風祭文庫・尼僧変身の館






「脱走」


作・風祭玲

Vol.609





プシューッ!!

ザワザワ…

停車した電車のドアが開くと、

車内から降りる乗客と共にわら草履を履いた足がホームへと降りてゆく。

サッ

サッ

サッ

黒衣と黄袈裟の裾を動かしながらその足は改札口へと動いていくと、

カシャ!

自動改札機の冷たい音が響きわたり、

ガヤガヤ…

その直後、

僕の目の前にはごく普通の世界が広がっていた。

「戻ってきたんだ…

 僕はあそこから戻ってきたんだ」

そう呟きながら山深い山中から必死の逃避行を思い出していると、

ジワ

嬉しさのあまり目から涙が浮かび、

ツツ…

その頬を伝わって行く。

そのとき、

「おっ尼さんだ」

と男の声が近くから響いた。

「え?」

その言葉に僕が振り返ると、

「ほらっ

 ダメじゃない。

 失礼でしょう」

そう窘めながら若い女が男の手を引き足早に通り過ぎて行く。

「尼さん…」

その男が言った言葉を僕は復唱すると、

「尼さんだ」

「本当だ」

「俺、はじめて見たよ」

僕の周囲を行き交う人たちの間から

そのような会話が漏れ聞こえてきて

皆僕をチラリと見た後、

足早に通り過ぎていった。

「尼さん…」

「尼さん…」
 
「尼さん…」

人々が口にする言葉が次第に僕の心を締め上げてくると、

「違うっ!

 僕は尼さんなんかじゃない」

思わず僕はそう叫んでしまうと、

ダッ

その場から逃げるようにして走り出してしまった。

草履履きの足に黒衣をまとわりつきながら僕は走るが、

しかし、

グリッ!

突然、お腹の中で”アレ”が動くと、

ビクン!

「あんっ!」

僕は思わず声を上げると、

とあるショーウィンドゥの前で立ち止まってしまった。

グリッ!

グリグリ!

お腹の中で”ソレ”は蠢き、

「うっ

 くっ」

僕はお腹を押さえながら、

ショーウィンドゥへと視線を動かした。

すると、

「あっ」

ショーウィンドゥには白い頭巾をかぶり、

顔を赤らめている一人の尼僧が映し出されていた。

「尼さん…」

ショーウィンドゥに映る自分の姿を見て僕はそう呟くと、

ブワッ

まるで吹き出すかのように猛烈な恥ずかしさがこみ上げ、

その場に座り込んでしまうと、

頭巾が覆う頭を押さえ込んでしまった。

「尼さん

 尼さん

 尼

 そう、僕は尼なんだ。

 尼にされてしまったんだ。

 この頭巾の中には髪の毛が一本もないツルツルの頭、
 
 オチンチンは取られ、
 
 胸にはオッパイが膨らみ、

 そして、お腹には子宮と観音様を仕込まれてしまっている尼…
 
 僕は尼なんだ…」

頭巾を押さえながら僕は苦悶していると、

「もっもしもし」

「もしもし、

 大丈夫ですか」

と声が掛けられた。

「え?」

その声に僕は顔を上げると、

「お体の具合か、どこか悪いんですか?」

困惑気味に尋ねる警察官の姿があった。

「いっいえっ

 だっ大丈夫です」

警察官のその声に我に返った僕は即座に立ち上がると、

「大丈夫ですから」

と言い残してその場を足早に去っていった。

そして、

「尼さんだ」

次々と周囲から注がれる視線の中を僕は小走りで抜け、

やっとの思いで駅前通から路地に入ると、

あるところへと向かっていった。

自分の帰るべきところ、

自分の帰りを待っている者が居るところ、

そことは…

「ハァハァ

 ゴクリ…」

あの日の朝、妻に見送られ出かけていった自分の住処…

そう、新婚である僕と妻・望が住む部屋の前に僕は立っていた。

「帰ってきた…」

自分の名字が書かれた表札を見つめながら僕はそう呟くと、

スッ

引き寄せられるようにしてその扉を開けようとする。

しかし、

グリッ!

