風祭文庫・アスリート変身の館






「アマレスラー千帆」
第1話:千帆の変身



作・風祭玲

Vol.0226





「たっ隆之さん。

 あっあの。

 起きて。

 起きて欲しいの」

朝日が差し込む部屋に切迫した”声”が響き渡る。

だが、

声をかけられた主・魚野隆之は頭から被った毛布の中で夢の中であり、

いくら声をかけられても中々起きなかった。

「起きて、

 もぅ、起きてってば」

響き渡る”声”は次第に苛立ちを帯び、

ユサッ

ついに伸ばした手で毛布の中の体を揺さぶり始めると、

「う゛ん?

 なぁに?」

夢の中から引き戻されたのか、

ようやく寝ぼけた声が返ってきた。

「早く起きてよぉ!

 大変なことになっているんだから」

やっと返ってきた声を受けてか、

声はボルテージを上げてさらに激しく揺さぶった。

「なんだよぉ!

 大変なことって?」

被っていた毛布を自分からはぎ取って、

隆之は顔を出すと周囲を見渡した。



隆之が寝ているベッドの周囲には

折りたたまれ無造作に積み置かれた段ボールや荷造り用のロープ・ガムテープ、

さらに梱包材等によって築かれた山が聳え立ち、

昨日一日掛けて行われた引っ越し作業がまだ完了していないこと物語り、

そして配置されたばかりの家具等が部屋の景色に溶け込めずに浮いて見える中、

「ぼけっとしてないで、

 起きてよ!」

再び響き渡った声と共に隆之の体が叩かれた。

「なんだよぉ

 悪い…千帆…

 あと10分寝かせてくえぇ」

一度は起こされた隆之だったが

まだ取憑いている睡魔を振り払うことができずに

声の主・千帆に向かってそう懇願すると再び毛布を被った。

その途端、

「このぉ!

 起きろぉ!」

野太い怒鳴り声が響くのと共に、

バッ!

被っていた毛布が引きはがされてしまうと、

「うわぁぁ!

 頼むからもちょっと寝かせてくれ!

 昨日の疲れがまだ取れないんだ」

と隆之はうつ伏せになって枕を頭の上に乗せた。

「もぅ!

 あたしの体が大変なことになっていのよっ

 真面目に起きてよぉ!」

なおも起きようとしない隆之に向かって千帆はそう懇願すると、

「大変なこと?」

うつ伏せになったまま隆之は困惑しながら聞き返した。

「そっよ、大変なことになっているの。

 だから起きて」

と千帆は困惑した返事をする。

その時、

「ん?」

隆之は彼女が発した声がおかしいことに気づくと、

それを切っ掛けに急速に目覚め、

もやっとしていた次第に意識が戻ってきた。

そして、

「ねぇお願いだから…

 起きてよ」

と相変わらず耳元で響く千帆の声が男が無理のトーンを上げて

女の声を絞り出しているように聞えてくると、

「ん?

 千帆…お前…

 声がなんかおかしいみたいだけど…」

と指摘しながら隆之は枕をどけて顔を上げると、

声のする方向へと視線を向けた。

すると、

まだ焦点のあっていない彼の視界に赤い色が大きく広がった。

「なんだ?」

間近に迫る赤に隆之はそれが何のか意味が判らなかったが、

やがて焦点が合ってくると、

赤は次第に形を作り始め、

やがてそれはアマチュア・レスリングのユニホームである

シングレット・吊りパンツへと形を整えていく。

「んー…

 なんで?」

目の前の吊りパンツをボケっと眺めながら隆之はそう呟くと、

「隆之さん!!」

吊りパンツからはみ出ている肌色が動き、

隆之の名前を呼んだ。

「え?」

その声に隆之は目の焦点を肌色に合わせると、

ぼやけていた肌色が形を作り始め、

やがてそれは自分を見下ろす人の形へと変わっていく。

「あー…なんだ、千帆。

 まだそんなモン着ているのか?

