風祭文庫・アスリート変身の館






「ザ・マワシファイター」
(最終話:勝負の行方)


作・風祭玲

Vol.1016





わたしの邪魔をする者は誰もいない。

力士達もそろった。

そう…奉納相撲を開く準備はすべて整ったのだ。

残っているのはわたしの名において奉納相撲を開くのみ…

そのことを考えた途端、

胸の奥から熱いモノがこみ上げてくると

「あーはっはっは、

 ぶわぁーはっはっは!」

あたしは高らかに笑い声を響かせる。

「くっくっくっ、

 幸せゲットだよぉ。

 もう最高!」

体全体で至福の時を感じつつ、

あたしは目から流れる涙を拭うと、

「よしっ

 やろうか

 奉納相撲を!」

パァン!

の声と共に自分が締めている廻しを思いっきり叩いて見せる。

そして、悠然と校庭の中央へと向かうと、

その場にて高らかに軍配を掲げるや、

「はっけよいっ!!

 わが名は横綱・初音山っ

 相撲の神・野見宿爾が僕っ!

 マワシファイターよ、我に従え!」

と学校中に向けて命じたのであった。

それから少し間を開けて、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

勇ましい声を上げながらマワシファイターたちがすり足で姿を見せると、

あたしの周囲を円陣を描くようにすり足行進をし始める。

マワシファイターとして覚醒し気合い十分な顔を見せる者。

女の子としての意識が残っているのか、

恥ずかしげに頬を赤らめどこかおぼつかない足取りですり足をする者。

マワシファイターとしてのレベルは様々だけど、

でも、廻しを締め髷を結った以上、

あたしの命に背くことは出来ないのである。

そんなマワシファイター達を見渡した後、

「皆の者っ、

 これより社にて奉納相撲を行います。

 あたしに付いてきなさい」

日が落ちて茜色に染まる空の下、

満を期してあたしは声を上げると、

「どすこいっ」

その声に応えるようにして

校庭を埋め尽くしているマワシファイター達から一斉に掛け声が上がった。



「どすこいっ」

「どすこいっ」

「どすこいっ」

美紅乃山と大恵山2名の太刀持ちを従えてあたしを先頭に学校を出ると、

明かりが灯りはじめた街中をのっそりのっそり行進していく。

その姿はきわめて異様で、

出会った人たちは皆唖然として見送るが、

しかし、この行進を止めるものの姿は無く、

先頭に立つあたしは悠然と歩いて行いく。

そして、一時間ほどかけて神社にたどり着くと、

「どすこいっ」

殺風景な神社に向かってあたしは軍配を振ってみせる。

その途端、

バサッ!

バッ!

ビシッ!

瞬く間に境内に幟が立ち、

土俵は掃き清められ、

天幕が下がり、

奉納相撲の準備が万端に整えられたのであった。

「ひゅぅ…

 すごい」

まさに神通力の凄さを感じ取ったあたしは口笛を吹きながら感心していると、

『ふわぁぁぁ、

 なんや?

 騒々しい?』

の声と共に無数の光点で作られた柱が土俵上に姿を見せる。

「神様っ、

 お待たせしました。

 いまから奉納相撲を開きます」

その柱に向かってあたしは嬉しそうに宣言して見せると、

『なに?

 いまからやて?

 だって、大払いの日はまだ…』

それを聞いた神様は驚きの声を上げるけど、

「えぇ…

 大払いにはちょっと早いですが、

 時は金なり、

 ものはタイミングと言うものがあります。

 いまからあたしの名において奉納相撲を執り行います。

 ごらんの通りマワシファイター達の準備は出来ています」

あたしは境内を埋め尽くすマワシファイター達を指し示してみせると、

土俵の周囲を取り囲んでいるマワシファイター達は

「どすこいっ」

「どすこいっ」

とシコを踏んで見せる。

『おぉ…

 よくぞまぁ』

一斉にシコを踏んで見せるマワシファイター達の姿に神様は感動して見せると、

『うむっ

 ちと早いけど致し方あるまい。

 礼を言うわ』

とあたしに向かって労いの言葉を掛ける。

「なんのっ

 これしきのこと」

腕を組んでみせるあたしは胸を張って答えると、

『それにしてもや…

 ここに集まっておるマワシファイター達の胸が

 えらいプルンプルン弾んでいるみたいやけど、

 これ、みんな女子とちゃうのか?』

マワシファイター達を眺めつつ神様はそう指摘をする。

「え?

