風祭文庫・バレリーナ変身の館






「発表会」



作・風祭玲

Vol.055





ある秋の週末…

ここ県立体育館では県内の高校による学校対抗バレーボール大会が開かれていた。

試合は順調に進みやがて勝ち残った2校による決勝戦。

そこに駒を進めた学校は決勝戦の常連となている西高と東高の対決だった。


「あれぇ?、やっぱりいないなぁ…相模のやつ」

「どうしたんだ?」

「控えの選手にも入っていないし」

「ほんと、どうしたんだろう」

「あいつに限って、レギュラーから外れるなんてことはないだろうに…」

監督の檄を受けコートに散らばる西高のメンバーを見みながら、

観客席でそぅ呟いているグループがいた。



一方、ここは体育館の隣にある県立ホール。

まもなくここで西高校クラシックバレエ部による

バレエ「白鳥の湖」が上演されようとしていた。

開演を控え、

関係者や衣装を身につけた少女達が忙しそうに動き回る舞台裏の一角に

隣にある県立体育館の全景を見渡せる小さな踊り場がある。

そして、その場所に舞台化粧を済ませ、

白銀に輝くクラシックチュチュを身につけた少女が、

一人体育館の様子をじっと伺っていた。

やがて人影が彼女に近づいていくと、

「あら、相模さん、向こうが気になるの。」

と優しく言う。

相模と呼ばれた少女は、

一瞬ビクッと肩を動かすと、

「あっ、先生…」

とか細い声で返事をしながら振り向いた。

「もぅ昔のことは忘れなさい…

 そして、いまあなたがやるべきコトのみを考えてね…」

女性は少女の露わになった肩を掴みながら彼女だけに聞こえるように囁いた。

「…………はい」

少し時間をおいて少女が返事をする。

「さぁ…そろそろ開演の時間よ、

 ウォーミングアップは済ませてる?」

と女性が訪ねると、

コクン

少女が静かに頷いた。

「さっ、行きましょう…貴方の舞台に…」

女性はそう言いながら少女の手を引きその場を離れた。

そして通路をを歩きながら、

「相模さんは女の子になって初めての舞台だったわねぇ…

 緊張しないで頑張りなさい。」
 
と励ました。

やがて舞台のソデに来ると彼女は、

「相模さん…」

と少女の名を呼ぶと、

キュッ

と彼女を抱きしめた。

そして、

「今日はすごくきれいよ…」

とひとこと誉めると、

少女は顔をポッと頬を赤くしながら、

「はい先生、

 わたし…頑張ります」

と少女は彼女の目を見ながら誓った。

すると、女性は彼女の顔に自分の顔を近づけると。

スッ…

女性の唇が少女の唇に重なり合った。

「あっ…うん…」

静かな時間が流れる…

「そろそろ時間でーす」

と言うスタッフの声を合図に女性は唇を静かに離した。

そして、ポォっとしている少女に

「あたしは客席から見ています、

 相模さん、あなたのバレエ…しっかりとあたしに見せてね」

と言うと女性は少女の目の前から去っていった。

「…先生…あたし…」

少女がそう呟くと流れる音楽と共に舞台が始まった。

舞台の上では白銀のチュチュを身にまとった部員達が、

華麗なコールド・バレエを演じる。

やがて、白鳥姫の出番がくると…

あの少女が白銀のチュチュを輝かせながら

薄幸の姫を華麗に演じ始めた。


「綺麗ですわ、相模さん…」

クラシックバレエ部顧問・篠原ゆかりは

舞台の上で華麗に舞う相模裕樹の姿をじっと眺めそして呟いた。

「やっぱり…

 あなたにはバレリーナとしての素質があったのよ…」

一方、バレエを舞いながら暗い客席を横目に

彼女はふと昔のことを思い出していた。


そう、男だったほんの1年半前のことを…


春………

西高には厳しい受験戦争を勝ち抜いてきた大勢の新入生でにぎわっていた。

無論、その中に相模裕樹の姿も当然あった。

彼は中学の3年間バレー一筋に打ち込んできたので、

あらゆる大会で常に1・2位を争っている

この西高を志望校とし迷わず入学したのであった。


裕樹は入学すると当然の様に男子バレー部に入部した。

しかし、彼を待ち受けていたのは、

中学よりも遙かにキツイ練習の毎日だった。

そうなると、脱落者の数も多く、

同時に入部した新入生は次々と姿を消し、

一月後に残ったのは彼と、

練習についてくる事ができた数人の仲間だけになっていた。


「これだけ人数が減れば、

 レギュラー入りも案外楽なんじゃないか?」

キツかった練習が終わり部室で着替えていると、

ふとそんな声が部員達の中から挙がった。

「バーカ、世の中そんなに甘くはないぞ」

「そうか?」

「こんなに簡単にレギュラー入りしたら、
 
 試合では負けちまうぞ」

と裕樹が言うと、

「あはは、相変わらずお前はきついなぁ」

と部室の中に笑い声が響いた。

それからも練習は激しさを増していったが、

どんなシゴキでも彼はついていった。


しかし、そんな裕樹の身を突然の不幸が襲った。

練習中、ボールを追っていた彼とほかの部員と激しく激突する事故が起きた。

「うわっ」

「バカッ!!」

と言う叫び声の後、

ドタン!!

