風祭文庫・アスリート変身の館






「アマレスラー千帆」
第2話:レスリング部へ



作・風祭玲

Vol.0622





引っ越した先の押し入れに隠されていたレスリングのユニフォーム・吊りパンツ。

洗濯もされておらず男の汗の臭いを放つその吊りパンツを

隆之は結婚したばかりの新妻・千帆に無理矢理穿かせたのが、

この事件のそもそもの発端であった。



「オリンピックに出て金メダルを取ることじゃな」

隆之・千帆に向かってそう告げる霊能者の言葉に

「あの…そっそうはいっても…

 オリンピックだなんて、

 そんなこと…」

「そう、オリンピックに…」

途方の無さを感じる隆之と対照的に千帆は逆にその目を輝かせていた。

そして、帰り道…

何かを思いついた隆之は千帆を先に部屋へ返すと、

一人であの賃貸物件を紹介した不動産屋へと足を向けた。

「あぁ、魚沼さん…

 なにか…」

不動産屋に現れた隆之の姿にそこの社員は声を掛けると、

「うん、

 実はちょっと、聞きたいことがあって…」

と隆之は話を切り出した。

「え?

 前に住んでいた方のことですか?」

「うっうん、

 そうなんだ、
 
 ちょっと、知りたいと思ってね」

カウンター越しに隆之は社員に向かって、

あの部屋の前の借り主の素性について尋ねる。

「いやぁ、そう言ったことは…」

隆之の問い合わせに突然社員は渋ると、

「どうしても知りたいんです。

 学生さんだったのか、

 どこかに勤められていたのか、

 年齢とか、

 出来れば名前も…」

隆之は座っていた椅子から腰をあげながら尋ねる。

「いや、ですからそう言ったことは」

「どうしても知りたいんです。

 あの、別にクレームとか言うんじゃないんです。

 そこが判らないと、

 千帆を元に戻すことができないんです」

「はぁ?」

「いや…

 とっとにかく、

 前に住んでいた人に話を聞きたいんです」

と隆之は言いながら迫る。

「うーん…」

隆之の言葉に社員は唸ると、

「いやぁ、こう言ったのって、

 守秘義務ですから…」

と社員は言うと、

隆之は俯き、

「……実は…

 見たんです」

と深刻な表情で呟いた。

「え?」

隆之のその言葉に社員は小さく驚くと、

「!」

彼のその反応を見た隆之は

「昨夜…

 妻と見たんです。

 押し入れのところで僕たちをジッと見つめている若い人を…」

とつぶやき、再度社員を見た。

すると、

「あっ!」

隆之が呟いたその言葉に社員は動揺しながら小さく声を上げてしまうと、

慌てて口を塞いだ。

それを見た隆之はある確証を得ると、

「あっいえっ

 だからといってあの部屋を出たりはしません。

 ただ、僕たちに何かを伝えようとしてみたいですが、

 でも、彼が何を言おうとしているのか判らなくって

 それで、今日の午前中、ある方に見て貰ったんです。

 そしたら、前に住んでいた人の情報が欲しいと言われまして」

と思いつくまま出任せを言う。

すると、

「はぁ…

 どうしようかなぁ…」

社員は悩みながら頭を掻き、

「うーん…

 仕方がない。

 このことはネットなどには書かないでくださいますよ。

 やっとのことで悪い情報を消したところなので」

と小声で告げた。

「(やったぁ!)」

それを聞いた隆之は心の中で喜ぶと、

「で、一体誰が住んでいたのです?」

と切り出した。



そして、それから30分後、

「ありがとうございました」

幾度も頭を下げながら隆之が不動産屋から出てくると、

「なるほど…

 そう言うわけだったか」

と納得をする顔で足早に去り、

そして、

「千帆っ判ったぞ!」

と言う声と共に隆之は千帆が待つ部屋へと飛び込んた。

「判ったってなにが?」

隆之の声に部屋の掃除をしていた千帆は返事をすると、

「うん、

 この部屋を前に借りていたヤツのことだ」

と隆之は言いながら腰を下ろした。



「へぇぇぇ…そうなの」

「あぁ…、

 そういうことだ。

 確かに千帆、
 
 いまお前が穿いているその吊りパンツは

 この近くにあるP大学のものなんだよ…

 まぁ、P大学へはここから歩いていけるからな」

