風祭文庫・アスリート変身の館






「逆転」



原作・風祭玲

Vol.919





「ちょっとぉ!

 あなた達っ

 そんなところで何をしているのよっ!!」

放課後のアマチュアレスリング部部室

突然マネージャである鷺宮鈴子の怒鳴り声が響くと、

「あぁ?」

白ワイシャツに学生ズボンのまま開け放たれた窓の下に並んで腰を下ろし、

週刊雑誌を開いていた男子部員達は鬱陶しそうに見上げて見せた。

「あぁ?

 じゃないでしょうっ、

 練習はどうしたの?

 練習は?」

両腰に手を当て、

説教をする口調で鈴子はボルテージを上げていくと、

「うっせーなっ

 気が向いたらするよ」

と男子部員の中から2年の沼澤大輔がそれを制するように声を上げた。

「沼澤君っ!」

その声に鈴子は大輔の名前を呼ぶと、

「あなたキャプテンでしょう。

 率先して練習をしないとダメでじゃない。

 もぅ大会までひと月もないのよっ」

真剣な表情で鈴子は間近に迫ってきている大会のことを指摘するが、

「なんだよ、

 まだそんなにあるのかよ」

大輔から返ってきた返事は鈴子が希望するものではなかった。

「そんなにあるって…」

その返事に失望しながら鈴子は大輔の言葉を復唱すると、

「要するに優勝すればいいんだろう?

 別に無理に練習をしなくても大丈夫だよ。

 大体、吊パン着てレスリング場での練習なんて、

 ダサくて出来るかよ」

自信満々に大輔は言い聞かせて見せる。

すると、

「大丈夫だって、マネージャっ

 ちゃんと優勝しますから」

それを受けて他の部員達も笑みを浮かべながら相槌を打つと、

「もぅっ

 知らないっ!」

我慢の限界に達した鈴子はそう言い残して部室から出て行ってしまったのであった。



「まったく…もぅ!

 人が心配して言っているのに素直に聞かないんだから…」

一人で文句を言いながら鈴子が廊下を歩いていると、

ガランとしたレスリング場の前で女物のシングレットを身に着けた少女が

何か考え事をしているような表情で立っているのが目に入る。

「あれ?

 鬼頭さん?」

少女を見つめながら鈴子は声をかけると、

「あぁ、

 鷺宮さん…」

筋力トレーニングで厚みを増している肩を見せ付けるようにして

女子レスリング部のキャプテン・鬼頭美奈乃は振り向き、

「一人?

 他の人はどうしたの?」

いつも美奈乃と共に練習をしている他の女子部員の姿を探しながら鈴子は尋ねると、

なぜか美奈乃は静かに首を横に振り、

「女子レスリング部にはあたししか居ないわよ」

と返事をしてみせる。

「え?

