風祭文庫・巫女の館






「天狗」



作・風祭玲


Vol.288





プワン

タタンタタン!!

都心から伸びる私鉄某線の駅から歩いて15分の所にある高台に

桜子と恭平が生活をしている高層マンションがある。

フォォォォォォ〜っ

とある休日の午前、

髪をポニーテールにまとめ上げた真弓(恭平)が部屋の掃除をしていると

ピーンポーン!!

突然、部屋の中に呼び鈴の音が鳴り響いた。

と同時に、

フッ!!

玄関ドアの中央部が透けるとドア向こうの景色が映し出される。

「はぁ〜ぃ」

カチッ!!

呼び鈴の音に気づいた真弓が掃除機のスイッチを切って玄関に向かうと、

「あら…」

何やら思い詰めたように立っている中学生くらいの少女の姿が

玄関ドアに映し出されていた。

「ばーちゃんなら

 あたしは居ないと言って…」

自室より響く桜子の声を横目に

「あのぅ、違うのですが…」

真弓が返事をすると、

「ん?」

チャッ!!

部屋のドアが開き、顔を出した桜子が玄関の方を見る。

すると、

「あら…」

と言う顔を桜子がした。

「お知り合いですか?」

表情で真弓がそう尋ねると、

「あっ、彼女、部屋の中に入れて」

玄関ドアに映し出されている少女を指さしながら桜子は真弓にそう指示をした。



「どうぞ…」

そう言いながら真弓がコーヒーが入ったカップを差し出すと、

「すみません…」

か細い声で少女が返事をする。

「えっと、紹介するわ、

 彼女…三雲夕紀ちゃんと言って、

 以前あたしが彼女の彼氏に取り憑いた色情魔を退治したことがあるのよ」

桜子が真弓に夕紀の紹介をすると、

「あっ、三雲夕紀と申します」

夕紀はそう挨拶をしてぺこんと頭を下げた。

「で、その後、彼氏…えぇっと確か、敬君って言ったっけ、

 うまくいっているの?」

コーヒーに口を付けながら桜子が尋ねると、

「………」

夕紀は返事をせずにただ下を向いてしまった。

「あらら…まさか、別れちゃったの?」

夕紀の様子に桜子がそう尋ねると、

ブンブン!!

夕紀は強く否定するかのように頭を大きく横に振る。

「?」

「何かあったんですか?」

桜子と真弓が一瞬顔を見合わせた後に真弓が尋ねると、

「あっ」

ビクン!!

夕紀が急に顔を赤らめると、

「くはぁはぁ…」

いきなり、息が荒くなっていった。

「?、どうしたんです?」

彼女の様子の変化に桜子と真弓は驚くと、

「あっダメッ!!」

夕紀はそう呟くと何かを押し込めようと腰をくねられた。

しかし、

ムクッ!!!

ムクムクムク!!!

見る見る彼女の股間が盛り上がってくると、

パサッ

スカートを押し退けるようにして。

ブルン!!

