風祭文庫・バレリーナ変身の館






「正樹のレオタード」



作・風祭玲

Vol.1023





真咲彩子バレエスタジオ…

それはどこの街中でも見かける普通のバレエ教室であり、

そのレッスン室には黒の七分袖レオタードに白いバレエタイツを穿き、

髪をシニヨンの引っ詰め頭にしたレッスン生達の華やかな会話が響き渡る。

しかし、教室の主催者であり講師でもある真咲彩子がレッスン室に入るや、

たちまちレッスン生達から会話は消え、

ポロン〜っ

軽やかなピアノの音色と共に皆は真剣な表情でレッスンに汗を流すのであった。



「よっよしっ」

そんなある休日。

レッスンが始まる前のバレエ教室の前で一人気合いを入れる若者が居た。

鈴本正樹、25歳。

どこにでもいるごく普通の若者であるが、

だが、正樹にはある重大な決心があった。

「今日から…ここで僕はバレエを習うんだ…」

男なら思わず躊躇してしまう教室のたたずまいに抗するようにして彼はそう呟くと、

「いっ行くぞ!」

再度、気合いを入れるや、

一歩、敷地内へと踏み込み、

震える手でドアを開けると、

「ごっごめんください。

 先ほど電話をしました鈴本と言いますが」

と奥に向かって声を上げたのであった。

「……はぁーぃ」

ふた呼吸ほど遅れて、彼の声への返事が返ってくると、

トタタタタ

一人の人影が奥から姿を見せ、

「鈴本正樹さんですね。

 お待ちしておりました」

の声と共に彼に向かって挨拶をする。

「あっはいっ」

彼女の挨拶に正樹はつられて頭を下げるが、

しかし、頭を上げた途端、

「うっ」

と言葉を詰まらせてしまった。

無理もない。

これまで女性のレオタード姿などあまり見てこなかった彼にとって、

目の前に立つ濃紺の七分袖レオタードに白のバレエタイツ姿の女性は

あまりにも刺激的であったからである。

「うわぁぁ…」

バレエ教室にとっては当たり前とも言えるその姿に正樹は声を失ってしまうと、

「どうなさいました?」

と女性は小首をかしげてみせる。

「え?

