風祭文庫・尼僧変身の館






「妙心の寺」

作・風祭玲

Vol.021




ゴロゴロ…

「やれやれ…

 こりゃ、ついてないなぁ…」

道に迷った上に雷鳴の音とともに、

ポツリポツリ…

と降り始めた雨を恨めしく見上げながら

僕はそぅ呟くと急ぎ足で歩き始めた。

この山の山道は学生時代に登山を始めてから毎年訪れているので、

目をつぶって歩けるほど熟知しているはずなのに、

どこでどう間違えてしまったのだろうか、

もぅ何時間も熊笹が生い茂る山道を歩いている。

「おっかしいなぁ…

 どこで間違えたんだろう…
 
 いつもならとっくに山頂についているはずなのになぁ…」

僕は降りだした雨に急かされるような気持ちになり、

ブツブツと文句を言いながらも早歩きで歩いた。

そのとき

ふと、学生時代先輩から昔…この山で行方不明になった人の話を思い出した。

そのときは笑い飛ばしたが、

まさか自分がそういう目に遭うとは想像もしていなかった。

などと考えていると、

ガラガラガラ…

大きな雷鳴が鳴り、

ドザーっ!!

ついに雨は本降りになってしまった。

「うわぁぁ…やばっ!!」

僕は小走りになると、

なんとか雨をしのげるところを探した。



ずぶ濡れになりながら走っていくと

道の先に一軒の家屋が目に入った。

「あれ?、あんなところに家がある……

 そうか…
 
 迷っているうちに麓に下りてしまったのか、

 よし、あそこで雨宿りさせてもらおう」
 
そう考えると僕はそこへ向かって走った。

ところが傍に来ると、それは民家などではなく立派な山門を持つ山寺だった。

”妙心寺”

と書かれた額がかかる山門を仰ぎ見て、

「お寺かぁ、でも、こんなところにあったかな?」

と思いながら山門をくぐったとたん、

パッ!!

ドァァァァァァン!!