彼女の股間から巨大な男性の肉棒(オ○ン○ン)が股間にそびえ立ってしまった。

「うわぁぁぁ」

「でっでっデカイ!!」

桜子と真弓は抱き合って夕紀の股間にそびえたつ極長&極太の肉棒を呆然と見ていた。

その一方で、夕紀は両手で顔を覆いながら

「そんなに、見ないでください」

っと涙声で訴えた。

「お姉さま、ヨダレヨダレ!!」

「え?、あっあぁ…」

真弓に指摘され桜子は慌てて口元を拭い、

「どっどっどうしたの?これ?」

身を乗り出して理由を夕紀に尋ねると、

「実は…」

ポツリポツリと夕紀は事情を話し始めた。



それは、数日前の話だった……

「ねぇ、敬、何処に行くの?」

「ん?あぁ…面白いところさ」

台風が通り過ぎ、久しぶりに綺麗に晴れ渡った夕方。

下校途中、突然何かを思いついた敬は夕紀の手を引きながら山道を登っていた。

「ここって入ってはいけないんじゃないの?」

周囲を眺めながら怯えるようにして夕紀は敬にそう言うと、

「はははは、夕紀は心配性だなぁ…」

敬は夕紀の懸念を軽く笑い飛ばすと、

そのままズンズンと山道を登って行く、

しかし、敬の後を歩いていく夕紀の表情はいまひとつ冴えてなかった。

それもそのはず、

いま登っている山はいまでこそ市街地に取り囲まれ、

休日には”にわかハイカー達”で賑わうものの、

しかし、かつては修験道の御山として崇められたところだった。

それ故、平日には踏み入れる者は少なく、

また、夕方近くとなれば人を寄せ付けないある種の神々しさを醸し出していた。

敬の後を追って小一時間が過ぎた頃、

突然、前を歩く敬が立ち止まった。

「どうしたの?」

後ろから恐る恐る夕紀が尋ねると、

「おいっ見て見ろよ、

 すげーぜ」

といいながら敬の身体が夕紀の目の前から移動した。

その途端、

「うわぁぁぁぁぁ」

夕紀は思わず声を上げた。

パァァァァァ

これまで夕紀の視界を遮っていた森が切れ、

開けた眼下には黄昏の空を背にした街の風景が遙か彼方まで広がっていた。

「すっごーぃ」

思わず身を乗り出して夕紀は声を上げると、

「どうだ、凄いだろう!!」

敬は得意満面になって胸を張る。

「へぇぇぇ…

 この山にこんな所があっただなんて…」

驚きながら夕紀が声を上げる。

そして、しばらくの間二人が徐々に夜景と化していく風景を眺めていると、

スッ

敬が夕紀の肩に手を置いた。

ビクッ

彼の行為に夕紀は小さく驚くと、

「敬君?」

と言いながら振り向くと、

「この間は飛んだ迷惑を掛けてしまってゴメンな」

先日、色情魔に取り付かれたときの事を謝った。

「ううん…いいのよ、もぅ終わったことなんだから」

夕紀は大きく顔を振るとそのまま敬の胸の中に自分の顔を埋める。

「夕紀…」

敬はそっと夕紀の身体を抱きしめたとき、

ブワッ!!

突然、強烈な突風が吹き抜けると、

『貴様らぁ〜っ』

と異様な声が響き渡った。

「え?、なに?」

「なんだ?」

響き渡った声に驚いた敬と夕紀が周囲を見回していると、

「きゃっ、なに?、あれぇ?」

何かに気がついた夕紀が声を上げた。

「なっなんだ?」

その声に敬も慌てて夕紀が指さした方を見ると、

ズイッ

修験道者の格好に、

脚には一本脚の高下駄を履き、手には大きな団扇、

そして、何よりも真っ赤な顔と大きく伸びた鼻を持った。

まさしく天狗が二人を睨み付けていた。

「てってってっ…」

「天狗!!」

敬と夕紀は指さして叫ぶと、

『お前等、神聖な御山を汚すとは許せん!!』

二人を見下ろしながら天狗はそう言うと、

ブワッ

っと手にした団扇を一気に扇いだ、

その途端、

ドォォォォン!!

猛烈な突風が二人を襲うと、

「うわぁぁぁぁぁぁ」

「きゃぁぁぁぁぁぁ」

瞬く間に吹き飛ばされ、

気がついたときには二人の身体は麓の木に引っかかっていた。

そして、やっとの思いで地面に降り立ったとき、

「なんだそりゃぁ!!」

敬は夕紀を指さして声を上げた。

「どうしたの?、敬君」

唖然としている敬に夕紀が近づこうとすると、

ブルン!!

彼女の股間で何かが揺れる感触が走った。

「え?」

恐る恐る夕紀が自分の股間を眺めてみると、

そこには、巨大な肉棒がそびえ立っていた。

「いやぁぁぁぁぁ!!

 なにこれぇ!!」

夕紀が悲鳴を上げると同時に、

『うわははははははは…

 女の分際で神聖な山を侵した罰じゃ!!