 あっいっいえっ」

レオタード姿の彼女を見て敏感に反応してしまった股間を気取られないようにと、

正樹は少し腰を捻って見せると、

「まだ、今日のレッスンは始まっていないのでどうぞお上がりください」

と女性は正樹を招き入れる仕草を見せ、

それに従って彼は靴を脱いだ。

正樹が通されたのはレッスン室の隣にあるミーティングルームで、

その中にある椅子に腰掛けてキョロキョロしていると、

「お待たせしました」

の声と共に先ほどの女性が姿を見せ、

テーブルを挟んで正樹の対面に座ると、

「改めまして、

 このバレエ教室の講師をしております真咲彩子と申します」

と女性は自己紹介をする。

「あっはい…」

その言葉に正樹は頷きながら返事をして見せると、

キッ

彩子は正樹をキツイ視線で見つめるや、

「鈴本さん。

 バレエを習うのであるなら、

 返事はハッキリとお願いします」

と指摘する。

「!!っ」

その指摘に正樹は驚き、

そして、

「はっはいっ」

思わず大きな声で返事をしてしまうと、

「よろしいです」

と彩子は頷き、

「では、当教室のご説明をさせていただきます」

そう言いながらパンフレットを広げ、

正樹に教室の成り立ちから、

これまでこなしてきた発表会の演目、

レッスンの料金などについて説明をする。

そして、一通り説明をした後、

「以上のご説明で何か質問は?」

と問い尋ねると、

「いえっ、

 別にありません。

 バレエを習うのは僕の夢でしたので…

 よろしくお願いします」

彩子に向かって正樹は頭を下げる。

そして、入会希望書に住所氏名などを記入し、

最後にサインをするのと、

入会金並びにレッスン費を納めたのであった。

「鈴本正樹さん…年齢25歳…会社員…

 バレエを始めるのは遅くはない年ですね。

 色々とキツイかもしれませんが

 ぜひ諦めないでレッスンに着いていってください。

 私も期待していますので…

 では、まもなく本日のレッスンが始まりますので、

 それに間に合うようにしてこれに着替えてください。

 これは当教室指定のレッスン着です」

やや厚みのある袋を彩子は差し出すと、

「はいっ」

正樹は袋を受け取るが、

「あの、着替えは何処で?」

と聞き返した。

すると、

「着替えはここで行ってください。

 ではわたしはレッスンの準備がありますので」

正樹に向かって彩子はそう言い残すと腰をあげて去っていった。



「はぁ…

 とうとうバレエをすることになったんだなぁ…」

彩子から受け取った袋を抱きしめながら

正樹はバレエの道を歩み始めた自分の姿に恍惚感を覚えると、

つい右手を自分の股間へと滑り込ませてしまった。

そして、ズボンの中で固くなっている己の肉棒を軽くさすり始めたとき、

「おねがいしまーすっ」

「おねがいしまーす」

と相次いで甲高いの声が響くや、

これまで静かだった教室内が賑やかになってきた。

「!!っ」

その声を聞いた途端、

正樹は慌てて手を引っ込めると、

「そうだ、早く着替えないと」

とせっつかれるように立ち上がり、

彩子から渡された袋を開けて見せるが、

しかし、

「え?

 これって?」

袋の中に入っていたものを取り出すなり、

正樹の視線は思わず凍りついたのであった。



ポロン〜♪

レッスン室にピアノの音色が響き渡ると、

「はいっ

 アンッ

 ドゥッ

 トワァ」

彩子の声が追って響き、

その声に合わせてバーに捕まるレオタード姿のレッスン生達は一斉にレッスンを始めだす。

しかし、その場には正樹の姿はまだ無く、

彼が立つはずのバーは未だ主を待っている状態になっていた。

その空間を彩子は無言で見ていると、

その近くのドアでレッスン室を伺うように蠢く影がその視界に入ってきた。

すると、

クルッ

彩子は皆に背を向けて影が蠢くドアを開けると、

そこには未だ着替えていない正樹の姿があり、

彩子を見るなり

「あのっ、

 これは…何かの間違いでは」

と尋ねながら手渡された袋に入っていたものを見せる。

しかし、

「まだ、着替えていないのですか?

 レッスンはもぅ始まっているのですよ?」

厳しい口調で尋ねる。

「え?

 でも…」

その言葉に正樹は困惑してみせると、

「バレエを習うのであるならレオタード姿になるのは当たり前でしょう?

 バレエを習う気があるのですか?

 バレエを習う気がある。っていうのなら早くレオタード姿になってレッスン室に来なさい」

そんな正樹に向かって彩子は言い放つと、

ピシャリとドアを閉めたのであった。

「ぐっ…」

袋の中から出てきたレオタードを握りしめながら正樹は項垂れてしまうと

レッスン室に背を向けミーティングルームに戻るとシャツのボタンに手を掛ける。

カタンッ

レッスン室のドアが開くと、

「!!っ」

レッスン室内で汗を流す皆の視線が一斉にそこへと向けられる。

いっとき間を開けて顔を真っ赤した正樹がレッスン室に入ってきたのだが、

レッスン室に入ってきた正樹の体には黒のレオタードと白いバレエタイツが覆い、

バレエシューズが足を飾っていたのである。



股間に手を添え皆に視線を合わせないように正樹は立ちつくしていると、

「何をしているんです。

 遅れてレッスン室に入ってきたのですから。

 まずは皆さんにご挨拶をしなさい」

と彩子は注意をする。

「え?」

その言葉に正樹は驚くが、

「さっさとしなさい」

促すその言葉に押されるようにして、

「すっ鈴本正樹です。

 よっよろしくお願いします」

言葉に詰まりながら正樹は挨拶の言葉を言うものの、

「なんですか、

 その挨拶の仕方は、

 バレエのレッスンを受けるんでしょう。

 それならちゃんとレヴェランスをして挨拶をしなさい」

と彩子はダメを押すと、

「え?

