風祭文庫・バレリーナ変身の館






「レッスン室の罠」



作・風祭玲

Vol.895





駅への近道のためいつも中を通るビルにそのバレエ教室はあり、

そして、教室の活動の紹介と勧誘のためだろうか、

ビルの1階の壁にはレオタード姿の女の子のスナップ写真と

彼女達がチュチュを身に纏った発表会の写真が貼られ、

一種独特な雰囲気を醸し出していたのであった。

「バレエ教室ねぇ」

いつも写真の前を足早に通り過ぎていく俺・柴田元樹はそう思いながら写真を横目にしていくが、

そんなある日、

久しぶりに定時退社した俺はその写真の前でふと立ち止まり、

「バレエってそんなに流行っているのかな?」

と思いながら中空になっているビルの上を見上げると、

該当する階から明かりが漏れ、

レッスンの最中なのだろうか、

多数の動く人影が見えていた。

「バレエ…かぁ…」

俺が子供の頃はバレエと言うと女の子の習い事の代表格で、

クラスの中でも何人かバレエを習っていることを自慢していたのを思い出す。

そして、それと同時に、

ひっ詰頭に黒の半袖レオタードと白タイツ、

足を飾る淡いピンクのトゥシューズが飾り立てる少女の姿を連想すると、

ムクッ!

いきなり俺の股間が膨らみ始めたのであった。

「あっこっこらっ」

突然反応した股間に俺は周囲を見回しながら、

慌てて考えを切り替えようとするが、

そんな俺の意思にもかかわらず、

俺の股間はさらに大きく膨らみ、

クッ!

っとズボンを持ち上げてしまった。

「あぁ、

 畜生!」

うっかりこんな姿を見られて”変態”と通報されるのを避けるために、

俺は足早に立ち去ろうとしたとき、

「…ねぇ、知ってる?

 バレエってダイエットに良いんですって…」

「へぇ、そうなんだ…」

と言う話し声が聞こえてきた。

「ん?」

その声に俺の脚は止まり、

聞き耳を立てながら振り返ると、

レッスンが終わった娘さんを迎えにきたのか、

ちょっとセレブ風の女性二人がエレベータから降り、

後ろにひっ詰め頭の少女を引き連れて俺の前を通り過ぎて行く。

「…そうか、

 ダイエットにいいのか…」

彼女達の言葉に俺は職場で聞かされたメタボリックシンドロームの話を思い出すと、

ふと、最近腹についてきた脂肪のことが気に掛かった。

「そういえば、

 最近、太ったって言われるよなぁ」

思わずお腹をさすりながらそう呟くと、

「ん?」

さっきの”初心者歓迎”の看板の脇にある、

”男性クラス開設”と言う文字が目に入った。

「そうか、

 男のクラスもあるのか」

それを読んだ俺は何か気が軽くなり、

さっき、親子が降りてきたエレベータに乗り込むと、

バレエ教室がある”4”のボタンを押したのであった。



閉じられていたドアが開くと、

そこは乙女の楽園…

いや、明るいながらも華美さを押さえ、

清潔感が漂う空間が広がっていた。

そして、

ポロン…♪

レッスンの伴奏なのだろうか、

ピアノの音色が流れはじめてくると、

教室の雰囲気がグッと盛り上げて来た。

「はぁ、バレエ教室ってこんな感じなのか…」

明らかに女性の美的感覚を意識した内装に俺は緊張しながらも、

受付と書かれた所に行くと、

「あのぅ…

 すみません」

と俺は声をかけた。

すると、

少し間を置いて、

「あっはいはいっ」

と女性の声が響き、

ひっ詰め頭にピチっとした衣装と

その上に軽くカーテガンを羽織った女性が姿を見せると、

「なんでしょうか」

と俺に用件を尋ねた。

「え?

 あっ、

 あのぅ、

 下の案内を見てきたのですが…」

少しドギマギしながら俺は話しかけると、

「あぁ、

 入校希望ですか?」

と女性は尋ねる。

「えぇ、

 まぁ」

その声に俺は少し恥ずかしげに鼻の頭をかくと、

「判りました」

女性は手際よく申し込み用紙みたいなのを取り出し、

「入校されるのはあなたのお嬢様で?」

と尋ねた。

「え?