 美奈乃しか居ないって?」

思いがけないその言葉に鈴子は驚くと、

「退部届け、出されちゃった」

力なく美奈乃は答え、

「はぁ、

 あたしの練習には付き合えないってさ」

とこの事態に至った原因を呟いて見せた。

「うそっ」

事情を知った鈴子は困惑気味に驚くと、

「そんなにキツイ練習をしたつもりは無いんだけどね…

 彼女達には無理だったみたい、

 あーぁ、

 やっと、大会で団体戦に出られるって思っていたんだけどね。

 なんでこぅなっちゃうのかな…」

空を見上げながら美奈乃はつい愚痴をこぼしてしまう。

「美奈乃…」

そんな美奈乃の姿に鈴子は声を詰まらせてしまうと、

「あぁ、そんなに心配しないでよ。

 また部員集めをすれば良いし、

 個人戦ならあたし一人でも出られるんだから、

 レスリングは絶対に辞めないわよ」

と言いながら鈴子を見つめる美奈乃の目は死んではなかった。

「はぁ…

 沼沢君達に美奈乃の十分の一のやる気があれば…」

それを見た鈴子がつい大輔達のことを愚痴ってしまうと、

「なぁに愚痴っているのよっ、

 男子は恵まれているわ、

 だって、沼澤君は目茶強いし、

 他のレギュラー部員…

 門倉君や相模君、

 大沢君に笹島君ってみんな大会に出ると力を出すじゃない」

と鈴子を励まし、

美奈乃は彼女の背中を叩くが、

「ううん、

 ダメなのよっ、

 いまのままでは絶対にダメっ、

 それはこの間の大会では強かったよ。

 でも、それはあくまでもこの間の大会の話であって、

 今度の大会では勝てる保証では無いもの、

 どんなに才能があっても怠っていては

 常日頃の練習を積み重ねている人には負けるわ…」

鈴子はそう言い切ると、

悔しそうにレスリング場の柱を叩いて見せる。

すると、

「いっそあたしと立場が逆転できればね…」

それを聞いた美奈乃がふとそう漏らすと、

「!!っ

 それよ、

 それよそれ!」

目を爛々と輝かせながら鈴子は美奈乃に迫った。

だが、

「でも、立場が逆転ってどうすれば?」

と言う美奈乃の言葉に、

「あっ、

 そうか」

鈴子はどう考えても実現不可能なことに気づくと肩を落とし、

「そんなこと、

 できたら誰も苦労しないわよねぇ」

と呟いたのであった。

 

「練習に付き合ってもらって悪かったわね」

「いいのよ、

 丁度身体を動かしたかったし」

日が暮れかけた頃、

美奈乃とのレスリングの練習を終えた鈴子は、

さっぱりとした顔をしながら女子レスリング部の部室から出てくると、

チラリ

と男子レスリング部の部室を見る。

だが、明かりが点る部室には動くものの姿はなく、

また、レスリング場にも結局男子部員達は姿を見せなかったので、

放課後はずっとあのままであることは明白であった。

「飽きもせずに…

 まったく…」

そんな男子部の様子に鈴子は苦虫を噛み潰したような表情をすると、

ポン!

と肩が叩かれ、

「ドンマイドンマイ」

そう美奈乃は励ますと、

「あたし、

 個人戦で頑張ってみるよ。

 そうすれば、きっとついて来てくれる人が出ると思うからさ、

 今日はありがとうね」

と言い残して制服のスカートを揺らしながら走り去って行く。

「ふぅ…

 とことん前向きね」

自分に背を向けて去っていく美奈乃を見送りながら鈴子はため息をつくと、

「さて、

 あたしにはまだマネージャとしてやることがあるか」

と気合を入れ直すと

男子レスリング部の部室へと向かい、

閉じられているドアを勢い良く開けるが、

その途端、

バスッ!

いきなり何かが投げつけられると、

鈴子の顔にヒットしたのであった。

「うっ

 臭い…」

ヒットと同時に顔を覆ったものを鈴子は剥ぎ取ると、

それは使い込まれたレスリングのユニフォーム

部員には吊パンと呼ばれているシングレットであった。

「きゃっ、

 何よいきなり」

手に取った吊パンを放り投げて鈴子は悲鳴を上げると、

ズラリ、

いきなり鈴子の前に吊パン姿の大輔たちが並び、

「よう、

 マネージャが練習練習って言うから、

 いまから練習を始めるぜ」

と真ん中に立つ大輔が言う。

「いまからって、

 もぅ今日は終わりよ、

 何でもっと早くから…」

大輔の言葉に鈴子はそう反論しようとするが、

「やるって言う以上、

 いまからやるんだよ」

と鈴子に迫りながら大輔は言う。

「なっなによっ、

 じゃぁ勝手に…」

迫る大輔を鈴子は突き放そうとするが、

「え?」

彼らの股間が一様に膨らんでいることに気づくと、

「なっなに?」

鈴子は顔を赤らめながら間合いを取ろうとする。

だが、

いきなり鈴子の肩を大輔が握ると、

「ただ、俺たちだけで練習って言うのも味気なくてな。

 ココは一つ、マネージャも練習に参加してくれないか?

 この吊パンを着てさ」

と囁きながらさっき鈴子が放り投げた吊パンを見せたのであった。

「いっいやよっ!」

見せ付けるようにして目の前に差し出された吊パンを叩き落として鈴子は声を上げると、

「なんだよぉ、

 折角やる気を出したのになぁ

 ツレない事を言うじゃないか」

含み笑いをしながら大輔はそう囁き、

その言葉と共に、

ジリッ

ジリッ

っと吊パン姿の部員が鈴子に迫ってくる。

「ひっ」

迫る部員の姿に鈴子が怯むと、

ほぼそれと同時に、

ガシッ!