隆之は千帆が身につけている吊りパンツの胸元にプリントしてある

校章を指さしながらそう言うと、

「で、そのP大のレスリング部って結構強豪でな、

 オリンピックに幾人も選手を出しているそうだ。

 そして、隆之たちが住んでいるこの部屋に前住んでいたのは

 やはりP大学の学生で、名前は魚野千太郎。

 P大の1年生だったそうだ。

 で、その千太郎はオリンピックの強化選手にも指名された実力を持つ

 アマレスの選手だったそうだが、

 しかし、その彼は大会を目前にした去年、

 突然の交通事故で急逝し、

 その志は半ばで閉ざされることになってしまった。

 と言うことだ」

と隆之は説明をする。

「そうか、

 じゃぁ、このあたしの身体は、

 そのP大の魚野って男の人になってしまったのね」

ギシギシ…

隆之からの話を聞いていた千帆は腕を組みながらそう返事をすると、

「うんそうだな、

 千帆のその首から下は千太郎って男の身体になってしまったわけだ、

 で…
 
 何をはじめだしたんだ?
 
 千帆…」

隆之の説明を聞いている途中から、

千帆は床に仰向けになると頭を着け、

その頭を支点にして尻を上げてると身体を大きく湾曲させていた。

「何って…お掃除が終わったから、

 アマレスの練習をするのよ。

 これはブリッジの練習。

 レスラーは必ずやらなければならない練習の一つじゃない。

 隆之さんも知っているでしょう?」

汗で肌を光らせながら彼女はそう答える。

「はぁ?

 そりゃぁ、見れば判るけど、

 でも、何で、

 ここで始めるんだよ」

千帆のその答えに

隆之は自分の目の前でブリッジの練習を始めだしたのか尋ねると、

「何を言っているの、

 オリンピックに出るためでしょう」

隆之の質問に千帆はそう答え、

そして、

「うーん、

 これじゃぁ、やりにくいな…」

と言うなり、起きあがるとシャツを脱ぎ捨てる。

ムキッ

千帆がシャツを脱ぎ捨てると同時に筋肉で盛り上がった肉体と共に、

吊りパンツの赤が表に飛び出し。

さらに、穿いていた短パンをも脱いでしまうと、

千帆はアマレス選手と同じ吊りパンツ姿になってしまった。

「千帆…

 お前、まだそれを穿いていたのかよ」

吊りパンツ姿の千帆を隆之は指さすと、

「最初はイヤだったけど、

 でも、なんかコレを身につけていると気持ちが落ち着くのよ」

と千帆は肩紐を引っ張って返事をし、

そのまま仰向けになると、

腹筋が陰影を作るお腹を持ち上げて再びブリッジを始め出した。

「熱心だなぁ」

それを見ながら隆之は感心すると、

「ねぇ、隆之さん…

 あたしのお腹の上に乗って…」

と懇願をする。

「お前…本気でレスリングを…

 オリンピックに出る気かぁ?」

千帆の言葉に驚きながら隆之が尋ねると、

「だって、こんな身体になっちゃたし、

 それに、オリンピックに出ないとあたし元に戻れないんでしょう?

 いいわっ

 こうなったらヤルしかないんじゃない?
 
 レスリングを!!」

千帆は隆之をみながらそう言うとニッコリと微笑むが、

「レスリングって…簡単に言うなよ、
 
 第一、お前…レスリングを出来るのかよ」

そんな千帆に向かって隆之は尋ねると、

「それは…

 レスリングの経験なんてないけどさ、
 
 でも、なんだか判ってくるの。
 
 レスリングがなんたるかって…
 
 そうねぇ…
 
 なんて言ったらいいのかなぁ…
 
 こう、頭の底からイメージが湧いてくるって感じ?」

と千帆は隆之に言う。

「え?

 それって、千帆っ
 
 お前の頭の中に魚野千太郎の知識が流れ込んできている。
 
 ってことじゃないのか?」

千帆の言葉に隆之が驚きながら聞き返すと、

「うーん、

 よくわからないわ。

 でも、判ってくるのよ、

 身体の動かし方。

 技のかけ方。

 相手の処し方なんかがね。

 で、それが判ってくるウチになんだかジッとしていられなくて」

と千帆はブリッジをしながら片目を瞑って見せた。

「むーっ

 なんか、嫌な予感がするけど…」

朝、千帆が無意識にレスリング技を掛けたことを思い出しながら隆之は唸ると、

「よーしっ

 こうなったら出てやろうじゃないの、

 オリンピックに!!
 