 あっいや、

 入りたいのは、

 その、おっ俺なんですが…

 男性のクラスがある。と書いてあったので」

その言葉に俺は自分を指差し、

説明をすると、

「なるほど、

 あっ」

一度は頷いた女性は何かに気づくと、

奥に向かって話を始めだした。

そして、

「申し訳ありません、

 実は男性のクラスは好評のため定員になっておりまして」

と申し訳なさそうに告げたのであった。

「え?

 そうなんですか?」

その返事に俺は頭を掻きながら肩を落とすと、

「じゃぁ、仕方が無いですね

 あっありがとうございました」

そう言いながら立ち去ろうとした。

すると、

「あのぅ、

 女性のクラスでよろしければまだ空きがありますが、

 いかがしますか?」

と受付の女性は俺に話しかけた。

「え?」

思いがけないその言葉に俺は振り返ると、

「レッスン内容はどちらも同じですが」

と女性は言う。

「女性のクラスでのバレエの練習って…」

そう呟きながら、

俺は脳裏にレオタード姿の女性達と共にレッスンを受ける自分の姿を思い浮かべると、

ムクッ

収まっていたはずの股間が盛り上がってきてしまった。

「やべっ」

余りにも敏感な股間の反応に俺は慌てて考えを切り替えていると、

「いかがいたします?」

と女性は再度尋ねた。

「そっそうですね、

 男も女も大して変わらないなら…

 それでもいいかな」

俺はそう返事をすると、

「じゃぁ、女性のクラスということで」

受付の女性はそう言いながら申し込み用紙にいくつか書き込みむと

「では、こちらに住所氏名連絡先、

 身長と足のサイズをお願いいたします」

そう言いながら俺に申し込み用紙を渡す。

「身長と足のサイズとは…

 そこまで知らないといけないのか」

半ば感心しながら俺は渡された紙への記入を終えると、

「当教室はチケット制になっておりまして、

 月謝は頂いて下りません。

 ですので、

 入校料の他にチケット代が掛かりますが、

 それでよろしいですか?」

と料金について尋ねてきた。

「あぁ、

 構わないよ、

 支払いはこれで」

その質問に俺はクレジットカードを手渡すと、

「かしこまりました」

女性はカードを受け取り、

「あっそれと、

 レッスン着ですが、

 当校では指定のレッスン着がありまして、

 それをご購入していただくことになります」

と告げる。

「ふーん、

 そうなんだ、

 まぁいいか、

 支払いはカードでお願いします」

ここまで来て四の五の言う気にはなかった俺は気軽に答えると、

「ありがとうございます」

受付の女性は手続きを進め、

そして、

「ではこちらを…」

そう言いながら俺にレッスン着その他が入った袋を渡した。



自室に戻ってから俺は買わされた事になってしまったレッスン着を広げてみると、

「うっこれって…」

と言葉に詰まってしまった。

そう、いま俺の手にあるのは部屋の明かりを受けて黒く輝くレオタードであり、

さらに、他のも広げてみると、

それらは白のバレエタイツと淡いピンク色をしたバレエシューズであった。

「まっマジかよ」

ガキの頃に見たバレエ少女達の身体を飾っていたレオタード。

そのレオタードがいま俺の手の中に…

衝撃の事実に俺の心臓はバクバクと鼓動し、

見る間に顔は真っ赤になっていく、

そして俺の心に敏感な股間もやはり大きく膨らみきっていたのであった。

「どっどうする…」

乾きを訴える喉から声を搾り出すようにして呟くと、

「やっぱ、

 一度は袖を通さないと…」

と周囲を見回し、

シャッ!

シャッ!

慌てて窓にブラインドを降ろすと、

ゴクリ…

溜飲を下げながら服を脱ぎ始めた。

そして、下着も脱いだ俺は全裸になると、

白いバレエタイツを手に取り足を通していく。

ビンビンに硬くなっている肉棒を包み込むように白いタイツが足を覆うと

同時に、

スーッ

言いようも無い涼しさを感じた。

「あぁ…」

タイツが覆い白くなった自分の足を見ながら、

俺は思わず声を漏らしてしまうと、

スッ

スッ

っとタイツの下で反り返っている肉棒を2・3回擦るが、

スグにその手を止めると、

チラリ

と床に置かれているレオタードを見た。

部屋の明かりを受けて輝くレオタードは俺を誘っているようにも見える。

すると、俺はレオタードを手に取り、

胸の口を大きく広げながら、

タイツが覆う足をそれに通した。

スススス…

足を通した瞬間、

スルリと滑って行く言いようもない感覚が脚を走り、

ビンッ!

