風祭文庫・バレリーナ変身の館






「バレリーナの街」



作・風祭玲

Vol.967





雲ひとつ無い青空に向かって高く突き出す尖塔。

カラン…

尖塔より時を告げる鐘の音が鳴り響くと、

ザワザワ

ザワザワ

人の姿が無かった尖塔下の広場に

歳は12・3歳、恥ずかしげに膨らみを持つ胸を黒いレオタードで包み込み、

その胸と背に氏名を書いた名札を縫いつた者達が見せ、

広場を取り囲むように据え置かれている掲示板の周辺へと集まって行く。

そして、

カラン…

再び鐘の音が響き渡るのと同時に姿を見せた事務員が、

一枚一枚、氏名が書かれた紙を掲示板に張り出しはじめると、

一斉に広場を埋め尽くしていたシニョンに結い上げた頭が動き、

「あったぁ!、

 ボクの名前があったぁ!」

と喜びの声をあげる少数の者。

「そんなに落ち込まないの。

 まだ次のチャンスはあるわよ」

などと慰めを受ける大勢の者とに別れて行く。

そんな中、

「マサミぃ?

 見えた?」

「うーん、

 もぉちょっとぉ」

掲示板の周囲に集まる人だかりの背後より、

幾度もジャンプをしながら必死で掲示板を見ようとする者の姿があった。

「あんまり無理をしなくても、

 そのうち見られるようになるよ」

広場を埋めるものたちと同じ黒レオタードに白タイツ姿のミサオは

幾度もジャンプをし続けている親友のマサミを呆れ半分に眺めつつ話しかけるが、

「そんな…

 ことを…

 いっても…

 ボクは…

 一刻も早く…

 知りたいのっ」

マサミはそう言いながらジャンプを続けていた。

「もぅ」

そんなマサミの姿にミサオはついに呆れてしまうと、

突然、

スッ!

