風祭文庫・アスリート変身の館






「杏と咲子」



原作・@wolks(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-337





「さぁてと、

 仕事も片付いたし、

 帰るかぁ」

入梅前の6月

一仕事終えた女性が大きく背伸びをすると、

夜遅くまで明かりが点いていたプティックの照明が落とされる。

「ふぅ」

それから程なくして

帽子をかぶり、黒いワンピース姿の女性が出てくると、

すーっ

大きく深呼吸して外の空気を吸い込む仕草をしてみせる。

彼女の名前は西本奈央。

現役の女子大生であり、

自称・新進気鋭のファッションデザイナーでもある。

大きなハート型をした調整池の周囲に広がるこの街は

保育園・幼稚園・小学校から中学校、

そして高校・大学などが集まる一大文教地区であり、

それら学生を客層にしたさまざまな店が多く立ち並んでいる。

奈央はこの街に新規オープンするSCので勤める人たち向けの

制服デザインを依頼されていたのだ。

「タクシーいないなぁ…

 どうしようか、

 ケータイで呼び出すのも面倒だし」

流しのタクシーを捕まえようと、

奈央は幹線道路の脇で立っていたが、

なかなかタクシーは現れず思案顔になる。

そして、

「しょうがない、

 歩いた方が早そうだわ」

早々に見切りをつけると、

チャッ!

”海”と書かれた木札を取り出すと、

「んじゃ、

 ひとっ走り、

 いっくよぉぉ〜っ!」

彼女の言葉がその途中よりドップラー効果によって歪むと、

その姿はすでに掻き消えた後だった。



「うーん、

 気持ちいぃねぇ」

横へと一斉に流れ始めた光の世界、

奈央は目的地に向かって一直線に突き進んでいく。

行く手を阻む壁があればそれを飛び越え、

流れの急な川があれば水面を渡り、

高層ビルの間に渡され、

高圧電流が流されているか細い鉄骨も、

彼女にとっては只の歩道にしか過ぎなかった。

「あれ?

 さっきのビルの中から鉄骨を眺めていた爺さん達、

 中々面白いメンバーだったわね。

 全員写真に撮ったから、

 あとでネットに流しておこうっと、

 吹き荒れろ、

 スキャンダルの嵐ぃ!」

高速シャッターで撮影したデジカメの画像を眺めつつ奈央は呟くと、

「ほっ!」

鳥のごとく夜の街を駆け抜けていく。

と、そのとき、

「あら…」

夜の公園を歩く一人の人影に気づくと、

彼女の足が止まった。



ヒュォォォォッ

「わっ」

夜の公園に突然吹き渡る風に杏は身構えると、

「杏ちゃん!

 お久しぶりぃ」

と女性の声で話しかけられる。

「え?

 あっ

 なっ奈央さん」

その声がした方向を杏は振り向くと、

黒いワンピースに帽子を被る奈央の姿があった。

「杏ちゃん、

 お久しぶりね」

「奈央さん、

 どうしてここに?

 っていうか、

 いつの間に…

 …だって、さっきまで誰も…」

「細かいことは気にしないのっ、

 ちょっと姿を見かけたんで立ち寄ったまでよ」

と奈央は公園の向こうで輝く高層ビルを指差してみせる。

「あそこから、

 ボクを見つけたんですか?」

それを見た杏はさらに驚くと、

「もぅ、空気を読みなさい」

そんな杏に向かって奈央は小言を言う。


杏と奈央は、

女装をして通りを歩いていた杏を

たまたま通りかかった奈央が見抜いてしまい。

その後、女性用の杏の服をデザインするなど、

親交を深めていたのであったが、

杏の進学によって疎遠になってたのである。



「ふーん」

久しぶりに会った杏の顔を奈央はじっと見つめてみせる。

よくみると彼の顔立ちは整っていて、

さらに伸ばしていた髪をポニーテール状に縛っている。

そんな杏の顔立ちを眺めた奈央は

「なるほどねぇ」

小さくうなづくと、

「で、どう?