俺の股間はさらに硬さを増す。

そして、レオタードの下端がいきり立つ股間に当たると、

グイッ!

と股間を押しながら伸び始め、

俺の腰から胸元にかけて覆っていくレオタードが胸元にまで達すると、

手を持ち替え、

左右の袖にそれぞれ腕を通すと、

グィッ!

一気に引き上げた。



ピチッ!

まるで張り付くようにレオタードは俺の身体を覆い、

俺の身体を黒く塗りつぶす。

「へぇ…

 これがレオタードかぁ…」

張り付き、

締め付けてくるレオタードの感覚に俺は感心すると、

最後に残った、バレエシューズを穿いてみた。

つま先立ちができるトゥシューズとは違って初心者向けのシューズだが、

でも、タイツ・レオタード・シューズを穿いた俺はバレエ1年生である。

そんな自分の姿を見たくなって、

俺は胸をドキドキさせながら壁にかけてある縦長の大鏡の前に立つと、

そこにはレオタードを着た男の姿が映し出される。

「これが、俺?」

ガキの頃に見たバレエ少女達の姿…

その姿を同じ姿を自分がしていることに俺の胸は高鳴り、

じっと鏡に映る自分の姿を見詰めていた。



ふと気が付くと、

鏡に映る自分の脇に一人のバレエ少女の姿があった。

そのバレエ少女を見詰めながら、

「おっ俺…

 バレエを習うんだ…

 君と一緒にね」

と俺は話しかける。

しかし、鏡の中の少女は何も答えずにその姿を消してしまうと、

鏡はレオタードを身に纏った俺の姿を容赦なく見せ付ける。

隠すものは何も無い。

まさに白と黒のコントラストが俺の体の線を浮き上がらせているのであった。

キュッ!

そんな自分の姿に、

「ハァハァ」

次第に俺の息は荒くなっていくと、

シュッ

シュッ

自然と俺はレオタード越しに股間を扱き始める。

ダメだ、止まらない。

「あぁっ

 あはっ

 気持ちいぃ」

バレエタイツとレオタード、

この二枚重ねの刺激に俺は股間を猛々しく尖らせ、

腰を引きながら、

シュッシュッ

シュッシュッ

股間を扱き続けた。

そして、

「あ、

 アン・ドゥ・トワァ

 あ・アン・ドゥ・トワァ

 あぁ、

 俺はっ

 バレリーナになるんだよ、

 バレリーナに

 バレリーナに…」

顎を上げうわ言のようにその言葉を繰り返すと、

脳裏にはあのバレエ教室で女の子達に混じって

高々と足を上げている自分の姿を思い浮かべる。

そして、

いまの俺自身も大股を開くと、

シュッシュッ

シュッシュッ

膨らんでいる股間を扱く手の動きが早くなり、

「あっあぁぁ!!」

ついに登りつめてしまった俺は大きく声を上げながら、

シュッ

シュシュシュ!!!