激しい音が体育館に響いた。

「おい、大丈夫かっ」

突然の事態に部員達が一斉に二人に駆け寄って行った。


結局、医者の元に運び込まれた裕樹は右足の捻挫と診断され、

その結果、しばらくの間部活を休むことになった。


ハイッ

バスン

数日後…

バレー部の練習の音が体育館に響く、

そして、それを松葉杖に身体を預けながら

その様子をじっと見つめている裕樹の姿があった。

「あなた…相模裕樹君ね…」

裕樹がバレー部の練習を眺めていると突然声をかけられた。

「はい?」

かけられた声に振り向くと彼の後ろに一人の女性が立っていた。

「えぇっと…」

女性の顔と名前を一致させようとして彼が考え込んでいると、

「どうしたの?」

女性は裕樹を昔から知っているような素振りで話しかけてきた。

「あっ足ケガしたんだってねぇ…

 大変ねぇ、バレーって結構動きが激しいから

 ちゃんと直さないと後々響くわよ」

と彼女が言う。

「あなたは?」

名前が浮かばずに裕樹は彼女の名前を訊ねると、

「あぁ、ごめんなさい、相模君とは初対面でしたね。

 あたしは、篠原ゆかり…
 
 クラシックバレエ部の顧問をしているわ」

と女性は名乗った。

「クラシックバレエ部?」

不思議そうな顔をしながら裕樹が聞き返すと、

「そう…あっ、バレーボールじゃなくて踊るバレエの方よ」

と優しく説明した。

「あのぅ、”白鳥の湖”とか言う?」

「そう、それ」

「その顧問の先生が何で僕に?」

裕樹の質問に、

「ん?、そうねぇ…

 なんだか君がつまらなそうにしているから」

とゆかりは裕樹の顔を見ながら答えた。

「きみのケガって、足首の捻挫だって聞いたけど?…」

「えぇまぁ」

「捻挫って言うのは一度罹ると再発しやすいものなのよ、

 だから再発しにくいように鍛えなくてはいけないわ」

そう言うゆかりに

「はぁ…」

裕樹は俯きながら答えた。

すると、ゆかりは何かを確信したように、

「ねぇ、相模君、足の筋力強化にバレエ…やってみない?」

と切り出した。

「え?、バレエですか?」

驚いた裕樹はゆかりの顔を見ながら言うと、

「あっ、といっても本格的にやるんじゃなくて…

 そう筋力トレーニングのためのレッスンに参加するだけでいいのよ」

と説明した。

「…………」

考え込む裕樹に

「ねぇ?」

と言いながらニコッっとゆかりが笑うと、

それを見た祐樹の顔が赤くなる。


結局、裕樹は足がある程度治った頃、

ゆかりに誘われるようにしてバレエ部でのレッスンを始めた。

水着同様のレオタードを身につけた少女達に混じって

賢明にレッスンをする彼の様子をゆかりは全く別の視点で見ていた。

「うふふふ、

 可愛いわよ相模君…

 さぁて…
 
 バレーに打ち込むあなたを
 
 あたしが美しいバレリーナにしてあげるわ…」

そう心の中で囁きながら、

ゆかりは彼にレッスンのアドバイスをしていた。


数日後、彼女の元にある製薬会社の研究室から荷物が届いた。

早速梱包を解くと中から薬品が入ったアンプルを取り出し、

「ふふ…これがあれば、彼を…」

そう呟きながら、舞台の上で彼に舞う裕樹の姿を想像した。

「あぁ、あたしの相模君が…

 美しいバレリーナになるなんて…」

ゆかりは手を自分の局部に持っていくと自慰をはじめた。

「祐樹クン…はやくあたしのプリマドンナになって…」

その声と共にゆかりは絶頂を迎えた。