 男となってしまうが良い』

という天狗の笑い声が辺りに響き渡った。

……



「…と言う訳なんです」

「はぁ……なんというか…」

夕紀の説明を聞いた桜子は感心したように言うと、

「そんな事ってあるのですね」

真弓は桜子を見ながらそう言う。

「はぁ…

 その日以来、敬君はすっかり自身をなくしてしまって、

 引きこもってしまうし、

 あたしのオ○ン○ンも、いつこのように出てきやしないかと、

 ヒヤヒヤしている毎日なんです。」

と夕紀は桜子に訴えると、

「ははーん、

 なるほどねぇ…」
 
その話を聞いた桜子は大きく頷き、

「天狗って修験場の管理もしているから、

 きっと荒らされたと判断したのね、

 でも…」

桜子は何か思いつくと道路地図を広げて、

「えっと…

 夕紀さんが登った山ってこれ?」

と指で一つの山を指した。

すると、それを見ていた夕紀が驚きながら、

「すっ凄いです、その山です。

 でも、場所も言っていないのにどうして判ったのですか?」

と尋ねると、

「まぁ…蛇の道は蛇とでも言っておきましょうか」

桜子はそう言ってはぐらかすが、

「でも、この山は確か…修験場としての役目は終わったのでは?

 それがなんで今頃天狗が出てくるのかしら…

 取りあえずその天狗に会ってみないと判らないわね」

桜子がそう呟くと、

「では、これのこと引き受けてくれるんですね」

その言葉を聞いた夕紀は身を乗り出して桜子に迫った。

「いいわ、一度天狗というのに会ってみたかったし」

桜子はコーヒーを啜りながらそう答えた。



『言っておくが、天狗を甘く見ると大やけどをするぞ』

シャン

宙に浮かぶサトがそう桜子に告げると、

「あたしも、天狗さんをやっつけるのはどうかと思いますが」

夕食の片づけをしながら真弓もそう言った。

「う〜ん…」

否定する二人の言葉に桜子が考え込むと、

スッ

一枚の護符を取り出すなり、

「てぃ!!」

と真弓に投げつけた。

ヒタッ!!

護符が真弓の額に張り付くと同時に、

「あっ…」

一瞬真弓が倒れかかると、

フッ

っと彼女の表情が変わる。

「じゃぁ、恭平はどうかな?」

真弓の表情が変わったのを見届けて桜子が再度尋ねると、

「天狗ねぇ…」

真弓→恭平は考え込む振りをした後、

「まぁ、俺も一度は手合わせをしてみたいと思っているけど」

と答えた。

「ようし、これで決まりね」

恭平の答えを聞いた桜子は胸を張ると、

『あっキタネー』

サトは声を上げる。

「えぇいっ、いいの!!」

サトの非難を桜子は強引に押し切ると、

「と言うわけで、

 恭平、またよろしくね」

と言いながら桜子は恭平の肩を叩いた。

「へ?

 なに、俺が天狗とやり合うの?」

桜子の言葉に恭平が聞き返すと、

「だって、天狗とやり合ってみたいんでしょう?

 なら、思う存分やってみればいいわ」

桜子はそう告げると、

ズズー

っと湯気が上がるお茶を啜る。

「しまった!!」

文字通り、恭平は担ぎ出されていたのだった。



数日後の夕方、

巫女装束に身を固めた恭平と桜子、そして夕紀の3人は

夕紀が天狗に襲われた山の麓に立っていた。

「ここね…天狗が居る山は…」

仰ぎ見るように桜子が言うと、

「おうっ、そうだ」

腕まくりをしたTシャツにズボン姿の夕紀が相づちを打つ、

「それにしても、随分と男っぽくなったわねぇ」

夕紀の変身ぶりを驚きながら桜子がそう言うと、

「あぁ、ここに○ン○が生えてから、

 俺、なんかどんどんと男になっちゃったみたいで、

 いまではホラこんなになっちまんったんだぜ」

と言いながら夕紀がシャツをまくり上げると、

ムキッ

その下から盛り上がった腹筋が顔を出した。

「うわぁぁぁ…これはまた…」

腹筋を見ながら桜子が声を上げる。

「だからさ、俺、困って居るんだよ、

 早く○ン○取っ手貰わないと、

 女に戻れないような気がしてさ」

夕紀の口調は完全に男言葉に変化していて、

元女の子と教えられなければ、

運送屋のバイトの兄ちゃんと思われても仕方がない状態だった。

「はぁぁぁ…」

すっかり変身してしまった夕紀の姿に恭平も興味を持って眺めていた。

すると、

ボショ

「ねぇ、恭平…恭平も天狗にオ○○つけて貰う?」

と桜子が囁いた。

「なっ何を突然言い出すんだよ」

桜子の言葉に恭平が顔を真っ赤にして驚くと、

「なに言ってんのよ、

 ○ン○を天狗につけて貰えば、堂々と男に戻れるじゃない」

と桜子は告げる。

「あっそうか!!」

桜子の言葉に恭平はハタと手を叩くと、

「そうか、その手があったか」

恭平はそう言いながら妙にウキウキとした表情になっていった。

「…ふふふ…

 男に…男に戻れる!!

