風祭文庫・アスリート変身の館






「呪れた部室」


作・風祭玲


Vol.012





それは辛かった期末試験がよーやく終り、

夏休みを目前に控えた初夏の日のことだった…

「あぁ…レスリング部の部室を新体操部の部室にする話?」

レスリング部の顧問である本間先生は私に尋ねてくると、

「えぇ、三笠先生の方からお話が行っていると思いますが…」

そう私は返事をする。

すると本間先生は頭をかきながら、

「ふぅぅん、君たちがあの部室にはいるの?」

と聞き返してきた。

「はい…」

先生のその問に私は首を傾げながら返事をすると、

「となると…明日にはレスリング部は再開できる…か…」

と呟きつつ机の引き出しから一つの鍵を取り出し、

「ほれ、これが部屋の鍵だ。

 ただ、しばらく使っていないし、

 前の連中が結構汚く使っていたから掃除が大変だぞ、

 まっ、いらないようなものは遠慮なく捨ててもいいからな」

と言いながら私に手渡す。

「………?」

一瞬、私は先生の言葉の意味を考えたが、

「早くしなよ」

と後ろからつつかれると、

「それでは判っています」

と本間先生に向かって私は笑顔で返事をしてみせる。



「失礼しました」

頭を下げながら職員室から出た途端、

「ふぅぅ…

 皮肉の一つでも言われるかと思ったけど、

 随分あっさりと鍵を渡してくれたね」

「とっくに諦めているんじゃないの?」

「まぁ、2年も部員がいないのではしょうがないわよねぇ」

「でも、本間先生ってその昔オリンピックか何かに出た人なんでしょう?」

「あぁそれ知ってる。

 ソウルだがのオリンピックに出たんだよねぇ…

 メダルには届かなかったみたいだけど」

「そんな人がなんでウチの学校なんかでくすぶっているの?」

「ウチの卒業生らしいよ…」

「ふぅぅん…」

「せめてもの供養に私たちがきれいに使ってあげよう」

「きゃはは…」

と皆は好きなことを言い始めるが、

そんな彼女たちの台詞をバックに私は、

「さっきの言葉の意味って…何だったんだろう」

と考えていた。

けど、あまり深く考えても仕方がないので、

「まぁいいか、

 さて、行きますか」

チャラッ

と鍵を握りしめると私たちは部室へと向かい始めた。



私を先頭に同じ柄のジャージ姿の新体操部員6人がゾロゾロと廊下を歩き、

職員室があるこの北校舎を出ると、

そのまま渡り廊下を進み、

やがて運動部の部室が集まっている体育棟の入り口に出た。

体育棟はコンクリートの地肌がむき出しの素っ気ない建物だが、

ここは教育上の配慮からか1階は主に男子、

2階は女子と分けられていていた。

しかし、私達の新体操部は数年間に作られたばかりの新参者だけに、

創部以来、ずっと女子体操部と部室を兼用していたのだった。

しかし兼用部室は狭く、

また何かとトラブルも多かったので、

部員が無く廃部同然のレスリング部の部室を新体操部の新部室として使わせてもらうため、

私達・新体操部2年生部員の6人がその後片づけと整備にかり出さたのであった。



私達は2階の体操部の部室へは行かず、

そのまま1階奥にあるレスリング部部室へと向かい始めた。

「ねぇ、

 こんな奥じゃぁレオタードのままでは歩けないね」

と一人が左右を見ながら囁くように指摘すると、

「まぁ、男達がウロウロする1階の奥じゃ仕方ないよね」

「ジャージ着ていけばいいんじゃない」

「部室があるだけマシよ」

などと言う声が次々とあがった。

そして目的地であるレスリング部の部室の前へと到着したが、

しかし、ドアの前にはしばらく使っていなかったためか、

ゴミやら不要品やらが山と積まれていて

とてもすんなりと入れる状況ではなかった。

「まったく、これだから男どもは…」