 サッサと脱いじゃえよ」

自分を見下ろす人物が妻・千帆であることを認識した隆之は

目を擦りながら呆れるように笑って見せるが、

吊パンツを身に着けている人物はそれを脱ぐところか、

意に反するように両手の掌を腰の左右に当てて見せると、

「ちゃんと見ろ、

 そんな呑気なことを言える状況なの?」

と怒鳴り声が響き渡った。



隆之と千帆は先日めでたく結婚式を挙げたばかりの、

できたてホヤホヤの新婚カップルであり、

この日の朝はこの賃貸物件に引っ越して2日目の朝であった。

二人の出会いは隆之の友人を介しての紹介であったが、

だが、隆之はそれ以前から彼女のことは知っていた。

そう学生時代。

隆之が通っていた公立図書館で千帆は司書のバイトをしていて、

その頃から隆之にとって千帆は気になる存在であったが、

だが、なかなか声をかける機会がなく、

また隆之自身の就職活動が忙しくなってしまうと、

いつしか図書館に行くことがなくなってしまっていた。

そして、就職活動が終わり、

久方ぶりに隆之が図書館に姿を見せた時には

千帆の姿は図書館から消えてしまっていたのである。

と、普通なら

隆之の青春の1ページとしてこの話はここでお終いとなるのだが、

運命の女神はどういう気まぐれを起こしたのか、

再び彼女と再会するチャンスを与えてくれたのであった。

それは、社会人として1年が過ぎたある初夏の日、

学生時代の友人達と半ば同窓会的なバーベキューを開いたとき、

なんと、友人の1人が千帆を連れて来るなり、

隆之達に紹介をしたのであった。

なんでも千帆はその友人の従姉妹だそうだが、

しかし、内気な性格が災いしてか、

なかなか男友達を作ることが出来ず。

これではいかんと、

友人がここに連れてきたそうだが、

隆之にとっては思いがけないリターンマッチとなった。

そう、あの時告白できなかったことへの再挑戦。

バーベキューそっちのけで隆之は千帆にモーションを掛けると、

向こうもさほど嫌がることなく隆之の誘いに乗ってくる。

そして、その日を境に隆之と千帆の中は深くなり、

やっとゴールインへとたどりついたのである。



「いい加減、目が覚めた?!」

身に着けている赤い吊パンツの腰に手を当ててて

千帆はまるでオカマが怒鳴るような声で隆之に問いただすと、

「なっなっなっ、なんだそれは?」

ベッドの上の隆之は信じられないような眼で千帆を見つめ、

そして震えた指で指さして見せる。

「やっと理解できたようね」

その姿を見下ろしながら千帆は一安心したような表情を見せると、

「大変というより。

 何が起きたんだ?」

目がぱっちりと見開いて隆之は千帆の姿をシゲシゲと見るが、

しかし、その視界に映る千帆の身体は

明らかに昨日までの姿とは違っていたのである。

「いい加減、

 驚くのはその辺にしてくれない?

 あたしだってこの格好を好きで見せているわけじゃないんだから」

と言いつつ千帆は恥ずかしげに身体をよじるが、

しかし、彼女が身につけている吊りパンツの下からは太い首が聳え立ち、

その両脇からは見事に盛り上がった僧帽筋が姿を見せ、

さらに、その下では大きく盛り上がった大胸筋が楔の様な姿の胸板を作り上げると、

その下では腹筋が左右3個ずつ瘤の様に盛り上がり

引き締まった腹と深い谷を作り上げていた。

そして盛り上がる胸板の左右には三角筋が肩を見事な肩を作り上げると、

その下から伸びる腕も上腕筋や前腕筋が盛り上がって太い腕を作り。

同じように股間から伸びる両脚も大腿筋が大きく発達すると、

力強い足を演出していたのである。



「ちっ千帆…

 お前、まるで男…」

女性とは全くほど遠い姿になってしまった千帆を指さしながら

隆之は思わずそう口走ると、

「そうよっ、

 男になってしまったのよっ、

 もぅ、

 隆之がこんなものを着せるから、

 あたし、男になっちゃったのよ」

千帆は身に着けている吊パンツの肩ひもを太い指でつまんで見せると、

一度引っ張ったのち、

パチン

とはじいて見せる。

「吊パンを着たからって男になるのか?」

それを聞いた隆之は思わず聞き返すと、

「私だって信じられないわよ。

 でも、現実にこんな体になってしまったし、

 それにこんなことになった原因だって、

 これを無理やり着せられたからぐらいしか考えられないでしょう」

と言いながら迫った。

「うわっ、

 汗くっせー」

迫る千帆から漂ってきた男の汗臭に堪らず、

隆之は鼻をつまんで見せると、

それを見た千帆の腕が動くなり、

ズンッ!