 あれから女物の服、

 役に立ってる?」

と尋ねた。

「はい、すごく役に立ってます!」

その返事と共に杏は家に帰った後や

オフの日の外出などで女装を続けていることを話しはじめると、

「そう、

 それならいいわ。

 まぁ、女装もいいけど、 

 いまあなたが着ているブレザーも

 すごく似合っているんだけどねぇ」

「ちょっと、

 ヘンなことを言わないでください」

杏にとって男子の制服は未だに屈辱であり、

こうして男装を褒められるのは不愉快なのである。

「ごめんごめん、

 実は私ね、

 前に使っていたアトリエ追い出されちゃっって、

 最近この近くに引っ越してきたのよ。

 で、ここが私の住所。

 また作ってもらいたい服が合ったら

 いつでも来るといいわ」

そういうと奈央は杏に自分の名刺を渡した。

「(…近くっていうけど、

   この住所ってここから電車で1時間かかるところじゃない。

   当分はいけそうにもないわ)」

名刺を見ながら杏はそう思うと、

それをポケットにしまう仕草をする。

すると、

「じゃっ、

 家路を急いでいるので、

 また今度ぉぉねぇぇ〜っ」

ちょっと語尾が歪んだ奈央の声がすると、

ヒュォォォ…

再び杏の周囲を風が吹き、

その風が納まったときには奈央の姿は消えていたのであった。



「奈央さんって、

 一体なんだろう」

まさに神出鬼没の奈央の行動力を杏は不思議に思いつつ、

そして杏の部屋があるマンションに近づいたとき、

近くの河原に杏の学校の制服を着た一人の女子生徒が座っていた。

「あれ…あの子…」

おさげ髪に牛乳瓶の底を思わせるような分厚いめがねをかけている少女は桜庭咲子と言い、

杏とは同じクラスの子であったが、

ほかの女子に比べると一番地味なのは事実である。

「どうしたんだろう…?」

一人座っている咲子が気に掛かりながらも

杏は気づかれないようにマンションに入って行く。



翌日、

教室では数人の女子生徒と杏、

それに涼介のグループが集まっていた。

「ああ、

 数学の宿題、

 本当にうざいよね」

「今日も宿題多いし」

「いいよ、

 宿題なんて見せてもらえばいいんだし、

 今日の放課後、みんな何するの?」

「うーん、

 ショッピングかな

 見るだけの」

「私は今日はカラオケ行く」

そんな中、

「俺は部活がオフだから、

 ちょっとした趣味でも始めようかなって思うんだ」

と涼介が言うと、

「えーと…ボクは…」

杏は今日の予定を考えていながら、

別の方向へと目を向けると、

その先には教室の隅っこの机で咲子がぽつりと座っていた。

「(桜庭さん…

  ずっと一人なんだ。

  あたしも気がつかなかったけど…)」

「ねえ、木之下くんはどうするの?」

「あっ…

 ボクは今日もプールに行こうかなって…」

問い尋ねられた杏はそう返事をすると、

「まったく、いくら推薦だからって、

 休めるときに休んでおかないと、

 いろいろともったいないぞ」

すかさず涼介は突込みを入れる。

「(家で女装してるなんて、

  言えないわよ)」

彼の言葉に杏は心の中で言い返すが、

決してその言葉をこの場ではいえなかった。

高校生に入ってからの杏は

普段は言葉遣いも男子生徒として振舞い、

一人のときや葵のように気の許せる相手にだけは

女の子の時の言葉遣いをしていたのである。



放課後、

今日は水泳部の練習はないため、

杏は市民プールへと直行した。

まだ水泳シーズンでもなく、

夕方の比較的早い時間であったためか利用客はほとんどなく、

水泳部の競泳パンツを穿いた杏は

いつもの練習のメニューをこなしていく。

そして、プールサイドに上がったとき、

女子更衣室のほうから声が聞こえてきたのである。

「はぁ、

 あんた何しに来たの、

 こんなところに」

「なにその水着?