壁のように立ちはだかっていた人垣が扉が開くように動き、

二人の前に掲示板が姿を見せたのであった。

「あっ!」

「うそっ」

突然の出来事にマサミとミサオは声を失うが、

すぐに互いに顔を見合わせると、

コクリと頷き合った後、

タッ

遠慮なく駆け出し、

掲示板を端から順に追いかけ始める。

そして、

「あった!」

最初に自分の名前を見つけたミサオが喜びの声をあげると、

「ボクもあった!」

ほぼ同時にマサミもまた掲示板に自分の名前があることを見つける。

そして、

「マサミぃ!」

「ミサオぉ!」

「ボク達、合格したのね」

互いに手を握り締めながら二人は喜びを湛えあうが、

すぐにミサオは涙ぐんでしまうと、

「マサミ…、

 ぼっボクなんだか夢を見ているみたい」

と涙をこぼしながら呟いて見せる。

すると、

「ミサオ、

 なんで泣くんだよ。

 これは夢なんかじゃないのっ、

 ボク達は試験に受かったんだよ。

 正規団員としてチュチュを着られるようになったんだよ。

 これまではいわば見習い。

 でも、これからはバレリーナを目指して第一歩を歩きだしたんだよ」

と言い聞かせながら、

マサミはミサオの肩を掴み大きく揺さぶってみせる。



そういまここで行われているのは

この街の誇りであるバレエ団が毎年行っている正規団員への合格発表であった。

そしてミサオとマサミは見事正規団員となったのである。



「判っているよ。

 判っているけど、

 でも…

 実感が無いっていうか、

 それに本当にボクってバレリーナになれるのかな」

身に着けている黒レオタードを陽の明かりに光らせながら

ミサオは自信なさげに呟いてみせると、

「何を言っているんだよ。

 いまからそんなことを言ってどうするんだよ。

 正規団員になったからには一番のバレリーナ。

 そう、プリマ・バレリーナにならなくっちゃ。

 プリマ・バレリーナになる道は辛くて厳しいって言うけど、

 でも、頑張ればきっとなれる。

 ってママは言っていた」

そんなミサオの肩を叩きマサミは励ます。

すると、

ビクッ

マサミのその言葉を聞いた途端、

ミサオの体は一瞬強張り、

「プリマ・バレリーナって、

 お姫さまのバレリーナのことでしょう?」

頬を赤らめながら尋ねる。

「うん、そうだよ。

 お姫様であり、

 一番のバレリーナ。

 それがプリマバレリーナさ、

 そして、いまここにいるみんなはそのプリマ・バレリーナを目指すんだよ」

とマサミは答え、

掲示板の近くで合格し嬉しがっている者達に視線を向けてみせる。

「そっそうなんだ」

その言葉を聞いたミサオの脳裏には真珠色のチュチュを身にまとい

舞台の真ん中で華麗に舞い踊るプリマ・バレリーナの姿が浮かび上がる。

そして、

「ねぇ、マサミ、

 ぼっボク…

 本当にプリマ・バレリーナになれる?」

困惑しながら問い尋ねると、

「もちろんさ、

 だって、その証拠にボク達、

 試験に合格したじゃないか。

 プリマ・バレリーナになれる見込みが全く無い人は合格できないんだよ」

と力強くマサミは返事をしてみせた。

「そうだよね。

 うん、そうだよね。

 プリマ・バレリーナなれるかもしれないから、

 ボク、合格したんだよね。

 あぁ…プリマ・バレリーナになりたい

 プリマ・バレリーナになって真ん中でバレエを踊りたい」

可憐に舞い踊るバレリーナとなった自分の姿を浮かばせつつ

ミサオはそう呟くと、

「うんうん、

 ミサオはプリマ・バレリーナになる。

 無論、ボクだってなるよ、

 その時にはボクとミサオはライバルになってしまうけど、

 でも、約束しよ、

 ボク達、プリマ・バレリーナになるまで、

 決してトゥシューズを脱がないって」

笑みを浮かべながらマサミはミサオに向かって小指を差し出してみせる。

「うん、

 頑張るよ」

マサミの言葉に勇気づけられたミサオも笑顔になり、

小指を差し出すと二人はその場で指切りし、

そしてその指を離したとき、

『新団員は身体検査を行いますので、

 医務室まで来てください』

という放送が広場に流れた。

「身体検査?」

放送を聞いたミサオはマサミに尋ねると、

「いま放送では身体検査って言ったけど、

 ボク達これから手術を受けるんだよ」

小首を捻るミサオに向かってマサミは言う。

「手術?」

マサミの言葉にミサオは驚くと、

「なに驚いているんだよ、

 オチンチンを取ってもらうに決まっているじゃないか、 

 オチンチンが付いたままじゃぁ

 プリマ・バレリーナにはなれないからね」

と説明をしながら、

マサミは自分の手を股間に持って行き、

小さく膨らんでいる股間の膨らみを強調してみせる。

「そう…なんだ…」

そのことに少しショックを受けたのか、

ミサオは困惑気味に返事をすると、

「あれ?

 知らなかったの?

 まぁ確かにこれからオチンチンを取りますって聞かされて、

 落ち着いてなんか居られないよね。

 でも、ずっと昔、

 それまで女の子達が独占していたバレリーナを男の子が奪った時、

 バレリーナになる男の子はオチンチンを取って

 オッパイを膨らますのが義務付けられたんじゃないか」

ミサオの顔を覗き込むようにしてマサミは尋ねる。

「うっううんっ、

 そのことは…聞いたことはあったけど、
 
 でも、オチンチンを取っちゃったら、

 ボク、女の子になっちゃっうでしょ」

レオタードの腰周りについているフリルの裾を

下に引き伸ばしつつミサオは言うと、

「ううん、

 女の子じゃないよ、バレリーナ。

 バレリーナになりたいからママにお願いして

 お薬でこうしてオッパイを膨らましてもらったんだ」

マサミはそう言いながら両手で胸を持ち上げ、

小さいながらも膨らんでいるバストを強調して見せる。

「うっうん」

親友の胸にある膨らみを見せつけられたミサオは

恥ずかしく感じたのかつい顔を背けてしまうと、

「特にプリマ・バレリーナはオッパイも大きくないとなれないからね、

 ボクのオッパイももっと大きくしないと…

 あぁ、大丈夫だよ。

 ミサオだってオチンチンを取っちゃえばオッパイが大きくなるって」

浮かない顔のミサオに向かってマサミはそう言い、

他の新団員と共に校舎内へと消えたのであった。



「はーぃ、

 チクッとしますよぉ」

レオタードを脱ぎ、

寝台の上で仰向けになり股を開いているミサオに向かって、

白衣姿の女医はそう話しかけると、

ツッ

小さく縮こまっているミサオのイチモツに麻酔の注射をして見せる。

「うっ」

針が刺した瞬間、

その痛みからミサオの顔が強張るが、

すぐに麻酔が効いてきたのか、

次第に何も感じられなくなっていく。

すると時計を見ていた女医が手元のスイッチを押すと、

ヌッ!

寝台の下か魚の口を思わせる機械がせり出し、

パカッ!

ミサオのイチモツの前で上下に口を開くと

ミサオの股間に喰らい付いたのであった。

「あっ」

機械に喰らい付かれた瞬間、

柔らかいものがミサオの股間に押し当てる感覚が走るが、

だが、感じるものはそこまでで、

機械の口の中で手際よくイチモツの芯とその下についている袋の玉が抜かれ、

穴があけられた股間に造膣が行われていく様子を知ることはできなかった。

股間に喰らい付かれてから僅か15分。

ペッ!

