風祭文庫・尼僧変身の館






「薬師堂の尼」

作・風祭玲

Vol.514




「薬師堂の尼さん?」

その話題が上ったのはとある夏の午後のことだった。

1学期の成績が芳しくなく、

補習授業に借り出された俺達は、

補習が始まるまでの時間を潰すかのように教室で喋っていたのであった。

そして、誰が言い出したのかは定かではないが、

話の流れから通学路より外れた薬師堂に一人で住む尼僧のことが話題になり、

「あっ俺、

 その尼さん見たことがあるよ」

と数日前、通学路から見える薬師堂の近くで動いていた白い尼僧頭巾のことを言う。

「へぇ…

 金沢、お前、あの尼さんを見たのか?」

俺の目撃談に他の者達が目を丸くして驚くと、

「まっまぁな…」

その反応に戸惑いながら俺はジュースが入っている缶に口をつける。

「どんな尼さんだった?」

「さぁな…あまり詳しくは見なかったけど」

「へぇ…でも生きていたんだ」

「なんだそれ?」

「あっあぁ…

 ホラッ、

 俺の親父ってこの町の出身だろう?

 だから子供から薬師堂の尼のことは話を聞かされて居たんだよ」

「へぇぇ…」

「親父の話ではガキの頃から居た。

 というからもぅ結構な年齢のはずだけどなぁ…」

薬師堂の尼のことを知っているソイツはそう言うと、

腕を頭の後ろで組んだ。

「でも…

 俺が見た尼さんはもっと若かったけどなぁ…」

そいつの言葉に俺は首をかしげながら、

そう返事をすると、

「え?、

 若かったって幾つに見えたんだよ」

と皆は俺が見た尼僧についての詳細説明を求めてきた。

「え?

 うっうん…

 そうだなぁ…

 見た目…20代半ばってっ感じだなぁ」

と俺はその尼僧を見かけたときの感想を呟くと、

「なぁにぃ!?」

「20代半ばだとぉ?」

俺の説明を聞いた途端、

野郎共がドアップで迫ってきた。

「うわっ

 そんなに顔を寄せるなっ!!」

間近に迫る顔を退けながら俺は悲鳴をあげると、

「よぉぉしっ

 今からその尼さんをとくと拝んでやろうじゃないか!!」

と一人が声を上げると、

「賛成ーぃ」

「俺も行くぞ!」

俺を取り囲んでいた野郎共がそう言いながら腰を上げた。

「はいはい、

 頑張って行って来てね、

 俺は補習があるからさっ」

炎を上げやる気満々の連中を横目に見ながら俺は他人モードで返事をすると、

ガシッ!!

いきなり俺の腕がつかまれ、

「何を言うんだ?

 金沢君っ

 君が居ないと話にならないじゃないか」

と一人がメガネを怪しく輝かせながら俺に告げた。

「んな?」

その言葉に俺は髪の毛を逆毛させながら叫ぶが、

「ふふ…

 君は貴重な重要参考人だ、

 署までご同行をお願いいたします」

と言う声とともに、

ザッザッザッ!!

「うわぁぁぁぁ〜」

俺は足並みをそろえて行軍し始めた連中とともに強制連行されてしまった。




ザザー…

西に傾き始めた夏の陽が照らし出す中、

俺と俺を連行する野郎共は通学路を進み、

そして、途中より薬師堂へと続く山道へと踏み込んでいった。

「なぁ…

 やめよーぜ、こんなバカなこと…

 尼さんだって迷惑だろうよ」

山道を進む連中に俺はそう提案すると、

「何を言うかっ

 我々は真偽を確かめに向かっているんだ」

と俺の提案をバッサリと切って捨てる。

「まぁ、なんだ、

 婆さんの尼さんだったら、速攻で引き上げるし、

 金沢が見たように若い尼さんだったら…」

「色々と悩み事もあろうかと思うから」

「俺たちがなぁ…」

「慰めてあげようって」

「そう考えたわけだ」

と代わる代わる俺に目的を説明した。

「(ジト)お前ら…」

野郎共のその言葉に俺は睨みつけながら抗議をすると、

「あっあそこだよ」

と眼下に見える薬師堂を見つけた一人が声を上げた。

「!!」

その声に俺達全員の視線が釘付けになると、

まるで、石化してしまったかのように

全員、その場で固まってしまった。



カナカナカナカナ…

陽はさらに西に傾き、

明るかった空が次第に夕暮れモードへと移行していく。

「…なぁ」

固まったまま周囲の時間が過ぎていく様を横目で見ながら俺が声を上げると、

「なんだ?」

その声に反応するようにして返事が返ってきた。

「…いつまでこんなバカなことをしているんだ、俺達は…」

現在の俺達の姿を客観的に現したそのセリフを俺は言うと、

ギっギギギギギギ…

固形化していた野郎共の腕が軋みながら動き、

グワシッ!!