 そして金メダルを取ってやろうじゃないの」

千帆はブリッジをしたまま拳を振り上げ力強く言い切った。

「そんな無茶な…」

「やってみないと判らないでしょう?」

「でも、どうやって?」

自信満々の千帆に隆之はその方法を尋ねると、

「うっ」

その途端、千帆の声が詰った。

「はぁ…

 オリンピックに出る方法も判らないで、
 
 どうやってメダルを取るんだよ」

そんな千帆に隆之は頭を抱えると、

「大丈夫よ、

 気合いと根性さえあれば何とかなるって」

「あのなぁ…」

「俺、頑張るから!」

「おいっ

 男言葉使うな」

楽観的な見方をする千帆を横目に見ながら、

隆之は頭を抱えていた。



「オリンピックに出ると言ってもなぁ…

 はぁ…

 ふつーは、

 高校・大学・社会人とそれなりのクラブに属していて、

 大会などで上位の成績を収めた者が選手として選ばれるんだよなぁ」

夜、隆之はネットで検索をしながら頬杖をついていると、

千帆がこれからするべきコトを考えていた。

「文系の女子学生として、

 体育系とは全く無縁に過ごしてきた千帆がオリンピックに出る。

 って言ってもなぁ…

 方法が…あまりないか…

 どこかのクラブチームにでも潜り込めるのかな?

 それよりも、名前だよなぁ…

 千帆なんて名前、思いっきり女性の名前だしなぁ

 うーん」

パソコンを前にして隆之は頭を抱えていると、

「ねぇ、隆之さん。

 明日から出張じゃないの?」

とシャワーを浴びてきた千帆は隆之に明日からの出張について指摘した。

「え?

 あっそうだった!

 すっかり忘れていた!!」

千帆の指摘に隆之は慌てて腰を上げると、

「えっと!」

と声を上げながら大急ぎで支度をはじめた。

そして、そんな隆之を横目で見ながら、

パシッ!

「ほっ!」

千帆は吊りパンツを身につけると再びブリッジの練習を始める。

ギュッ

ギュッ

吊りパンツに覆われた千帆の身体が上下に動き、

その動きに合わせて、

メリッ!

盛り上がる筋肉が大きく呼吸をする。

そして、筋肉の動きと合わせて、

股間のテントも徐々に大きさを増し、

ついいには

モコッ!

吊りパンを突き上げてしまうと、

巨大なテントをつくりあげてしまった。

「デカイ…」

それを見た隆之はふと呟くが、

しかし、そのことは決して声にはしなかった。

そして、翌朝。

「じゃぁ、行ってくるけど、

 くれぐれも気をつけてな」

今ひとつ様になってないスーツ姿の隆之が

留守番をするジャージ姿の千帆に向かってそう言うと、

「大丈夫だって!

 変なヤツが来たら、

 ねじ伏せてやるから」

千帆はそう返事をすると、

グッ!

っと腕に力こぶを作ってみせる。

「……

 いや、気をつけろ。
 
 っと言ったのは泥棒とか不審者の意味じゃなくて、
 
 元に戻ろうとして短気を起こすな、
 
 と言う意味だよ」

身体に合わせて心も男性化してきたのか、

攻撃的になった彼女の口調に心配しながら

隆之は言葉の真意を言う。

「短気?」

「そうだ、

 千帆をそんなレスラーにしてしまったのは、
 
 千太郎という男の怨念であることは判ったし、
 
 その怨念を払うのはオリンピックに出る。
 
 と言うところで止めておけ。
 
 と言うことだ。
 
 オレのいない間に勝手なことをして話を進めるんじゃないぞ、
 
 いいな」

そう隆之は釘を刺すと、

「あぁ

 判っているよ」

思わず千帆の口から男言葉が漏れた。

「え?」

その言葉遣いに隆之が驚くと、

「あっ

 いやっ
 
 うん、判っている。判っているから、
 
 で、時間大丈夫なの?
 