 実力なんて無いくせに、

 よく着れるわね」

「でも、

 大きオッパイしちゃって、

 邪魔じゃない?」

「まだ水泳やってたのね。

 あんたなんかいなくなればよかったのに」

イジメだろうか、

杏にとって不快な声を上げる彼女達は、

杏には面識が無く、

別の高校に通っている女子らしかった。

「(うわあ、

  ひどいことを言っている)」

その声を聞いた杏は気が付かれない様に

シャワー室側から女子更衣室に近づいていく。

その声を聞いているうちに杏はかつて自分が男になったばかりだったころ、

同級生からいじめられてたことを思い出した。

そして、そっと覗き込むと、

「(あれ、あの子…)」

あまりルックスはよくなく、

どちらかというとギャルのような女達に

イジメられている競泳水着姿の少女は、

長髪で瞳も大きく、

とてもかわいらしい感じのスレンダーな体格の女子だった。

しかし、水着に差し込んだキャップには、

「桜庭咲子」

と名前が書いてある。



「(え?

  あの子、

  あの桜庭さん…

  でも、どうしてあんな地味な格好していたのかしら)」

疑問に思う杏をよそにギャルたちは咲子に詰め寄ると、

「なんか言いなさいよ!」

と咲子に罵声を浴びせかける

「この程度で縮こまっちゃって、

 本当にバカじゃね?」

ギャルたちがが大声で笑っていたそのとき、

「やめなよ。

 彼女にそんなことしていいと思ってるの?」

杏がギャルたちの中に駆け込んできた。

「な、なんで男が女子更衣室に」

「ちょちょっと、

 なによっあんたっ」

突然の杏の出現にギャル達は一斉に驚き声を上げる。

顔つきこそ整った女性のようなものだったが、

しかし首から下はたくましい筋肉と、

ビキニの競泳パンツを大きく膨らませた紛れもない男の仲裁に

彼女達は顔を見合わせると、

「ちっ変な奴、

 今日のところは引き下がろうよ。

 いろいろと問題を大きくするとこっちにも不利よ」

「今日のところは退散してやるわ!」

そう言うとギャル達はあわてて更衣室から出て行く。

「…大丈夫、

 怪我はない?」

杏は咲子を心配してやさしく声をかけた。

「…う、うん。

 大丈夫。

 でも、木之下くん…

 なんでわざわざ女子更衣室に来たの」

「ボク、あぁやって弱いものいじめ、

 とくに女同士であぁいうことするの許せないんだ」

杏はかつて女の子だったのだが、

製薬会社での事故で性転換してしまい男になってしまった。

その後も男性として成長していく自分に対して、

周りの女子達はここぞとばかりに陰湿ないじめを仕掛けていた。

そういう背景もあってか、

杏は女子独特の陰湿ないじめには許せなくなり。

そのためこういうのを聴くと無性に杏の中の正義感が沸き起こるのだ。

「でも、桜庭さん。

 なんでこんなにかわいいのに、

 普段は地味な格好をしているのかな?」

咲子はもともと中学校では、

将来を嘱望された優秀な女子スイマーだった。

しかし、理由を明かされないまま大会への出場を許されず、

それでも水泳を続けようとしたため、

同じ中学校の水泳部だったあの不良ギャルたちにいじめられていたのだ。

そのため、水泳をあきらめ、

ルックスもお下げに分厚いめがねをかけて目立たないようして、

隠れるように生活していたのだ。

ギャルたちと違う学校にこそ行きたかったが、

地元を離れたくなかった彼女はそれで高校を受験したということだったのだ。

「気にすることないよ。

 それに、桜庭さん見た目もいいんだし、

 もっと自信もっていいと思うよ」

「でも、ずっとこもって勉強ばかりしてたし、

 おしゃれの仕方とか、

 女らしくなる方法とかわからないし…」

そんな咲子の悩みを聞いた杏は、

「なら、この後

 ボクの家においでよ」

と誘ったのである。

「え…?」

「ただし、ボクの部屋に来たことは、

 クラスのみんなには内緒だよ」

「うん」

杏の優しい瞳をたむけられた咲子は

