風祭文庫・アスリート変身の館






「部室の秘密」



原作・風祭玲

Vol.931





キンコーン!

放課後を告げる鐘が響き渡り、

それに時をあわせるように、

ザワザワ

ザワザワ

学園の中はカバンを抱えて帰宅する者、

練習着に着替えたり用具を手に部活に向かう者とに別れ、

一日のうちでもっとも賑やかな時を迎える。

そんな中、

ガチャン!

とある部屋を硬く閉ざしていたドアの鍵が開かれると、

ガタン!

ガタタン!

訪問する者を頑なに拒んでいたドアを強引にこじ開けるような音が響き渡り、

ガラッ!

ついにドアが開かれてしまうと、

ドタバタ

バタバタ

「うわっ、

 これはひでーや」

と言う声と共に部室に入ってきた少年達の声が追って響き渡る。

P学園高校レスリング部

このレスリング部はかつてインターハイや国体を総なめにした名門であったが、

しかし、年を経るうちに部員は減り、

最後の部員が卒業してしまった数年前に自動的に休部となってしまうと、

そのため、数多くの部員達でにぎわっていた部室はその存在を忘れられ、

静に埃を被って居たのであった。

「へぇ、レスリング部って言うからもっと汗くさいかと思ったけど、

 ただカビ臭いだけだな…」

鼻を動かしながら制服姿の少年・ツヨシが部屋の感想を言うと、

「3年も前の話だよ、

 この部屋に部員が居たのは」

そう言いながら別の少年・トモユキが長い間この部屋が無人であることを指摘する。

「大昔じゃん、

 それって…」

2人の会話に3人目の少年であるナツキが口を挟むと、

ガタン!

ガタタン!

その3人から別れて1人、

4人目のヨシオは閉じられているロッカーを一つ一つ見て回っていたのであった。

「何をやって居るんだよ、ヨシオ」

それに気づいた5人目の少年であるタカシが話しかけると、

「!!っ

 べっ別に?
 
 ちょっと気になってね」

その声に小さく驚きながらもヨシオは薄ら笑いをしながら答えてみせる。

「?

 変な奴」

そんなヨシオの姿にツヨシとトモユキは2・3歩さがると、

「で、どうするつもりだよ」

とナツキがこれからのことを尋ねた。

「どうするって」

「それは…」

ナツキの質問にツヨシは声を詰まらせるが、

「?

 僕たちの活動の場にするんじゃないの?」

とタカシが聞き返した。

「あぁ、そのつもりだったけどな…

 その前にちょっとこれを片付けるとなるとなぁ…」

そう言いながらツヨシは3年を経てもさほど荒廃してない部室を眺め、

「とにかく先生にもぅ1回聞いてみるか、

 場合によってはロッカーを動かさないとならないからな」

荒廃はしてないものの、

散らかっている部室を見渡しつつそう言うと、

「ヨシオ、

 お前はココに残れ」

ヨシオにそう言い残してツヨシ達4人は部屋から出て行ったのであった。



それは数日前のことだった。

「はぁ、部室から追い出された?」

今年度の部室使用権を掛けた生徒会長主催の壮絶な戦いに敗れた

ツヨシ達サブカル研究会のメンバーは研究会の顧問をしている教師に窮状を訴えるが、

「あのバトルの結果は誰も文句を言わないのが決まりではなかったのか?」

と最初の頃は取り合ってくれなかった。

しかし、ツヨシの必死の説得の結果、

「そーいや、

 運動部の部室棟で一箇所だけ使われていない部室があったな…」

と教師はとある空き部屋について話し始める。

そして、その情報に皆は目を輝かせると、

教師は頭を掻きつつ、

「だけど、空き部屋として紹介すると

 その部は急に新入部員が入って活動再開をするから、

 果たして使えるかどうか」

と言いながらツヨシ達にその部室の存在を教えたのであった。

「さて、誰もいなくなったな」

ツヨシに命じられて1人部室に居残さられたヨシオは辺りに誰もいないことを確かめると、

ガチャッ!

ガチャッ!