大輔の腕がいきなり鈴子の足を握った。

「あっ」

悲鳴を上げる暇も無く、

鈴子の身体は宙を舞うと、

ドスッ!

部室の床に押し付けられ、

瞬く間に着ていたトレーニングウェアを脱がされてしまうと下着も剥ぎ取られ、

その代わりにあの吊パンが足に通されると、

肩へと引き上げられて行く。

そして、

「いやぁぁぁぁ!!!」

ようやく鈴子の口から悲鳴があがったときには

ピチッ!

鈴子の身体には男子用の吊パンが着せられ、

さらに足にはレスリングシューズまで履かされてしまった後のことだった。

「いやぁぁ、

 見ないでぇ」

着せられた吊パンの左右からはみ出した白い肌の乳房を鈴子は両手で隠しながら、

身体を丸め蹲ってしまうと、
 
「よう、マネージャっ、

 吊パンを着た以上、

 俺たちと同じアマレスラーだ。

 さぁ、レスリング場で練習をしようぜ」

と大輔はいうなり鈴子の手を強引に引き、

「いやぁぁ!!

 やめてぇぇ!」

悲鳴を上げる鈴子を引きずりながら、

部室から出るとレスリング場へと向かって行く。

そして、明かりが落とされ薄暗いレスリング場に到着するや否や、

「みんな、

 ウォーミングアップは終わっているな」

後からついて来た部員に向かって声をかけると、

「うぃっす」

股間を膨らます部員達は威勢の良い返事を返してきた。

「なっ何をする気?

 ねぇ、

 先生たちには何も言わないから、

 あたしを帰してよ」

胸を隠しながら吊パン姿の鈴子はそう懇願すると、

「変なことを考えているのはマネージャの方でしょう?

 僕たちは練習をするだけですよ」

膨らみきった股間を片手で扱きつつ大輔は言い聞かせる。

「うっ嘘よっ」

その姿に鈴子はハッキリと断言するが、

「じゃぁ、始めましょかマネージャ、

 まずは寝技から」

と鼻息荒く大輔は腰を降ろすと、

ダッ!

鈴子に向かって飛び掛ったのであった。



「いやっ!」

「おらっ」

「やめて」

「はは、回してみろよ」

「離してぇ」

「ほらほら、フォールだ」

大輔の一方的な攻撃が鈴子を襲い、

たちまち鈴子は息も絶え絶えとなってマットの上に這いつくばってしまう。

だが、それで終わりではなく、

「次は俺!」

「俺だって」

次々と部員達が鈴子に襲い掛かり、

降り注ぐ部員達の汗を浴びながら鈴子はマットに背中をつけると、

「おらっ」

ドスッ

部員が鈴子を押しつぶし始めた。

「くっ苦しい…」

試合なら鈴子がフォール負けしているシチュエーションだが

しかし、潰しに掛かる部員は緩めることなく潰し続け、

「へへっ

 マネージャの身体って柔らかいですね」

っと囁きながら自分の身体を揺すりはじめた。

「おいっ、

 何をやってんだよ」

そんな部員に向かって大輔は笑い始めるが、

「いやっ、

 なんで…

 どうして…」

部員の下でついに鈴子は泣き出してしまった。

と、そのとき、

ジリッ!

マットにつけている背中が熱くなり始めた。

ジリッ

ジリジリ…

まるで背中を焼き焦がすようなその熱さに

「え?」

鈴子が気がつくと、

ドクンッ!

今度は胸が大きく高鳴る。

「あっ

 あっ

 あぁぁぁ…

 なに…

 身体に力が…

 あぁぁぁ…

 凄い…

 とっても凄い」

ドクンドクン

暴れるように脈打つ鼓動に鈴子は戸惑いながらも、

次第に湧き上がってくる力を感じ始めた。

すると、

メリッ

メリィィィ…

押しつぶされそうになている鈴子の身体の筋肉が膨らみ始めると、

ググッ

グググググ…

圧し掛かる部員を押し戻し始め、

見る見る鈴子の背中が床から離れていくと、

ミシミシミシ…

弓反りになって大きくブリッジをしてみせる。

「なっなに?」

思いがけない鈴子の変化に大輔たちは驚くが、

しかし、それはまだ始まりに過ぎなかった。

メリメリメリメリ…

鈴子の筋肉はさらに盛り上がり、

ムクッ!