吸い寄せられるように彼の家に行くことになった。

しかし、杏の部屋に招待された咲子は正直戸惑っていた。

とても男子高校生の部屋とは思えないぐらいきれいな部屋で、

かわいい小物が多数並べられていた。

「お待たせ…」

シャワーからあがってきた杏だった。

束ねていないストレートの長い髪、

ピンク色のブラウスとチェックのスカート。

それに顔には化粧水がかけられていた。

「はぁ…」

目の前にいるのはとても男子とは思えないぐらい、

いや女性以上に女装していた杏だった。

「黙っていてごめん、

 これがボクの本当の姿なんだ」

「でも、なんで女装を…

 木之下君ってそういう趣味があったの?」

杏の女装姿を不思議そう咲子は見つめると、

「違うよ」

と言いながら杏は1枚の写真を手渡した。

そこにはセーラー服を着たれっきとした女の子が写っていた。

「ここに写っているのはいまから3年前のボク。

 そう、見ての通りボクは女の子だったんだ…」

と説明をすると、

杏は2年前に起こった製薬会社の事故で男体化したこと、

その後も女として扱われることなく男として扱われ続け、

ついには男くさい環境で中学生の間、

過ごさなければならなかったことなどをすべて話した。

「そういうことだったの…」

咲子は杏が自分と同じ、

いやそれ以上に過酷な環境にあったことを知ると、

「あたし以上に大変だったのね」

とねぎらいの言葉を掛ける。

「判ってくれればいいよ、

 じゃあ、

 ここに化粧する道具とか、

 着る洋服とかあるから、

 いろいろと教えてあげるよ」

杏は自分が持っていた化粧品で咲子にメイクをしたり、

持っていた女性用の衣類を着せたりしてみたが、

「だめだ…

 どれもしっくりこないか…」

「うぅん、

 どれもなんか違うような気がして…」

咲子を女らしく、

またうまく着飾らせるのにはどうも難航するようだった

「そうだ…

 今度の休みの日、

 駅で待ち合わせない?

 あの人なら何とかしてくれるかもしれない」

「あの人…」

「ウン、

 ボク達が今着ている服をデザインしている人なんだけど、

 ちょっと遠くに住んでるんだ」



休みの日

駅前に二人の少女が姿を現すとお互いに挨拶をする。

「木之下くん、

 やっぱり女装なんだね」

「それは言わない約束」

杏が女装していたのは、

ひそかな楽しみとしての女装して外出というのもあったが、

こうして落ち合っていることを誰かに見られて

良からぬうわさが立つのを避ける目的もあった。

「木之下君って人気があるからね」

「それも、言わないでよ」

「あは、ごめん」

「もぅ」

電車に揺られること約1時間、

ようやく目的の駅に到着すると、

杏と咲子はケータイのGPSを頼りにある場所へと向かっていく。

そして、たどり着いたそこには、

一軒の建物が建っていた。

「ファッションアトリエ・海」

建物に掲げられている看板を見上げながら、

咲子はそこに書かれているものを読み上げると、

ピンポーン

杏は呼び鈴を鳴らした。

すると、

「はぁーぃ、

 鍵は開いているから入って」

と中から奈央の声が響いた。

「お邪魔します」

その言葉に杏と奈央は入っていくと、

「よく来てくれたわね、

 なにかほしい服があるの?」

尋ねながら、

奈央は湯気が立つ湯飲みを啜ってみせる。

「お茶をしていたところですか」

それを見た杏は尋ねると、

「うん、

 一息入れているところ。

 あっお茶煎れるね」

「お構いなく、

 自分達で煎れます」

腰を上げかけた奈央を制して、

杏と咲子は急須にお湯を注ぎ始める。

とそのとき、

「あら?」

お茶菓子の袋が目に入った。

「これって、

 業屋の”ういろう”じゃないですか。

 しかも…

 あたし達の駅前にあるお店限定の”ういろう”だ。

 あのお店の”限定ういろう”って人気があって、

 開店と同時に売切れちゃうのに…

 昨日の?