俺の袖を掴み上げると、

「よーしっ

 今から金沢に命令を伝える。

 よいかっ

 立ったいまより、君は特務隊員としてあの薬師堂へと特攻調査するように。

 判ったなっ

 判ったならっ行って来いっ!!!」

と都合の言い言葉を並べた後、

バン!!

俺の背中をつき押した。

「え?

 うっうわぁぁぁぁ!!!」

思いっきり突き飛ばされたために一気に坂道を駆け下っていった。



「うわぁぁぁぁぁ!!!」

ドタドタドタ!!!

駆け下るスピードを減速できずに俺はそのままの勢いで、

薬師堂の敷地に飛び込むと、

一直線に白い尼僧頭巾が揺れる庭へと駆け込んでしまった。

そして、

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「きゃゃっ!!!」

いきなり飛び込んできた俺を見て悲鳴をあげる尼僧目掛けて

俺は思いっきり抱きついてしまったのであった。



バフッ!!

いきなり視界がブラックアウトをするのと同時に、

フワッ

抹香の香りと別の香りが俺の身体を包み込む。

そしてある種の心地よさを感じながら俺は目を開けると、

「え?」

俺の目に飛び込んできたのは古い歴史を感じさせる木目の天井だった。

「天井?」

木目を一本一本確かめながら俺はそう呟くと、

「あらっ

 目が覚めましたか?」

と言う言葉とともに黒衣に黄袈裟、尼僧頭巾を被った尼が俺の視界に飛び込むと、

やさしく声をかけてきた。

「え?

 あっ」

尼僧頭巾から覗く皺のない張りのある肌を見ながら俺は小さく声を上げると、

「クスッ

 いきなり飛び込んでくるんですもの…

 おどろきました」

と尼僧は驚いたような仕草をして見せた。

「あっ

 いやっ

 あのぅ

 そのぅ…

 ……すっすみません」

尼僧の言葉に俺は慌てて飛び起き、

そして、その前にひれ伏して侘びを入れると、

「いいのですよ、

 ここに来る人なんてめったに居ないですから…

 なんだか嬉しくて…」

と尼僧は微笑みながら俺に話した。



「へぇぇ、

 そうなんですか」

ジー…

虫の音を聞きながら俺はひたすら感心をすると、

「えぇ

 お恥ずかしい話ですが」

と尼僧は身の上話を俺にしてくれた。

尼僧の名前は妙宝尼と言い、

この薬師堂を一人で守っている庵主だとか、

「それにしても、お若いみたいですが…」

女性に年齢を訊くのは失礼なことなんだけど

でも、そのときの俺は好奇心一杯で妙宝尼に年齢を尋ねてしまった。

すると、

「ふふっ

 別に良いじゃないですか」

俺の質問に妙宝尼は笑みを浮かべながら返答すると、

「ささ…

 何もありませんが…

 この野菊は美味しいですわよ」

と言いながら俺に野菊の花の御浸しを勧める。

「え?

 夏なのに野菊ですか…」

季節違いの野菊に俺は驚くと、

「さっどうぞ…」

と妙宝尼は野菊を箸で取り、俺に差し出した。

「はっはいっ」

まるで新婚カップルがするように俺は口をあけると、

妙宝尼はその開いた口の中へ御浸しを入れた。

シャリ…

瑞々しい、野菊の香りが俺の口の中に広がっていくと、

「美味しい…」

口を動かしながら俺は感想を言う。

すると、

「そうでしょう、

 ささ、どうぞ」

最初の一口を食べた俺を見届けた妙宝尼は再び野菊を勧めてくる。

「え?

 はっはぁ

(こんな若い尼さんに食べさせてもらうだなんて…

 まぁいいか…そんな経験滅多にないことだし)」

そう考えた俺は妙宝尼に勧められるまま野菊を食べた。

そして、

「ふわっ(あっあれ?)」

野菊で腹が満ちたのか眠気を覚えた俺は大きなあくびを一発すると、

崩れるようにして寝込んでしまった。

無論、その直前、

妙宝尼の口元がゆがみ、笑みを浮かべていることに気がつくことなく



リー

リー

リー

薬師堂を取り囲むようにして虫の音が鳴り響きわたっていた。

「うっ」

その虫の音に呼び起こされるかのように俺は目覚めかけると、

「うるさいなぁ…」

と文句を言いながら頭から布団を被ってしまった。

けど、

リー

リー

リー

虫の音は一向に止む気配は無く、

それよりかさらに一層声高くなき続ける。

そして、

「…………」

俺と虫とのもはやガマン比べが延々と続き、

そしてついに

「ぷはぁ!!