手際よく開くロッカーを開け始めた。

ヨシオには本人は気づかないもののちょっぴりゲイ気があり、

特に武道や格闘技の道着や格闘技のユニホームを見ると

敏感に股間が反応してしまうのであった。

そして、いまロッカーを漁っているのはこの部屋がレスリング部の部室であることと、

ひょっとしたら置き忘れたユニフォームがあるのでは…と言う期待からであった。

そうやってヨシオがロッカーを開けていくと、

「あっ!」

とあるロッカーを開けた途端、

身体の動きがピタリと止まったのであった。



「これは…」

心持ち息を荒くしながらヨシオがロッカーの中から取りだしたのは、

校名も眩しい一着のシングレットであった。

「本当に残っていたんだ」

ハラリ…

まるでついさっきまでアマレス野郎の身体に張り付いていたかのように、

湿り気と雄臭を漂わせるシングレットにヨシオは驚くと、

ビクンッ

彼の股間は硬く勃起し、

鼓動と共にビクビクと動きを見せていたのであった。

と、その時、

『着てみたいか?』

と言う男性の声がヨシオの耳元で響いた。

「ひぃ!」

誰もいないはずの部室に響き渡ったその声にヨシオは思わず悲鳴を上げてしまうと、

『あっ、

 驚かせてゴメン』

と言う言葉と共にヨシオの前にシングレットを穿いたアマレスラーが立っていたのであった。

「あっ

 だっ誰?」

突然現れたアマレスラーを見てヨシオは目を丸くして尋ねると、

『何を言っているんだ、

 僕はこのレスリング部の部員だよ』

とアマレスラーは自分が穿いているシングレットに書かれている校名を晒してみせる。

「え?

 部員だなんて…
 
 確か居ないはず?」

アマレスラーの言葉にヨシオは小首を捻ると、

『はぁ?

 何を言い出すんだよ、

 ちゃんと僕という部員が居るじゃないか』

とアマレスラーは憮然としてみせる。

「じゃぁ、誰も居ないって何かの間違いなのかな?」

ヨシオは腕を組み考え込み始めるが、

『ねぇ、君?

 レスリングする気無い?』

とアマレスラーはヨシオに尋ねる。

「えぇ?

 れっレスリングですか?」

突然の誘いにヨシオは驚いた声を上げると、

ニヤ

アマレスラーはほくそ笑むように笑い、

『君、その吊りパンに興味があるんだろう?

 隠していても顔に書いてある。

 男と男の汗だくのぶつかり合いは実際に経験してみると気持ちいいよ。

 ほら、特に君のように男に気のある子はね』

とアマレスラーはヨシオの背後に回るとその耳元で囁いて見せた。

「だっ誰が!」

アマレスラーの指摘にヨシオは声を荒げて否定しようとすると、

ムギュッ!

いきなりヨシオの股間が握りしめられ、

『ほら、こんなに固くなっている。

 これって僕の姿に興奮をしている証拠だよね』

と念を押してきた。

「あっ、

 ちっ違う!」

なおもヨシオは否定をしようとするが、

『着ても良いんだよ。

 君の手の中にある吊りパンを…』

とアマレスラーは誘いを掛けてきたのであった。



「着ても良い?

 これを…」

思いがけないアマレスラーの言葉にヨシオの胸は高鳴り、

ビクンっ!

彼の股間が敏感に反応をしてしまうと、

『ふふっ、

 じゃぁぼくが着させてあげよう』

とアマレスラーは言いながら腕を伸ばすと、

ヨシオが着ている制服のシャツを脱がし始める。

「あっ

 止めてください」

男の汗の臭いを漂わせながらアマレスラーが始めだした行為をヨシオは拒絶しようとするが、

『何がイヤなんだ?

 君はこうされるのを求めていたんだろう?』

とアマレスラーは囁く。

「でっでもぉ」

その言葉に向かってヨシオはなおも言い返そうとすると、

『素直になりな、

 君はアマレスラーになりたいんだ。

 レスリング部の部室に入ってきて、

 頼まれても無いのに勝手にロッカーを開けていたんだろう。

 ここに遺されていた吊りパンを穿いてアマレスラーへの道を歩みたい。

 ふふっ、

 僕もそうだったんだよ、

 吊りパンを穿いて、

 身体を鍛えて、

 みんなに見られながら

 男同士、抱き合いそして責め合う。

 ふふっレスリングに填るゲイは多いんだよ』

とアマレスラーは告げる。

「僕がゲイ?」

それを聞かされたヨシオはショックを受けるが、

ピチッ!