目の前のゴミを眺めて美和子が嘆くと、

「まずはこれからの片付けだね」

ため息混じりに京子が言う。

「よしっ

 じゃ始めますか」

私が腕をまくり上げながらそう言うと、

私達は手分けしてドアの前にある障害物を取り除き始め、

そして約30分後、

よーやくドアにたどり着くコトが出来た。



「じゃぁ、開けるよ」

障害物が除かれたドアの前で鍵を手に私がそう言うと。

「ふっ、鬼でも蛇でも出てこいってんだ」

と言う声が上がる、

「なに、言ってんのよ」

ガチャッ!!

その声に向かって私はそう言いながら鍵を回して、

キィ…

乾いた音を立るドアをそっと開けてみた。

すると、

ザワザワ…(フッ)

「えっ?」

一瞬、部屋中にざわめきと人影があったような気がしたが、

しかし、それらはスグに消えてしまい、

私は思わず呆気にとられた。

「何かいたの?」

呆気にとられている私の様子に知子が恐る恐る尋ねてくると、

「ハッ」

私はスグに我に返ると慌てて中を見回したが、

しかし、私の視界に飛び込んできたのは只の埃っぽい部屋の様子だった。

「なぁにそこで立ちつくしているのよっ

 鍵が開いたのならサッサと中に入ろうよ」

そう言いながら入り口で立ちつくしている私を押しのけて美和子が部室に入ると、

グルリと中を見回しながら、

「何もいないじゃない」

と残念そうに言うが確かに何もいなかったのである。

「それにしても汚い部屋ねぇ…」

美和子の後に続いて入ってきた京子が部屋の感想を言うと、

「どぅやればこうまで汚せるのかレシピを聞いてみたいものねぇ」

と呆れながら知子も言う。

確かにそれくらい部屋は汚かった。

ロッカーには汗を拭いたであろうタオルがそのまま掛かったままだし、

テーブルの上には雑誌やらなんやらかんやらが、

そのままの状態で放置されてい有様で、 

まるで部屋中がゴミに埋もれているようだった。

『…………』

けど、私にはなんだか誰かに監視されている様な感じがして半分気味が悪かった。

「さぁて、じゃはじめますか」

と言う美和子のかけ声で、

私達は閉め切られていた窓を開けると部室の一斉清掃を始めたものの

しかし、山のようなゴミと埃に私達の片付けは遅々として進まず、

日暮れ前までになんとか目処を立てることが出来た。

「お疲れさまぁ…」

「あぁ疲れたぁ…」

グッタリとしている美和子達をよそに、

私はようやくきれいになった部室を見渡していた。

「ふぅ…これなら大丈夫ね…」

そう思っているとき、

『………』

再び私は視線のようなモノを感じた。

「え?」

慌てて振り向くと、

そこにはロッカーがあるだけだった。

「どうしたの?

 まさか…覗き?」

私の様子を見て知子が声を掛けてくると、

「うぅん、何でもない…

 私もちょっと疲れたみたいね…」

私は額の汗を拭いながら返事をする。

「みんなっ、おまたせぇ!!」

それと同時にスーパーの袋を手にした祐子が部室に戻ってきた。

そして、みんなで祐子が買ってきたジュースとお菓子を肴に喋っていると、

ふと何かに気づいた洋子がロッカーの方を指さすと、

「あれぇ?、

 さっき開かなかったロッカーのドアが開いているわよ」

と意外そうな声で指摘をしてきた。

「え?」

私はつられるように彼女の指さした方を見てみると

確かに掃除の際にはいくら開けようとしても開かなく、

「きっとノブが壊れているんでしょう」

と結論づけて片付けを後回しにしたロッカーの扉がなぜか開いていたのであった。

「ん〜?」

洋子は席を立ってそのロッカーの様子を見に行くと。

「やだぁ…なにこれぇ…」

っと声を上げた。

「どうしたの?」

と言いながら私は洋子の傍に行くと、

キィ…

そのロッカーの扉が独りでに大きく開いたのと同時に、

ドザドサドサ!!

