風祭文庫・アスリート変身の館






「芋」



原作・nao(加筆編集・風祭玲)

Vol.T-286





真夏の朝日が照りつけてくる午前中。

「おはよう、藤井さん」

「おはよ、

 あれ?

 どうしたの木下さん、目の周りが森の隈さん。

 相当疲れているみたいだけど大丈夫?」

「そうなの、実は夕べよく眠れなくて」

「あらら、

 確かにそっちの宿舎、

 けっこううるさかったですね」

「迷惑を掛けてごめんなさい」

水道の音が響き渡る合宿所の洗い場。

朝食の後片付けをする野球部のマネージャーを務める木下好子と

新体操部のマネージャーであるの藤井真奈美は互いに挨拶をした後

それどれの部が抱えている問題点などを話し始める。

「へぇ…野球部員達がそんなにやる気がないなんてねぇ」

「それに比べ新体操部は熱心よね」

「でも、部員が少なくて大変なんですよ」

「そっかぁ、新体操部は6人しかいないんだっけ」

「はいっ、マネージャーの私を入れても7人なんですよ」

好子と真奈美は水道で野菜などを洗いながら話をしていると、

「ところで藤井さん、今日の夕食は何にするか決めてあるの?」

「え?

 まだ朝よ。

 でもそうねぇ…献立も一巡しちゃったし、

 なににしようか」

「まだ決めていないのね」

「うんまぁ」

「じゃあ、これを使ったら」

そう言うと好子は足元においていた袋よりペニスやクリストスに似た形をした芋を真奈美に見せ、

「さっき近くの西野さんっていう農家から貰って来たの」

と説明をする。

「芋ですか?

 変な形ですね」

「ちょっとアレだけど、

 でも、料理の際に切ったりするから形なんてわからないよ」

「なるほど…

 ところで味は大丈夫ですか?」

「そこは大丈夫、

 あたしが保障するわ」

好子に薦められるまま真奈美に芋を半分程貰い受け、

野球部の宿舎へと戻って行く。

そして、その途中。

グラウンドで練習用ユニフォームを汚しつつ汗を流す野球部員をみつけるや、

「健斗君っ、

 練習がんばっているわね」

「はい」

と声を掛け合うものの、

しかし、まじめに練習をしているのは5、6人の1年生のみであり、

上級生の姿は見えなかったのであった。

「まったく40人近くもいるって言うのに、

 野球部でまじめに練習するのはほんの一握りだけじゃない」

あきらめ半分にそう呟くと好子は宿舎へと戻っていく。



そして、一日が過ぎ、

日が西に大きく傾くころ。

「さて、夕食の準備に取り掛かりますか」

グラウンドのことは1年生部員に任せて好子は夕食の支度に取り掛かる。

そして、新体操部の宿舎では、

「マネージャー、手伝いますよ」

「助かるわ」

野球部とは正反対に小所帯の新体操部らしく、

練習疲れがあるはずの部員達も加わって夕食作りが行われていたのであった。

「このお芋、

 変わった形をしていますね」

新体操部員の一人が茹で上がった芋の形について指摘すると、

「地元の農家が作ったものらしいわ」

「あはっ、

 まるでオチンチンみたい」

「もうっ

 はしたないわよ」

などと笑いながら支度が行われていく。

こうして1日は終わり、

夜中

野球部の宿舎では、

「く、苦しい、

 芋の煮物があたったかな

 ってすごい汗」

寝ていた好子は突然襲ってきた苦しみに耐え切れずに起き上がると、

体中から流れ出る汗に驚いていた。

そして

「うわっ冷たい…

 とにかく体を拭かなきゃ

 風邪を引いちゃうわ」

止め処もなく流れ出る汗によって彼女が着ていたシャツはずぶ濡れになっていることに気づくと、

立ち上がろうとするが、

「うっ

 つぅぅぅぅぅっ」

突然、好子の全体に激痛が走ると、

痛みをこらえるようにして蹲ってしまった。

「痛い…

 苦しい…」

好子は歯を食いしばり、

そしてもがく様にして痛みと苦しみから逃れようとするが、

しかし、いくらもがいても一向に苦しみからは解放されず、

それどころか体の奥から膨れ上がってきた肉の塊が

自分を破裂させようとしているかのように感じられたのであった。

「ふぐぅぅぅ」

一際高く、好子のうめき声があがると、

彼女の体中から筋肉が張り出し、

瞬く間に着ていたシャツが破れていく、

また、胸の膨らみは盛り上がる胸板によって真っ平らになってしまうと、

腹筋は盛り上がりながら6つに割れ、

縦溝が刻まれていた股間がモッコリと膨らんでいく。

そして、色白の肌は褐色色に日焼けしていくと、

好子は日に焼けた筋骨隆々な男へと変貌していったのであった。

「え?

 え?

 えぇ?

 なんでぇ」

ようやく苦しみから解放された好子だが、

しかし、すっかり変貌してしまった自分の肉体をみるなり始めは動揺したが、

「そうだ、

 あの怠け者どもを鍛え直してやる」

と言うなり部員達が寝ている部屋へと向かうと、

なんと部員の半分近くが女になってしまっていて、

「ま、マネージャー?」

「吉川に江藤、随分可愛くなっちまったな」

「あぁん、そんな事言わないで」

「お前ら二人が女になっちまった代わりに俺が野球部員を鍛え直してやるよ」

とニヤリと笑いながら白く光る歯を見せたのである。

その一方で新体操部の宿舎では、

「マネージャー、どうしちゃったんですか?」

「優花や佐織も男になっちゃったよ」

男性化した真奈美と新体操部員が他の部員を犯そうとし、

部員の中には渡り廊下で繋がっている野球部の宿舎に逃げ込む者もいた。

翌日、野球部員が好子が芋を貰ったという西野さんに事情を聞こうとしたが、

この辺りには西野さんという人は住んでいない事が分かり、

「じゃあ、マネージャーは誰に芋を貰ったんだ?」

「さあ、そんな事よりも練習だ」

野球部には男のままだった部員に男性化した新体操部員が加わって

好子の厳しい指導を受ける事になり、

また部員不足だった新体操部は新しく女性化した野球部員を迎えたのであった。



おわり



この作品はnaoさんより寄せられた変身譚を元に
私・風祭玲が加筆・再編集いたしました。