 暑い!!!」

暑さに耐えかねた俺は被っていた布団を蹴飛ばしてしまうと、

「う〜っ、何でこんなに煩いんだよ」

と文句を言いながら起き上がった。

その途端、

あれだけ大合唱をしていた虫の音がピタリと止んでしまうと、

まるで、さっきの騒音が嘘だったかのように当りはシンと静まり返り、

逆にある種の不気味さがゆっくりを広がっていく。

「なっなんだぁ?」

いきなりの場面の変化に勉が戸惑いながら周囲を見てみると

「あっ、ここは…」

そう俺が寝かされていたのは薬師堂から続く部屋の一角だった。

「そうか、

 俺、寝ちゃったんだ…」

直前の記憶を思い起こしながら俺はそう呟き、

そして、

スー…

開け放った戸を閉めようとすると、

プルン!!

俺の胸が微かに揺れた。

「え?」

己の胸の異様な動きに俺は視線を胸元へと移動させていくと、

ムチッ!!

俺のの視線に飛び込んできたのは有るはずの無い胸の膨らみだった。

「なっ

 なっ

 なにぃ!!!」

有りえないはずの胸の盛り上がりを見た俺は目を剥いて驚き、

そして、慌ててで胸元の襟を鷲掴みにすると

バッ!!

勢い良く胸を開いて見せる。

すると、

プルンッ!!

「う…

 こっこれは…」

俺の視界に入ってきたモノは、

間違いなく女性の乳房ものものだった。



「なっなっなっ

 なんで…

 こっこれは…」

プルンプルン

と自分の胸より盛り上がっている乳房を震わせながら、

俺は愕然としていると、

「まぁ、

 随分と立派なおっぱいですこと…」

という声が響いた。

「え?」

その声の響いた方へ向かって俺は慌てて振り返ると、

するとそこには、

「にこっ」

と笑みを浮かべながら妙宝尼が立て指を突き、正座をしていた。

「(ばっ)」

妙宝尼の姿を見た途端、俺はさっきとは反対に胸を隠してしまうと、

「みっ妙宝尼さん、

 いっいまの

 見たのですか?…」

と青い顔で尋ねた。

すると、

「はいっ

 いかにも美しい乳房でございます」

妙宝尼は嬉しそうな表情でそう告げる。

「そっそうですか」

妙宝尼のその返事に俺は困惑をしながらも

ギュッ

と胸を強く締め付けた。

すると、

「あっそんな事をしては…」

その様子を見た妙宝尼は慌てて腰を上げ、

そして、

「膨らみかけのおっぱいを手荒に扱ってはダメ、

 おっぱいは大切に扱わなくては…」

と注意をしながら、

俺の腕を掴むと、ゆっくりと開いて見せた。

「あっああぁぁぁぁ…」

胸を隠していた腕を開かされると、

再びプルンと揺れる乳房が姿を見せてくる。

しかし、妙宝尼は男である俺の胸についている乳房に驚くことは無く、

逆に、実った果実を愛でるかのように、

「ふふ…

 ホント…綺麗なおっぱいですこと…」

と言いながらその先端で固くなっている乳首に口をつけ、

カリッ!!

軽く噛んで見せた。

その途端。

ビクン!!

「うっ」

俺の身体の中にまるで電撃を受けたかのような衝撃が走り、

思わず顎を挙げ、仰け反ってしまった。

「ふふっ

 敏感なのね…」

それをみた妙宝尼はそう呟き、

そして、

「いいのよっ

 おっぱいが膨らんできた女の子はみんなそうなんだから」

と言いながら、

キュッ

と乳首を吸い上げる。

「うっくっ!」

「あんっ」

乳首から生じるこれまでに味わったことの無い快感に俺は悶えながら、

「ちっちが…う

 おっ俺は…

 オト…コだ」

とうわ言の様に呟いた。

けど、

「ふふっ」

俺のその言葉を笑うかのように妙宝尼と小さく笑うと、

俺の胸の盛り上がりを強調するかのごとく、

グッ!!