閉じていた機械の口が開くと、

そこには口が閉じられるまで確かにあったイチモツの姿は無く、

代わりに縦に刻まれた溝と

その溝からはみ出し花開くように顔を出す襞が姿を見せたのであった。

「あぁ…

 オチンチンが無くなっている…」

ついさっきまで存在し、

馴染みであったイチモツが姿を消してしまったことに、

ミサオはショックを受けてしまうと、

「みんな最初はそういう反応をするわ。

 でも、すぐに慣れるわよ。

 オチンチンが付いているバレリーナはみっともないからね。

 あら、そういえばあなた、

 胸がペッタンコだけど、

 膨らましてないの?

 珍しいわねぇ、

 胸なしで合格するだなんて」

と女医は膨らみが無いミサオの胸に感心する。

そして、

「胸無しじゃぁ、

 これから大変よぉ、

 さぁ、薬を打ってあげるわ、

 入団式までにはBカップぐらいはなってないとね」

そう言いつつ女医はミサオに話しかけながら、

ミサオを寝台に再び寝かせ、

チクッ

チクッ

左右の乳首の辺りにそれぞれ注射をしたのであった。


 
「うーん、

 なんか変だよぉ、

 体も妙に熱いし、

 お医者さんに入れられたスティックが体の中で動いて…」

股間に刻まれた縦溝をレオタードに浮かび上がらせ、

入団の書類を片手に建物から出てきたミサオはモジモジしながらそう呟く。

すると、

「ミサオぉ!」

先に処置を済ませていたマサミが手を振り、

ミサオの傍に駆け寄ってきたのであった。

「あぁ、マサミ」

膨らみを失った股間を引き下げたフリルのスカートで隠しつつ、

ミサオは返事をすると、

「なぁ、

 オマンコに入れられてたスティック、

 気持ち悪くないか」

とマサミは話しかけてくる。

「うっうん、

 マサミもそうなんだ。

 ねぇ、

 トイレでこれを抜いちゃだめなのかな」

相変わらずモジモジしながらミサオは尋ねると、

「だーめ、

 オマンコが落ち着くまで入れておくんだって」

とマサミは答え、

「バレリーナになるためには通らなくてはならない儀式なんだって」

そう付け加えた。

「そうなの…」

ジワッ

レオタードの股間に染みを作りつつ、

ミサオは返事をすると、

「ん?

 あっ、なんだよっ、

 早速染みを作っちゃって」

とその事に気づいたマサミは笑いながら指摘する。

「だっだってぇ!」

その笑い声にミサオは抗議するかのように声を荒げると、

「でも、身が軽くなったと思わない?」

マサミは尋ねた。

「そっそう?」

その言葉にミサオは前と比べて少し体が軽くなっていることに気づくと、

「なぁ、

 合格の報告に戻ったついでに

 レッスン室で少し踊らない?」

とマサミは持ちかけてきた。

「えぇ、

 だって、今日は激しい運動は控えるようにって、

 お医者様から言われたじゃない」

その提案にミサオは心配そうに言い返すと、

「あはは、

 傷口を糸で縫っていたはるか昔じゃあるまいし、

 大丈夫だってぇ」

心配顔のミサオを笑い飛ばすかのようにマサミは笑うと、

「さぁ、行こう!」

とミサオの手を引き、

ミサオとマサミは去っていったのであった。



カラン…

尖塔より時を告げる鐘の音が鳴り響くと、

「行ってきまーす」

その声と共に真新しいチュチュを靡かせて、

一人の新人バレリーナが自宅から飛び出して行く、

タタタッ

外履き用のトゥシューズで地面を蹴り、

Bカップに膨らんだ胸を誇らしげに揺らせながら、

尖塔に向かってバレリーナが走って行くと、

やがてその視界に歩道横で人待ちをしているバレリーナの姿が飛び込んできた。

「あっ、マサミぃ」

人待ちのバレリーナに向かってバレリーナは声をあげて手を振り合流すると、

「待った?」

「ううん、いま来た所」

などと話しながら塔に向かって二人並んで歩き始める。

尖塔が迫ってくるにつれ、

一人、二人と並んで歩くバレリーナの数が増えていくと、

やがて二人の周りはチュチュ姿のバレリーナ達でいっぱいとなって、

塔へと続いて行く、

カラン…

天高く聳える尖塔のある街、

世界の誇るバレエ団を擁するその街は

バレリーナの街といつしか呼ばれるようになっていたのであった。



おわり