再びお腹の中で観音様がうごめくと、

「うっ」

お腹を押さえながらその場にうずくまってしまった。

「くはぁ

 はぁはぁ

 はぁはぁ
 
 だめなのか、
 
 ここには入れないのか…」

いつの間にか手にしていた数珠に視線を落としながら僕はそう呟くと、

子宮の中で暴れる観音様を押さえるようにして立ち上がり、

そして、部屋を後にすべく振り向いた。

すると、

「望…」

たったいま買い物から帰ってきたのか、

妻・望が僕の真後ろに立っていたのであった。

「望…」

妻の姿を見た瞬間僕は思わず駆け寄ろうとしたが、

しかし、

「!!!」

お腹の中の観音様と身体を包む黒染め衣に気づくと、

「くっ」

僕は歯を噛みしめ、

関係ないフリをしながらその場を立ち去ろうとした。

すると、

「あら、おかえりなさい」

と望はまるで僕の帰りを待っていたかのような台詞を口にした。

「え?」

その言葉に僕は驚くと、

「そんなところで何をしているの?

 さっ入って」

と望は僕に言い、

ガチャッ

部屋のドアを開ける。

「あっ

 あのっ」

尼となり姿形がすっかり変わってしまったのにも関わらず

望はかつてと同じように接することに、

僕は多少の不信感を感じながらも部屋へと入っていった。

そして、

「望…

 ぼっ僕が判るのか?」

部屋に入った途端、僕は尋ねた。

すると、

「何を言っているの?

 あなたはあなたでしょう?」

と望は答え、

「さっ、

 疲れたでしょう。

 いま、お茶を煎れますね」

と言うとそのままキッチンへと向かっていった。

「…判るって言っても…

 こんな姿になた事になにもショックを受けないのか」

部屋の隅に置かれている姿見に映る自分の姿を見ながら

僕は不思議がっていると、

「あっそうそう、

 あなたにお客さんが来ているのよ」

と望の声が響き渡った。

「僕に客?」

妻のその言葉に僕は驚くと、

そっと、隣の部屋の戸を開けた。

すると、

「!!!」

そこには一人の尼僧、

そう、あの山中の尼寺で僕を尼にした無洸尼様の姿があった。

バッ!!

無洸尼様の姿に僕は慌てて戸を閉めてしまうと、

「あなたっ

 何をしているの」

と望の声が響いた。

「望っ

 お前、あの人がなんなのか知っているのか?
 
 僕をこの姿に、
 
 尼にした人なんだぞ」

そんな望に向かって怒鳴ると、

ところが、

「それが、どうしたの?

 ホラ、

 無洸尼様がお待ちかねよ
 
 サッサと入って」

僕に向かって望はそう指示をすると、

押し込むようにして僕を部屋の中へと連れて行った。

「遅かったですね、

 華月…」

僕が部屋の中に入るなり無洸尼様は一言そう告げた。

「はっはいっ」

その言葉に僕は反射的にその場に跪き、

そして頭を下げると、

「…でも、

 寺の者に行き先を告げずに出て行くのはいかがなものかと思いますが」

と僕があの尼寺を脱走したことを指摘する。

「いえっ

 これは、
 
 その…」

無洸尼様の姿から目をそらしながら僕はいいわけを考えていると、

「申し訳ありません」

と隣に座った望が僕に代わり頭を下げた。

「望…」

妻のその行動に僕は驚くと、

「うふっ

 だって、無洸尼様はあたしにとっても大切な方なのよ
 
 当然でしょう」

と望は答える。

「大切な方って…」

その言葉に僕はさらに驚くと、

「だって、ホラ、

 あたしも無洸尼様のお導きで出家し

 尼になったのよ」

そう言いながら望みは

グッ

自分の髪の毛を強く引っ張ると、

ズルッ!