 男に……」


「なぁ…何を言っているんだ?」

何度もそう呟く恭平を指さして夕紀が桜子に尋ねると、

「さぁ?」

桜子は両掌を肩の高さにあげた。

そして、

「じゃっ、行くわよっ

 用意はいい?」

桜子のその言葉と共に、

「おーっ」

「行くぜ」

と言う声があがると3人は山へと入っていった。



バサバサバサ!!

木陰で休んでいたトリが飛び立つなか、

「おぉいっ天狗っ居るか!!」

恭平はそう声を上げながら歩いていく、

すると、

ゲシッ

「こらっ、変な声を上げるなっ

 見つかったらどうするの!!」

桜子は恭平の頭をド突くとそう注意するが、

しかし、

「姉貴っ何を言っているんだよ

 天狗に会わなければ俺が男に戻れないだろうが」

と恭平が食ってかかってきた。

「えぇいっ

 だからといって闇雲に叫んでも無駄だって言っているでしょう
 
 こう言うときは…」

そんな恭平に桜子が言って聞かせようとしていると、

夕紀が天狗にあったと言われる場所にあっさりと到着してしまった。

「ここね…」

眼下に街を見下ろすビューポイントで桜子は大きく深呼吸をしていると、

ゴワッ!!

突然、一陣の風が吹き抜け、

『誰だ、修行場を荒らす者は!!』

と言う声と共に

バサッ!!

背中の羽を羽ばたかせながら天狗が桜子達の前に降り立った。

「でっでっでた!!」

天狗を見て夕紀が飛び上がると、

ズィ

彼女を押さえるようにしてすかさず恭平が一歩前に出る。

『むっ、巫女…?

 ふっ修行場は女人禁制、

 例え巫女と言えども立ち入りを見逃すわけにはいかない』

天狗は恭平を眺めながらそう告げると

グッ

手に持っていた団扇を思いっきり引いた。

すると、

「ちょっとまってくれ」

恭平が声を上げると、

『なんだ?』

団扇を構えながら天狗が尋ねると、

コホン

恭平は小さく咳をすると、

キッ

天狗を睨み付けるように見るなり

「コイツみたいにおっ俺を男にしてくれ!!」

と夕紀を指さしながら懇願した。

『なっ!!』

恭平の思いもかけないその要求に桜子を含め天狗までもが一斉にたじろぐと、

「くぉら恭平っ

 お前は!!」

桜子が恭平に食ってかかってきた。

『…男になりたいとは奇特なヤツ

 ようし、なら、そののぞみ叶えてやろう』

と天狗が呟くと団扇を構えた。

すると、

「ちょっと待って、

 ちょっと待って

 ちょっと待ってよ」

桜子が飛び出してくると、

天狗と恭平の間に立ちふさがり

「あのね、それよりも最優先でやって欲しいことがあるのよ」

と訴えた。

『なんだ?』

桜子の言葉に天狗は構えを崩すと、

サッ

桜子は夕紀を指さし、

「この子、見かけは男の子だけど、

 元々は女の子だったの、

 それをあんたがオ○ン○ンを生やしてしまったために

 男の子みたいになっちゃんたんだけど

 彼女、元に戻してやってくれない?」

と言った。

『なにぃ?

 その者は聖域を侵した者、

 罰を下すのになんの問題がある』

と天狗は桜子に告げる。

「そうは言ってもねぇ…

 あたしも彼女がこのままでは困るのよ

 それに、アンタ、ここずぅーっと不在だったみたいじゃない?

 管理人のアンタが不在じゃぁ

 ここが修験場の聖域と言っても判らない人が来るでしょう?」

と指摘すると、

途端に天狗の表情が変わり、

『まぁ、それはその、なんだ…なぁ』

と冷や汗を流しながら答をはぐらかし始めた。

すると、その様子を眺めながら、

ニヤッ

桜子が微かに笑みを浮かべると、

「図星ね…」

とひとこと呟く。

「図星って?」

桜子の言葉に恭平と夕紀が尋ねると、

「あぁ…

 この天狗、どうやらサボっていたようね」

と断言した。

「管理人がサボってちゃぁねぇ…」

半ば軽蔑をするような目つきで桜子が言うと、

『うっうっうるさいっ!!』

体をブルブルと震わせながら天狗が声を上げると、

『お前等全員吹き飛ばしてくれる!!』

と叫ぶと再び団扇を構えた。

すると、

「こらぁ!!、

 天狗!!」

桜子が叫ぶと同時に、

バッ!!