 あの…レヴェランスって…」

初めて聞いたバレエ用語に正樹は困惑の表情を見せる。

すると、

「…レヴェランスってこうするんですよ」

その姿に見かけてか一人のレッスン生が進み出ると、

正樹に向かってバレエの挨拶法であるレヴァランスの仕草について説明をするが、

「そっそれをするのですか?」

説明を聞いた正樹はさらに驚くと、

コクリ

レッスン生は頷き、

自分のバー位置まで戻っていく。

そして、改めて正樹は皆を見つめると、

「鈴本正樹です。

 よっよろしくお願いします」

と挨拶をした後、

ぎこちない動きながらレヴェランスをして見せるのだが、

レオタードに覆われた彼の股間には彼の肉棒がその姿をくっきりと浮かび上がっていたのである。

「はいっ、

 よろしい」

正樹の挨拶とレヴェランスを見て彩子は頷くと、

「さっ鈴本君のバーはそこです」

と一人分の空間が空いているバーを指さし、

「はい…」

正樹は指図されるままバーに手を添えると、

「では、

 プリエからもう一度」

と彩子は皆に向かって指示を出す。

こうして正樹にとって羞恥心を弄ばれた挨拶が終わり、

バレエのレッスンが始まったのだが、

だが、彩子の指導は例え初心者であっても容赦なく行われ、

「はぁはぁ…」

正樹は汗をしたたらせながら必死にレッスンを受けていた。

それもそのはず正樹にとってバレエを習うことは子供の頃の憧れであったが、

しかし、女性の習い事のイメージが強いバレエには容易に足を踏み入れることが出来ず、

けど、こうして踏み入れた以上、音を上げるわけにはいかないのである。

レッスンの開始から3時間以上が過ぎ、

「はいっ、

 今日のレッスンはここまでにしましょう」

レッスン室に彩子の声が響くと、

「はいっ

 ありがとうございました」

正樹を含めたレッスン生の声がこだまする。



「鈴本さん。

 バレエのレッスンはいかがでしたか?」

汗を拭いている正樹に向かって彩子は話しかけると、

「はいっ、

 とてもきつかったです」

と正樹は汗をぬぐいながら返事をする。

すると、

「悪いけど、

 鈴本君には居残ってレッスンを受けて貰うわ」

正樹に向かってそう囁いて彩子は去って行くと、

「え?