盛大に股間から精液を吹き上げてしまったのであった。



「あぁ…」

余韻に浸りながら俺は次第に冷たくなってくる股間の感触を感じていると、

次第に重大な間違いを犯したことに気が付いていく、

そして、

「しまった」

ことの大きさに気づくと慌ててレオタードを脱ぎ、

汚してしまったタイツと共に洗濯をはじめだすが、

だが、まるで自分を戒めるかのように

バレエタイツの股間部に付いてしまった染みを取る事は出来なかった。

そして迎えた週末はレッスン初日である。

少し胸を弾ませながら俺は駅前のビルに向かったが、

しかし、そこを訪れた男性は俺一人だった。

「あのう時間を間違えましたか?…」

女性、

しかも、皆20歳未満と思われるレオタード姿の少女達を見た俺は思わず受付の女性に尋ねると。

「いいえ、

 大丈夫ですよ」

と彼女は笑みを浮かべながら返事をしてみせる。

「はぁ…」

その返事に俺は心のどこかに嬉しさを感じながら更衣室を探すが、

更衣室といえば女の子達が着替えている女子更衣室しか見当たらなかった。

すると、

「あっどうぞ」

丁度、更衣室から出てきたひっ詰め頭の少女が俺に向かって、

更衣室を手で指した。

「え?」

思いがけないその言葉に俺は驚くと、

「気になさらないで使ってください」

と受付の女性は俺に言う。

「うっ、

 そういうのなら…」

それらの言葉に俺は恐る恐る更衣室に入ると、

まだ着替えをしている少女達を見ないようにして、

使用されていないロッカーに立つと着替えを始めたのであった。



レッスン中、うっかり股間が膨らんでも見えないようにとサポータを先に穿き、

乾ききってなく若干湿り気が残るバレエタイツに脚を通すと黒いレオタードを身に着ける。

そして、最後にバレエシューズを穿き終え、

俺はバレエ少女ならぬ、

バレエ男へと変身したのであった。

「これって、結構恥ずかしいかも」

いつの間にか更衣室には俺だけが残っていて、

ロッカーの鏡に映る自分のレオタード姿に赤面していると、

ポロン〜♪

レッスンを開始を告げるピアノが響き渡った。

「あっ」

その音色に急かされるようにして、

俺は汗拭き用タオルを片手にレッスン室へと向かっていった。



「はいっ、

 皆さんにご紹介します。

 今日からこの初心者クラスに入校した柴田さんです」

整列したレオタード姿の少女達の前に立ち、

レッスンを指導する女教師の口から俺の名前が呼ばれると、

「あっ

 ど、どうも」

俺は恥ずかしげに彼女達の前に立った。

すると、

ザワッ!

一瞬、ひっ詰め頭にレオタード姿の少女達がざわめき立ち、

「…なに、男の人?」

「…レオタード着ているよ」

と隣同士と囁き合う声が小さく響いた。

「うっ」

それらの声に俺は戸惑ってしまうと、

「みんなにご挨拶は」

そんな俺に向かって教師は挨拶をするように促す。

「はっはいっ」

その言葉に俺は頷きながら返事をすると、

「よっよろしくお願いします」

彼女達に向かって頭を下げた。

すると、

「先生っ」

少女達の一人から声が上がり、

「瀬良さんの挨拶の仕方がおかしいです」

と俺の挨拶の仕方を指摘する声が上がった。

「え?」

思わぬ指摘に俺は戸惑うと、

「そうですね」

教師も顎下に人差し指を立てた拳を当てて頷き、

「じゃぁ、

 夏木さん、

 挨拶の見本を見せてあげて」

と彼女に告げた。

すると、

「はいっ」

元気の良い返事が響き、

一人の少女が俺の前に立つと、

「良く見るのよ」

そう言いながら、

くるりと右手を回しながら、

片膝を付くポーズをしてみせる。

「えっ…」

彼女のその動きに俺は呆気にとられると、

「さぁ、

 やってみて」

そう言いながら彼女は俺の後ろに立ち、

後ろから手を取ると、

身体を密着させながら

「まずは、腕を伸ばし、

 それからその腕を大きく回しながら…」

と俺の腕を動かし、

その一連の動きを教えていく、

スルッ

スルッ

俺と彼女の動きがずれるたびに、

俺の背中を彼女の柔らかい胸の膨らみが移動し、

その感覚に俺の股間は急速に硬くなり始めた。

「わっバカっ」

余りにも素直すぎる股間の反応に俺は顔を真っ赤にすると、

「大丈夫」

と彼女は俺の耳元で囁き、

「は?」

その意味を俺は聞き返すと、

「ふふっ」

意味深な笑みを浮かべながら彼女は俺から離れていった。



「アン・ドゥ・トゥワァ」

「アン・ドゥ・トゥワァ」

ピアノの伴奏の音共にレオタードにひっ詰め頭の少女達はストレッチを終えるなり、

バーにつかまりバレエの基礎であるプリエを練習を始めだす。

学生時代、運動部に所属していた俺は、

身体の柔軟さはまだ残っていたのでストレッチはさほど苦にはならなかったが、

しかし、このプリエの壁は高いものであった。

動きそのものは単純だが、

相撲の四股の如くそれを連続して行っていくうちに足は痺れ、

筋は悲鳴を上げ始める。

「くはぁ

 これって結構キツイなぁ」

大粒の汗を掻きながら、

俺はふぅふぅ言っていると、

ふと、他の少女達のことが気になった。

そして、チラリと彼女達の様子を見ていると、

皆額に汗を浮かべ、

懸命にプリエをしている姿が目に入った。

「ふぅーん、

 みんな頑張っているんだな」

自分も彼女達と同じレオタード姿になって汗をかいていることなど忘れてそう思っていると、

昨夜、自分の部屋でこの光景を妄想しながらオナニーをしてしまったことが急に恥ずかしく感じられた。

とそのとき、

ムクッ!