ギシッ!

鈍い衝撃と共にベッドが大きな軋み音を上げた。

そしてその上では、

「いまなんつーた?

 俺の汗がくせーだとぉ?

 だったらたっぷりと嗅がせてやるよぉ

 おらぁ!」

「くっ苦しい」

千帆に組み伏せられた隆之が顔を真っ赤にして、

必死で堪えていたのであった。



そもそも二人が引っ越してきたこの物件。

最初に見つけたのは

結婚後の生活に胸を膨らませて熱心に不動産屋巡りをしていた千帆であった。

駅から歩いて5分+駐車場付きという好条件ながら、

相場の約半分という賃料に、

「なぁ、そこってさ

 事故物件じゃないのか?」

と隆之は勘ぐったものの、

検索サイトで検索をかけても事件につながるようなソースはなく、

また二人が下見をしてみると

千帆がすっかりこの部屋を気に入ってしまって、

渋る隆之を説き伏せるようにして契約をしてしまったのであった。

無論、隆之もこの部屋がイヤなわけではない。

何しろ、始発電車のある駅から近い上に格安の駐車場まで付いている。

こんな好条件の物件があること自体、まさに奇跡としか思えなかった。

ただ契約上の関係から早急に入居を迫られた隆之たちは

新婚旅行を後回しにしての引っ越しをすることになり、

その引っ越し作業の最中に千帆が押入の奥から1つの紙袋を見つけたのであった。



「隆之さん、

 ねぇ、これ何かな?」

作業の邪魔にならないよう髪をくくった千帆が

そう言いながら押し入れの奥から紙袋を引っ張り出すと、

「ん?

 前に住んでいた奴の置きみやげか?」

と額にタオルを巻き家具の位置合わせを行っていた隆之が手を休める。

「変なものだったらイヤね」

そう言いながら千帆が紙袋を開けてみると、

バサッ!

中より饐えた汗の匂いまき散らしながら、

真っ赤なユニフォームのようなものが2着出てきたのである。

「キャッ!

 なにこれ?」

声を上げながら千帆がそのうちの1着を怖々広げてみると

赤い光沢地に黒と銀のストライプ入ったそれは

レオタードと微妙に素材は似てるが、

しかし、縫製とそのデザインは大きく違っていて、

一見、スパッツにも見える両足を通して穿くのであろう部分から上に向かって

ランニングのようにして幅の広い部分が伸びていた。

ところが、

「なに、これぇ?

 くっさーぃ」

千帆にとって見たことがないユニフォームから漂ってくる悪臭に

堪らないのか鼻をつまんで文句を言うと、

「んー?

 これは…

 あぁ、吊りパン。

 レスリングのユニフォームだな…」

とそれを手に取り隆之はそのものの正体を見破る。

「レスリングの…

 ユニフォーム?」

隆之の説明に千帆が驚きの表情をすると、

「あぁ、

 学生時代、オレの友人でアマレス…

 アマチュアレスリングをしていた奴が居てな、

 試合となるといつもこんなのを着ていたよ」

とユニフォームを掲げて隆之は言う。

すると、

「でも、なんでレスリングのユニフォームなってものがココにあるの?」

千帆は素朴な疑問を隆之にぶつけるが、

「さぁな…

 前住んでたヤツの忘れ物じゃないか?

 たしか、学生が住んでいたって聞いていたし…」

隆之は不動産屋から聞いていた情報を千帆に言う。

「ふーん…

 そうなんだ…

 でも、コレって使ったままみたいだよ。

 ほらっ汗で湿っているし、

 全然洗ってないみたいだしぃ

 不潔!