っと言う音を立ててロッカーの中から

男達の汗をたっぷりと吸い込んだようなレスリングのユニホームや

アンダーウェア、シューズなどが雪崩打つように飛び出してきたのである。

「うわぁぁぁ、なによなによ」

それを見た京子が悲鳴を上げると、

「ともちゃん、急いでゴミ袋をこっちに持ってきて」

っと美和子が叫び声を上げる。

「これは…」

しかし、私は出てきたユニホームなどの異様さに目を疑った。

そう、出てきたユニホームは2年以上放置されていたはずなのに、

ついさっきまで屈強の男達が身につけていたかのような汗で濡れ、

臭いを発散していた。



美和子に急かされた知子は急いでゴミ袋を取に行き、

戻ってくるとそれを美和子に渡そうとしたが、

けど、どういう訳か美和子は汚れているユニホームを手に取ったまま

顔を赤くしてじっとそれを見つめているのである。

「どうしたの?

 美和子…」

そう言いながら私は美和子の顔を覗いて見たが、

しかし、美和子はジッとユニホームに視線を落としたままだった。

「?」

私は彼女の様子を不思議に思いながらも、

足下に落ちているユニホームを拾おうとして手を触れた途端。

『………』

ビクン!!

何かが私の中に入り、

「え?(トクン…)」

その瞬間、私の手が止まった。

「(ハァ…)

