、

そして、

ムリッ!!

身体からは筋肉が盛り上がり始めていた。

そう、奈緒子はマサイへと変身している途中だった。



行きとは違いゆっくりしたスピードで自宅へと戻ると、

クルマから降りた奈緒子はそのまま一室に入ると、

「あなた…お願い…しばらく一人にして…」

と私に向かってそう告げるとパタンとドアを閉め、

カチャッっと中から鍵を掛けてしまった。

「おっ、おいっ」

ドンドン!!

奈緒子の行為に驚いた私がドアを叩くと

部屋の中から、

「ごめんなさい…これ以上、あたし、あなたに見られたくないの」

と言う奈緒子の声が響き渡った。

「奈緒子…お前…」

マサイへと変身していく様子を見られたくない。

という彼女の願いを感じ取った私は奈緒子の好きにさせることにした。



そして、それから数日経ったある夜、

「あなた…お願い…来てぇ…」

奈緒子が篭もった部屋の中から彼女の声が響き渡った。

「奈緒子…」

久しぶりに聞く奈緒子の声は野太い男の声に変化し、

また言葉の発音もぎこちないものになっていた。

「もぅマサイになってしまったのか」

部屋に篭もる前の奈緒子の様子より時間の経過を勘定した私は

既に奈緒子はマサイの勇者に変身したものと思いつつドアの前に立つと思わず緊張する。

そして、

「じゃぁ…入るよ…」

と言いながらドアノブに手を掛けてみると、

掛かっていた鍵はいつの間にか開いていて、

チャッ

という軽い音を立てながらドアが開く。

ゴクリ…

部屋の中の様子が私の目に飛び込んでくると、

私は恐る恐る部屋の中へと入っていった。

すると、

ムッ!!

あのマサイ村で嗅いだマサイ達の匂いと同じ匂いが私の鼻につく。

しかし、私はそれに構わずに部屋に入っていくと、

部屋の真ん中で座り込んでいる漆黒の肉体が目に飛び込んできた。

そして、

「!!」

それを見た瞬間、私は思わず一歩後ずさりしてしまった。



長い腕と長い脚

そして無駄なく張りつめた筋肉と黒光りする漆黒の肌、

間違いなくそこに居るのはサバンナの勇者だった。

「…奈緒子…すっかり…変身しちゃたな…

 でも、そんな格好でいると風邪を引くぞ」

マサイとなった奈緒子を見ながら私がそう言うと、

「いいの…」

と答えながら奈緒子はゆっくりと顔を上げる。

「うっ」

変身してしまった奈緒子の顔はかつての面影をすっかり失しない、

代わりに精悍なモランの顔へと変わっていた。

そんな彼女の顔に私は思わず驚いたが、

「で、用ってなに?」

と平静を装いながら尋ねた。

すると彼女は下腹部へと細長く伸びた手を移動させていくと

「あなた……あっあたし……もぅ…なっちゃうの…」

とたどたどしい言葉でそう言いながら、

自分の身体を私の方に向けると股を開て見せた。

ムキッ!!

田型に深く刻まれた腹部と逞しく盛り上がった胸板を持つ男の体が

私の目に飛び込んできたが、

しかし、股間の中だけはまだ女性のままだった。

だが、その女の証である花弁もすっかり小さくなり、

その代わりにクリトリスが親指大に肥大化しまるでペニスのような姿になっていた。

ビクン!!

ペニス化していく奈緒子のクリトリスは微かに震えながら次第に大きさを増していくと、

それとは逆にコレまで私のペニスを飲み込んできた女唇は震えるように次第に小さくなり、

やがて静かに閉じると1本の線になってしまった。

「あ…」

そのとき、奈緒子は思わず小さな声を上げた。

すると、

ムクムクムク!!

まるで重石が取れたようにクリトリスがキノコが伸びて行くように成長を始めると、

スッ!!

そのクリトリスの先に括れが姿を見せ、

そして、それが見る見る膨らんでいくと、

やがて、

プリッ!!

