風祭文庫・アスリート変身の館






「歩の秘密」



原作・風祭玲

Vol.961





その日の授業の終わりと放課後の始まりを告げるチャイムの音が響き渡ると、

数秒間、

つかの間の静けさが校内を覆い尽くすが

程なくしてその空気を引き裂くようにして、

バンッ!

とある教室の後方のドアがいきなり開くなり、

ダッ!

教科書類を詰め込んだバックを小脇に抱え一人の男子生徒が飛び出そうとするが、

「こらぁ!!

 歩っ

 待ちなさいっ!」

すぐに女子の声が響き渡ると、

ムンズっ

脱兎のごとく飛び出そうとした男子生徒の襟首をつかんで見せ、

「うりゃぁ!」

の声とともに一気に投げ落とす。

「痛たた、

 何しやがる!」

廊下の真ん中で女子生徒に柔道の絞め技をかけられた形の菅谷歩は

それを振り解こうとしながら声を上げるが、

「ホームルームが終わった途端に逃げ出そうとしてもそうは行かないわよ。

 今日と言う今日は離さないんだから、

 いつも一体どこに行っているのよっ」

歩の幼馴染でもあり柔道の有段者でもある東海林美奈は歩に向かって詰問をする。

しかし、

「べっ別にどこだっていいだろう。

 いい加減、離せよっ」

彼女の質問に歩は癇癪を切らせながら暴れ始めると、

「あっこらっ

 暴れないのっ」

暴れる歩に向かって美奈は怒鳴り、

ギュっ!

と締め付けて見せる。

そして、

「暴れても無駄よ、

 さぁこのまま柔道場に行ってゆっくりと話を聞きましょうか?」

暴れ続ける歩に向かって強い口調で美奈は言ったとき、

「このぉ!」

ぐっ!

歩は首に力を入れると、

その首を支点にして肩を上げ背中を床から離し始める。

「え?

 えぇ?」

絞め技をかけている自分もろとも浮き上がっていく感触に美奈は驚くと、

「うりゃぁ!」

の声とともに歩は一気に体を捻り、

美奈を一回転させて床に押し付けながら、

「離せ!」

そう叫びながら一気に美奈を引き剥がす。

そしてその際に、

ビシッ!

歩が着ていたYシャツのボタンが弾け飛んでしまうと、

バッ!

一瞬の間だが歩の裸の上半身が美奈の目に飛び込んできた。

「うそっ」

彼女の記憶とは違うその姿に美奈は思わず声を失うと、

「かえせっ」

歩は美奈からYシャツをひったくるなり一気に走り出す。

「ハッ!

 あっ待ちなさい!」

走り去っていく歩に向かって美奈は起き上がり声を張り上げるが、

彼女の声にまったく聞く耳を持たないのか、

歩の姿は瞬く間に視界から姿を消してしまい、

美奈の声がむなしく響くだけだった。



「ねぇ、美奈ぁ

 菅谷君、

 何か運動部に入っているの?」

腰に手を当てつつも困惑している表情を見せる美奈に向かって

彼女の友人である野島京子が最近の歩の行動について尋ねると、

「うーん、

 歩の奴にそんな根性は無ってと思ったけど、

 でもなに?

 あたしの寝技を無理やりはずしたし、

 それにあの体…

 あたしに隠れてどこかで鍛えているのかしら?」

と美奈は歩の上半身の筋肉がアスリートのごとく盛り上がり、

腹筋も出来上がっていたことを不審に思う。

「それにしても…

 最近、菅谷君が男らしく見えるようになったなぁ…

 って、思っていたけど、

 マジで逞しくなっていたわね、

 何のスポーツをしているのかな?」

歩の体を思い出しながらそう京子は呟いてみせると、

「歩が男らしい?

 どこがぁ?

