風祭文庫・アスリート変身の館






「奉納相撲」
(第5話:マワシ大乱舞)


作・風祭玲

Vol.1007





梅雨は夜の短い季節。

その短い夜が開け、

朝日が別社の土俵を照らし出していくと、

「どすこいっ」

静寂を打ち破るようにして別社の境内にあたしの掛け声が響いていく。

「どすこいっ」

パァン!

「どすこいっ」

パァン!

「どすこいっ」

パァン!

あたしの掛け声に併せて土俵脇に建つテッポウ柱が鳴り、

「どすこぃどすこぃどぉすこぉぃっ!」

パァン!

パァァン!

パァァァン!

髷を結い、黒マワシを締めるあたしは無心になってテッポウ柱を叩き続ける。

そして、

「どすこぉぉぉぃ!!」

バァァァァァン!

汗しぶきを振りまきつつ思いっきりテッポウ柱を叩くと、

ビシッ

柱の縦に一直線の割れ目が入った。

「はぁはぁ

 はぁはぁ

 ちょっと思いっきり過ぎたかな…」

普段からあまり手入れされていない柱であるので、

それを思いっきり叩いてしまっては亀裂が入るのも当然である。

少し後悔しながら柱を見ていると、

『おやおやぁ?

 早朝からご熱心ですねぇ』

あたしと瓜二つの姿をした相撲の神様が背後から話しかけてきた。

「ごっつぁんです」

その声にあたしは言葉短めに返事をしてみせると、

『一晩夜通しの稽古ですか、

 あの…秋山翠って子のことが気になるのですか?』

あたしの心を見透かすように神様は尋ねる。

「彼女のことは忘れます。

 今日、俺は奉納相撲のことだけを考えますっ」

マワシを締めるとつい出てきてしまう男言葉であたしは返事をすると、

『それは良い心がけです』

それを聞いた神様は目を細めて見せる。

その目を見たあたしは神様に向かって一礼をした後、

ストン!

マワシを外し、

チンチンが下がる股間を露にするとゆっくりと蹲踞してみせる。

その途端、

ググググッ

垂れていたオチンチンが次第に硬く伸び頭を擡げていくと、

ギュッ!

乱暴にそのオチンチンを握り締め、

「いまから”精”を奉納させていただきます」

神様に向かって宣言するや、

シュッシュッ

シュッシュッ

と扱き始める。

そして、

ジワッ…

オチンチンの付け根に力が溜まっていくのを感じてくると、

「んくっ

 くはぁ

 はぁ

 はぁはぁ

 はぁはぁはぁ」

あたしは荒い息を吐き、

来るべく時に備えて体に力を入れる。

ピリッ

ピリピリピリ…

息を抜くごとに痺れに似た感覚が体の中を走りはじめ。

「んくっ」

あたしはオチンチンを握る手に力を込める。

その時、

ピッ!

体の中で何かが弾けてしまうと、

ビクビクビク!

それを合図にして快感の大波が押し寄せてきた。

「あぐぅ!」

こみ上げてくる快感の大波にあたしは歯を食いしばり、

シュシュシュシュッ!

身を震わせながらあたしは白いオシッコを噴出してみせる。



「はぁっはぁっはぁっ…

 かっ神様っ

 これを神様に…捧げます」

だらりと下がるオチンチンから精液を滴らせつつあたしは言うと

『おぉ、これはまた沢山出してくれましたねぇ』

まさに怒涛のごとく吐き出されていく精液の量に神様はワザとらしく驚き、

『とても立派です。

 一人でこれだけ出すなんて大したものですよ』

誉めて見せる。

「あっありがとうございます」

最後の一滴まで搾り出した後、

バッ

あたしは汗だくの体を軽く拭うと、

マワシを締め、

乱れた髷を整え、

藍染の浴衣を羽織る。

そう、これぞ力士の出で立ち。

「ふうっ」

射精後の脱力感を十分に味わうことなく立ち上がり、

あたしは学校へと続く坂道を降りはじめた。



「誰も居ないか…」

早朝の学校はどこにも人影は無かった。

あたしがマワシを締めて力士にした部員の姿も

あたしの前に立ちはだかったものの逃げ出した弘子や葵、そして玉追先生の姿も無論無く、

一夜明けた学校は昨日とは一見何も変わっていないように見える。

しかし、

ヒラリ…

屋上から垂れ下がっている無数の黒い帯が

この学び舎が異様な状況に置かれていることを指し示していた。

おやおや…

皆はマワシを外して屋上でご休憩中か…

屋上を見上げながらあたしは笑って見せると、

校庭の真ん中で生えてる楠の巨木に近づき、

すーっ

大きく深呼吸をする。

そして、

キッ!