っと胸を締め上げ、

そして

「ほらっ

 良く御覧なさい。

 君のおっぱい…

 ほらっ

 こんなに膨らんでいるのよぉ…

 こんなおっぱいを膨らませている人って女の子しか居ないでしょう?」

と俺に告げた。

「あんっ」

グリグリと両乳首を攻める妙宝尼の指技に俺は悶えていると、

ジワッ…

今度は股間がまるで水を零してしまったかのように、

湿り気を帯びてきてしまった。

「なっ(はぁ)

 なんだ…

 しょっ

 小便を漏らしたのか、俺は…」

最初のシットリから次第にビチョビチョへと濡れる股間に俺は気づくと、

それを確認すべく振える手を差し込む。

しかし、

「え?

 なっ

 ない…」

そう、いつもならそこにあるはずの肉棒の盛り上がりがそこに無く、

代わりにツルンとした何もない股間の感触が指を伝わってきた。

「どうしたの…」

俺の驚きの顔に気がついた妙宝尼は尋ねてくると、

「キッ!!」

俺は妙宝尼を睨みつけ、

そして、

「あっあんた、俺に何をした!!」

と怒鳴った。

ところが、

「え?」

思いっきりあげた俺の声はまるで女みたいなキーの高い声で、

それを聞いた俺は慌てて喉に手を当て幾度も痰を切る仕草をする。

しかし、高くなった俺の声は低くなることは無く、

それどころかさらに声色は高くなってしまった。

ジワッ…

次第に女性化していく自分の姿にショックを受けた俺は

目に涙を溜めて妙宝尼を見ると、

「ふふっ

 怖がらなくて良いのよっ

 あなたはもぅ女の子なのよ」

と言いながら妙宝尼は俺の服を脱がしてゆく、

そして、全てを脱がしてしまうと、

「ほらっ

 よく御覧なさい。

 女の子になったあなたの身体を…」

と囁きながら俺の首を下に向けさせると、

「うっ」

俺の視界に入ってきたのは間違いなく、

女の肉体だった。



「そんなぁ…」

鈴の音のような声を上げながら俺は震える手で豊かに膨らんだ乳房、

はにかむ様に口を閉じている女陰…

そして、細くなってしまった腕と、

子供を生むために張り出した腰を確認するかのように撫で回していた。

すると、

スルッ

そんな俺の身体に絡みつくように妙宝尼の白い手が寄せられると

「ふふっ

 そんなに落ち込まないのっ

 今からあなたに女の身体のすばらしさを教えてあげるわ」

と囁きながら、

チュッ!

っと俺の首筋にキスをした。

「あっ…いやっ」

「ふふ…

 怖がらなくてもいいのよ」

「でっでも…」

「ここは尼寺…

 殿方の目はドコにも無いわ」

「いやっ」

「大丈夫…

 さぁ、

 心を開きなさい。

 拒むのではなくて、

 受け入れるのよ、

 さぁ…」

「いっいやぁぁぁぁ!!」

優しい言葉遣いながらも、

しかし、強姦魔の如く妙宝尼は俺の股間を強引に開かせ、

そして、犯してきた。

「あんっ」

「いいのよっ

 そう…」

尼僧頭巾を取り、

青い剃りを月の光に輝かせながら妙宝尼は俺を犯し続ける。

そして、

くちゅっ!!

俺の股間から淫靡な響きが上がり始めると、

「(ビクッ!)あっあぁ…」

俺は下の口より粘液を吐き出しながら快感の波に翻弄されていた。

「ふふっ、

 さっきまでピンク色だったオマンコがまっ赤っか…

 それに、ほらっ

 すごい洪水…」

「いっいやっ

 そんなこと言わないで」

「ふふ、気持ち良い?」

「うっ…」

「どしたの?

 気持ち良いんでしょう」

そう尋ねながら、妙宝尼は

ぬぷっ!

一本の指を俺の膣の中に押し込むと、

程なく2本目を追加する。

クチュクチュクチュ!!

「あっあぁ!!」

楽器が奏でるかのような淫乱な音を立てる股間と、

その股間に挿入された指の技に俺は翻弄され、

それから逃れるかのように妙宝尼に抱きついてしまうと、

「そう、

 そんなに気持ち良いの?」

と妙宝尼は俺を見つめ、

クリッ!!

俺のの秘所に挿入していた人差し指と中指を軽く捻ると、

二本の指を小さく開いてみせた。

その途端、

ビクン!!

俺の身体が大きく跳ねると、

「かはぁ!」

身体を貫いた快感に耐えるかの様に大きく息を吸う。

「敏感ね…、

 でも、安心していいのよ、

 女の子の成り立てってみんな敏感なんだから…

 で、どうなの?

 今のは気持ちよかった?」

優しい声ながらもイジワルな質問を俺に向かって告げると、

コクリ…

眉間に皺を寄せながら俺は小さく頷いた。

すると、

「なぁに?

 それは?