 もぅサッサと捨て」

話を聞いた千帆は鼻を手で押さえながら

吊りパンツを隆之に押し付けるようにて渡すと、

千帆の指摘通り、

吊りパンツはまるでついさっきまで

試合か練習に使われていたかの如く、

湿っていたのであった。

「そうだなぁ…」

千帆から渡された吊りパンツをつまみ上げながら隆之もうなづくと

ガサッ!

手にした吊りパンツを入っていた紙袋へと詰め込み、

ギュッ!

不要品が詰まっているゴミ箱へと放り込んだ。



そして、夜…

部屋の灯りが消され、

壁に対してやや斜めに置かれたベッドの上で

パジャマ姿の隆之と千帆、二人並んで天井を見上げていた。

フワッ…

石けんの匂いを漂わながら、

「ねぇ」

と千帆は隆之に声をかける。

「うん」

その声に隆之が返事をすると、

「幸せになろうね」

と千帆は囁いた。

「あぁ、そうだな…

 ここは俺たちの出発点だからな」

天井を眺めながら隆之が呟くと、

「そうねぇ

 あたしが居て、

 隆之さんが居て、

 そして、子供が出来て…

 段々家族が増えて…

 うふっ」

千帆はこれからのことに思いをはせながら微笑むが、

「まったく…(これからが大変なのに…気楽なものだな)」

そんな千帆を隆之はやや覚めた目で見るものの、

しかし、空想の中の千帆には

そのような隆之の視線は眼中には入ってなかった。

と、そのとき、

「ん?」

隆之は部屋の隅に無造作に置かれている紙袋に気づくと徐に腰をあげた。

「どうしたの?」

ベッドの上から千帆が腰を上げた理由を聞くが、

「あぁ…」

隆之はそう言うだけで千帆の問には答えずに

ガサッ!

紙袋を拾い上げると中を開けて見せる。

すると、

パサッ!

紙袋の中から出ていたのは、

千帆が見つけて押し入れから取り出してきたあの吊りパンツであった。

「あれぇ?

 コレってさっき捨てたはずなのに」

相変わらず汗の臭いを放つ吊りパンツを広げながら

隆之は首をひねって見せると、

「やだぁ、隆之さん。

 それ捨ててなかったの?

と千帆が声を上げた。

「え?

 ゴミを纏めて捨てたのは千帆の方じゃないのか?」

「なに言っているのよ、

 あたしは知らないわよ」

「オレだって知らないぞ、

 千帆、コレ、

 お前が片付けておけよ」

と隆之は言いながら

出てきた吊りパンツを千帆に渡そうとするが、

「いやっ!

 そんな汚いの」

千帆はその受け取りを拒否して見せる。

「嫌がるなよ!

 サッサと受け取れよ」

「いやよっ」

「いい加減にしろ」

「イヤったらイヤ」

吊りパンツの受け取りを千帆は頑なに拒み続け、

その姿に隆之は次第に切れてくる。

そして、

「イヤッ!」

パシッ!

千帆の手が隆之の手より吊りパンツを叩き落としてしまうと、

「やったなぁ…」

それを切っ掛けについに隆之の中で何かが切れ、

床に落ちた吊りパンを手に取るなり、

ベッド上の千帆目がけて飛びかかった。

「キャッ!」

暗い部屋に千帆の小さな悲鳴が上がる。

「えぇいっ

 お前のような生意気な奴は、

 こうしてくれる!」

その悲鳴を聞きながら隆之は千帆の頭をベッドに押さえつけ、

そのまま、千帆のお尻に手をかけると、

グィッ!

穿いていたパジャマを下着ごとはぎ取ってしまった。

「いやぁっ!

 止めて」

瞬く間に千帆の白い肌と股間の陰毛が薄明かりに輝き、

それが隆之の奥に潜むサドな気持ちに油を注ぐ、

千帆からパジャマのズボンと下着をはぎ取った隆之は、

その勢いで今度はパジャマの上着とTシャツを手荒く脱がせた。

「止めて!!

 お願い!」

形の良い乳房が薄明かりの中に大きく揺れ、

全裸にされて千帆の弱々しい声が響くと、

「ふんっ

 生意気なお前にはコレが一番だ!」

と隆之は言い放ちながら、

あの吊りパンツを広げ、

千帆の脚へと通した。

「!!っ

 なっなに?」

脚を上ってくる冷たい感覚に千帆は驚くが、

しかし、

ピチンッ!