 あれ今日のだ…

 ねぇ、今の時間って何時?」

袋に刻印された製造時間を見ながら杏は咲子に尋ねると、

「10時、ちょっと前」

と咲子は言う。

「奈央さんって、

 クルマ持っているんですか?」

「ううん、

 そんなもんないよ」

「え?

 9時開店の業屋の”ういろう”が

 なんでここに…」

「業屋の前、結構行列ができていたよ」

「?」

”ういろう”を眺めながら杏は小首をひねっていると、

「もぅ、ひとっぱしりして買ってきたのよ、

 細かいことは考えないの」

と真央は言う。



「ご馳走様、

 ”ういろう”美味しかったです」

「やっぱり、今日作った”ういろう”だ」

「で、今日の用件は何かな?

 ふふっ、

 彼女を連れてくるなんて隅に置けないね、

 この、色男っ!」

「そういうんじゃないんですっ、

 この子に化粧させて、着せる服を探しているんですけど、

 あ、この子はちゃんとした女の子ですからね」

「そんなもん、

 触ってみれば判るわよ」

と言いながら奈央は突然咲子の胸を触ってみせる。

「きゃっ!」

「奈央さんっ」

咲子の悲鳴と、

杏の怒鳴り声が追って響くと、

「冗談だって、

 まあ、いいわ。

 その人に似合った服をデザインするのが私の仕事だから」

と奈央は言うと、

早速、咲子の寸法を測り、

それに応じたデザインを考えていく。

そして、一通りのデザインが完了すると、

型紙を作らずに奈央はいきなり布にはさみを入れると、

目に留まらぬ速さで布を切り縫製を始める。

「すごい…」

目の前で服が見る見る仕上がっていく様子を咲子はマジマジと眺めていると、

「はいっ、

 出来上がりぃ」

の声と共に可愛らしいデザインの服が出来上がったのであった。

しかし、それで終わりではない。

「ちょっとこっちに来て」

の声と共に咲子が化粧室に連れて行かれると、

「いいこと、

 これから教えることをちゃんと覚えていくのよ」

と言いながら

その女性にあったメイク術を施行するだけでなく、

その術をその女性に伝授し始める。

こうして奈央は咲子に短時間で魅力的なメイクを施すと、

さらにはその方法や必要な化粧道具まで教えると、

おさげ髪にめがね、

ジャージ姿だった咲子が魅力的な女の子になるのには時間がかからなかった。



休み明けのある日、

教室では、急にイメチェンした咲子の姿に

クラス中、

特に男子が沸騰した

「桜庭、

 あんなにかわいかったんだな。

 ずっと気がつかなかったよ」

「なんか俺達ずっと見逃してきたような感じがするよな、

 木之下」

男友達が杏の肩を叩く

「うん…そうだね。

 桜庭さん、やっぱり魅力的に…」

改めて咲子の方を見ると、

急に今まで抑えていた感覚がよみがえってきたようだった。

「どうしたんだ、お前?

 さては興奮してるな…」

「……」

杏は返す言葉すら見つからなかった。



その夜、

「あぁ…」

魅力的な姿になった咲子と、

かつての思い人である幸司を思い浮かべながら、

杏は激しく自慰を始めていた。

女の体を思い浮かべ、

再びショーツを精液で汚す日が来てしまったのだ。

「桜庭さんと付き合ってもいいよね…

 でも、幸司くんとも…

 ああん…

 ああん…」

杏の中には新たな葛藤が芽生えていた。



つづく