近くに落雷があったのか大音響の雷鳴とともに当たりは一瞬真っ白になった、

と同時に突風がまるで僕を寺に押し込むように吹いた。

「うわっ」

僕は目を瞑り声を上げ前のめりになった、

ほんの一瞬の出来事のことだったのはずがなぜか長く感じられた。

目を開けると目に前に水煙に霞んだ寺の本堂があった。

とりあえず本堂の軒下に逃げ込むと、

急いでザックのなからタオルを取り出し顔と頭を拭いた。

なんとか落ち着いた頃、寺の様子をよく見てみると、

境内は誰かに手入れをされているらしく荒れておらず、

本堂の中も手入れが行き届いていた。

整然と整理されている寺の様子を見て

「お坊さんがいるのかなぁ」

と思っていると、

「どなたかいるのですか?」

女性の声が寺の奥から聞こえてきた。

「えっ?」

僕は声のした方をみると、

黒衣の上に黄袈裟を羽織り、

白い尼僧頭巾を被った一人の若い尼僧が出てきた。

その尼僧の美しさに一瞬見とれていると尼僧が

「どなた?」

と声をかけたので、

僕はハッとなりドギマギしながら、

「いや…あのぅ…

 怪しい者ではありません。

 山で…
 
 道に迷ってしまって…
 
 そしたら雨が……」
 
と言い訳にならない言い訳をすると、

尼僧はクスリと笑い

「それは難儀なことでしたね。

 さっ、そんなところにいたら風邪を引いてしまいますよ、
 
 どうぞお入りなさい」
 
と言って僕を招いた。

「いやっ、あのぅ」

と僕が言うと、

「さっ早くお入りなさい」

と尼僧は言うと寺の奥へと入って行った。

「えっ、じゃぁ…失礼します」

僕はずぶ濡れの靴を脱いで寺の中へと入っていった。

本堂にある大きな仏像を横に見ながら尼僧が去った後を追っていくと、

尼僧は本堂から続きになっている母屋へと向かい、

そして、ひとつの部屋の前で立ち止まると振り返った。

「体が冷えたでしょう…

 ちょうど湯殿の支度が出来たとこでしたので、

 湯に浸かって体を温めてくださいな」
 
と言うなり戸を開けた。

「え?…はっはぁ…」

『どうする?…この際…尼さんの厚意に甘えるか』

と考えると

「じゃぁ、すみません」

と言って湯殿へと入っていった。

湯に浸かり、雨で冷えたからだが暖まったころ

脱衣所に人の気配かすると

「着替えをここにおいておきますね、

 着物の大きさが合えば良いのですが…」
 
と尼僧の声が聞こえてきたので、

「あっ、重ね重ねご迷惑をおかけます」

と僕がいうと尼僧の気配は脱衣所から消えて行った。

「こんなにしてもらうと…なんだか悪いなぁ」

そう思いながら湯から上がり脱衣所に行くと、

僕が着ていた衣服はきれいに片づけられ

代わりに白衣と帯がそこに置いてあった。


白衣の袖を通しながら

「これって…

 ひょっとしてあの尼さんが着ている着物なのかなぁ…」

と思いつつふと着物の臭いをかいでみると、

すぅ…

っと甘い匂いが鼻をくすぐった。

帯を締めて脱衣所から出ると、

廊下を歩いてきた尼僧とバッタリぶつかってしまった。

「え?」

「きゃっ!!」

突然の出来事だったので、

慌ててしまった僕は何を思ったか尼僧を抱きしめてしまった。

尼僧からは抹香とさっき嗅いだ甘い匂いとが絡まった香りがしていた。

ハッと我に返って抱きしめていた尼僧に気がつくと、

僕は慌てて手を離すなり

「どっ、どぅもすみません」

と尼僧に謝ると、

尼僧は心なしが赤らんだ顔を僕に見せ、

「いえ、前をよく見てなかった私もわるいんです。

 この雨、今日中には止みそうにはないですね、
 
 今夜ここに泊まっていかれなさい。」

と言ったので、

「えっ、よろしいのですか?」と思わず聞き返すと、

「えぇ、よろしいですよ、

 それにあなたが着ていた服も明日には乾くでしょうし…」

尼僧は空を見上げながらそう言うと

「えっ、あのぅ僕の服を乾かしてもらっているのですか?」

僕はこの尼僧に自分の下着をみられたのが妙に恥ずかしくなった。

尼僧は辺りを見回すと

「こんなところで立ち話をするのもなんですから、

 居間の方にいらしてくださいな…」

と言うと廊下を歩きだした。

僕は彼女に誘われるようにして尼僧の後に続いていくと居間へと通された。

居間は実に質素でまた電気は通ってないらしく、

中央に囲炉裏があり薪が赤々と燃えていた。

そして、僕と尼僧は夕食を共にしながら

その囲炉裏を挟んであれこれと世間話をした。

その話の中で僕は尼僧のことをいろいろと知った。

尼僧の名は「妙心」と言って、

なにやら事情があって出家し

この人煙まれな山寺の庵主として生活しているとか、

「ふぅぅん…それは、色々あったんですね」

と僕は相づちを打つと、

「えぇ…」

そう言いながらふと視線を下に向ける彼女の姿は、

ある種の特別な色気を感じた。

『うわぁぁぁ…

 コラっ…反応するなっ

 あの人は尼さんなんだぞ』
 
思わず反応してしまった、ムスコをいさめていると、

「あのぅ…どうかなさいなした?」

妙心さんが首を傾げながら僕を見ている。

「え?、いっいえ…

 何でもありません
 
 何でも…あははは」

笑ってごまかすが、

確かに彼女には独特の色気があった。

それにしてもいったい彼女の年齢は幾つなんだろうか?