 もぅ笑わせないでよ」

その指摘に美奈は笑って見せるものの、

これまで何かと面倒を見てきたはずの歩の変化に戸惑いを隠せなかった。



ハァハァ

ハァハァ

一方、美奈の元を辛くも脱出してきた歩は、

ボタンが取れてしまったYシャツをとりあえず羽織り、

教師に咎められないように急緩織り交ぜながら廊下を走り抜けつつ

ある場所へと向かっていく、

そして目的の場所に立ったとき、

歩の前には”レスリング部”と書かれた表札が掛かるドアが静かに閉じていたのであった。

スー

ハー

スー

ハー

ドアを前にしてしばしの間、歩は呼吸を整えると、

落ち着きながらノブに向かって手を伸ばしてドアを開け、

「菅谷でーす」

の声と共に入っていく。

すると、ドアの向こう側は薄暗く、

汗臭さを伴った湿った部屋の空気が歩の体にまとわりつくが、

しかし、それに構わず進んでいくと

部屋の奥で次のドアが姿を見せる。

そして、

シッ

シッシッ

シッ

シッシッ

そのドア向こうにあるの部屋から人の息遣いの音と、

キュッ

キュキュッ

と響く靴の音が聞こえてくると、

「あっもぅ来ているんだ…

 先輩…」

そう歩は呟いた途端、

ビクッ!

瞬く間に歩の股間が硬くなりはじめ、

グググッ!!

制服のズボンを押し出しはじめた。

「あっ

 もぅ」

思いがけない股間の反応に、

「だっダメだろう」

と文句を言いながら歩は両手で股間を押し込んでみせると、

「何がダメなんだい?」

と言う声が背後から響いた。

「!!っ」

その声に歩は体を硬くすると、

「獅子山先輩…」

そう呟きながら振り返ってみせる。



「今日はずいぶんと早いな…」

汗に濡れる体をタオルで拭きながら、

レスリング部キャプテンである獅子山慶介は尋ねると、

「それはその…」

彼に尋ねられた途端、

歩は頬を赤く染め俯いてみせる。

「あははは…

 すっかりレスリングに夢中になってしまったみたいだな、

 いっそ、ホームルームなんかに出ないで直ぐにこっちに来ればいいのに」

それを見た慶介が笑って見せると、

「そっそれは…」

歩はそう言い掛けるものの、

直ぐに口をつぐんでしまった。

「ふふっ」

そんな歩を見ながら慶介は笑みを見せ、

そして、

「さぁ、

 歩の体を見せてくれ」

とその耳元で囁いてみせる。



「はっはい」

喉をカラカラにさせながら歩は返事をした後

美奈とのやり取りでボタンが取れてしまったYシャツを脱ぎ捨てその上半身を見せると、 

「ふむ、

 だいぶ逞しくなってきたみたいだね」

と慶介は言いつつ手を伸ばし、

歩の発達しつつある筋肉瘤を触ってみせる。

「あっ」

慶介の手の感触に歩は思わず声を上げてしまうと、

「なに感じているんだよ、

 男に触られてそんなにうれしいのか?」

と笑いながら尋ねるが、

「だっだって…」

歩はそう言いかけながら慶介を見つめてみせる、

「ふふっ、

 さぁ、ズボンも脱いで、

 チンポをみせな」

そんな歩に向かって慶介は指示をすると、

「……」

歩は無言のままズボンのベルトに手を掛け、

言われるまま下着もろとも脱ぎ捨てて見せると、

ビンッ!

その股間から赤く剥けきった男の肉棒が飛び出して見せる。

「ほぉ…

 すっかり剥けきって、

 ここに来たときは皮を被ったままだったのに、

 だいぶ男らしくなったじゃないか」

突き出す肉棒を握り締めつつ、

歩を抱き寄せながら慶介はそう囁くと、

「あっ、

 はっ、

 そっそんなに強く握らないでください」

顔を背けつつ歩は懇願する。

すると、

「さぁ、吊パンをつけな、

 それとシューズを履いて練習場にこい」

突き放すように慶介は指示をし、

歩をその場に残して自分だけ隣にある練習場へと向かって行く。

「あっ、

 もぅ…」

すっかり上気していた歩は少し膨れっ面をして見せるが、

トロッ

股間から起立していた肉棒の先端からは先走りが滴り落ちていたのであった。



バタンッ!

練習場のドア閉まる音が響くと、

「先輩っ」

と慶介を呼ぶ声が追って響く。

「ん?