 それじゃ良くわからないわ」

俺の返事に妙宝尼は不満そうに言いながらさらに 

グリ

グリ

っと勉の膣の中で指を激しく動かした。

「うっうがぁぁぁぁぁ!!」

一段と激しく襲ってきた快感に俺は喘ぎ声を上げてしまうと、

「ふふ…

 じゃぁ、もっとしてあげようか?」

と俺に尋ねてきた。

「うっ(コクコク)」

快感に翻弄されている俺は妙宝尼のその言葉に幾度も頷いてしまうと、

「ふふっ

 もぅすっかり虜ねっ

 やっぱり、男の子には女の子の快感は心を破壊されてしまうかのような

 魔力があるのね…

 かつてのあたしがそうだったように…」

と呟く。

そして、

「いいわっ

 もっとしてあげる。

 そのその前に約束して…

 気持ちよくなるための代償として、

 あたしと同じ尼になって…

 あなたが得度をして尼になってくれれば、

 もっと一杯してあげる…」

と告げた。

「え?」

妙宝尼からの意外な提案に俺は驚くが、

スグにその思考を潰すかのような快感が俺を襲ってきた。

「うっあぁぁ…

 なっなります。

 尼になりますからもっと…」

執拗なくらいに襲ってくる快感にそう返事をしてしまうと、

「ふふふふ…」

妙宝尼は勝ち誇ったかのように俺を見据えていた。



その翌日…

ゾリッ…

妙法尼の手により髪をそり落としたあたしは尼となった。

そして、

「ふふふふ」

くちゅっ

「あんっ」

青い剃りたての坊主頭を揺らせながら、

あたしは本尊が見下ろす本堂で妙宝尼と絡み合い

互いに唇を吸い合っている。

「んくっ」

「ふふ、尼になったあなたって可愛いわ」

まるであたしの全てを食べ尽くしてしまうような視線で見つめながら

白い肌を晒す妙宝尼はそう囁くと、

「…はっ恥ずかしいです…」

と顔を横に背けあたしは返事をした。

「恥ずかしがることはないのよ、

 あたし達は尼同士なのだから…
 
 それに、ここには男は居ないわ…」

「あっあのぅ」

「なぁに?」

「なんであたしを女に…尼にしたのですか?」

横目で妙宝尼を見ながらあたしは質問をぶつけてみると、

「知りたい?」

もったいぶりながら妙宝尼は聞き返してきた。

「え?

 えぇ…」

「そう、いいわ、

 あなたも尼になったのですから教えてあげるわ…

 あたしはねぇ…一度は死んだのよ…」

妙宝尼はあたしの目をジッと見つめてそう告げた。

「え?

 それって…」

「ふふ、安心して、

 幽霊なんかじゃないわ、

 あたしはねぇ…かつてはあなたと同じ男だったのよ、
 
 でも、信じていた女性に裏切られたり色々あってね。

 それでみんなイヤになってココで自殺しようと思ったの…
 
 で、そんなことを考えながらこのお堂に来て、
 
 いつ首をくくろうか…って考えていると…
 
 薬師様があたしの前に立ってそんなに現世がイヤなら尼になれ。
 
 って言われて…
 
 で、気が付いたらこんな姿になっていたのよ。
 
 ふふ、変な話ね。
 
 そしてそれからこのお堂を男の人が訪れると、
 
 なぜかほとんどの人が尼になってしまってね…」

「ちょちょっと待ってください。

 それではあたし達以外にも尼さんは居るのですか?」

妙宝尼の言葉にあたしは驚きながら聞き返すと、

スクッ

妙宝尼は立ち上がり、

「えぇ

 居るわよ…
 
 あなたとあたし以外にも…
 
 ホラッ」

と言いながら

スッ

本堂の壁にある戸を引いた。

すると、

「うそっ」

その戸の向こうには頭を丸めた大勢の尼僧達が

あたしに向かって静に手を合わせている様子が目に入る。

「ふふっ、99人いるわ、

 あなたは丁度100人目の尼…

 さぁ、皆の者っ
 
 新たな尼を歓迎しましょう」

あたしを指しながら妙宝尼はそう言うや否や、

『はいっ』

99人の尼達は返事をすると、

ザッ

一斉にあたしに向かって歩み寄ってきた。

そして無数の手があたしに向かって伸びてくると、

「いっ

 いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

その叫び声を残してあたしは尼の群れの中へと沈んでいった。



「ふふ…

 ここは、誰も歳を取らないのよ

 だから、

 あたし達の宴は永遠に終わらないのよ…

 さぁ、あなたに尼の悦びをたっぷりと教えてあげるわ、
 
 時間はいっぱいあるのだから」



おわり