 お仕事頑張ってきてね」

と千帆は慌てて発言を訂正し、

隆之を背中を押すと送り出した。

「はぁ…

 心配だなぁ…」

歩き始めた隆之だが、

しかし、一人留守番をすることになる千帆の事が心配で、

幾度も振り返りながら駅へと向かっていった。



その一方で…

パタン…

心配そうに幾度も振り替えしながら隆之は出て行くと、

「ふぅ…」

ドアを閉めた千帆はドアにもたれ掛かりながら

大きく深呼吸をすると、

ジーッ!

着ていたジャージのチャックを下ろした。

「はぁ

 やっぱりこの方が落ち着くな」

そう呟く千帆の視界には、

ムキッ!

盛り上がった胸板に掛かるあの赤い吊りパンツが姿を見せていた。

そして、ジャージを脱ぎ捨てると、

吊りパンツ1枚の姿になり、

全身の筋肉を動かしながら、

「さ・て・と」

千帆は顔を上げた。

「ふんふんふん」

隆之が居なくなった部屋の掃除、

さらには引っ越しの後片付けと

千帆は吊りパン姿のまま家事を行い、

そして、それらが一段落したとき、

「あっそうだ、

 タンスの位置、少し動かそうか」

ちょっと気になっていたタンスを見上げる。

「このタンス、

 ここよりもやっぱり向こうの方がいいのよね…」

いまタンスが置いてある位置とは向かい側になる壁を見ながら

千帆はそう呟くと、

「ムンッ!」

グググ!!

隆之と二人がかりで置いたタンスを一人で持ち上げ始め、

そして、新しい場所へと動かしていく。

こうして一つを動かすすと、

また別の家具の位置が気になり、

結果的に部屋の模様替えを千帆は一人でしてしまった。

「ふぅ…

 なんか良い運動をしたな」

身体から流れる汗を拭き取りながら、

千帆は隆之が買っていたサプリメント飲料を飲み干し、

再び腰を上げると、

今度は押し入れの片付けを始め出す。

その時、

「ん?

 これは?」

押し入れの奥に別の紙袋があることに気づくと、

「こんなの置いていたっけ」

と引っ越ししたときのことを思い出しながら

袋を取り出し開けてみると、

中から出てきたのは薄汚れた一足の靴であった。

「これは…レスリングのシューズ…」

初めて見たはずなのになぜか懐かしさを感じた千帆は

蒸れた汗の臭いをまき散らすレスリングシューズを胸に抱くと、

「あぁ、ここにあったのか…」

とまるで無くした物が出てきたような台詞を言う。

そして、シューズの中に指を入れ、

シュルッ

その中より汗で黄ばんだソックスを取り出すと、

躊躇わずにそのソックスを穿きはじめる、

そして、シューズをも穿くと、

キュッ

キュキュ!

千帆はシューズの音を鳴らしながら身体を素早く動かした。

「ふふっ

 よーしっ
 
 これで全部かな…」

レスリングに必用な用品を手に入れた千帆は一人ほくそ笑むと、

朝まで隆之と一緒に出ていたベッドから毛布をはぎ取り、

その毛布を筒状に巻いた後、

さ残っていた荷造り用のロープで締め上げると、

「ウシッ!

 じゃぁ一丁やるか!」

と言いながら散らかっていたモノを部屋の隅に押しやるなり、

フローリングの床の上で準備運動を始めだした。

キュッ

キュッ

ハァハァ

ハァハァ

キュッ

キュッ

シューズをならし、

全身から汗を吹き出しながら千帆は入念な準備運動をする。

そして、それらが終わると、

タオルで軽く身体を拭き、

今度はさっき丸めた毛布を相手にレスリングの練習を始め出した。

最初こそはぎこちない動きであったが、

しかし、暫くすると、

とてもレスリング初心者とは思えない動きを見せながら千帆は動く。

練習を始めだして約1時間、

「ぷぅ…」

身体の動きを止めた千帆が腰を上げると、

フローリングの床にはいくつもの汗だまりが出来ていて、

また相手にしていた毛布の束も汗でビショビショに濡れてしまっていた。

「ふふっ

 いい汗掻いた…」

ある種の充実感を感じながら千帆は部屋を見下ろすが、

しかし、急に違和感を感じ始めると、

「え?