こうして顔の様子を見ると僕と同世代の様だが、

妙心さんが話す内容はだいぶ年上のような感じがするし

そにかく不思議な尼さんだった。



雨は妙心さんの言う通り一向に止む気配はなく降り続いていた。

「雨…止みませんね…」

「えぇ…」

降り続く雨を見ていると

ふと、急に僕の胸の周りが痛痒くなってきた。

「?」

無意識のうちに胸を掻きはじめると、

じっ…

と妙心さんは胸を掻く僕を見つめていた。

『なんだ?』

そんな彼女の様子を不思議に思っていると、

「そろそろ寝ましょうか…」

「そうですね…」

そう言って腰を上げると

僕は妙心さんが用意してくれた床についた。

「はぁ…

 こうして布団で寝られるなんて夢のようだ」

昼間に疲れもあり僕はすぐに眠りに落ちたのだが…


『ん?…』

どれ寝たのだろうか胸の痛痒みが徐々に増してそれが痛みに変わり、

やがて全身に広がった頃、僕は目を覚ました。

体に中からジワリジワリを吹き出してくる痛みに

「なんだ…これは?」

と考えていると、

スッ

と襖が開くと人影が入ってきた。

僕はそれが妙心さんであることがすぐにわかった。

「あっ妙心さん…どうして…え?」

そう声を出すと自分の声のトーンが上がっているのに気づき

「えっ?」

っと言うと僕は口をつぐんだ。

すると妙心さんは

「…体が変わってきていますね…」

とほほえみながら言った。

『なに…?』

さっき囲炉裏で話している時とは違って

妙心さんの声はまるで男の人のような低い声になっていた。



すると妙心さんは僕のそばに来るなり布団をやや荒っぽく剥ぐと、

僕が着ている白衣の襟をグィっと広げると僕の胸をさらけ出した。

「なんだ!!」

僕は信じられない物を見たような目つきでそれを見る。

そう、そこにはまるで饅頭のように膨らんだ2つの肉の塊が盛り上がっていた。

妙心さんはそれを見ると

「まぁ、立派なおっぱいねぇ…」

と言い、

「ねぇ…あたしのもみてぇ」

と言うと自分の胸元をさらけ出した。

「!!」

僕は思わず目を見張った。

彼女の胸には乳房はなく替わりに筋肉が盛り上がったたくましい胸板があった。

「そんな…」

僕の目は妙心さんの逞しく変化した上半身に釘付けになった。

妙心さんはそんな僕の様子を見透かすようにそっと呟いた。

「12年待った…

 長かった…
 
 でも、もぅすぐ外に出られる…」

「そっそれって…どぅいうことですか」

と訊ねると、

妙心さんは僕の顔を見るなり

「そうね…何も知らないまま、あなたが”妙心”になるのは酷ね…」

と言うと、続けて

「この尼寺”妙心寺”は寺に呼ばれてきた者達に代々庵主・妙心を受け継がせているのよ、

 私も12年前にここに呼ばれ…
 
 先代の”妙心”から受け継がされた…」

と妙心が言ったところで

「寺の呼ばれて…ってどういうことだ」

と訊ねると、

「この寺わねぇ…

 意志を持っているのよ」
 
「え?」

「あたしとあなたはこの寺の身の回りの世話をするために呼ばれたのよ…」

「そんな…」

そのとき僕は依然先輩から聞かされたこの山で行方不明になった人の話を思い出した。

「まさか…あなたは…」

「もぅ十数年前になるかしら…

 あなたと同じように山登りをしていて、
 
 急な雷雨に雨宿りをするところを探していたときに
 
 この寺に誘い込まれたの…
 
 長かったわ…」
 
妙心さんはそう呟くと、

僕の体をきゅっと抱きしめた。

「そう…だから、あなたは私から”妙心”を受け継ぐために女に…

 いえ尼になっていく途中…」

と言うと僕の帯をほどき、

白衣を剥いで見せる。

そして

「私は貴方に”妙心”を受け継がせるために男の戻っている途中」