先端を包む皮が裂ける様にして開き、

縦に口を閉じた肉塊が姿を見せた。

亀頭だった。

プルプル…

亀頭が顔を出すと、

それは震えながらカリ首が開き、

やがて、奈緒子のクリトリスは肉槍のような逞しいペニスへと変化していった。

「………」

奈緒子は何も言わず自分の股間で血管を浮き出しながら勃起するペニスを眺めていた。

しかし、彼女の変化はコレで終わりではなく、

モコッ!!

閉じた女陰の跡の両側に小さな膨らみが姿を現すと、

それらは垂れ下がり、

そして、シワを表面に刻みながら袋を作っていくと陰嚢へと姿を変えていった。

そう、たった今、

奈緒子は私の目の前でマサイへに変身してしまったのだ。

何も言わず黙って奈緒子の最後の変身を見届けた後、

「奈緒子…」

と声をかけると、

奈緒子は固く勃起している出来たばかりの自分のペニスをながめながら

「…あたし…なっちゃったのね…

 マサイに…なっちゃったのね」

と呟くと、そのまま黙ってしまった。

「…奈緒子…」

そんな奈緒子に私が声をかけると、

「何も…言わないで…

 ひっ一人にして」

奈緒子はそう私に告げると私は奈緒子の言葉に従い、そのまま部屋から出て行った。



そして、翌日

私はドアの外から奈緒子の様子を伺ってみたところ部屋には彼女の気配はなく、

あわてて部屋に入ると

「あなた…ごめんなさい、あたし…マサイのところに行きます」

と書かれた一枚の紙が昨日奈緒子が居た場所に置いてあった。

「奈緒子…」

紙を見た私は急いであのマサイ村に向かったが、

しかし、村には奈緒子の姿はなく、またオロイボニの姿もなかった。

そして、ようやく見つけた古老に話を聞くと、

…夜明け前、オロイボニの元に一人の男が訪ねて来ると、

 オロイボニとしばらく会話を交わした後に、

 オロイボニと男はそのまま連れだって村を出ていってしまった。

と私に今朝方起きたことを話してくれた。

「一体どこに行ったんだ、奈緒子」

マサイの古老の話に私はそう思いながら、

可能な限りあちらこちらのマサイ村を訪れては奈緒子の所在を探したが、

しかし、奈緒子の消息はぷっつりと途絶え、再び見つけ出すことは出来なかった。



やがて、私の赴任期間が終わり帰国準備をあわただしくしていたある夜、

庭先で動く人影に気がついた。

「泥棒か?」

そう思いながら、庭に出て闇の方に向って、

「誰だ!!」

と叫んでみると、

すると、闇の中からかすかな人影が動き、

「…あなた…」

と私に声をかけてきた。

その声に私は咄嗟に

「奈緒子か?」

と尋ねると、人影は小さく頷きそしてゆっくりと私に近づいて来た。

サクッ

サクッ

一歩一歩近づくにつれ人影の全体像が見てくる。



やがて、漆黒の闇から浮き上がるかのように一人の人物が姿を見せた。

その途端、

「…マサイ…」

私が思わずそう呟いた人物の姿は、

筋骨逞しい半裸の体には朱染めの衣装・シュカを腰に巻き、

毛髪と赤土とを捏ねて赤茶色の簾状にした髪を結い上げ、

手足や首元には青や赤のトンボ球で出来たマシパイを幾重にも重ね、

そして長い槍と牛の皮で出来た盾を持った、

