風祭文庫・アスリート変身の館






「脱皮」



原作・風祭玲

Vol.767





良く晴れ渡った秋の休日。

新体操競技大会の横断幕が掛かる公立体育館は、

出場する選手と応援に駆けつけた出場校の生徒達でごった返し、

その体育館の中に設けられていた演舞台の上では、

最近、急速に力をつけてきた学校の新体操部による演舞が

いままさに始まろうとしていた。

「みんなっ、

 いいねっ」

「はいっ」

手具を片手に試合用のレオタードを身につけたリーダーが声を張り上げると、

シニョンのひっ詰め頭に同じレオタード姿の部員達は声をそろえて返事をする。

そして、リーダーが手を差し出すと、

各々がその手の上に手を重ね合わせ、

「ファイトォ!」

「オォーッ」

と威勢のいい掛け声を上げた。

そして、スグに別れて演舞台へと上がると、

それぞれの位置につき時を待つ。



ポーン!

音楽が流れるのと同時に天井めがけてフープが高く飛び、

それが回転をしながら落ちてゆくと、

クンッ!

伸びた手に絡まり、

クルクル

と回りながら選手の手に収まっていく。

それを合図にして、

待機していた同じレオタード身に着けた選手が、

あるものは右に、

あるものは左にと展開してゆくと、

一糸乱れぬ統率感を見せながら舞踊り、

そして、観る者をその世界へと引き込みはじめた。



「へぇ…

 応援に借り出されて来たけどさっ、

 ウチの新体操部って結構ヤルじゃん」

この新体操部の出場校であり、

応援に駆けつけていたその学校の女子生徒は興奮をした口調でまくし立てると、

「そうねぇ…でも…」

彼女の隣で見ていた別の女子生徒は腑に落ちない顔をする。

「なにか、引っかかることでも?」

それを聞いた女子生徒が聞き返すと、

「うん、

 あたしの友達がねぇ

 この新体操部に入っていたんだどさぁ…

 でも、団体演技を出来るほど部員は居ないって

 嘆いていたんだよねぇ…」

と呟く。

「え?

 うそっ、

 マジで?」

それを聞いた女子生徒は驚きながら、

改めて演舞をしているレオタード姿の部員を見ると、

「でもさっ、

 ちゃんと人数いるし、

 新体操だってちゃんとしているよ?」

と指差した。

「うん、それなんだよねぇ…

 頭数を揃えるなら他の部から借りてきてレオタード着せておけば、

 それっぽく見えるんだけどさ、

 でも、こんなにちゃんとした新体操を見せられちゃうとねぇ

 いつの間に部員を入れたのかしら?」

女子生徒はそう言いながら首をひねる。

一方演技は滞りなく進み、

最後のフィニッシュが華麗に決まると、

割れんばかりの拍手が響き渡っていた。

こうして新体操部はフープの演技のほかにも得点を重ね、

ついに賜杯を手にしたのであった。

「おめでとう、

 良くがんばったわね」

感激のあまり集まって泣いている彼女達に顧問の三谷法子が優しく声をかけると、

「はいっ」

皆涙声で返事をした。

だが、

「あっ」

突然そのうちの一人が何か急にモゾモゾし始めると、

「すっすみませんっ」

と股間を押さえながら声を上げた。

「なによっ

 もぅ」

それを聞いたほかの部員達が怪訝そうな目で見ると、

モコッ!

その部員の股間を大きく膨らんで来ていたのであった。

「三岳く…いや、さんっ

 スグに更衣室に行きなさい」

それを見た法子はそう指示をすると、

「すみませんっ」

三岳と呼ばれた部員は股間を隠しながら更衣室へと向かっていった。

「あーもぅ」

「興ざめね」

「まったく…」

慌てて去っていく部員を見送りながら

他の部員達は覚めた目をしていると、

「さーさっ、

 あなた達も早く着替えなさい。

 明日はアッチの試合なんでしょう」

と法子は指摘した。

「あっ!」

それを聞いた部員達は皆一斉に何かに気付くそぶりを見せると、

「では、賞状と盾をお渡しします」

と言いながらさっき貰ったばかりの優勝の証を法子に託し、

皆一斉に更衣室へと引き上げて行く。



ザワザワ…

女子更衣室はレオタードから着替えをする選手達でごった返していた。

そして、その中を掻き分けて三岳薫は自分のロッカーの前にたどり着くと、

ムリッ!

その股間からは逞しい肉棒が反り返り、

レオタードの股間を高く突き上げていた。

「あぁ…

 こんなになっちゃって…」

それを見ながら薫はいきり立つ自分の肉棒を諌めようと試みるが、

だが、硬く勃起してしまっている肉棒は簡単に収まる筈は無く、

先走りを流し始めてしまった。

「うぅ…

 どっどうしよう」

レオタードの股間に染みを作り始めてしまった肉棒の存在に薫は困惑していると、

「なぁにをしているんだよ」

「ションベンでもすれば、

 収まるって」

と言いながら後から来た他の部員達はそう言い、

代わる代わる薫の背中を叩いた。

そして、周りを気にせずにレオタードを抜ぎ、

みんな全裸姿になり飾り毛が生える秘所を晒すが、

ムンッ!

突然一人が身体に力を込めると、

次々と他の者も力を込めた。

すると、

モリッ!

モリモリッ!

皆の秘所が急に盛り上がっていくと、

ググッ

グググググ!!!

秘所は見る見る引き吊って行き、

そして限界まで達したとき、

ビリッ!

ついにその先端が破れてしまうと、

ブルンッ!

中より立派な男性自身が飛び出してしまった。

「ふぅ…」

股間よりイチモツを飛び出させながら、

部員達は一息つき、

さらに力を込めると、

モリッ

モリモリモリ!!

今度は身体中に筋肉が浮かび上がり、

ベリベリベリ!

バリバリバリ!

っと股間に出来た裂け目が全身に広がっていくと、

ベリッ

シニョンに髪をまとめた少女の顔が真っ二つに引き裂け、

「ふんっ」

「うっしっ」

引き締まった全身の筋肉を見せつけるようにして、

短髪頭の男の顔が飛び出してきた。

「全く、こんな皮を被せやがって、

 何が新体操だよ」

さっきまで新体操部員をだった皮を手に持ちながら男は愚痴をこぼすと、

「仕方が無いだろう、

 みんな同じなんだからよ…」

と同じように男になった部員が声を掛け、

「ほらっ、

 三岳もさっさとその皮を脱ぎな、

 もうすぐ計量が始まるぞ」

と指摘をすると、

ロッカーにしまっておいたバッグから、

レスリングのユニフォーム・吊パンツを取り出し、

それに足を通した。

こうして、

新体操部員がマッチョなレスリング部員へと変身してしまうと、

「ようっ

 今日は負けたけど、

 明日は負けないからな」

と他校の吊パンツを身に着けた男が声をかけてきた。

「おぉっ、

 掛かってこい、

 返り討ちにしてくれる」

さっきまで華やかだった女子更衣室だった部屋は、

いつの間にか男の汗の臭いが充満する男子更衣室に変わり、

そして、レオタードから吊パンツに着替えたアマレスラー達は

互いの健闘を称えながら出て行ったのであった。



「ふーん、明日はレスリングの試合があるんだ」

新体操の試合観戦後、

体育館を後にしたあの女子生徒は

いつの間にか架け替えられた横断幕を読むと

「観にいってみようかなぁ…」

と呟きながら足早に立ち去って行く、

さっき観戦をした同じメンバーが出ていることは知らずに…



おわり