まるでカツラを取るように望の髪が抜け落ち、

その跡には青い剃りが光り輝いていた。

「望、お前…」

「うふっ

 あなた…あたしも尼になったのよ、

 そして、無洸尼様はあたしに蓮華と言う名前と共に、

 この仁王様をくださったのよ」

坊主頭を晒しながら望は嬉しそうにそう言うと、

スッ

着ていた衣服を脱ぎ捨て裸体を僕に見せた。

すると、

グニュッ…

飾り毛が覆う妻の股間から小さな頭らしきものが姿を見せると、

ニュクニュクニュク…

瞬く間に伸び、

まるでペニスと見まごうばかりの仁王像が聳え立った。

「望…

 お前…」

「ふふっ

 あなた…

 いえ、華月っ

 禁を破り勝手に山を降りたこと、
 
 無洸尼様はお怒りです。

 この責めは受けなくてはなりません」

股間から仁王像を聳え立たせ僕に向かって厳しい口調でそう言うと、

「さぁ、

 その衣を脱ぐのです。

 お前に戒めを与えます」

と告げた。

「望…」

唖然としながら僕は妻の名を呼ぶと、

「誰の名を言っているのです。

 私は蓮華です。
 
 さぁ、衣を脱ぐのです」

と僕に向かって命じると、

その手を伸ばし衣を鷲づかみにした。

「いやっ」

部屋の僕の悲鳴が響き渡るが、

しかし、その声を聞きつけて駆けつけるものなど無く、

瞬く間に僕は衣を脱がされてしまうと、

妻に自分の裸体を晒してしまった。

「見ないでぇ」

膨らんだ胸、

縦溝が刻まれた股間、

尼となってしまった自分の肉体を妻に見ないよう手を足で隠しながら叫ぶが、

「ふふっ

 あなた…すかり可愛くなって…」

そんな僕の姿を見ながら妻はそう呟くと、

僕の胸元に手を伸ばし、

乳房を隠している両手を掴み挙げさせると、

「うふっ

 あなた…
 
 なんで尼さんになっちゃったの?」

と囁きながら抱き寄せ、

そして、股間の仁王像を僕の股間に押しつけてきた。

「うっ」

自分の股間を引き裂くようにして割り込んでくる固い感触に

堪えるようにして僕はギュッと目を閉じると、

「その表情、

 とってもいいわ」

望はそう囁き、

グッ

股間を突き出した。

すると、

ニュクッ!

僕の股間に押し当てられていた仁王様は、

股間のヒダを押し分け、

紅に染まる僕の膣へと入り込んできた。

「あっ

 いやっ
 
 入る…
 
 入ってくるぅ
 
 いやっ
 
 止めて、
 
 お願い、
 
 止めて」

トーンの高くなった声を上げながら僕は妻に許しを請うが、

しかし

「ふふっ」

望は笑みを浮かべると、

ズンッ!!

力を込めて僕を突いた。

「うわぁぁぁ!!」

身体を太い槍で貫かれたかのようなショックが突き抜け、

僕は悲鳴を上げるが、

しかし、

ズズズ…

身体に突き刺された仁王様が引き抜かれると、

力を込めて再び突く、

そして、それを幾度か繰り返すうちに

カシッ

カシッ

僕の体内で子宮に込められた観音様と妻が突く仁王様とがぶつかり合い、

その刺激がさらに僕を責め立てた。

「あぁっ

 いやっ
 
 あんっ
 
 くはっ」

ツルツルの頭を振り回し僕は悶えていると、

「さぁ、華月っ

 お前のその姿を無洸尼様に見ていただきなさい」

と望の声が響くと、

その身体が僕の後ろに回り、

グイッ

仁王様で貫かれた状態のまま僕の太股が持ち上げられると、

無洸尼様に向けてM字開脚をするような格好になってしまった。

「あぁ…

 むっ無洸尼さまっ
 
 そんな目で見ないでください」

グニュ

グニュ

妻に突かれなからも僕は恥ずかしさのあまり顔を背けると、

無洸尼様は視線を反らせずに静かに手を合わせ、

「・・・・・・」

経を唱え始めた。

そして程なくしてお経の声を妻の動きがシンクロしてくると、

「あっあっあっ

 あっあぁ
 
 あぁっ
 
 あっ
 
 いっいくぅぅぅ!!」

僕は無洸尼様の視線の中、

妻に貫かれながら絶頂を迎えてしまったのであった。



その後はどうなったのかは判らない、

ただ、気づいたときには僕は望と共に尼寺に戻されると、

尼としての日々を過ごしていた。

「…華月」

「はっはいっ」

「またお前は粗相をしたのですか」

「いえそれは…」

「口答えは許しません。

 蓮華っ
 
 お前の仁王様で華月を突きなさい」

「はいっ」

「いやっ

 それだけは…
 
 それだけは…」

「あっあーん」



おわり