風祭文庫・アスリート変身の館






「白アシの香織」
(第27話:香織の手下)



原作・inspire(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-284





新水泳部を率いる香織は常に新水泳部の部員達の様子を気にかけていた。

無論、新水泳部キャプテンとして部員達をくまなく気にかけることは当然といえば当然であるが、

しかし、香織が特に気にかけているのは

性転換させられた部員達が新しい性とその体に順応しているかどうか。という点であった。

だが、それらを香織一人が全て見るには無理があり、

彼女の手と足となって働くブレーンが支えているのも事実である。

そんな新水泳部の部員には彼女の手によって別の性を与えられた元男子水泳部エース・青葉俊輔や

彼に密かに恋心を故に性を変えられた田沢瑞穂といった者もいれば、

高柳星太のようにいまだに自分の性に戸惑いを感じている者、

さらには香織が予期しないうちに女性にされてしまった男子達に関しても気にかけている。

その一方で、順応することの出来ない一部の生徒は懲罰室に閉じ込められていた。

そしてつい最近、香織にとってお気に入りともいえる二人の部員が新水泳部に入ってきた。

黒田リョウと白川アキラである。

彼らは香織の予想よりも早く女性から男性―――

競泳パンツの似合うよく鍛えられた逆三角形の体系と

まるで少女のような顔立ちを持ち合わせた美少年への変身を遂げ、

また変化した性にも十分に慣れているようだった。

香織はこの二人と供にいると忠実な従者に囲まれ、

同時に逆ハーレムを持った女王様のような気分に浸れるのであるが、

しかし、肝心のこの二人の仲は決して良いと言えるものではなかった。
 


さて、ここは新水泳部の部室である。 

日ごろの疲れからかつい居眠りを始めてしまった香織を見かねてか、

黒髪に黒い瞳の少年、リョウは1枚の毛布を持ってくるなり、

そっと彼女の体かけてみせる。

すると、

「あら、本当に気が利くわね」

毛布が掛かった感触で香織は目を覚すや、

掛けた主を確認しないままに礼を言う。

すると香織の前に黒い競泳パンツ1枚のリョウが立ち、

「香織様もいつまでもそんな競泳パンツ1枚で居られては風邪を引いてしまいます。

 後の仕事は全部オレがやっておきますから、

 香織様はすこし休んだらどうですか?」

とリョウはまるで王子様のようなまなざしを香織に向けながら声をかける。

「え?

 あっどうもありがとう」

思いがけないリョウの言葉に香織は感謝の言葉を言うと、

「お茶が入りました、香織様。

 そんな奴のいうことなんか聞かないで、

 もっとオレも構ってくださいよ…」

と言う声と共に金髪碧眼の少年、アキラがジャージの上着とお茶を持ってくる。

「あなたも気が利くわね…

 あなたたちをみてるとあたしも冥利に尽きるわ…」

礼を言いながら香織はジャージの上着を羽織り、

アキラの持ってきたお茶を飲み干すと、

「じゃぁ、お言葉に甘えて、

 ちょっと休ませて貰うわ」

と言う言葉と共に香織は再び眠りにいた。

その影でリョウはアキラに向かって軽く舌打ちをするものの、

そんな二人を見る別の視線があることには気づいてなく、

「あの子たち…

 本当に香織様になついているみたいだわ。

 香織様もあんなに喜んで…」

香織の右腕にまでなっていた青葉俊輔は陰から見て嬉しそうな表情を浮かべていたのであった。

――――そうこの二人の正体などは知らずに。


 
リョウの正体は実は天界に住む少女・黒蛇堂であり、

アキラの正体は同じく天界の少女・白蛇堂である。

二人が少年の姿になったのも香織が渡した薬が原因ではなく、

彼女達が持つ変身能力によって自在に変身していたのだ。

その日の夜遅く、

プールには香織が残した仕事を片付けるためリョウとアキラは二人っきりになるや、

ムッ

二人の間に険悪な空気が流れ始める。

当然のことながらこの二人きりになってしまうと対立が隠せないようだ。

『ちょっとぉ、

 いつからあたしの商売を邪魔するようになったの?』

白蛇堂がいきりたったかに言うと、

『別に…

 少なくともわたしはあなたのやりかたは理解できないね』

と黒蛇堂はこうかえした。

黒蛇堂や白蛇堂は変身をつかさどる存在であるため、

人間界で変身に大きく関係している存在である水上香織は

彼女達にとって大きな駒になりえるのだ。

もっとも同じく彼女達の仲間が撒いてしまった種をうまく回収する目的でもあるのだが…

さらに時は過ぎ、

まもなく夜が明けようとする時刻。

プールサイドで黒蛇堂は一人佇みながら、

『香織…かわいそうな子ね…』

と呟いてみせる。

少なくとも香織の過去

―自分の仲間により彼女の思い人を女性にされてしまった、

 いやそれ以前に彼女がどのような存在であったのか―

を知っている黒蛇堂は静かにつぶやいていた。

『それにしても、

 わたしも男の子の体にだいぶ慣れてきたのね…』

さまざまなことを考えていた黒蛇堂は自身の股間のふくらみが増していること、

さらに無意識にそれ触っていたことに気がつくと、

『誰も居ないわね…』

プールに一人しか居ないことを確認した後、

ちゃぷんっ!

程なくして誰もいないプールに頬を紅く染めたまま潜るや、

水の冷たさを全身で感じつつ股間の膨らみを扱いたのであった。



カシャッ!

そのプールから離れた草むらでシャッター音が響くと、

『あのぅマイケル。

 プールの写真を撮ってどうするのですか?』

とカメラのファインダーを覗く学生服姿の少年は背後に立つ人物に向かって話しかける。

すると、

『いらぬ詮索は無用!!』

朝焼けにサングラスを光らせて、

鍵の杓状を背負う男性は腕を組みながらそう呟くが、

『まったく、

 あいつらの兄貴からの依頼とはいえ、

 なんで私が連中の監視役をせにゃならんだのだ。

 兄貴なんだからお前がしっかり見てろ。ってぇのっ!』

と憮然とした表情を見せていたのであった。



つづく



この作品はにinspireさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。