そう…それはまさしく正装したマサイの勇者・モランだった。

しかし、私には目の前のマサイの勇者が奈緒子だと言うことがすぐに判ると、

「奈緒子…どこに行ってたんだ、散々探したんだぞ!!」

と話しかけながら近付いていった。

そして、すぐ傍まで近寄ると、

「その格好でよくここまでこれたね」

と尋ねた。

すると、奈緒子は私から目を逸らし

「ウシ達と…一緒…この近くに来て…

 あなたのこと…思い出したら、

 足がこっちに…」

と言葉を選ぶようにして答えてくれた。

『そっか、

 で、あれからどこに行ってたんだい?』

マサイとなった奈緒子の様子から私はマサイの言葉でそう話しかけると、

『!』

奈緒子は私の顔を見て、

一瞬間を置いた後、

『あなたの元を去ってからあのマサイ村に行ったわ…

 そして、オロイボニに会ったの…

 そしたら、モランになるためには試練が必要だって言って

 オロイボニと一緒に旅をして…

 遠くのマサイの村であたし…

 マサイとして迎えられたの…

 そこで、いろいろ教えてもらった…

 マサイの着るもの…

 マサイの食べるもの…

 マサイおしゃれ…

 マサイの歌…

 みんな教えてもらったの…

 あたしも勉強した…
 
 ウシの世話…
 
 シンバの狩り…
 
 そして、戦いの仕方…
 
 あたしは頑張ってマサイになったわ…
 
 シンバも倒したし、
 
 ウシも任して貰う様になった。

 そして、この戦士の証も貰ったの
 
 あたし、マサイになったのよ、
 
 モランなのよっ。

 ナグ…ううん。

 本当は前にオレが付くオレナグ…それがあたしの本当の名前。

 でも、モラン・オレナグとなってもあたしには奈緒子としての思い出がある。

 だから、ウシを連れてここの近くに来たとき、

 あなたにどうしても会いたくなって………だから』

と奈緒子がコレまでのことをまるで堰を切ったようにしゃべり始めた。

そして、話ことをすべて話し終えた時、

『そうか、戻ってきてくれてありがとう』

私は奈緒子がココに戻ってきてくれたことに礼を言いながら抱きしめようとすると、

奈緒子は一歩後に引き、

そして、

『ダメ、あたしは、もぅマサイ…

 マサイのモランなのよっ

 ほらっ、耳にこんな穴を開けてしまったし、

 この槍でシンバを倒したのよ、

 知っているでしょう?

 シンバってライオンのことなのよ、

 あたし…ライオンを仕留めてしまったのよ!!

 ライオンを仕留めた者はモランになるのよ、

 だから、モランとなったあたしはあなたと一緒にいることなんて…』

奈緒子はモランの証である胸のマシパイを見せつけながら私にそう告げた。

確かに、奈緒子の身体は引き締まり、

体脂肪も薄く、筋の一本一本が無駄なく張り詰めた

まるで野獣を思わせる肉体美を晒していた。

『あっあなた…に一目会いたかったの…だから…さよなら…』

なおも下がりながら奈緒子がそう言って駆け出そうとしたとき、

『待てよっ』

ハシッ

私は咄嗟に奈緒子の腕を掴むと引き留めた。

その途端、

『あっ』

『わっ』

ドタッ!!