ケガが捻挫がようやく完治し、

バレー部に復帰した裕樹はバレエ部との掛け持ちの解消を心に決めていた。

「ふぅ…脚の筋もだいぶ強くなってきたし、
 
 そろそろバレエの方はおしまいにするか」

裕樹はそう考えると、

ゆかりの元を訪れバレエの方は今日限りで終わることを話した。

「そう、残念ね…

 本当はもっと続けて欲しかったけど、

 あなたにはバレーがあるものね」

そうゆかりが残念がると、裕樹は

「はぁ、わがまま言ってすみません」

と謝った。

「いいのよ、謝らなくても

 キミにバレエを薦めたのはあたしの方なんだし」

と言い、そして、

「そうだ、今日…バレエを踊ってみない?」

「え?」

裕樹は意外な提案に思わず驚いた。

「バレー部の練習は今日はないんでしょう?」

「はぁ」

「せっかくバレエ部に入っていたんだから踊ってみるのもいいかもよ」

「………」

こうして、裕樹は最後のレッスンでバレエを踊ることになった。


「…ごめんなさいね、

 男子用のレッスン着が無くて…」

そう言って謝るゆかりの目の前に

ピンク色をしたフリル付きのレオタードを着た裕樹の姿があった。

「先生、どうしてもこれ着なければいけないんですか?

 別にいつものでもよかったのでは」

と憮然とした感じで裕樹が言うと、

「バレエは体の線が見えないと駄目なのよ、

 レッスンの間はそれで我慢して…」

とゆかりが説明すると彼は渋々レッスンを始めた。

無論、

一緒にレッスンをすることになる女子部員達は、

必死になって笑いをこらえていたが、

しかし、ぎこちない姿でバレエを舞う彼の姿に

「…レオタードをそんなに嫌がっていないわ…

 彼もわずかだけどその気があるのね…」

ゆかりは確かな手応えを感じていた。

一方の裕樹は

「うぅぅぅぅ…

 みんなに見られて恥ずかしいんだけど、

 なんだろう…

 この満たされるような感覚は…」

彼も戸惑いながら、

自分の心の奥底にいるもぅ一つの自分の存在に気づき始めていた。



「うん…

 この様子じゃぁ…
 
 今日事を起こしても大丈夫ね」

そう確信するとゆかりはレッスン後、

裕樹に渡すスポーツ飲料に例の薬を混入した。

「相模君…

 もぅすぐ…
 
 もぅすぐだわ、

 あなたがバレリーナになるのは…」

そうスポーツ飲料を眺めながら呟くと

「お疲れさま」

と言いながら

レッスンが終わって座り込んでいる裕樹に手渡した。

「あっ、どうもすみません」

一気にスポーツ飲料を飲み干した裕樹を見ながら、

「ねぇ…もしも…もしもの話だけど…

 相模君が女の子だったら、バレエやってみる?」

と問いかけた。

「バレエですか?、

 そうですねぇ、確かに女の子だったらやってみたいですね」

と彼は答えると、立ち上がり、

「篠原先生、どうもお世話になりました。」

とこれまでのお礼を言いながら頭を下げた。

「いぃのよ、また来ることがあったら遠慮なく来てね」

とゆかりは答えた。

「…ふふ…裕樹くん…あなたは退部しないわ、

 なぜって…

 明日になれば素敵な身体になってまたここに来るから…」

そう思いながら更衣室に消えていく裕樹の後姿を眺めていた。



翌日

コンコン

ノックの音がゆかりの部屋に響いた。

「はい、どなた…」

しばらくしてドアが開くと、

そこに学生服姿の相模裕樹が立っていた。

「あら、相模君じゃない、

 どうしたの?