 おうっ」

頭を床につけ、

ブリッジの練習をしていた慶介が返事をしながら体を起こすと、

彼の目の前にはアマレスのユニフォームである吊パンツを身に着けた歩の姿があり、

「おっお願いしますっ」

と慶介に向かって頭を下げてみせる。

「よしっ、

 んじゃ、いつもどおり準備運動から柔軟をして体を暖めろ」

歩に向かってそう指示をすると、

「はいっ」

歩は指示通り準備運動を始めるが、

やがて、体が温まってきたのか歩の体から汗が流れ落ちてくると、

それを見計らうようにして、

「よーしっ、

 俺の相手をしろ」

と慶介は言いながら、

汗拭きタオルのところに置いてあった瓶を手に取り、

そこからあるものを口に含むと、

「ふふっ」

慶介は笑いながら柔軟運動を終えて起き上がったばかりの歩に抱きついてみせる。

「わっ!」

いきなりの慶介の行動に歩はすっかり後手となり、

瞬く間にマット上に組しかれてしまうと、

慶介から濃厚なキスを受ける。

そして、彼の唇がゆっくりと離れていくと、

「うごっ」

歩は自分の口の中に押し込まれたものを飲まされたのであった。

ゲホゲホゲホ

練習室に歩の咳き込む声が響き渡ると、

「せっかくの薬を吐き出すんじゃないぞ」

と慶介は注意をする。

その注意を受けてか歩は飲まされた薬をその場で飲み込んでしまうと、

「はっ

 はっ

 はっ」

次第に呼吸が乱れ始め、

体が火照り始めてくる。

「もぅ始まったか、

 どうやらその薬はお前に合うみたいだな」

噴出してくる汗で吊パンを濡らしていく歩の姿を見ながら慶介は感心した口調で言うと、

「あぐぅぅ!」

急に歩は声を上げ両手を床につけ耐える仕草をして見せた。

そして、

ミシミシ

メリメリメリ

その体から軋む音が響き始めるや否や

グッグッグ…

ググググ…

吊パン姿の歩の体がゆっくりと膨らみ始め筋肉が発達し始め、

さらに筋肉の盛り上がりにあわせて股間も突きあがっていくと、

「うわぁぁぁぁ!!!」

頭を抱えながら歩は鍛え上げた肉体を持つアマレスラーへと変身したのであった。

「よぉしっ、

 毎度毎度見事な肉体美だな。

 ふふっ、

 さぁ、思いっきり可愛がってあげるよ」

股間を逞しく突き上げながら慶介は言うと、

「しゃぁ!」

気合を入れた声を上げ、

変身を終えたばかりの歩に飛び掛っていったのであった。




それから2時間後、

練習を終えた歩が表にある洗い場で汗ダクの顔を洗い始めると、

「よぉ、今日の練習、

 なかなかきつかったせ」

と顔を拭く慶介が歩に向かってねぎらいの声をかける。

「あっありがとうございます」

身に着けている吊パンをパンパンに張らせる肉体美を晒しながら

歩は恥ずかしげに変事をすると、

「あのぅ…」

と慶介に声をかけ、

「この体、

 最近戻りにくくなってきているのですが

 そのうちこのままの姿になってしまうのですか?」

と以前は数時間後には元の姿に戻っていた肉体が最近戻りにくくなってきたことを質問する。

「そのことか、

 以前にも言ったと思うけど、

 薬は時間が経つと効果が切れて体は元に戻るが、

 でも、完全には元に戻らない。

 なぜって、筋肉を増量したあと練習で体を鍛えているだろう。

 その分、筋肉量は増えるし、

 それに薬を飲めば体もその体を維持しようとするからな、

 なんだ、アマレスラーになるのが嫌になったか?」

と慶介はややマジな表情で尋ねると、

「いえ、そんなことは無いです」

両手を横に振り歩は否定してみせる。

「ふっ、

 だろうなぁ、

 なんせ、お前は俺の練習を見ながら抜いたモーホー野郎だからな」

そう慶介は言いながら歩に近づいていくと、

「そのことは言わないでください」

歩はそう言いながら、

しつこく柔道部への入部を誘ってくる美奈から逃れ、

隠れ潜んだレスリング部の部室のなかで、

吊パンツ姿で一人練習をする慶介を見つけその肉体美に惹かれてしまったこと、

さらに影に隠れながらオカズにして抜いてしまったこと、

そしてその現場を慶介に発見され咎められた後に薬を飲まされ、

吊パンを膨らませるアマレスラーにされてしまったことを思い出していた。

「どうだ?

