風祭文庫・アスリート変身の館






「美人ライフセーバー」



原作・nao(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-263





「…もぉいぃかいっ」

「…まぁだぁだよぉ」

8月

異様に長かった梅雨が月が変わるのと同時にようやく明け、

真夏の日差しが照りつけるここ赤南の海水浴場はこの日を待ちこがれてた大勢の海水浴客で賑わっていた。

「…もぉいぃかいっ」

「…まぁだぁだよぉ」

遙か彼方まで弓なりになって続く白砂の砂浜は押し寄せる海水浴客によって、

まるでコミケにワンフェス、ゲームショウ、モーターショウ&日本シリーズを

一度に開催したかのような激しい混雑に見舞われ、

『(ピンポーン)実行委員会よりお知らせします。

 実行委員会よりお知らせします。

 中央階段は9時から上り専用となります』

『(ピーガー)こちら風紀委員会!、

 浜辺でのコスチュームプレイを禁止するぅ!』

『うわぁぁ、そこのバルタン星人。どけぇぇ!!』

まるでレミングの集団自殺を思わせる浜辺には様々な怒号が響き渡り、

それにも関わらず人々は押し出されるようにして沖へ沖へと向かっていく、

そして、

「もぉもぉいぃかい?」

「まぁだだよぉ」

浜辺近くに設けられた救護施設の中より人々をじっと眺める4つの視線があった。

「もぉいぃかい?」

「まぁだだよぉ」

薄暗い室内には似合わない日焼けし健康そうな黒い肌を光らせ、

腕を組んだ二人のシルエットがそんな会話を延々と繰り返していると、

『緊急地震速報です。

 緊急地震速報です』

突然部屋のスピーカーから地震が発生したことを知らせる通知が鳴り響いたのであった。

「!」

「!」

その通知を聞いた瞬間、二人は羽織っていたパーカーに手を掛けると、

「もぉいいかい?」

「もぉいいよぉ!!!」

と声を合わせ、

バンッ!

パーカーを放り投げるのと同時に陽光輝く屋外へと飛び出していく。

そして、

ザンッ!

真上から照りつける日の光を一身に受け、

赤い競泳水着と青い競泳水着を身につけた二人が表に出てみると、

海面は沖へと大きく後退し、

水平線には横一直線の白い筋が姿を見せていた。

だが、海水浴客は誰一人避難する者はなく、

却って広くなった砂浜を埋め尽くす勢いで後退していく海面目指して沖へ沖へと進んでいく。

「大津波、来たね」

「うん、大津波、来た」

徐々に海岸に迫る大津波を眺めながら二人は頷くと

「なぜ逃げない…」

「聞いてみないと判らない」

と迫る大津波に気がつかないのか、

未だ逃げようとしない海水浴客の事を指摘するが、

だが、その間にも大津波は迫り、

ついに、

ズドドドドドド!!!!!

その目の前に雛壇状の巨大な水の壁を築き上げたのであった。

「ママー」

「あらあら、どうしましょ、

 困りましたわ」

「坊や、泣かないで」

「大変です、人が溺れています」

数万を超す人々が瞬く間に押し寄せる大津波にのみこまれ、

盛り上がる海面は防波堤を越え街へと流れ込むと容赦なく建物を押し流していく。

「行くか…」

「あぁ…」

まさに阿鼻叫喚のまっただ中、

なんとか頂上を海面からつきだしていたひょうたん岩の上によじ登った二人は

改めて惨状を再確認した後、互いに頷くと、

ダッ!