 あれ?

 あっあたし…

 何を…」

レスリングの練習場となってしまった部屋の光景に思わず驚いてしまった。

そして、

「あたし…

 何をしていたのかしら?」

千帆はさっきまで自分が何をしていたのか思い出せず、

ただ呆然としていたのであった。



シャッ

シャッ

雑巾がけを行い、汚れた床を拭きながら、

「やだ、記憶がない…

 あたし、どうしたんだろう…

 なんか部屋のタンスも動かされているし、
 
 それに…
 
 どこから出してきたのか、
 
 こんな靴も履いている…」

いつの間にか履いているシューズに困惑しながら

千帆はふとは手を止めるが、

しかし、千帆はそのシューズを脱ごうとはせずに立ち上がると、

「そうだ、

 お昼にしよう…」

と時計の針を一目見るなり昼食の支度を始めだした。



午後…

簡単な昼食の後、千帆はTVのスイッチを入れると

画面一杯に吊りパンツ姿の選手が映し出される。

「え?」

それに驚いて慌ててチャンネルを変えようとするが、

しかし、その手が止まると、

「………」

千帆は画面を食い入るように見はじめた。

ピッ!

笛の音が鳴り。

それを合図にして赤と青、

それぞれの色の吊りパンツを穿いた選手が絡み合い、

もつれ合って先に相手を引き倒そうとする。

「…そうだ、

 …そこだ、
 
 …いまだ、
 
 …まわせ」

食い入るように画面を見つめる千帆の口から

試合運びについて声が出る。

そして、

ピーッ!