俺の股間が急に盛り上がり始めるとサポータを押しのけ、

ビンッ!

っと肉の棒が競りあがってしまった。

「いっ」

どうやら、昨夜の妄想のことを思い出したのがいけなかったらしい、

「まっまずいっ」

盛り上がってしまった股間を俺は慌てて誤魔化そうとするが、

しかし、俺の身体の線を赤裸々に映し出すレオタードはそれを許さなかった。

「柴田さん」

俺を呼ぶ声が響き、

「はいっ」

背筋を伸ばして俺は返事をした。

すると、

女教師は俺の横に立ち、

「これは一体なんですか?」

彼女達を指導するのに使う長さ1mほどの指導棒で俺の股間を突付いた

「あっ」

いまの俺にとって最も敏感になっている部分を突付かれ、

そして、何でそうなっているのか理由尋ねられたことで、

ビンッ!

俺の股間はさらに膨らみを増し、

レオタードを持ち上げてしまう。

「やだぁ」

「えっちぃ」

そんな俺の股間の姿に少女達は眉を寄せると、

「いや、違うんです、

 俺は変なことなんて考えていません」

と弁解するが、

「怪しいわね」

「本当…」

少女達は俺の言い訳を聞いてはくれそうにもなかった。

すると、

「先生っ」

一人が声を上げると、

「なんですか、

 秋本さん」

と教師は彼女の名前を呼んだ。

「はいっ、

 あのぅ…

 柴田さんは自分は男の人だ。

 と思っているからそんなになると思います」

そう彼女は指摘した。

「なるほど」

その指摘に教師は大きく頷くと、

「では、どうすれば良いですか?」

と聞き返すと、

「メイクをしてはいかがですか?」

別の少女が声を上げた。

「メイク?」

その提案に俺は驚くと、

「うん、良いわね」

「メイクか、

 良い手かもね」

と皆は一斉に頷き、

「では、柴田さん。

 あなたにはメイクをしてもらいます」

俺を見詰めながら教師はそう指示をした。

「そっそんなぁ!」

思わぬ展開に俺はどうすることも出来なく、

レッスンバーがどけられると、

瞬く間にメイク道具が俺の前に揃えられる。

すると、

「あたしにやらせて!」

の声と共にまた違う少女が俺の前に進み出てきた。



「ふふっ」

「うふふふふ」

すっかり周囲を少女達に取り囲まれてしまった俺はどうすることも出来なく、

無理やりその場に座らされてしまうと、

「さぁ、

 まず最初にその眉を整えましょう」

と言う声が響き、

少女の手が伸びると、

「動かないでね、

 手元が狂うから」

の言葉と共に俺の眉が切りそろえられると、

形を整えながら剃られていく、

そして、それらが終わると、

顔全体にクレンジングクリームが塗られ、

肌の脂などが汚れとして落とされてく。

手馴れているのか、

俺の顔を弄る彼女の手つきは手際よく汚れが落とし終えると、

ファンデーションを塗り下地を作り上げた。

チラリ…

レッスン室の鏡を横目で見ると、

レオタード姿の少女達に取り囲まれるようにして、

同じレオタードを着る俺の姿があり、

さらに、その顔は塗られたファンデーションで白く輝いていた。

すると、

「じゃぁ、目の周りを整えましょう」

と彼女の声が響き、

俺の間の周囲にアイカラーが塗られていくと、

シャドウが施され、

さらにアイラインや付けまつげが付けられて行った。

そして、手早く目の周りを終えると、

鼻にノーズシャドウ、

頬紅、

そして、唇にルージュが塗られ行く。

「うんっ、

 完璧」

その声と共に彼女が離れていくと、

「はいっ、

 自分の顔を良く見るのよ」

と壁にある鏡の前に俺を連れていた。



「うっ

 これが…俺?」

鏡に映る俺の顔は全く知らない人物のようだった。

白い顔、

クッキリとした目鼻立ち、

そして、唇のルージュ。

舞台の上で映えるバレエメイクを受けた俺の顔は、

男とも女とも言えないそんな顔になっていた。

「どうしよう…

 こんな顔にされてしまっては表を歩けない…」

自分の顔を見ながら俺はふとそのことを思うと、

ムクムク!