 そんなところに立っていて…」

ゆかりが招くと裕樹が入ってきた。

昨日と比べると彼の身体は少し小さくなり、

身体も引き締まったような感じがした。

「うふ…薬が効いたみたいね…」

ゆかりは心の中でそう呟いた

彼はゆかりの前に立つと、何も言わずただ黙っていた。

「どうしたの?、何も言わなければ判らないわ」

と言うと、

「せんせぇ…」

裕樹はまるで少女の様な声で言うと

突然学生服を脱ぎ始めた。

「どっどうしたの?」

ゆかりは驚いた振りをしながら裕樹の行動を眺めていた。

裕樹はそんな事も知らずシャツも脱ぎすてると

彼女の前に自分の身体を見せた。

女性特有のホッソリした身体と、

二つの乳房が彼女の目に飛び込んできた。

「…まぁ、

 なんて素晴らしい身体なのかしら…

 この様子では下の方も大丈夫ね」

とゆかりは聞こえないように呟くと、

「相模君、どっどうしたのそれ」

と声を上げた。

「せんせぇ…、

 僕、これではもうバレーができません」

と裕樹は叫ぶとゆかりに抱きついた。

ゆかりは彼をやさしく抱きしめると、

「大丈夫、怖がらなくてもいいわ…」

と裕樹の耳元に囁くと…

「でも…僕、女の子になっちゃった…」

裕樹はそう言いながら泣きだした。

「まぁ可愛い…

 心も女の子になっているみたいね」

ゆかりは泣いている裕樹の頭をなでながら、

「大丈夫って言ったでしょう」

と優しく言い、そして、

「バレーが出来なくても貴方にはバレエがあるわ」

と呟いた。

「バレエ?」

「そうよ、相模君」

「いえ、相模さんと呼びましょうか、

 昨日まで貴方が筋力トレーニングでやっていたバレエのレッスン、
 
 素晴らしかったわよ」

とゆかりが言うと裕樹は顔を赤くすると俯いてしまった。

「あら、恥ずかしがることはないわ…」

「それでね、貴方のレッスンや踊る様子を見てあたしは思ったの、

 あぁ、相模君って何で男なんだろう…

 女なら、トゥシューズが似合う美しいバレリーナになれたのに。ってね」

「バレリーナに…ですか?」

裕樹は顔を上げるとゆかりの顔を見た。

ゆかりは静かに頷くと、

「そう、貴方がバレリーナになれば

 きっと世界的な名バレリーナになれるわ」

と裕樹の目を見ながら言う、

「そんなぁ」

「そうねぇ…

 相模さんはまだ女の子になったばかりで気づいてはいないと思うけど、

 いまの貴方のプロポーションは
 
 バレリーナとしてとても理想的な体型をしているのよ」

「バレリーナとして?」

「そうよ、世の中には技術力や演技力でどんなに秀でた人でも、

 それが一流のバレリーナになれる条件にはないわ、

 でも、相模さんはソレがある。
 
 ねぇ相模さん、バレエを本気でやってみない?」

「バレエを?」

「折角女の子になったんだもの、

 女の子の憧れの頂点を目指してみると言うのもいいと思うの」

「……女の子の憧れ…」

彼女の話を聞いて裕樹は考え込んだ、

そしてそんな裕樹の様子を見たゆかりは、

「じゃぁコレに着替えてみましょうか?」

と言うと、裕樹の前にレオタードとバレエタイツを差し出した。

「え…」

それは、昨日バレエ部の練習で着たピンクのレオタードだった。

「あっ、あの後ちゃんと洗っているから大丈夫よ、

 いいのよ、遠慮しなくても…

 だって、貴方とあたしは同じ女でしょう、

 もぅ恥ずかしがる理由なんてないわ」

とゆかりが微笑みながら言うと、

「はぃ…」

裕樹は力のない返事をした。


しばらく沈黙が流れた後、

「じゃぁ、あたしはちょっと外に出ているね、着替え終わったら呼んで」

と言い残すとゆかりは席を立ち廊下に出ていった。


「………」

一人残された裕樹はしばらくの間レオタードを眺めると、

何かを決したよう表情になった。

そして、左右に首を振って部屋に誰も居ないのを確認すると、

おもむろに服を脱ぎ捨てると、

そっと、タイツに脚を通した。

女性のほっそりとした脚が見る見る白くなっていく

ゾクッ

バレエタイツ特有の陰影のついた脚を見たとき、

裕樹は背筋を走る快感に思わず酔った。

「きれい…」

自分の脚を見ながらそう思っていると、

「そうだ、レオタード…」

裕樹はピンク色のレオタードを手に取りそれに脚を通した。

スルスル…

タイツの上を滑るようにしてレオタードを腰まで引き上げる。

キュッ!!