笛の音が鳴り、

勝者が決まると、

「よっしっ!」

応援していた方が勝ったことに千帆は手を叩いた。

画面はそこで止まることなく次の試合を映し出す。

次の試合も千帆は選手を応援するが、

しかし、

ムクッ

画面を見つめる千帆の股間からは

さらに太さと長さを増したオチンチンが鎌首を満ちあげ、

その巨体の影を吊りパンツに作り上げはじめた。

そして、

シュッ

シュッ

シュッ

画面内のレスリング選手を眺めながら

千帆は無意識にオチンチンを扱き始めてしまうと、

「ハッハッハッ

 あぁ…たまんねぇ…」

次第に激しく扱き顎をあげた。

「うっ

 くぅぅぅ…
 
 あぁ…
 
 このチンポで…
 
 あんな野郎共をぶち抜きてぇー」

股間から固く伸びているの千帆のオチンチンは

太さ・長さとも通常の男性の倍以上の大きさになり、

性器というより、

凶器へと変貌していた。

そして、そんなオチンチンを扱きながら

千帆はうつろな目でTVの中で吊りパンツを穿いている男達を眺め、

自分の脳内で彼らを犯す姿を思い浮かべはじめる。

「へへ…

 そうかよっ
 
 そんなにコイツが欲しいか」

目の前に立つ幻のアマレス野郎に向かって千帆がそう呟き、

瞬く間にアマレス野郎を組み伏せてしまうと、

千帆の股間から伸びる凶器がアマレス野郎を一気に犯した。

そして、

シュッ

シュッ

吊りパンツから飛び出した肉棒を扱きながら、

「あぁいいぜぇ

 いい締まり具合だ、
 
 あぁ
 
 イクぜ
 
 イクぜ
 
 お前のケツマンコを俺のザーメンで汚してやる。
 
 あぁ、
 
 イク
 
 イク
 
 うっ!」

ブチュッ

ピュッ

ピュッ

千帆は妄想の中のアマレス野郎目がけて、

肉棒より白濁した精液が吹き上げてしまった。

ピチュ

ピチュ

千帆の射精は一度だけではなく、

手で擦る度に残っている精液を流し続ける。

「あぁ…」

初めて味わう射精の感覚に千帆が身を委ねていると、

『では、ここでお知らせです』

とTVからP大レスリング部の公開練習について放送された。

「へぇ…

 公開練習かぁ…
 
 オレも参加できるのかな…」

TV画面に映し出される詳細を見ながら千帆は肉棒を扱く手を止めてそう呟き

そして、徐に立ち上がるとジャージに手を通した。



P大は千帆達の部屋からあるいて15分程度の所にあった。

「えーと、公開練習の場所は?」

千帆はP大の出身ではないが、

しかし、こうして学校の校内に入るのは久方ぶりで、

周囲のたたずまいに思わず懐かしさを感じた。

そのままその中を歩いていくと、

やがて、体育館が姿を見せる。

「ココかな?」

そう思いながら千帆は体育館を覗くが、

しかし、中は無人で、

公開練習は行われている様子はなかった。

「…そっか、

 日にちが違うのか…」

開催日を確認せずに構わず飛び出してきたことに千帆は苦笑いすると、

体育館から出て帰宅の途につこうとした。

しかし、千帆の足はまるで何かに導かれるように、

帰宅コースから外れ、

建物が入り組んだ複雑な校内を抜けていくと、

とある建物へと向かっていった。

「レスリング部」

そう書かれた看板が掛かるドアの前に千帆は立つと、

「あれ?

 あたし、何でこんな所に?」

と自分がレスリング部の部室の前に立っていることに驚いた。

そして、慌てて立ち去ろうとしたとき、

「なに、見学者?」

の声と共に男性の声が響く。

「え?

 あっあの…」

その声に千帆はしどろもどろになりながら振り向くと、

そこにはジャージ姿の中年男性が立ち、

ジッと千帆を見つめていた。

「ん?

 どこかで見た顔だな…」

千帆を見ながら男性は考え込む、

すると、

「田川監督…」

と千帆は男性の名前を口走る。

「なんだ、

 わたしの名前を知っているのか、

 えっと、どこかであったっけ」

千帆が田川と名前を告げた男性はさらに考え込むが、

「(え?

  あたし…なんでこの人の名前を知っているの?)」

千帆もまた困惑していた。

そして、

「あっあの…

 おっオレ…
 
 魚野千太郎の弟で、
 
 千帆と言います、
 
 あの…
 
 その節は兄がここでお世話になり…」

また千帆の口から思いがけない言葉が飛び出した。

「(え?

  あたし、何を言っているの?)」

自分の口から出た言葉に千帆も驚くと、

「おぉ、あの魚野君の弟さんか」

それを聞いた田川はオーバーに驚き、

そして、千帆の肩を叩くと、

「そうかそうか、

 魚野君の弟さんかぁ
 
 いやぁ、彼に弟がいたなんて知らなかったよ、

 ん?

 キミ、いま何か運動をしているのか?」

と言いながら尋ねる。

「えぇ…

 兄と同じレスリングを…

 (ってあたし、なに言っているのよ)」

田川に向かって千帆はそう返事をしてしまったことに驚くと、

「そうか、

 そうか、
 
 レスリングをか…
 
 いやぁ、魚野君の事故は私も心を痛めていたのだが、
 
 そのあとを継ぐ弟さんがいたなんてな、
 
 で、いまはどの学部にいるんだ?」

「いえっ

 まだ、高校生なので…
 
 今日は近くで練習試合があったので、
 
 その、帰りに寄ってみたのです」

そう千帆は返事をするが、

しかし、その言葉も千帆が意図していったものではなかった。

「そうか、

 高校生か…
 
 じゃぁ、ここに来るつもりかね?」

千帆に向かって田川は進路について尋ねると、

「はいっ

 兄同様お世話になるつもりです」

と千帆は返事をしてしまった。

「うむっ

 立派だ」

それを聞いた男性は満足そうに頷くと、

「そうだ、

 せっかく来てくれたんだから、
 
 ウチで汗を流していくか、
 
 お兄さんに負けず

 なかなかいい身体をしているじゃないか」

と田川は千帆の体格を評価しながら奥へと連れて行く。

「(あっあたし…

  何を言っているの?
  