 居残りですか?」

取り残された正樹は呆然と呟いていた。

やがてレッスン生達の姿が消えたレッスン室に正樹が一人残っていると、

「遅くなりました」

の声と共に彩子が戻ってきた。

「あっはいっ」

戻ってきた彩子に向かって正樹は振り返ると、

「鈴本君は今日から始めたばっかりでしょう。

 だからバレエの基礎を復習して貰いますが、

 ます最初にこの場であなたの身体測定をさせてくださいね」

と言いながら彩子はメジャーを取り出して見せたのであった。

「あのぅ…

 身体測定ってバレエを習うのに必要なのですか?」

バスト、ウェスト、ヒップと計られながら正樹は困惑した口調で問うと、

「えぇ、バレエにとってスタイルの管理はとても重要なのです。

 あっ動かないでくださいね」

正樹に注意をしつつ彩子は採寸した値を記録用紙に書き込んでいく、

そして、大方の採寸を終えると、

クニッ

いきなり彩子の手が正樹の股間をつかみ上げたのであった。

「!!っ」

彼女のその行為に正樹は驚くと、

「動かないでって言いましたよね」

彩子はそう注意をすると、

股間をつかんだ手がゆっくりと上下に動き始めた。

「あっあの…

 なにをされているので…」

喉をからからにしながら正樹は彼女の行為の理由を尋ねると、

「これも大事なところなのです」

と彩子は返事をしてさらに正樹の股間を扱いてみせる。

すると、

「あっあぁぁ…」

レオタード越しに感じる刺激に正樹はつい声を漏らしてしまうと、

グッグググググググ…

それに呼応するようにして彼の肉棒は力強く立ち上がり、

身につけているレオタードを下から持ち上げ始めた。

すると、

彩子は勃起している正樹の肉棒にメジャーを当てると、

「ふふっ、

 20cm…とっても逞しいのね」

と呟きながら記録用紙に記入をしたのであった。



「アンッ

 ドゥッ

 トワァッ」

測定後、彩子の掛け声が響き渡ると、

その掛け声にあわせてバーに片手を置く正樹は再び汗を流していた。

「違うわ、

 足を開いて踵をもっとこう上げなさい」

おぼつかない足取りで身体動かす正樹に向かって彩子はそう指示をしながら

上がらない足を持ち上げてみせると、

グイッ!

未だ勃起が収まっていない股間が露わになる。

「あっちょっと」

そのことを気にしている正樹は驚くと、

「黙って!」

彩子は鋭く注意をしてさらに足を上げて見せた。

すると、

ツツーッ

彩子の指が汗を含んで重くなっているバレエタイツの上を滑り、

そのまま正樹の股間へと向かっていくと、

彼の肉棒を再びなで始める。

「!!っ」

彼女のその行為に正樹は驚くと、

「あら、まだ治ってないの?

 ねぇ…どうして男の人ってここをこんなにしてしまうの?」

と彩子は意地悪な質問をする。

「えっ

 えぇっと…」

その質問の返答を正樹は窮してしまうと、

シュッシュッ

シュッシュッ

彩子の指が正樹の肉棒を扱くように上下に動き始める。

「あぁっ

 やめて下さい」

足を上げられながら正樹は抵抗しようとするが、

「これはねっ、

 ルルベって言うのよ。

 ちゃんと覚えなさい」

と言いながらも、

彩子はさらに激しく正樹の肉棒を扱き続ける。

「あぁっ

 ダメですっ

 そんなに…

 そんなにしては…」

必死でこらえながら正樹は許しを請うが、

「何がダメなの?

 ハッキリと言いなさい。

 ここをこんなに固くして…

 君はバレエをなんだと思っているの?

 真面目にバレエをする気あるの?」

意地悪そうに尋ねつつ、

限界まで伸びきっている正樹の肉棒をさらに刺激した。

そして、

「ねぇ…鏡を見てみなさい。

 ほら、レオタードを着てバレエを習っている変態さんが映っているわ」

と囁いくと、

「え?」

その声にこれまであまり鏡を意識してなかった正樹は鏡に映る自分の姿を見た途端、

「あっ!」

ビュッ!

正樹は射精をしてしまったのであった。

「あぁぁ…」

体の中から立ち上ってきた栗花のにおいと共に股間に広がっていく生暖かい感触を感じると、

「あら…」

彩子は驚く素振りをしつつも小さく笑ってみせる。

「うぅっ」

それを見た正樹の心の奥で何かが折れていくのを感じながら、

そのまま崩れるように座り込んでしまうと、

「はいっ、

 今日のレッスンはここまで。

 また明日」

と彩子は言い残して去って行くと、

「…あぁ…」

次第に冷えて冷たくなってきた股間を感じながら正樹は一人もだえていたのであった。



そして翌日。

「お願いします…」

レッスン室に正樹の声が響くと、

彩子の前にレオタード・タイツ姿の正樹が立ち、

彼女に向かってレヴェランスをしてみせる。

「はいっ、

 よろしいです。

 ではレッスンを始めます」

それを見て彩子は満足そうに頷くと、

ポロン〜♪

ピアノの音色が響き渡り、

レッスン生達は一斉に体を動かし始めた。

真咲彩子バレエスタジオのレッスンはまだ始まったばかりである。



おわり