瞬く間に千帆の股間に汗の臭いを放つ赤が張り付くと、

シュッ

同じ赤が両肩に止まった。

「え?

 え?
 
 えぇ?!」

まさに早業であった。

キレた隆之によって千帆はパジャマを下着ごと脱がされてしまうと、

変わりに、あの吊りパンツを穿かされてしまったのであった。

「やっやだこれぇ!!」

吊りパンツを穿かされた千帆が悲鳴を上げると、

「うわっ、

 クセっ」

千帆から漂う汗の臭いに隆之は鼻をつまむ。

「なんてことしてくれるのよ、

 もぅサイテー」

そんな隆之に向かって千帆は文句を言いながら、

吊りパンツを脱ごうとしたとき、

ガバッ!

隆之は上半身裸になると千帆に抱きつくと、

ズンッ!

そのまま組み伏せてしまった。

「やだ、

 ちょっと、

 ふざけないでよ」

上にのしかかる隆之に千帆は文句を言うが、

「ふふっ

 千帆っ

 お前はアマレス部の新入部員だ、

 俺がお前を鍛えてやる!

 悔しかったら俺を倒せ」

と隆之は言い、

グィッ!

千帆に固め技をかけ始めた。

「やだ、

 やだ」

露わになっている左右の乳房を揺らし、

千帆は抵抗をすると、

「ははははは!!!」

闇の中に隆之の笑い声が上がると、

「くやしぃ…

 あたしもレスリングが出来れば…」

と千帆は呟くが、

その間にも隆之の手が千帆の股間に潜り込み、

グニッ

彼女の秘所にその親指が押しつけられた。

「あっ!」

ビクッ

吊りパンツの生地越し感じるその圧迫感に

千帆は思わず声を漏らしてしまうと、

ジワッ

股間が見る見る湿り始めた。

すると、

「おっ

 どうした。

 急にここが湿って来たぞ」

それに気づいた隆之が即座に指摘すると、

「いやっ」

その声に千帆は頭を振る。

しかし、そんな千帆に構わずに、

グイッ

グイッ

グイッ

隆之の指が千帆の股間を攻め始め、

「あっあっあっ」

その指技に合わせて千帆は喘ぎ声を上げ始めた。

「いっ

 いぃ…
 
 あぁ…
 
 あんっ!」

体温に暖められたのか、

身に付けている吊りパンツからキツイ男の汗の臭いが吹き出し、

その臭いと、股間を攻める隆之の指技に千帆は見る見る上気していった。

「あぁっ

 あぁっ

 いっぃぃ!」

身体から噴き上げた自分の汗を吊りパンツに染みこませながら、

千帆は身体をくねらせ、

吊りパンツが自分の体にフィットしてくる感覚に溺れる。

「あぁ…

 あんっ
 
 うっ
 
 うぅん!」

クチュクチュ

クチュクチュ

悶える千帆の声に隆之は自分の手を吊りパンツの中に潜りませ、

直接千帆の女陰を攻め始めた。

すると、

「あっあっあっあぁぁぁ!!!」

瞬く間に千帆は絶頂へと駆け上り、意識が飛んだ。

「なんだよっ

 嫌がっていても

 結構燃えているじゃないかよ」

絶頂後、吊りパンツの股間に大きな染みを作っている千帆に隆之はそう言うと、

「あぁ…

 いぃ…
 
 いいよぉ」

千帆は大波の如く押し寄せる絶頂に翻弄され、

そして、その中で、

グッ

グググ…

身体の中に熱く滾るものを感じ始めていたのであった。

「(あぁっ

  熱い…

  熱い…)」

前身から汗を拭きだし悶え苦しむ千帆の姿を見て

「よーしっ

 じゃぁ、もっと扱いてやるか」

パァン!