と言うと自分の帯を解くと僕の前で全裸になった。

「!」

僕の目に飛び込んだ妙心さんの肉体は、

女性的な特徴は残っているものの、

男性のシンボルがそびえ立つたくましい男の体そのものであった。

「さっ、本堂に行きましょう…

 みんなの前であなたに”妙心”を受け継がせてあげるから」
 
と言うと妙心さんは僕を軽々と抱き上げると、

本堂に向かって歩き始める。

「はっ離せっ」

妙心さんの胸の中で足掻いてみたが、

それは無駄なことだった。

やがて、本堂につくと僕は本尊の前に静かにおろされる。

ゾクっ

言いようもない気配があたりに漂う中

『そのものが今度の庵主かえ?』

突然堂内に声が響いた。

「なっなんだ?」

僕はキョロキョロしていると、

「はい」

妙心さんは正座するとそう答えた。

『うふふふ…わらわの世話よろしく頼むぞ』

「では、引継のことは…」

妙心さんの問いに

『…おまえがその者で良ければ』

と言う返事が返ってきた。

「かしこまりました」

すると妙心さんは立ち上がって僕に近づくと

片膝を落とし、上から覆い被さるように僕をギュッと抱きしめた。

「やっ、やだ…」

僕はまるで女の子のようにして妙心さんの体を押し返す。

しかし、妙心さんは力強く僕を抱きしめた。

「うぅぅっ」

妙心さんの体からはさっき嗅いだ甘い香りは消え失せ、

男の汗の強い臭いが僕の嗅覚を刺激した。

するとどうしたことだろうか、

「あぁぁっ」

嫌なはずの男の臭いが次第に心地よく感じられ僕は上気していった。

妙心さんは僕が次第に上気してきていることを知ると、

「可愛いわよ…新しい妙心…」

そっと囁いた。

そのとき妙心さんの片手が僕の股間を優しくなで始めた。

「いやっ…」

僕は顔を赤らめながら股を閉じたが、

グィッ

妙心の手は力強く股をこじ開けると手で優しく・激しく攻めてきた。

僕は、これまでとは全く違う感覚に喘いだ。

最初は声を出さずに我慢していたが、

妙心さんの攻めが激しくなるの連れ、

「あん…あんあん…」

っと次第に声を上げるようになっていった。

やがて

「あぁぁ〜〜ん!!」

と言う声とともに僕が最初の絶頂を迎えると、

妙心さんは自分の手に着いた無色透明の僕の分泌物見せ、

「さぁ、ご覧なさい。

 これを出した貴方の穴を…」

と言うなり僕の腰を持ち上げると僕に自分の性器の様子を見せた。

「そんなぁ…」

そう、そこには夕方まであった”男のシンボル”は無く、

替わりに”女の唇”が分泌物を流していた。

僕の体から次第に力が抜けていくと、

妙心さんは

「じゃぁ、あなたに”妙心”を渡します

 がんばってね」
 
とひとこと言うと、

ググッ

妙心さんはいきり立つペニスを僕の女唇に押し当てると押し込み始めた。

「いっ痛い!!、やめてぇ…」

と叫んではみたものの、

力が抜けている上に男に戻った妙心さんの強い力で押さえつけられているために、

妙心さんの思うがままだった。

やがて僕と妙心さんは一つとなって絶頂へと向かっていった。

「あんあんあん…だめぇ…いくぅ…」

そう叫びながら僕は絶頂を迎えるとき

「さぁ…今度はあなたの番よ…さようなら妙心…」

と僕に言って絶頂を迎えた。



昨夜来の雨が上がり、

山の稜線に翌朝日が昇る頃、

リュックサックを背負った一人の男が妙心寺の山門から出てきた、

彼にとって十数年ぶりの外界である。

「ふぅ…」

彼は大きく深呼吸をすると、

後ろを振り返らずに山を下りて行く。

そして同じ頃、

妙心寺の本堂で黒衣に黄袈裟をまとい、

剃り跡も青いツルツルの坊主頭にそっと白い頭巾を被せた一人の尼僧がいた。

先代から「尼僧・妙心」を引きついで

今日からこの山寺の庵主となった僕の姿だった。



おわり