 まぁ…細かいことは…気にしない方が…

 せっかく盛り上がってきた奉納相撲が台無しになりますよ。

 それよりも番付はどうしましょうか」

と頬を掻きつつあたしは番付けについて問い尋ねた。

『そや、番付や、

 それについてはわてに考えがありますわ。

 マラの大きさで決めるとしましょ』

と神様は言う。

「まっマラ…の大きさ順ですか?」

それを聞いたあたしは驚きながら聞き返すと、

『何を言います。

 マラの大きさはとても大事、

 マラが小さい者は気持ちが小さい。

 それに対してマラが大きい者は気持ちが大きい。

 それを考慮しない取り組なんておまへんっ

 さぁ、皆にマラを出すように言ってなはれ』

と神様は相変わらず怪しげな関西弁で命じたのであった。



「ふーん…

 相撲ってそういうものなんだ」

その言葉にあたしは大きく頷きつつ、

「あの、神様…

 マラってなんですか?」

と素朴な疑問をぶつけてみせた。

その途端、

ズゴッ!

神様は盛大にコケて見せると、

『のっのー○たくん。

 そんなこともしらないで

 ぼくとおはなしをしていたの?』

とあの猫型ロボットの口調で聞き返してきた。

「だから、誰がの○太ですかっ、

 って、知りませんよ。

 そんな言葉」

神様に向かってあたしはそう言い返すと、

『マラとは、

 男のチンチンのことですがな』

と落ち着いた口調で神様は言う。

「えぇ?

 チンチンってあのチンチンですか?」

『そうや』

「そんなもん、あるわけないでしょう。

 だってみんな女の子ですよ」

それを聞いたあたしは顔を青くして言い返すと、

『あっやっぱり』

神様はすかさずつっこみを入れてきた。

「うっ」

その声にあたしは声を詰まらせてしまうと、

『さっきあんさんが言っていたけど、

 細かいことは気にしない方が良いようですな。

 無ければ生やせば良いだけのことですわ。

 とにかく土俵は女人禁制。

 あんさんに貸した軍配でチンチンを生やしなさい』

と神様はあたしに命じる。

「え?

 オチンチンを生やせるんですか?」

それを聞いたあたしは驚くと、

『その軍配の力はただ廻しを締めさせるだけやないでぇ、

 マラもちゃんと生やせるんやでぇ』

と力を込めて神様は言う。

「なっなるほど、

 はっけよいっ」

それを聞いたあたしは改めて取扱説明書に目を通した後、

軍配を煽って見せると、

「!!っ

 あふんっ」

マワシファイター達は皆一斉に身をよじり、

そして股間へと手を埋めてみせる。

それを見たあたしは

「どすこいっ」

と再度軍配を振って見せると、

ストン

ストンストン

今度はマワシファイター達の廻しが外れて下に落ち、

みなの股間についている男性器が姿を見せたのであった。

「うわぁぁ、

 生えている生えている。

 でも、確かにサイズはいろいろあるみたいね」

軍配の力によって生やされた男性器を眺めつつ、

あたしは感心してみせると、

「どれ?

 どれ?」

と一人一人そのサイズを測り始めた。

すると、

「あっ、

 いやっ」

マワシファイター達は皆一様に嫌がって見せるものの、

しかし、そんな態度とは裏腹に

ビクンッ!

グンッ!