隆之は膝を叩き、

千帆に迫っていく、

そう、千帆と隆之は恋人同士頃から何かとセックスに励んできたためか、

毎晩の情事にはややマンネリの雰囲気が漂い始めていたのであった。

しかし、今夜。

汚れた吊りパンツを穿いた千帆の姿に隆之はすっかり欲情し、

「あんっ」

「あぁぁん!」

二人は久々に”濃い”セックスを堪能し続けていた。



「まさかとは思うけど…」

昨夜のことを思い出しつつ、

千帆の組技から抜け出た隆之は思わずそう口走ると、

「こっこれだけじゃないのよっ

 …おっ…オチンチンも生えてちゃっているのよっ」

と千帆は顔を背けながら恥ずかしげにそう呟く。

「なに、チンコが?」

千帆のその台詞に改めて彼女の股間に自然を移すと、

確かに千帆の股間から隆之がよく知っている肉棒の影が大きく盛り上がり

吊りパンツを下から持ち上げ立派なテントを作っていた。

「でっでかい…」

男でもこれほどの肉棒を持つ者はまず居ないだろうと思わせる影の大きさに、

隆之は驚いていると、

「隆之さぁん、

 どうしよう…あたし…

 おっ男の人になっちゃった
 
 ねぇどうしよう!」

泣きそうな顔で千帆は隆之に迫り、

ヒシッ

としがみついてきたが、

「うわっ」

ドタッ!

ムギュッゥゥ!!

「くっ苦しい!!」

瞬く間に隆之はひっくり返され、

そのまま片足を取られてますと、

両肩をベッドに押しつけられてしまった。

「ちょっと待った、

 ちょっと待った。
 
 ぎっギブアップ!!」

千帆に向かって隆之声を上げると、

「あっ、ごっごめんなさい!」

無意識にレスリングの固め技を掛けてしまったコトに

千帆は顔を赤くしながら大慌てでそれを解くが、

「なっなんだよ、一体??」

文字通り筋肉質のレスラーになった千帆の姿に

隆之はただ混乱するだけだった。



「う゛〜む……」

それから数時間後、

隆之と千帆はとある霊能力者の元を訪れていた。

”千帆が男になった。

 しかも、ムキムキマッチョな男のアマレスラーに…”

新妻・千帆の信じられないこの肉体的変化に

仮に病院に連れて行って医者に診て貰ったとしても、

医者の力では恐らく千帆を元の女性には戻せないと考えた隆之は、

ネットを使って探し当てたこの霊能力者の元を訪れていたのであった。

「う゛〜む…」

ジャラジャラ

霊能力者は手にした数珠を鳴らしながら、

目の前にいるレスリングのユニフォーム・吊りパン姿の千帆を霊視する。

「う゛〜む…」

「いかがでしょうか?

 何か判りましたか?」

うなる霊能力者に恐る恐る隆之は尋ねると、

「う゛〜む…」

ジャジャジャ!!

某M崎映画に出てくるの老婆にそっくりな霊能力者は数珠を盛んに鳴らすと、

「間違いなく呪いじゃな…」

と短く答えた。

「呪い?」

霊能力者の口から出た言葉に思わず隆之が聞き返すと、

「あぁ…そのユニホームにベットリと憑いているわ」

そう言いながら霊能力者は千帆が身につけているユニホームを指さす。

「じゃじゃぁ…

 あたしがこんな身体になったのは、

 このユニホームに憑いていた呪いのせいなんですか?」

千帆が霊能力者に向かって隆之と同じ質問をすると、

「あぁ…

 しかも、そのユニホームには志半ばで倒れた男の怨念が染みこんでおる。

 お前さんが変身したのは、
 
 その怨念を染みこんだユニホームを身につけ、

 そしてその怨念に呼応した故に起きたものじゃよ」

霊能力者はそう隆之達に言うと数珠を置き、

気持ちを落ち着かせようとするのか湯気の立つお茶を啜った。

「呼応したって

 なんですか?」

お茶をすする霊能力者に千帆が尋ねると、

「ふむっ

 お前さん、
 
 そのユニフォームを身につけた後、
 
 怨念が望んでいた事をしなかったか?
 
 怨念がしたい。
 
 やりたい。

 と思っていることをしてしまったが故に、

 ユニフォームに隠ってた怨念はお前さんに託したのであろう。

 だから、肉体が怨念と同じ姿に変えられてしまったのじゃよ」

と説明をした。

「怨念が望んでいたこと…」

「そうじゃ、この怨念はしきりに試合をしたがっていたようじゃの」

「試合?