 なに?、この感覚…」

私は胸の奥から湧き出てくる妙な感情に戸惑い。

やがて、それは、

「…たい…

 これを着て…闘いたい」

と言う衝動に変わるまでそんなに時間がかからなかった。

どれくらい時間が経っただろうか、

あたりの静寂さに私は気がつくと、

いつの間にか他のみんなも私の傍に来て

ユニホームを手に取ったままじっとそれを眺めているのである。

「……(ハァ)…あっ私…」

部屋の隅の方にいた藍子が息を荒げながらそう呟くと、

いきなり着ていたジャージを脱ぎ始めた。

すると、彼女の行動に触発されてか、

「私も…」

「私も…」

とみんなも次々とジャージを脱ぎ捨て、

アンダーウェアに足を通し、

さらにレスリングユニホームを次々と身につけはじめる。

「ちょちょっと…みんなどうしたの?」

それを見た私は思わず声を上げようとしたが、

その時…

『お前は着ないのか?』

と言う声が私の頭の中に響いた。

「だれ?」

私は左右を見ながら声を上げると、

『さぁ、みんなが待っているぞ』

声は再び私の頭の中に響き渡る。

「イヤよ」

声に反発して私が首を振っていると、

『さぁ…お前はそれを着て闘うのだ…』

声は抵抗をする私に絡みつくように響いた。

「イヤ…!!」

私はそう叫びそのまま立ち上るが、

しかし、

「ねぇ…千香ちゃん…

 私…千香ちゃんと闘いたい」

ユニフォームを身につけシューズを履いた京子が

キュッ

キュッ

っとシューズを鳴らしながら腰を落とすと私に向かって構えて見せる。

「そんな…

 しっかりしてよ、みんな!!」

それを見た私は声を上げたが、

「ふふ…もぅみんな着替え終わったよ、

 さぁ、残っているのは千香ちゃんだけ…」

同じユニホーム姿の美和子がそう言うと、

グィッ

っと一着のユニホーム私に差し出した。

「イヤよ、そんなの着ないわ」

パシッ

私はそう叫んで美和子の手を払いのけると、

「ふふ、強情ね、

 でも、コレを着て闘いたいんでしょう、
 
 顔には出ているわよ」

と私の心を見透かすようにして言う。

ドクン…

するとそれに合わせるようにして私の胸が高鳴ると、

『くく、

 さぁどうする?』

笑いながら声が私の頭の中に響いた。

すると、私の右手が勝手に動き、

美和子が持つユニホームへと伸びて行くと、

「………だっだめっ」

自分のその行為に私は必死になって止めようとするが、

「みんな…やっちゃえ!!」

突然、美和子がそう声を上げると、

ワッ

みんなの手が一斉に私に向かって伸び、

「ダメぇぇぇぇ」

「ダメ」

「ダメ」

私は必死になって伸びてくる手をたたき落とすが、

しかし、スグに捕まってしまうと、

着ていたジャージ・下着類をすべて脱がされると私は全裸にされてしまった。

「いやっ!!」

私は恥ずかしさに胸と股間を隠すが、

しかし、スグにお尻が丸出しのアンダーウェアに脚を通されると、

続いてユニホームが強制的に身につけさせられる。

ピタッ!!

ヒヤッ!!

ユニホームに染みこんでいた汗の冷たさが私の肌に伝わってくるのを感じると、

ギュッ!!

っと脚にレスリング用の靴下とシューズを履され、

ツーン…

っと男の汗の臭いが私を包み込んだ。

「あぁぁぁ…」

為す術もなくユニホーム姿された私はその場に蹲ったが、

しかし、徐々に心の中に、

「あぁ…闘いたい…」

と言う気持ちが沸き上がって来たのであった。

「さぁ…千香ちゃん

 私と闘おうよ」

再び構えた京子が私の肩を叩きながらそう言う、

「闘う…?」

その言葉に反応した私は起きあがると同時に、

バッ、

彼女へ飛びかかり、

彼女が驚く間もなく私は彼女のバックを取ると、

「うりゃぁぁっ!!」

と言うかけ声と共に京子の身体をひっくり返してみせる。

レスリングなんて知らないはずなのに、

私の身体はまるでレスラーのように動く。

「くっ」

京子は歯を食いしばりながら両肩を床に着けまいとしてブリッジ姿勢をとると、

バッ!

私は彼女にのしかかり潰しにかかった。

「おっ良いぞ、やっちぇやっちゃえ」

その様子を見ていた美和子が声を上げるが、

しかし、彼女も飛びかかってきた祐子によってひっくり返されると、

たちまち室内はレスリングユニホーム姿の少女達による

レスリング場と化してしまったのであった。



「さぁ、どうする?

 このままフォールされたい?」

髪を振り乱した私は京子の身体を押さえつけながらそう言ったとき、

「くっ」

力む京子の身体が変化し始めた。

ビシビシビシ!!

突然、彼女の首筋が盛り上がり緊張すると、

ビキビキビキ!!

まるで脂肪を吸収するようにして体中の筋肉が盛り上がり始めた。

「うわっ」

そして、それを見た私は思わず手を離すと間合いを取るが、

「うぉぉぉぉぉぉ!!」

雄叫びを上げるかのごとく声を張り上げる京子の身体は、

メキメキ!!

と言う音を上げながら肌に血管が浮き出ると骨格が変わっていく。

そして、膨張していく筋肉で彼女の手足は盛り上がり、

デコボコになった腹筋が脈動をする。

「そんな…」

唖然と彼女の変身を眺めていた私だったが、

しかし、

更に驚いたのは喘いでいる京子のユニホームの股間に、

ジワッ

っと黒ずみが広がったてきたと思った途端、

ムクリ!!

と盛り上がってしまうと、

まるでユニホームの下を何かが芽を出して成長していくように伸び始めた。

「これは…」

驚く私の目の前で膨らみはまるで生き物のように蠢きながら

ユニホームを引っ張り上げていく、

「あっあぁ…」

変化していく体の感覚に京子は口をパクパクさせながら声を上げるが、

しかし、成長していく”それ”はユニホームを限界まで引き上げると裾を大きく広げ、

その中にあるアンダーウェアはおろか実体までもを露にしてしまった。

「そんな…きょうちゃんが男になっちゃった…」

私はただ呆然としながら、

ビクン!!