レオタードが腰を覆うと心地よい締め付けを感じた。

「あぁ…」

裕樹は思わず声を漏らした。

「変なの…レオタードを着るのは2回目なのに…

 なんだろう、この気持ちよさは…」

そう思いながら、レオタードを胸下まで引き上げると、

左右両腕にレオタードの袖を通す。

キュゥゥゥ…

レオタードは裕樹の両腕を締め付ける。

「…………」

裕樹は顔を真っ赤にして一気にレオタードを肩まで上げると

コレまで何も感じていなかった胸から肩に掛けての部分が締め付けられた。

サラッ…

レオタードに覆われた胸から腰にかけてなで回してみると、

レオタードを通して身体の柔らかさが手に伝わってくる。

「これって、まるで…」

そう思いながら鏡を見たとき、

裕樹は強いショックを受けた。

そう…

そこには昨日とは打って変わって、

ピンクのレオタードを身につけたバレエ少女が

恥ずかしげに立っていたのだった。
          
ドキッ

「これが、僕…?」

裕樹は自分の姿に驚き、そして胸がドキドキと高鳴り出す。

なで肩の肩に、プックリと膨らんだ胸、

括れた腰に、大きく張り出したヒップ…

女性になった自分の身体はコレまで数回見たけど、

レオタードを身につけたのを見たのはいまが初めてだった。

「……うわぁぁ…

 まるで裸……

 なのに、普通の裸よりももっとエッチ…」

裕樹はレオタード姿の自分が醸し出す妖美さに戸惑っていた。



「どう、着替え終わった?」

カチャ…

突然ドアが開くとゆかりが顔を出してきた。

「きゃっ!!」

裕樹は思わす悲鳴を上げると、

思わず両手でレオタードに覆われた身体を隠した。

「…うふふ、可愛い…」

ゆかりは裕樹の前に立つと舐めるように彼のレオタード姿を堪能した。

「思った通り似合いますわ、相模さん…」

ゆかりは裕樹をそっと抱きしめると、

レオタードの上から彼の乳房を優しく触れた。

「あっ」

ゆかりの手が触れた瞬間、

裕樹の体は小さくビクッっと反応した。

「女の子になったばかりで敏感なのね…」

そう呟くと、裕樹の顔は微かに紅潮してきた。

「可愛いわよ、相模さん…」

サラ…

最初のうちは乳房に触っているだけだったが、

徐々に股間にも手を伸ばすと彼の局部に触り始めた。

「あ…ん…」

そこには男の肉塊は無く、縦に走る溝がゆかりの指を誘導する。

はぁはぁ…

徐々に裕樹の息が荒くなってきた。

それと同時に溝から体液が染みだしてくると

レオタードをしっとりと濡らし始めた。

指の腹でそれを感じとったゆかりは徐々に激しく裕樹を攻め始めると、

裕樹の吐息は激しくなっていく、

そして、腰がガクガクとふるえ始めた。

「我慢しないで…

 気持ちいいんでしょう…
 
 声を出したければ出して良いわ…
 
 …誰も聞いていないから」
 
裕樹の耳元でゆかりが囁くと、

「あん、あん、あん…」

裕樹は声を上げて悶え始めた。

「だっだめ…いや、止めないで…」

やがて、大きな喘ぎ声と共に裕樹は初めて味わう女の絶頂を味わった。

はぁはぁ

股間を濡らしてぐったりとしている裕樹を眺めながら

ゆかりは

「じゃぁ相模さん、改めてクラシックバレエ部に入部してくれますね」

と問いかけると、

「…は…い」

裕樹はそう言って素直に頷いた。

ゆかりは笑みを見せると、

「さぁ、汚しちゃったレオタードを着替えましょう

 あなたはもぅ正式なクラシックバレエ部の部員ですよ…」

と言いながら裕樹をそっと抱きしめた。

「相模さん…あなたはもぅあたしのモノよ…」



会場は割れんばかりの拍手に包まれていた。

舞台の上では見事に白鳥姫を踊りきった裕樹が

満足そうな表情で挨拶をしていた。

「すばらしい舞台でしたわ、相模さんl」

ゆかりは我を忘れていつまでも拍手を送っていた。

そして、拍手を送りながら

「さぁ…相模さん、続きの舞台は私の部屋で…

 二人で心ゆくまで楽しみましょう…」

ムクムク…

そう思うゆかりの股間はゆっくりと盛り上がり始めていた。



おわり