私はバランスを崩すと奈緒子の上にのしかかるように折り重なって倒れ込んでしまった。

ほんの一瞬のことだったかもしれないが、

1時間にも2時間にも感じられる時間が過ぎていく。

すると、私は奈緒子の身体をギュッと抱きしめ、

『私も、君に会いたかった。

 もし、会えないまま帰国してしまっては心残りになるから…』

と呟くと彼女の顔にキスをしようとした。

すると、

『あっダメ…そんなことをしては…』

近づく私の唇に奈緒子は首を振って拒絶したが、

しかし、私は

『会いたかったよ…奈緒子』

と呟くと

そっと、厚くなった奈緒子の唇にキスをした。

その途端、奈緒子は全身の力を抜けていくのを感じ取ると、

『私も…あなたに会えなくなるのが…怖かった…』

と目に涙をうっすら溜めながら告げ、

『でも、あたしはもぅ…』

と言ったところで、私は奈緒子の唇に指を当てると、

『どんな姿になっても、私の前ではキミは奈緒子だよ』

と囁いた。

『う…うれしい…』

私の言葉に奈緒子はそう返事をすると、

今度は奈緒子の方から私に抱きついてきた。

そして、お互いに抱きしめあった後

『部屋に入ろうか』

奈緒子の耳元で私がそう囁くと、

『ダメ…あたしは入れない…

 だって…あたしはモラン…』

と言いながら首を振る。

すると、

『何を言うんだよ、

 ここはまだ君の家だよ
 
 さっ入ろう』

私はそう促すと、

すっかり逞しくなった奈緒子を抱き抱えて家の中へと入っていった。

部屋の灯りにシュカを巻いた奈緒子の逞しい肉体が浮かび上がる。

『奈緒子…』

『あなた…』

私と奈緒子はしばらく見つめ合った後、再び抱き合った。

『…こんなに逞しくなりやがって』

私は彼女の逞しく盛り上がった筋肉の感触を確かめながら呟くと、

ツン!!

っと私の下腹部をつついている奈緒子の股間に手を延ばした。

『あっあなた、何を…』

私の手の動きに気づいて驚いた奈緒子がそう言いながら身をよじると、

『ココもすっかり逞しくなったみたいだね』

私はそう囁きながら、奈緒子の腰に巻いてあるシュカの中に手を入れ

そして、中で固く勃起しているペニスを握りしめた。

その途端、

『あっ…』

奈緒子の身体がビクンと反応をすると

彼女の胸を飾っているトンボ球の紐がカシャリと鳴った。

それを見た私は

シュッシュッ

っと奈緒子のペニスを扱きながら、

『男のオナニーはしたことがあるの?』

と尋ねると、

『うぅん』

奈緒子は顔を伏せた状態で首を横に振る。

『そうか…』

奈緒子の答えに私は頷くと徐々に腕のスピードを上げていった。

その途端、

『あっ…(ビクン)』

俺の手淫に感じてきたのが奈緒子は小さい声を上げると、

スッ

っと漆黒色の手を私の股間に伸ばすと私のズボンを下に降ろし、

そして、その下で勃起している私のペニスを握りしめると扱き始めた。

『うっ』

ゾクッ

言いようもない快感が私の背筋を突き抜けていく、

『クスッ』

私の反応を見て奈緒子が微かに笑みを浮かべると、

私とマサイの姿をした奈緒子は向き合ってお互いのペニスを扱き合った。

シュッシュッ

シュッシュッ

『あっ』

『うっ』

ペニスを扱きあいながらお互いにそんな声を出し合っていると、

ジワッ

奈緒子が居なくなって以降ほとんどオナニーをしてこなかった為か

すぐに私のペニスの付け根に出すものが溜まり始めると、

『…うっ出そうだ…』

顎を上げながら私はそう呟いた。

すると、

『あぁ…あたしも…

 何かが…何かが出るぅ…』

奈緒子も視線を天井に向けながら呟き、

そして、次第にお互いの腕の動きが早くなっていくと、

『あぁ…』

『くぅぅぅぅ…

 出る出る出るぅぅぅ!!』

ついに私と奈緒子は限界点を越えてしまうと、

シュシュシュ!!!

2つの色のペニスから同じ白濁した精液を高く吹き上げてしまった。

『くはぁぁ』

『はあぁ…』

私と奈緒子は合わせるようにして大きく深呼吸をしながら、

ピュッ!

ピュッ!!