ビクン!!

と京子の股間で脈打つ肉棒を眺めていた。

ところが、

「あっ、うぅ…いぃっ、いいよぉ」

と言う声に私が振り向くと、

京子と同じような逞しい男の肉体と化してしまった美和子と祐子が絡み合い

美和子の手が真っ直ぐに突っ立っている祐子のユニホームの頂点をムンズと掴み扱いていた。

「へへ…どうだ?

 …イキタイか?」

イヤらしい笑みと股間に大きな膨らみを立たせて美和子が祐子に囁くと、

「お願い…美和子…イかせて」

っと祐子は美和子に懇願する。

「いや、まだイかせないよ

 お前がイクのは俺をもっと楽しませからだよ」

と美和子はまるで男のような口調で祐子に言い、

「さぁ、俺のも気持ちよくしてくれよ」

と言うと股を開いて祐子にシミが浮き出ている股間を見せつけた。

「…オスッ」

それを見た祐子は小さくそう返事をすると、

ユニホームの裾から手を入れ、

大きく勃起する美和子の肉棒を扱き始めす。

「あぁ…いいぜ…祐子ォ…

 俺もお前のをしてやるぜ」

肉棒を扱かれる美和子が言うと、

祐子の股間に顔を沈め両手を彼女の股間に入れ、

ユニホームを盛り上げている祐子の肉棒を攻めていく、

「おぉ…」

「あぁ…」

雄と化した二人が攻め合う様子を見ながら私は、

「ふっ二人とも、

 やめなよ、そんなこと…」

と言うのが精一杯だった。

しかし、部屋の隅では、

「うっうっうっ…」

「んごぁ」

やはり変身をしていた知子と洋子も絡み合い、

ユニホームの裾からだした互いの肉棒を愛撫し合っていた。

「ぷはぁ…

 あっ、千香ちゃんはまだ男になっていないんだ、

 早く男になっちゃえば気持ち良いよこれぇ…」

銜えていた洋子の肉棒を吐き出して知子が私にそう言うと、

「いやよ…そんなこと…」

私はそう言いながら引き下がっていく、

しかし、突然、

ムンズ

っと私の肩がつかまれると、

いつの間にか復活した京子が私を抱きしめ、

「(はぁ)千香ちゃん、俺のもしてくれよ」

と息を荒げながら勃起した肉棒を私のお尻にこすりつけ、

そして片手で私の陰部をなで始めたのである。

「いっいやぁぁぁ!!」

私は思わず悲鳴を上げて、

京子の手を払いのけようとしたとき、

ジワッ!!

急に股間が湿り始めると、

ムリッ!!

っと何かが顔を出した感覚を覚えた。

私は慌てて自分の股間に手を持っていくと、

モコッ

っとした塊が股間に顔を出していて、

それがゆっくりと成長していく様子が感じられた。

「千香ちゃんにも生えてきたんだね」

京子が優しく私に言う、

「ひぃぃ…いやぁぁぁ!!」

京子に抱えられるように私は取り乱すと、

バン!!

彼女の手を払いのけ、

私は部室の外へと飛び出していった。

既に日が落ちた外は闇に包まれ、

ムッとした熱気が私の身体を包み込んでくるが、

しかし、その中を私は無我夢中で走っていく、

ビシビシビシ!!

モリモリモリ!!

走りながらも私の身体は確実に変化し、

それに合わせるようにして股間の膨らみも成長し、

アンダーウエアとユニホームを持ち上げて行く。



ビキビキビキ!!

全身の筋肉が引きつり潰れ引き延ばされるようなそんな感覚に

気を失いそうになりつつも私は必死に走った。

何処をどうやって走ったかは判らないが、

程なくして前方に煌々と輝く体育館の灯りを見たとき、

私は体育館に飛び込んでいた。

ダダン!!