彼女の手が恭平の緋袴の裾を掴みあげると、

バッ!!

思いっきりたくし上げられた。

「なっ!!」

前もって白襦袢の裾を大胆に切り上げられていた恭平の太股が思いっきり曝されると、

ドクン!!

その様子を見た天狗の鼻が大きく脈打つと、

ムクムクムク!!

見る見る大きくなっていった。

『ふがぁぁぁぁぁ!!』

鼻に一気に血液が集中してしまったために、

天狗は貧血状態に陥ると、

そのまま、真っ逆さまに転落をしてしまった。

「ふっ、呆気なかったわね」

地面に激突して気を失っている天狗を見下ろしながら

桜子が勝利宣言をすると、

「姉貴っ、

 出かける前、妙な襦袢を着せると思ったらこう言うことだったのか!!」

と叫びながら恭平が桜子に迫った。

「あによぉ、

 勝てたんだから良いじゃない。

 大体、天狗とまともにやり合ったって勝てっこないのは

 恭平だって十分承知しているでしょう。

 だから、こういう場合は意表を突いて先に相手を自滅させるのが一番なの」

と力説すると、

「だからと言ったってこれはないだろう、これは」

なおも収まりがつかない恭平は何度も緋袴を上下させながら訴える。

すると、

「あっあのぅ…」

鼻血を流しながら股間を押さえている夕紀が口を挟んだ。



『くっ、無念…』

よほどショックだったのか天狗はすっかり項垂れていると、

「まぁ、気持ちに隙があったのは否定できないわね」

腕を組みながら桜子はそう言うと、

『ふんっ、

 別に好きでサボっていたわけではないわ、

 お前達人間が維新だとか開国だとか騒いで、

 ココを利用しなくなったのがそもそもの始まりだろうが』

皮肉を込めて天狗がそう言うと、

「だからといって、

 それが職場放棄の理由にはならないわよ」

と桜子が窘める。

『判った判った、

 女…お前に授けたモノ、返させて貰うぞ』

天狗は夕紀を見ながらそう言うと、

グォォォ!!

突風と共に消えてしまった。

「あっ、こらっ、

 俺に○ん○を授ける話は…」

消えた天狗に恭平が慌てて声を上げるが、

『私は寝る!!』

と言う、天狗の声が響き渡るだけだった。



「あっありがとうございました。

 久瀬さんのお陰で身体が元に戻りました」

「そう、それは良かったね」

頭を深々と下げる夕紀に桜子は笑みを浮かべてそう言うと、

「この山もかつては修験場として賑わったんだけどね…

 でも、明治維新以降、人々の心の中から忘れ去られ、
 
 結果、修験場を守っていた天狗が一番困ってしまった。
 
 と言う訳か」

桜子がそう言うと、

「はぁ…俺の男への復帰はいつになることか…」

その横で恭平は肩を落としていた。

「まぁまぁ、

 そのうち何とかなるって」

ポンポンとそう慰めながら桜子が恭平の肩を叩くと、

ピクッ!!

ムクムクムク!!

突然、恭平の身体の一部が膨らみ始めた。



真夏の砂浜…

ビーチに居るすべての男性の視線はある1ッ箇所に釘付けになっていた。

プルン!!

「…あっあのぅ、お姉さま…」

「なに?」

「男の人の視線が痛いのですが…」

「あはははは…」

怯えるような真弓に対して

額から冷や汗を流す桜子はただ笑っていた。

ゴクリ…

「すっげぇ…」

「ダイナマイトぼでぃ…」

呆然とする男共を後目に、

Fカップのバストを揺らせながら真弓は砂浜を歩いていく、

「しまったぁ…

 あたしもバストを大きくして貰えば良かったなぁ…」

そう後悔する桜子に対して、

『なんで、どうして…こうなるんだ…』

恭平の嘆く声がいつまでも響いていた。



おわり