っとまるで最後の一滴まで精液を縛り出すように扱き、

そして、すべてを出し切ると、

クスクス

お互いに笑い出してしまった。

そして笑いながら、

『奈緒子…お前…本当にモランになったんだな…』

っと手に着いた精液の香りを嗅ぎながらそう告げた。

『うん…』

奈緒子は私のその言葉に恥ずかしがることなく頷くと、

『ねぇ…あなた…お願いがあるの…』

と囁きながら奈緒子は私に向かって尻を突き出し、

スルリ

っとシュカをめくり上げた。

『なっなにを…』

私は自分に向かって肛門を晒した奈緒子の姿に驚くと、

『おまじない…をして…

 モランが村から出るときには

 ここにカァーリを入れて無事を祈るの、

 だっだから、あなたのカァーリをココに入れて、

 あたしがモランとして生きていけるようにおまじないををして欲しいの』

と肛門を大きく広げながら私に懇願した。

『カァーリって、チンポのことか…』

奈緒子の言葉にわたしは驚いて聞き返すと、

コクリ

奈緒子は静かに頷いた。

奈緒子の肛門を眺めながら私はしばし考えた後、ついに覚悟を決めると、

『……判ったっ』

というと、自分のペニスに唾を塗り、

そして、奈緒子の腰を抱えると、

『じゃぁ行くよ…』

と奈緒子に言いながら、

ヒタッ

自分の亀頭を奈緒子の肛門に当てた。

クッ

その瞬間、奈緒子の体は微かにこわばったが、

しかし、

私が腰に力を入れ押し込み始めると、

グヌッ

奈緒子の肛門は易々と広がっていくと私のペニスを飲み込み始めた。

『そうか…

 ココはマサイ達に…』

わたしはそう思いながら、

漆黒色の肌に覆われた奈緒子の体内に自分のペニスを押し込んで行った。

『うっくっ』

肛門を犯される感覚に奈緒子はギュッと手を握り締め、ひたすら耐えていた。

『うわっ、すごい締まりだ』

その一方で女だった頃の奈緒子の時にしたセックスとはまるで違うその感覚に

私は戸惑いながらもゆっくりと腰を動かしはじめた。

部屋の中に言いようも無い音が響き始める。

やがて、

ビクッ

私は再び自分の限界が迫ってきたことを悟ると、

『奈緒子…でる…』

と顎を上げながら呟いた。

すると、

『だして…』

俺の言葉に奈緒子はそう返事をすると自らも腰を降り始めた。

『あっあっあっ』

『でっでるぅ』

私は奈緒子の腰をつかみながらそう叫ぶと、

ビュッ!!

っと奈緒子の腸の中に精液を飛ばしてしまった。



「くはぁ」

射精した私は肩で息をしながら挿入していたペニスを抜き取り、

そして、奈緒子の横に寝転がる。

すると、

スッ

奈緒子の黒い腕が私の首に絡みつくように伸びてくると、

それを支点にして奈緒子が起き上がり、

そして、私の目の前に奈緒子の顔が迫ると、

『ありがとう…』

っと一言告げ、

私の唇に自分の唇と重ねた。

『奈緒子…』

そんな奈緒子の首に私は自分の手を絡めると長いキスをした。

そして、口を離したとき、

『じゃぁ、今度はあたしの番ね、

 あなたの処女を頂くね』

奈緒子はそう私に告げると、

グッ

っと股間で固くなっているペニスを私の目の前に突き出した。



翌朝、私は痛む肛門を庇いつつ門の前でマサイの勇者を見送っていた。

『じゃぁ、行くのか…』

と話しかける私の言葉に、

『うん、あたしはマサイのモラン・オレナグだから

 あなたとは一緒に行けない』

モラン・オレナグに戻った奈緒子はそう返事をすると

昨夜の疲れも見せずに手にした槍と盾を掲げた。

『そうか…本当にマサイになってしまったんだな…

 お前は…』

そんな奈緒子を見つめながら感慨深そうに私がそう言うと、

『でも、あたしは死んでこの世から消えたわけではないからね、

 一緒には暮らせないけど、

 同じ大地の上で生活しているんだからね』

『あぁ、そうだな、

 月から見ればちっぽけな星の右と左にいるようなものだからな』

『それじゃぁ、『さよなら』は言わない。また会おうね。』

奈緒子はそう私に言った後、私に抱きつくと、

『…あなた…男の快感を教えてくれてありがとう、

 あたし、モランとして頑張るからね』

と耳元で囁くと、パッと手を離すなりスグに走り去っていった。

そして、見る見る小さくなっていく奈緒子の影を見送りながら、

「さて、またアフリカに来るか…」

っと私は呟いていた。



おわり