計られた後の男性器は皮を剥き、

たくましく上を向いて反り返ってみせる。

「ふーん、

 嫌がっても体は喜んでいるのね」

それを見たあたしはほくそ笑むと、

「何をしているの、

 計り終えた者から廻しを付けなさい。

 そして、稽古をするのです」

と声を上げた。

「ごっつぁんです」

あたしの声に皆は一斉に返事をしてみせると、

「どすこいっ」

「どすこいっ

 どすこいっ」

マワシファイター達は次々と外された廻しを締め込み、

奉納相撲に向けて稽古をしはじめだした。

そして、その一方であたしは全員のマラを計り終えると、

神様と共に番付を決めていく。

「よし出来たわ。

 じゃぁまずは横綱の土俵入りからね。

 スイッチオーバー!」

番付を決め終えたあたしはそのかけ声と共に行司のスタイルに変身すると、

「うふっ、

 軍配を持っては相撲が出来ないから行司はあたしがやるわ。

 大恵山っ

 あなたに横綱を譲るから土俵入りをお願いね」

あたしは手にした軍配で恵を指し示してみせると、

「うっすっ」

の声と共に大銀杏を結い、

見事な化粧廻しと横綱を締めた恵こと大恵山が姿を見せるなり、

露払い、太刀持ちを従えて土俵に上ると、

「よいしょっ」

「よいしょっ」

とシコを踏み、

見事な雲竜型の土俵入りを見せる。

『おぉっ、

 これは見事な土俵入りですなぁ』

それを見た神様は感心してみせると、

「では、最初の取り組みは…」

と番付を見ながらあたしはシコ名を読み上げると、

「おっすっ」

「うっすっ」

最初に呼ばれた二人が土俵際に進み出る。



「ひがぁしぃ〜…」

「にしぃ〜…」

土俵に呼び出しをするあたしの声が響き渡り、

髷を結い、締めた廻しにサガリをつけたマワシファイターが登っていく。

『おぉ、これぞわしが夢見ていたものやぁ』

その光景に神様は感涙をしてみせると、

土俵に上ったマワシファイターはシコを踏んだのち、

豪快に塩を撒き。

そして時間いっぱいになったとき土俵の仕切り線に立つと、

「見合って見合ってぇ」

軍配を手にするあたしは大きく張り切って声を上げ、

両手を土表につけるマワシファイターに視線を配りつつ二人の息が合うのを見届けると、

「のこったぁ!」

の声と共に思いっきり声を張り上げた。

すると、

ダッ!

マワシファイター達は互いに相手に向かって突進し、

パァンッ!

「うっしっ」

土俵の真ん中で組み合って見せる。

「のこったのこった」

「のこったのこった」

土俵の中で4つに組み合うマワシファイター達、

しかし、

「ふんっ」

ドスンッ!

一瞬の引き倒しで勝負が決まってしまうと、

サッ

あたしは勝者に向かって軍配を差し出し勝ち名乗りをあげる。

そして、

「あっはぁんっ」

奉納相撲の勝敗が決まった後は負けた側のオナニーショウ。

これも神様からの指示である。

『負けたものの精は没収やぁ…』

神様のその言葉と共に勝ったマワシファイターが土俵から去ると、

負けたマワシファイターは土俵中央部に立ち、

神様に向かって一礼してみせる。

そして、徐に締めていた廻しを外すと、

ブルンッ

と男性器である肉の棒が露となり、

そのままマワシファイターは腰を落として蹲踞姿勢になるや、

ギュッ!

とそれを握り締め、

正面の神様に向かって扱き始めた。

シュッ

シュッシュッ

シュッシュッシュッ

土俵の中でマワシファイターは己の股間から伸びる肉の棒を扱き、

程なくして顎を上げると、

「いよーっ!」

と声を張り上げ、

シュシュッ

肉棒から白濁した粘液を飛ばしていく。

その姿に神様は満足そうに頷いてみせると、

『うん、あんさんがいま飛ばした精。

 確かに受け取りましたで』

と呟いてみせる。

シュルンッ

廻しを外し射精を終えたマワシファイターから男性器が姿を消すと、

同時に結われていた髷が解けてしまう。

そして、それらが終わるの共にマワシファイターは土俵の中からその姿を消したのであった。

「人が消えた…」

まさにかき消すかのごとく消えたことにあたしは驚くと、

『安心しなはれ、

 元居た場所に送り届けましたわ。

 さぁ次の取り組みは誰です?』

と神様はあたしに言う。

「はっはい…」

少しホッとしてあたしは番付表を見た後、

「ひがしぃ〜」

「にしぃ〜」

と呼び出しを掛ける。

次に出てきたのは文系部所属だったマワシファイターと、

さっき土俵入りで露払いをした谷和原美佐こと美佐乃岳である。

「見合って見合ってぇ」

仕切り線で対峙する二人の間に挟みこむようにしてあたしは声を掛けると、

「のこったぁ!」

と声を張り上げる。

すると、

バシッ!

体と体がぶつかり合う音がこだまし、

「うっしっ」

「せいっ」

汗のしぶきを撒き散らしながら二人のマワシファイターはぶつかり合う。

そして、注目の勝負は、

「だぁぁぁ」

豪快な投げが決まり、元文系少女だったマワシファイターの勝ちである。

勝ち名乗りの後、

「ちくしょう」

負けた美佐乃岳は悔しそうに神様に一礼し、

土俵の中でオナニーを始める、

そして、

「いよーっ!」

その掛け声と共に果ててしまうと、

美佐乃岳は土俵の中から姿を消したのであった。

その後も勝負は続き、

親友同士の取り組み。

姉妹同士の取り組み。

先輩と後輩の取り組み。

文化系さらに体育系の取り組みなどが粛々を行われ、

時間の経過と共に境内を埋め尽くしていたマワシファイターはその数を減らしていく、

さらに一回戦の後は二回戦、三回戦と進むにつれて、

次第に強い力士が絞られていく。

そして、最後に勝ち残ったのは、

ズンッ!