縦溝が刻まれていた股間に膨らみが姿を見せると、

ムクムクムク…

一気に隆起していく。

そして、

ガシッ!

部員の身体を太くなった腕が掴みあげると、

「ふんっ!」

その一言共に部員の身体は2・3回転しながら床に転がっていく。

そして、

「おらぁ!」

野太い声が響き渡るや、

ドンッ!

「いてててて!!!」

部員の悲鳴があがり、

筋肉が膨らんだ体に吊パンを貼り付けた屈強のアマレスラーが部員を組み敷いたのである。

「なっなんだ、それは」

目の前で起きた鈴子の変身劇に皆は一様に驚くが、

「俺のフォール勝ちだ

 負けたお前には女になって貰うぞ」

と言うと、

徐に自分が着ていた吊パンを脱ぎ始め、

さらに部員が着ていた吊パンを脱がせてしまうと、

「ふふっ」

意味深な笑みを浮かべながら、

股間から硬く起立している肉棒を部員の股間に押し込んだ。

その途端、

「うぎゃぁぁぁぁ!!!」

部員の悲鳴がレスリング場に響き渡り、

「離せぇぇぇ」

部員を鈴子を押しのけようとするが、

しかし、鈴子はその強烈な力で部員を床に押し付けると腰を振り始めた。

「痛い

 痛い

 痛い」

鈴子が腰を振るごとに部員の悲鳴は上がり、

「ははは…

 痛いだろう?

 いまお前の股にマンコを作っているんだからな、

 これが出来上がればお前は女だ。

 明日からは女子アマレスラーとして

 女子レスリング部で汗を流せ」

と言い聞かせると、

「うぉぉぉっ!」

雄叫びを上げながら部員の体内に己の熱い体液を注ぎ込んだ。

そして、ゆっくりと身体を離すと、

股間にぱっくりと女の証を開いている部員が青息吐息で身を横たえる。

「さぁて、

 次は誰だ?

 お前かぁ?」

ヌラヌラと股間から伸びるイチモツを光らせつつ、

鈴子は大輔を指差すと、

「ひぃ!」

大輔の悲鳴が夜のレスリング場に響き渡った。



次の日、

「ねぇねぇ

 聞いて聞いて」

シングレット姿の美奈乃が男子レスリング部のドアを開けると、

「どうしたの?」

Tシャツ姿の鈴子は筋力トレーニングをしている最中であった。

「え?」

記憶していた鈴子の姿といまの鈴子の姿が一瞬合わないことに美奈乃はキョトンとしていると、

「どうしたの?

 美奈乃?」

と鈴子は返事をしながら立ち上がり、

ゆっくりと向かっていくと、

そっと彼女の頬を撫でながら2・3回頭を叩いてみせる。

その瞬間。

パチッ!

美奈乃の頭の中にさまざまなイメージが沸き起こり、

それがすぐに落ち着くと、

「あっうぅん、

 なんでもない。

 そうそう、女子レスリング部に新入部員が入ったのよっ、

 これで今度の大会に団体戦が出来るわ」

と目を輝かせながら新入部員のことを報告すると、

彼女の後ろに並んでいる女子レスリング部員を指差してみせる。

「そう、それは良かったね」

顔を赤らめ

女子用のシングレット姿を恥ずかしげに披露する女子部員をチラリと見たあと、

鈴子はそっけなく返事をすると、

「うんっ、

 男子にも新入部員が来ると良いね」

と美奈乃は話し掛け、

そして、

「個人戦に出るんでしょう?

 お互いに試合頑張ろうね」

そういい残して美奈乃は部室から去って行く。

そんな彼女を見送りながら、

「さて、

 俺も頑張らないと」

鈴子もまた気合を入れなおすと、

バッ!

着ていたTシャツを脱ぎ、

筋肉が張り出す吊パン姿となってレスリング場へと向かっていったのであった。



おわり