 試合って…

 レスリングの試合ですか?」

「ふむ」

「って、ことは隆之さぁん…」

霊能力者との問答で、

変身の原因は昨夜隆之とおこなったレスリングモドキであることが判った千帆は、

股間で盛り上がっている肉棒・チンポを隠すように両手を股に挟みながら、

抗議するような目つきで隆之をにらみ付けた。

「いっ」

隆之は千帆の無言の抗議を一身に受けながら、

「じゃっ、じゃぁどうすれば千帆の呪いが解け、

 元の女の身体に戻すことが出来るんですか?」

と隆之は即座に今回の事件を無かったことに出来る唯一の方法を霊能力者に尋ねると、

「そりゃぁ…呪いの元を絶てば元には戻るのだろうけど…」

霊能力者はそう言って一枚の護符を取り出すと、

千帆の盛り上がった胸板の前に張り付けた。

しかし、

護符を張り付けた途端、

ビシッ

護符は真っ二つに裂けると瞬く間に散り散りになって散ってしまった。

「これは…」

隆之と千帆はその光景に驚くと、

「見ての通り、そのユニホームに染みこんでいる念は無茶苦茶強い、

 私でも手が出せないくらいだ」

やや諦めたような口調で霊能力者はそう言うと、

「じゃぁ…あたしは…ずっとココままなんですか?」

とオカマのような声を上げながら千帆は霊能力者に縋った。

すると、

「いっいや、全く手がないわけではない」

困惑をした表情をしながら霊能力者はそう呟くと、

「で、その方法は?」

その言葉に隆之と千帆は霊能力者に迫る。

ズズー

霊能力者は再度お茶を啜り、

「……さっきも言ったとおり、

 肉体の変身は怨念に呼応した結果のものじゃ、

 こういう場合の方法はただ一つ、

 この怨念の根本、
 
 かつてそのユニフォームを身につけ戦った男の思いを成し遂げることじゃよ」

と答えた。

「思いを成し遂げる…?」

霊能力者の言葉を復唱しながら隆之と千帆は顔を見合わせると、

「それでだ、さっき霊視したときに判ったことだが…」

啜っていた湯飲みを置いた霊能力者はもったいぶりながらそう言うと、

「なにがわかったんです?」

再び隆之達は霊能力者に迫る。

すると、

「オリンピックに出て金メダルを取ることじゃな」

と霊能力者はあっさりと答えた。

「お・り・ん・ぴ・っ・く????」

その言葉を隆之と千帆は復唱すると、

「そうじゃっ

 オリンピックが男の目標じゃったようじゃの、

 だから、オリンピックに出て試合をすれば、

 ユニフォームに隠っていた怨念が雲散霧消し、
 
 お前さんは元の姿に戻れる。
 
 ということじゃ」

と霊能力者は断言する。

「あの…そっそうはいっても…

 オリンピックだなんて、
 
 そんなこと…」

霊能者のその言葉に隆之は唖然としながらも千帆を見ると、

「お前、あの時、

 オリンピックに出たい。なんて思っていたのか?」

とひそひそ声で尋ねた。

すると、

「ううん、

 そんな事考えてないよ、

 ただ、レスリングが出来れば隆之に仕返しできたのに…

 と思っただけだよ、

 オリンピックだなんてそんなこと…」

と千帆は返事をした。

オホン!

その直後、霊能者の咳払いが響くと、

「発端となったことは霊視で判っておる。

 お前さんにとっては軽いふざけだったのかも知れないが、

 タイミングが悪かったみたいじゃ、

 どっちにせよ、そのユニフォームに憑いていた怨念は目覚め、

 そして、オリンピックでメダルを取ることを欲しておる。

 一番霊障が少ない形で怨霊を払うとしたら、

 オリンピックに出て、金メダルをとることじゃ」

と霊能者はダメ押しをして見せた。

「そんなぁ…

 オリンピックだなんて…」

霊能者の言葉に隆之は頭を抱えるが、

「そう、オリンピックに…出るしかないんだ」

そんな隆之を尻目に千帆の目は輝を放ち始めていた。



つづく