荒れ狂う海面へと飛び込み、

津波に流されていく人々を次々と救出し始めた。

そして、二人の八面六臂の大活躍により、

後の歴史に名を残すことになるこの大津波による犠牲者数を大幅に減らすことに貢献したのであった。



さて、このような大惨事はもとより、

迷子、露出狂、水難事故、海水浴場で起こる様々なトラブルを解決するのがライフセーバーである。

「ふう、疲れた」

「成美、ご苦労様」

「お互いにね」

大仕事を終え悖ってきた世話成美(24)と世話一恵(23)は仕事を終えた安堵感からか、

重かった口も軽くなり互いに健闘をたたえ合う。

そう二人はこの赤南海水浴場で働く美人ライフセーバーである。

二人は顔がよく似ており、苗字も同じであるのだが、赤の他人である。

そんな二人がライフセーバーになったのは一年前に遡る。

「ま、円、お前、チンポ出して何をするつもりだ」

「うわー」

「良いから二人ともお尻出してよ」

志茂円は結婚式の当日、

顔と名前がよく似た二人の男性を相手に二股を掛けた事が発覚し、

その上、怪獣が大暴れして結婚式場は大混乱に陥ってしまったのであった

そしてその混乱の中、

円は竜神にライフセーバーとしての能力と肉体を与えられ、

世話成和と世話一成を救出したのだが、

「二人ともジタバタしても無駄だよ」

溢れんばかりの力に突き動かされるようにして、

円はまず成和のパンツを脱がせ、

彼のお尻にペニスを突っ込んだ。

「成和さんのお尻、締まり具合が最高」

「あぁっ、円、

 恥ずかしいよ、やめてくれ」

悲鳴を上げる成和のお尻に円は容赦なく精液をぶち込むと、

今度は一成のお尻にもペニスを突っ込み、

「円、勘弁してくれ」

「もう、男なら泣き事を言わないでよ」

と一成のお尻にも精液をぶち込んでみせる。

そして

「怪獣もおとしくなったから寝てても大丈夫ね」

すべてを終えた円はそのままスヤスヤと昼寝に入ってしまうが、

突然、天空より稲光が光り輝くと、

閃光が成和と一成を直撃したのであった。

「今の雷だったのか」

「僕達、ちゃんと生きているよ」

「お前、何だよその恰好」

「お前こそ」

閃光の直撃を受けた二人には特に外傷はなかったが、

しかし成和の作業服、

一成のタキシードが委縮しているではないか。

服の萎縮が進行するにつれ二人の腹部や手足が露出し、

「何だよこれ」

「まるでブラジャーみたいだ」

下着みたいな格好に困惑する二人だったが、

服装の変化が終わるとすぐに肉体にも変化が現れ、

股間に違和感を感じた二人が股に手を入れると、

「あれ、チンポが小さくなっていく」

「僕の自慢の巨根がぁ」

成和の太くて大きいペニスも

一成の小さくて皮の被ったペニスも委縮してしまいにはなくなってしまい、

さらに胸が風船みたいに膨らんでいくと、

腰がくびれ、

お尻がキュッと丸みを帯びていく。

「僕達、どうなっちゃったの?」

自分達の変わり果てた姿に驚く二人に目を覚ました円が近づいてくと、

「二人とも大丈夫」

「たぶん二人が変身したのは、結果的に竜神の力を分けてあげたからだと思うよ」

「もしかして、円が僕らのお尻にチンポを入れたからこうなっちゃったって事?」

「たぶんね」

「それにしても竜神の力って何だよ?」

「ふふっ、ライフセーバーとして溺れた人を助けるのに必要な力よ」

「あのさ、少し背が高い方が成和さんで胸が大きい方が一成さんだよね?」

円のその一言に二人は愕然となった。

「円のバカ」

「本当に酷いよ」

「あははごめんごめん、

 別に悪気があったわけじゃ」

その後、三人は戸籍を変更し、

成和は成美、

一成は一恵、

円は真と改名した。



「あれから真は名前を呼び間違う事はなくなったけど」

「私達のうちどっちと付き合うかを選んで欲しいわ」

「北部の海岸で事故が発生、支給応援を頼みます」

「大変、急がないと」

「そうね」

今後のことを考えながらも新たに発生した災害を聞くや否や、

成美と一恵はそう言い合うと席を立ったのであった。



おわり



この作品はnaoさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。