 久々にケツに種付けしてやろうか?」

以前のことを思い出している歩に向かって慶介はそう尋ねながら、

グイッ!

硬く勃起している股間の盛り上がりを歩の体に押し付けて見せると、

「あっ、

 せっ先輩、

 こんなところでやめてください」

と歩は体をよじって見せるが、

「ふふっ、

 何を言っているんだよ、

 キツイ練習の後はこれなんだろう?」

股間にクッキリと肉棒の影を盛り上がらせながら慶介はささやき、

そして、歩の体を一気に抱き寄せてみせる。

「あぁっ、

 せめてマットの上で」

「いいじゃないかよ

 たまには表でやろうぜ」

洗い場の前で吊パン姿の屈強なアマレスラーが二人抱き合っていると、

「ちょっと、

 そこで何をやっているの?」

と言う美奈の声が響いたのであった。



「ん?」

「あっ」

その声に慶介と歩が振り返ると、

「あっ歩?

 あなた歩なの?」

と部活を終えたばかりなのか

柔道着姿のまま驚き口を押さえている美奈の姿があり、

「美奈?

 なんで…」

一方で美奈の姿を見ながら歩もまた驚くと、

「歩?

 あんたなんて格好をしているの?

 それにその体はなに?」

と筋肉を盛り上げている歩の肉体を指差して見せる。

「いや、

 それはその…」

彼女の指摘に歩は困惑した表情を見せると、

「やぁ、

 君は柔道部の東海林さんだね」

と慶介が馴れ馴れしく話しかけながら寄って行くが、

「なに…

 あなた、歩に何をしたの?」

近寄ってくる慶介を警戒しながら美奈は声を上げる。

「何をした…って言われても…

 彼はレスリング部の部員だよ、

 その彼が体を鍛えて何がおかしいんだい?」

美奈に向かって慶介はそう話すと、

「鍛えてって、

 歩はそんな体をしてないわ、

 聞いたことがあるのよ、

 最近、筋肉を一気に発達させる変な薬が密かに出回っているって、

 あなた、その薬を歩に飲ませたんでしょう!」

と美奈は慶介に言う。

その途端、

「ごめんっ」

の声と共に歩が美奈の懐に飛び込み、

「ふんっ」

瞬く間に美奈の体を持ち上げると、

ドスンッ

「ギャッ!」

美奈をレスリング技で一回転させながら一気に押し倒し、

不意を突かれた形になってしまった美奈はそのまま気を失ってしまうと、

「おぃおぃ…」

思いがけない行動をした歩を見ながら慶介は驚きつつも、

ハァハァ

ハァハァ

肩で息をしながら気を失った美奈を見下ろしている歩に向かって、

「さぁて、

 彼女はお前の秘密を見てしまった。

 どうする?」

と問い尋ねる。

「うっ」

その質問に歩は黙ってしまうと、

「先輩っ

 美奈に薬を飲ませたらどうなります?」

と言葉小さく尋ねる。

すると、

「それは…

 お前と同じ肉体になるな…」

と慶介は返事をしてみせ、

さらに、

「二粒飲ますと…

 ふふっ

 チンポが生えるぜ」

そう付け加えたのであった。

「!」

それを聞いた歩は顔を上げ、

「二粒飲んでも、

 最初は元に戻ります?」

と尋ねると、

「そこは同じだよ、

 もっともお前と同じように、

 何度も飲み続けると、

 しまいには元には戻れなくなるけど」

笑みを浮かべて慶介は言った途端、

「先輩っ、

 薬もらえますか?

 僕が美奈に飲ませます」

と言うと歩は手を差し出したのであった。



「あぁいいよ、

 また部員が増えるな。

 しかも、今度は柔道経験者とは…

 これは楽しみだ」



おわり