萎えていたはずの股間がまたしても盛り上がり始めてしまった。

「あぁ、

 だめっ!」

メイク顔の眉を寄せて俺は股間を抑えると、

「何がダメなのです?」

と教師は俺に尋ねた。

「いっいえ…」

その声に俺は繕うと、

「また、変なことをしているの?」

と教師は再度尋ねた。

「ちっ違いますっ」

その問いを俺は否定するが、

「だったら、その手をどけなさい」

教師は冷酷に命じると、

「はい…」

仕方なく俺は股間を押さえていた両手をどけて見せる。

その途端、

「きゃっ!」

「いやっ」

たちどころに少女達が声を上げると、

ピシッ!

「なんですかっ、

 メイクをされても、

 なおもこうするのですか?」

指導棒で俺の膨らんだ股間を叩きながら、

教師は問うと、

俺は何も言い返せなかった。

そして、

「柴田さんには悪いですが、

 レッスンに集中してもらうため、

 ポアントを履いてもらいます」

と俺に指示をした。

「ポアントって…」

教師の言葉が理解できなかった俺はキョトンとしていると、

「トゥシューズのことよ」

少女が俺に耳打ちする。

「え?」

その声に俺は慌てて振り返ると、

「はいっ、

 これよ」

笑みを浮かべながら少女は俺にトゥシューズを掲げて見せた。



コトッ…

トゥシューズの音を響かせながら俺は立ち上がると、

「なんで…

 こんなことに…」

と思いながらレッスンバーにつかまる。

今週、一念発起してこのバレエ教室に入校し、

その際に渡されたのがレオタード・タイツ・バレエシューズだった。

そして、初めてのレッスンでバレエのメイクをさせられ、

さらにバレエシューズをトゥシューズに履き替えさせられたのである。

余りものの急転ぶりに俺は長い年月をかけてこれらが進んでいったと考えてしまうが、

しかし、わずか1週間以内の出来事であることを思い出すと、

最初から仕掛けられていたような錯覚に陥ってしまった。



「はいっ、

 アン・ドゥ・トワァ!

 アン・ドゥ・トワァ!」

教師の掛け声と共に再びレッスンが始まり、

コト…

コト

コト

俺は一人でトゥシューズの音を鳴らしながら、

慣れないレッスンに汗を流す。

足の指が拘束され、

さらに踵が直接床についてしまうトゥシューズは実際に穿いてみると、

極めて行動しづらく、

「よく、こんなものを穿いてバレエを踊れるな」

と俺は半分感心するが、

爪先立ちで踊るには都合が良いことも同時に知ることが出来た。

そして、改めて壁の鏡を見てみると、

そこにはバレエのメイクを顔に施したレオタード姿の男に姿があり、

不器用そうにトゥシューズが飾る脚を動かしている様子が目に入る。

「あぁ、

 あれが、俺なのか、

 俺はあんな姿になっているのか…」

衝撃的な自分の姿を見てしまったことで、

俺の心は動揺し、

そして、その動揺を突く様に、

ムクッ!

股間が盛り上がってきた。

「あぁ、

 またかよ、

 お前のせいで俺は…」

遠慮なく盛り上がってくる股間を俺は抑えると、

「すっすみません!」

と声を上げてレッスン室から飛び出してしまい

そのままトイレへと駆け込んだ。

そして、

「ハァハァ

 ハァハァ」

個室ではなく洗面台の前で俺は鼻息荒く硬く伸びる股間に手を添えると、

シュッシュッ

シュッシュッ

とレオタードを押し上げる股間を扱き始めた。

シュッシュッ

シュッシュッ

「はぁ…

 何でこんなことに、

 俺は…

 俺は…

 あぁ…バレリーナ…

 バレリーナに…

 俺はバレリーナに…

 あはぁ」

メイクされた顔を洗面台の鏡に映し出し

その顔と脚に穿かされたトゥシューズを見比べながら、

俺は扱き続けた。

そして、

「あっはぁぁぁぁ

 あぅぅ」

絶頂に上り詰めようとしたとき、

素早く股間のレオタードをずらすと、

中に押し込めたものを表に出した。

その途端、

シュッシュシュシュ!!!