「大恵山ぁぁぁっ!」

巨体を揺らすあの恵であった。

「ひゅーっ

 さすが横綱だわ」

取り組みを続ける内にすっかり大相撲力士と引けを取らない肉体に変貌してしまった

恵の姿を仰ぎ見てあたしは関心していると、

『うーん、見事な体や。

 この者の体にはマワシファイターの魂が数多く取り込まれたんやなぁ』

と神様は感心してみせる。

「そっそうなんですか」

それを聞いたあたしは恵から2・3歩下がってみせると、

グッ!

恵の太い腕が動き、

「さぁ、次はあなたよ」

とあたしを指し示してみせる。

「え?」

思いがけないその言葉にあたしは驚くと、

『そうや初音はん。

 最後はあんさんとの一番や』

と神様も頷いてみせる。

「えぇ?

 ちょちょっとぉ

 あたしは行司…」

と言いつつあたしは土俵から逃げ出そうとすると、

ムンズッ

いきなりあたしの腕が鷲づかみにされると、

「さぁ、

 これから千秋楽。

 結びの一番よ」

と恵は言う。

「そっそんなぁ」

彼女の言葉にあたしが困惑していると、

フワッ

あたしが手にしていた軍配がいきなり手から離れていくと

神様の元へと向かっていく。

「やだ、それを返してください」

飛んでいく軍配を追うとすると、

『ほな、いきまっせぇ、

 そうれっ』

の声と共に軍配を手にした神様があたしに向かって軍配を仰ぐと、

「いやぁぁぁ」

たちまちあたしは廻し姿にされてしまう。

そして、

「さぁ、さぁ、さぁ、

 何処を見ているの、初音山。

 待ったなしの相撲勝負よ!」

あたしの背後から恵の声が響いた。



「そんな、なっなんで…」

学校内で皆に廻しを締めさせたときとは打って変わって、

土俵の中で山のような姿の恵と対峙したあたしは、

その場でシコを踏まされ、

そして、清めの塩をまくと、

仕切り線で気合十分の恵を見る。

「かっ勝てるわけが無い…」

無言で威圧してくる恵の姿にあたしの心は竦みあがるっていると、

『よっしゃぁ、

 結びの一番の行司はわいが引き受けたでぇ。

 さぁ見合って、

 見合って、

 はっけよいっのこったぁ!』

土俵を仕切る神様のその声を同時に、

ズンッ!

恵はあたしを吹き飛ばす勢いで向かって来る。

「ひっひぃぃぃ!

 恵っ

 ごっごめんなさぁぁぁい」

迫る恵に向かってあたしは謝りつつ正面から逃げようとすると、

ガンッ!

逃げるあたしの足に恵の足が引っかかってしまうと、

グワッ!

ズンッ!

バランスを崩したまま恵はそのまま土を付けてしまったのであった。

「え?

 えぇ?

 あたし勝ったの?」

まさに勝負とは一寸先の闇である。

『初音山ぁ』

勝ち名乗りを受けつつあたしは呆気に取られるが、

すぐに、

「やったぁ!!!!」

と嬉しそうに飛び上がって見せる。

『見事や初音山っ、

 奉納相撲の最後の勝者はやはりお前さんでしたな』

喜ぶあたしに神様はそう声を掛けると、

「はいっ、

 がんばりました!

 ですから、

 褒美を!」

と神様に向かってあたしは手を差し出した。

そう、褒美とはあたしの憧れの人である達也とラブラブになれる切っ掛けである。

「神様っ

 切っ掛けを作ってくれるんでしょう。

 どんな切っ掛けですか?

 それって無事成就するんですか」

舞い上がるようにしてあたしは催促をすると、

『まー待ちなはれって、

 いま準備するさかい』

と神様はなにやらごそごそと準備をする真似事をする。

「早くぅ

 早くぅ」

そんな神様を急かすようにあたしは足踏みをして見せていると、

『うぉぉぉぉ』

相撲勝負に負けた恵や土俵の周囲からうめき声のような声が響きはじめ、

ユラユラと無数の黒いものが沸き立ち始めた。

「え?

 え?

 なっなにこれぇ!」

突然出てきたそれを見たあたしは恐れ戦くと、

『ん?

 あぁそれは負けて土俵や恵はんに取り込まれたはずのマワシファイターの魂が、

 あんさんの”業”に惹かれて出てきよったんやなぁ』

と神様は暢気に言う。

「えぇ?

 で、これからどうなるんですか?」

それを聞いたあたしは聞き返すと、

『どうなるって…

 それはこうなるしかおまへんなぁ』

と神様が言った直後、

シュルンッ

敗れ倒れている恵の廻しが外れ、

ゆっくりと立ち上っていくと、

それらに絡みつくようにして土俵から立ち上る廻しが融合していく、

そして、あたしの上でそれらが一つに纏まっていくと、

「え?