  それに高校生だなんて、
  
  なんで、そんなウソを…)」

思いがけない展開に千帆は困惑しながらもついていくと、

キュッキュッ

キュッキュッ

10人近い吊りパンツ姿の部員達が汗を流している

レスリング部の練習所にと連れてこられた。

「ここは…」

初めて来たはずなのに懐かしさを感じながら

千帆は練習場を眺めていると、

「おーぃ、

 お客さんだ」

と田川は声を張り上げる。

「うぃすっ」

その声に部員達は身体を休めると、

「紹介しよう、

 あの魚野君の弟さんで、
 
 千帆さんだ、
 
 なんでもこの近くに来たので挨拶に来てくれてな、
 
 うん。
 
 で、いまは高校生だけど、
 
 来年、ウチに来てくれる。
 
 と言ってくれた」

と田川は嬉しそうに告げると、

「あの魚野の弟?」

部員達がざわめく。

「?」

奇妙な緊張感が漂い始めた雰囲気に

千帆は不思議に思っていると、

「でだ、

 せっかく来てくれたのだから、
 
 ここで汗を流して貰おうと思ってな」

と田川は千帆の背中を叩くと、

千帆は一歩前に出るなり、

「あっあの…

 ここでは兄がお世話になりました。
 
 わたしも兄に負けないくらいに頑張りたいと思います」

と部員達に挨拶をした。

「うん」

千帆の挨拶に田川は頷くが、

「そうは言ってもなぁ…」

と言う困惑の声が部員達から漏れる。

そして、

「では、

 小手調べにこの者達と汗を流してみてくれ
 
 キミの実力を知りたい」

田川はそう千帆に告げ、

「よしっ

 島田、お前が相手をしろ」

と部員達の中から一人を指名した。

「はいっ」

田川の声に千帆は着ていたジャージを脱ぐと、

その中よりあの赤い吊りパンツが姿を見せる。

「ほぅ…

 昔のウチのシングレットか、
 
 いつも身につけているのか?」

それを見た田川は尋ねると、

「いえ、

 兄のお下がりです。
 
 練習用につかっていますので」

と千帆は説明をすると、

今日押し入れから出てきたシューズを履き、

キュッ!

軽く音を鳴らした。



「始めっ」

田川の声と共に吊りパンツ姿になった千帆と、

その相手をする島田と言う部員がサークルの中で握手をする。

そして、その直後、

ダン!

一瞬の隙をついて島田は千帆の足下に飛び込んできた。

「え?

 え?
 
 えぇ?」

実際のレスリングの試合なんてコレまでしたことがない千帆にとって、

島田の動きに対応することが出来ず瞬く間に引き倒されてしまう。

ピッ!

小さくホイッスルが鳴り、

島田にポイントがつくが、

「このっ!」

そのホイッスルの音に千帆の奥から闘志が湧いてくると、

グンッ!

そのお礼をするかのように島田のバックに周り、

千帆は島田をひっくり返した。

ピッ!

再びホイッスルの音が鳴り、

今度は千帆にポイントがつく、

こうして千帆にとって初めての試合は進み、

ピピーッ!

制限時間を告げるホイッスルが鳴り響くと、

奪ったポイント数で千帆は勝利をおさめた。

「勝った…

 なんだか気持ちいい」

田川に腕を上げられながら千帆は勝利に酔いしれしまうと、

「うんっ

 最初は少しぎこちなかったけど、
 
 戦い方はお兄さん譲りか、
 
 入学したらウチに来なさい」

と田川は千帆を評価し、

「そして、もし何なら私が推薦をしてあげようか」

と持ちかけてきた。



「へ?

 P大に行く?」

数日後、出張から帰ってきた隆之は

千帆から告げられた言葉に思わず耳を疑った。

「行くって…

 そんな簡単に行けるのかよ」

「えぇ…まぁ…

 監督さんの推薦も貰えそうだし」

「推薦ってどういうコトだよ」

さらに出てきた”推薦”と言う言葉の意味を隆之は尋ねると、

「実は…」

千帆は隆之がいない間に起きた出来事を話しはじめた。

そして、全てを聞き終わったとき、

「馬鹿野郎!

 あれほど勝手なことをするなっ
 
 って言っただろう」

と隆之は怒鳴り声を上げるが、

「ごっごめんなさい…

 でも…」

怒鳴る隆之向かって千帆は謝ると、

「まぁいいか、無事に入学できれば
 
 オリンピックに近づくことが出来るのだから…」

と千帆は隆之の肩を叩く。

「まぁ…

 それはそうだけど…」

千帆のその言葉に隆之は困惑した表情をすると、

そんな隆之を見ながら、

「あぁ、そうだな…

 もぅすぐ戻れるな、
 
 あの寮に…」

吊りパンツ姿の千帆は笑みを浮かべながら

ふとそんなコトを呟いた。



つづく