表に飛び出した俺の肉棒より白濁した精液が噴出し、

トイレの床を汚してしまった。

「ハァ…

 ハァ…

 ハァ…」

射精後の脱力感を味わいながら、

俺はその場にペタンと座り込んでしまうと、

「おっ俺、

 どうなってしまうんだ?

 まさか、本当にバレリーナに…」

と思いながらレオタードが覆う自分の体をさすってみた。



ジャァァァ…

出したものを片付けて、それらをトイレの水を流した俺は、

フラフラになりながらレッスン室へと戻っていくと、

いつの間にかレッスンは終わっていて、

レッスンに汗を流していた少女達は皆トゥシューズを履き、

純白のチュチュを身につけて衣装合わせの真っ最中だった。

「ねぇ、後ろもうちょっと締められない?」

「あんっ、

 きつく締めすぎよ」

チュールの音を軽やかに響かせながら、

チュチュを纏った少女達は思い思いに踊り、

そして、元気良く脚を開いてみせる。

「うっ」

少女達の楽園を思わせるその光景に俺は目が釘付けとなり、

さらに彼女たちが開脚させるとツンと花開く少女の股間を見ているうちに、

「おっ俺も…

 こんな風になりたい…

 チュチュを着て、

 こんな風に踊りたい」

と思ってしまった。

すると、

「はい、これは柴田さんのですよ」

と女教師の声が響くと、

俺の手に1着のチュチュが手渡された。

「え?

 なんで…」

突然チュチュが渡されたことに俺は驚くと、

「何を言っているの?

 さぁ、あなたもこれを着てバレリーナになるのよ」

レッスンのときとは違う柔らかな口調で教師は俺に囁き、

「みんなそうやってバレリーナになったのよ」

と付け加えた。

「みんな?」

教師のその言葉に俺は振り返ると、

「うふっ、

 良く見なさい。

 あの子達の身体を…」

と教師は俺に言う。

「身体?」

それを聞いた俺は改めてレオタードを脱ぎ、

チュチュを纏おうとする少女の身体を見ると、

プルンッ!

彼女の股間には少女には絶対に無いものが付いていたのであった。

「うっうそぉ!」

それを見た俺は思わず声を漏らしてしまうと、

「そう、

 ここは、元々男の子のクラスだったのよ。

 でも、みんなチュチュの魅力に取り付かれ、

 レオタードを着て女の子に…

 バレリーナになるためのレッスンをつんでいるのよ、

 無論、バレリーナになるために、

 オッパイを膨らませ、

 オチンチンを切って捨てる子もいるのよ、

 そう、みんなバレエの国の住民になりたいのよ、

 さぁ、あなたも…」

と教師は俺の手を引くが、

「ちっ違うっ」

俺は声を張り上げて、

その手を振り払った。

だが、

「何が違うの?

 あんなにオチンチンを膨らませていたあなたが、

 そんなことをいえるの?」

と教師は俺の痛いところを付く、

「いや、それは…」

その言葉に俺は窮してしまうと、

「それにさっき、

 おトイレでとってもイラヤしいことをしてきたでしょう。

 バレリーナ

 俺はバレリーナ

 って口走りながら」

ダメを押すように教師はさっき俺がしてきたことを指摘した。

「うっ」

もはや抵抗するなどできる相談ではなかった。

「さぁ、
 
 もっと素直になりなさい。

 そうすれば、あなたも立派なバレリーナになれるわ、

 オッパイを膨らまして、

 ウェストを括れさせて、

 オチンチンを切り取ってしまいましょう。

 大丈夫、

 あなたにはバレリーになれる素質はあるわ」

教師はそう告げると、

チュチュを手に持つ俺を優しく抱きしめた。



それから1年後、

近くの市立ホールを借り切ってバレエ教室の発表会がにぎやかに開かれた。

そして、大勢の観客達が見守る中、

舞台の上に飛び出した俺は

チュチュを翻して踊りはじめる。

そう、俺はバレリーナ…



おわり