いつの間にかヨシオの身体をシングレットが覆い、

ヨシオは筋肉が薄い貧弱なアマレスラーになっていたのであった。



「あぁ…」

自分の身体に穿かされたシングレットにヨシオは驚くと、

『吊りパンを穿いたね。

 君は立派なアマレスラーだ。

 さぁ、隣のマットで準備運動をしよう』

とヨシオに向かってアマレスラーは告げ、

部室兼更衣室と隣り合っているレスリング場へと彼を導いていく、

そして、3年間”主”の居なかったレスリング場に

キュッ!

キュキュッ!

レスリングシューズの音が響き渡ると、

シュッシュッ

シュッシュッ

「あぁぁっっ」

マットの中でシングレット姿のアマレスラー同士が絡み合い、

鍛え上げた身体を盛り上げるアマレスラーが貧弱な身体のアマレスラーの股間を扱き、

そして、膨らむその股間をシングレットごと口に含んでいたのであった。

「あぁっ、

 だめっ

 感じちゃう」

首を左右に振りながらヘッドギアを付けさせられたヨシオは訴えると、

『お前のチンポ、

 なかなか固いじゃないか』

と彼を手込めにしているアマレスラーは大胆に言い、

シュッシュッ

シュッシュッ

再び股間を扱き始めた。

「あぁっ、

 それ以上擦らないで、

 僕、それ以上されるとで、出ちゃう!」

マットの床を叩きながら限界に達してきたヨシオはそう訴えるが、

『まだまだ、

 まだまだガマンしろっ、

 アマレスラーは耐えるのか宿命だ』

とアマレスラーはそう言いながらも、

チロ

チロチロ

と盛り上がるヨシオの股間に舌を這わせてみせる。

「もぅだめ、

 出ちゃう、

 出ちゃう

 出ちゃうよぉ!」

泣きながらヨシオは許しを請うと、

『よし、じゃぁ出させてやる。

 その代わりお前はアマレスラーとしてレスリング部に入るな、

 俺の代わりに身体を鍛えるな。

 俺が許すまで試合に出るな』

と問いただす。

「判りました、

 入りますレスリング部員として身体を鍛えます。
 
 ですから出させてください」

その問いにヨシオが答えた瞬間、

『いいだろう…』

と言う声と共に、

シュシュッ!

ヨシオは盛大に射精をしてしまい、

シングレットとマットを汚してしまったのであった。

ハァハァ

ハァハァ

射精をしてしまったヨシオは肩で息をしていると、

ガチャ!

「あれ?

 おーぃ、ヨシオぉ、

 どこだぁ?」

と戻ってきたツヨシ達の声が部室で響く。

すると、

『さぁ、君の仲間が戻ってきたぞ、

 君がこれからすることは判っているよね』

ヨシオの耳元でアマレスラーの声が響き、

コクリ

その言葉に体中に汗を浮かばせるヨシオは静かに頷きながらゆっくりと立ち上がり、

部室へと向かって行く。

そして、

「なっなんだ?

 ヨシオっ、

 その格好は?」

ツヨシ達の驚く声が響くと、

「なぁ、お前ら、

 アマレスやろうぜ。

 吊パンは…ほら、まだいっぱいあるんだ」

と言うヨシオの声と同時に、

「やっやめろぉ!!!!」

ツヨシ達の悲鳴が響き渡ったのであった。



「やっぱりレスリング部員が入ったか…」

その数日後、教師は頭を掻きながらぼやくと、

ヨシオの他、4名がレスリング部の新入部員として名前を綴られている名簿を見ていた。

そう、あの日。

レスリングの味を覚えさせられたヨシオはツヨシ達に無理矢理シングレットを着させると、

皆にレスリングの味を教え込ましたのであった。

そして、

「せいっ!」

「せいっ!」

人気が途絶えていたレスリング部は再び男の汗の臭いで満たされるようになっていったのであった。



「それにしても、今回も裏で手を引いたのはマサシの奴か、

 まったく、死んでもなおもレスリングを愛するのは良いけど、

 ほどほどにな…」

教師は彼にとってかつてのクラスメイトであり、

アマレスに燃えながらも不慮の事故で急逝した友人の名前を呟くと、

「どれ、部員が居なくなったサブカル研究会は仕舞いにして、

 俺も一汗掻くか」

バッ

教師はシャツを脱ぎ去り、

シングレットが包む身体を晒すと、

ゆっくりとレスリング部へと向かっていったのであった。



おわり