ハァハァ…

体育館に飛び込み、肩で息をする私を待っていたのは、

「ほぅ、ランニングとは関心だなぁ」

っとレスリングのユニホームを身につけ、

そして腕を組んで私を見つめる本間先生だった。

「せっ先生…」

私は顔を上げて本間先生を見ると、

「おらっ、なんて顔をしているんだ、

 スグに準備運動をしろ」

と私に怒鳴る。

「え?」

先生の言葉に意味が飲み込めず私が呆然としていると、

「おらっ、何をボサッとしている。

 アマレスラーならキビキビとしろ!!」

私をにらみ付けながら先生は怒鳴るが、

「そんな…レスラーって」

私はオドオドしながらガラスドアに写っている自分の姿を見て愕然とした。

そう、そこには顔は少女のままだが、

しかし、胸板は厚く、

デコボコに盛り上がった腹筋、

著しく筋肉が発達した四肢、

そして股間のユニホームを盛り上げている肉棒…

そんな”いびつなレスラー”の姿が映し出されていたのであった。

「あぁ…」

衝撃的な自分の姿に私は驚きの声を上げていると、

「ははは…どうだ?

 アマレスラーになった気分は…

 なかなか逞しい身体になったじゃないか」

と先生は私の身体を眺めながら言う。

「…それっとどういう意味ですか?」

先生の言葉に思わず私は聞き返すと、

「付喪神…って知っているか?」

急に真顔になった先生は私に向かって尋ねる。

「ツクモガミ?」

首を傾げながら私が聞き返すと、

「あぁ、古くなって捨てられたり、

 しまい込まれて忘れ去られてしまったモノが、

 年月を経て妖怪になったヤツだ」

先生はそう言って視線を外に向けると、

「ずっと昔…

 ウチの学校はレスリングが強くてなぁ…

 あの部室にはいつも大勢のアマレスラーが屯って居たそうだ。

 しかし、年月を経るウチに徐々に部員は減り、

 やがて、

 使われなくなったり忘れ去られたりしたユニホームや用具が妖怪になった…」

と続ける。

「じゃぁ、あの時のあの声は…」

説明を聞いた私がそう呟くと、

「ちゃんと、アナタも聞こえたのね、

 そう、それは付喪神と化した用具達の声…」

とどういうワケか女言葉を喋り始めた先生が答えた。

「先生はそれを知ってて…」

本間先生の言葉に驚きながら私が聞き返すと、

「ふふ…」

先生は笑みを浮かべながらピンっと一枚の紙を私に向かって飛ばし、

「これは…」

私は足下に飛んできたそれを拾い上げると驚きの声を上げる。

「ふふふ…」

本間先生は相変わらず笑みを浮かべていた。

「先生、これはなんですか?」

紙を手にした私が尋ねると、

「それはねぇ…この学校に入ったばかりの私の姿よ」

っと先生は私に告げたのであった。

そう、私が手にした紙は一枚の写真で、

その中にはレオタード姿の女の子がはにかみながら写っていた。

「そんな…じゃぁ先生は…」

先生の言葉に私は驚くと、

「私は女子体操をしていたのよ

 でもねぇ、あの部室に入りこんだとき、

 付喪神達によってこの身体にされてしまったわ」

そう言いながら先生は筋肉が盛り上がっている自分の身体に視線を落とす。

そして、

「ふふ…あの部室に屯って居る付喪神達は、

 そこに踏み入れた者達を皆アマレスラーにしてしまうのよ、

 そう、私や、あなたみたいにね…

 だから、これまでレスリング部に所属したレスラー達っは

 みんな屈強のレスリング部員にされた女の子なのよ」

と続けたのであった

「そんな…

 じゃぁ」

その時、私は実感した。

すべては仕組まれていたことを…



おわり