 ちょっと…

 何が…」

その光景を見たあたしは2・3歩下がり土俵から逃げようとするが、

『あぁ…逃げても無駄やぁ』

と神様の嘆く声が響き渡るや、

シュルンッ

一本に纏まった廻しがあたしに向かって飛び込んでくると、

あたしが締めていた廻しと融合し一体化し始めた。

その途端、

ドクンッ!

あたしが締めていた廻しがまるで生き物のごとく蠢き、

それと同時にドックンドックンとあたしに体の中に何かが注ぎ込んでくる。

「いっいやぁぁぁ!

 入ってくるぅ」

境内にあたしの叫び声が響き渡り

グググググッ

メキメキメキメキ!!!

それと同時にあたしの体は膨張をし始めていく。

「いやだぁ…

 やめてぇ…

 助けてぇ!

 あっあぁぁっ

 あたしの体がぁぁぁ!!」

急激に重くなっていく体を感じつつ、

あたしの胸に脂肪が乗り横へとはみ出し、

首は膨らむ体の中に埋まり、

腕は持ち上がってくる脇によって真下に下ろせなくなってしまうと、

丸太のように太くなっていく腿によって股は常に開いたままの状態となり、

廻しは膨らみ落ちようとする腹を支え始めた。

そして巨大な肉の塊となっていくあたしは口を大きく開けて、

「どっどっどすこーぃ!」

野太い声を上げてしまったのであった。



翌朝。

パーンッ

パーンッ

朝の境内にテッポウ柱を叩く音が響く中、

ザッザッザッ

スエットパーカーに身を包んだ一人の青年が神社の階段をかけ上がって来た。

そして誰かを探すような振りをした後、

境内を走り始めると土俵際へと近づき、

そして、黙々とテッポウ柱に向かってテッポウを打っているあたしを見つけると、

「おはようございます」

と清清しい声を掛ける。

「!!っ」

その声を聞いたあたしはビクッと驚き腕を止めると、

「あっ驚かしてしまってすみません。

 何処の部屋の方ですか?」

と青年は尋ねる。

「………」

その問いになにも答えず無言でいると、

「あっいえいえ、

 僕の祖父がタニマチをしているもので、

 それにしても見事な体ですねぇ。

 今度の場所、がんばって下さいね。

 あなたなら直ぐに上位を狙えますよ」

と青年は告げ、

「じゃぁ」

言葉を残して去って行く。

『おやおや、

 折角チャンスを作ってあげましたのに、

 黙って見送りですか?』

見送る力士に向かって神様は呟くと、

「こんな巨漢の力士に

 ”ずっと憧れていました。達也さん。あたしと付き合ってください”

 って告白されても彼は迷惑ですよ。

 そうよねっ初音」

スレンダーな体を制服で包む恵はあたしに向かって問い尋ねる。

すると、

「ふぅふぅ

 ふぅふぅ

 どっどすこい、

 どすこいどすこい」

あたしは涙を流しながら、

夢中になってシコを踏み始める。

「ふぅ…

 調子に乗った因果応報よ。

 ところで神様?

 初音の体って元に戻るんですか?」

そんな力士…いや、マワシファイターとなったあたしを横目に見ながら恵は尋ねると、

『うーん、

 少々強引過ぎたのがいけなかったんですなぁ…

 初音さん。

 あんたの体を膨らましているのは”業”や。

 言いましたでしょ?

 ちゃんと事情を話して協力してくれる人をマワシファイターにしなされって。

 そこを取り違えて短絡的にみんなマワシファイターにしてしまったので、

 後になって”業”となって襲い掛かったんですわ。

 まっそうやってシコを踏み、

 テッポウを打ってじっくりと汗を流し、

 溜まった”業”を少しずつ出さないと元に戻れませんわ』

と神様は答える。

「こればっかりはあたしも手伝って上げられないわ…

 まっとにかく

 早く元の姿に戻れるようにがんばってね。

 じゃ」

シコを踏見続ける初音に向かって恵はそう言うと、

制服のスカートを揺らして立ち去っていく。

そしてその場に残されたあたしは

「うっうぅ、

 なんであたしだけが不幸にならないといけないの?」

ポタポタと不幸の汗を滴らせながらシコを踏み続けていた。

一足早くマワシファイターとなっていた兄貴と共に…



神様、あたしの幸せゲットはいつになるの?

そら、あんさんのがんばり次第や。

とほほほ…



おわり