その幹を見据えた後、

「どすこいっ!」

バァァン!

と気合を入れて幹を叩いた。

その途端、

バサバサバサ!

音に驚いたのか楠に止まっていた鳥が一斉に羽ばたき飛び立っていくが、

「どすこいっ」

バァァン!

「どすこいっ

 どすこいっ」

バァァン!

バァァン!

それに構わずあたしは幹を叩き続けると、

ザワッ

屋上から浴衣を羽織った数人の人影が見えるやあたしの方を指差してみせる。

と同時に垂れ下がっていた帯が仕舞い込まれ、

程なくして、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

の掛け声勇ましく、

マワシを締め髷結う少女力士達がすり足で校舎から出てきたのであった。

「稽古をサボるなっ!」

乳房を揺らしながらすり足をする力士達に向かってあたしは怒鳴り声を上げると、

「ごっつぁんですっ」

皆は声を揃えて返事をする。

「うん」

その声にあたしは手を休めて頷くき改めて皆の表情を見るが、

どの顔にも気合が入り、

昨夜のように頬を赤らめている者の姿は無かった。

…どうやら、みんな相撲取りになっちまったみたいだな。

元・剣道部、元・柔道部、元・アマレス部に元・新体操部…

どいつもこいつも昨日までは部活に汗流す少女達だったけど、

しかし、マワシを締めた今はみな力士である。

ザザッ

ザザッ

ザザッ

力士となった部員達はすり足をしながらあたしが居る楠の周囲を回り始めると、

パァン!

あたしは腿を叩いた後、高々と足を挙げ、

「どすこいっ」

の掛け声と共にその足を下ろしてシコを踏むと、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

続いて力士達もその場でシコを踏み始める。

「どすこいっ」

「どすこいっ」

すり足、シコ踏み、

そして、校舎に向かってのテッポウを打ち、

校庭をフルに使ってあたしと少女力士達の稽古を黙々と続いていく。

もはや動作に遅れる者の姿は無く、

みな綺麗な一線を描いての稽古になっていた。

「ふぅ…」

噴出した汗を拭いながら、

ぱぁぁんっ

あたしは流れ出た汗を吸い込み重くなったマワシを叩いてみせると、

スルッ

バサッ

皆のマワシが一斉に緩み、足元へ落ちていく。

「!!っ」

いきなり下半身が露になってしまった力士達はみな驚いた顔をして見せるが、

「よっしっ、

 朝稽古の仕上げは”精”の奉納だ。

 お前達神様に”精”を奉納しろ!」

とあたしは命じると、

「ごっつあんですっ」

の返事の元、

力士達は腰を下ろして蹲踞し、

一斉に股間に手を入れると、

シュッシュッ

シュッシュッ

股間から聳え立つオチンチンを扱き始める。

『おぉ…

 壮観ですなぁ』

大・小・太・細

体格とは関係なく伸びるオチンチンが一斉に扱かれる光景を見て神様は驚くと、

「はいっ壮観です」

とあたしは返事した後

オチンチンを扱く一人一人を回りながら、

「なんだ、その小さいチンポは、

 もっとでかくしろ!」

とか、

「おいっ、

 俺よりもでかいチンポを持ちやがって、

 稽古で可愛がってやるぞ」

などと声をかけていく、

すると、

「ごっつあぁんです」

オチンチンを扱きながら顎を上げる少女力士は顔青赤らめ手の動きを早めていく。

そして、

「うくっ、

 でっ出る、

 あぁっ

 出ます。

 出ます」

一人が射精が近いことを宣言すると、

「あぁっ

 俺も…

 だっダメだ」

とまた別の一人が声をあげ、

まるで連鎖反応のごとく

シュシュシュシュ!

朝日を受ける校庭に向かって白い筋を伸ばしていく、

しかし、それは決して地面に落ちることなく空間に吸い込まれてしまうと

他の力士が放つ精もみな何処かへと消えていったのであった。

『ふむふむ

 実に見事な稽古です。

 こんな稽古はそう滅多に見られるものではありません』

射精の模様を眺めながら相撲の神様は頷くと、

「ごっつあんです。

 でも、まだ力士の数が足りません」

神様に向かってあたしは呟く。

『その足りない分を、

 今日中にかき集めるのでしょう?

 あなたが…』

それを聞いた神様は聞き返す。

「ごっつあんですっ」

その言葉にあたしは髷結う頭を下げると、

『期待していますよ』

そう神様は言い、

フッ

と姿を消したのである。

「どすこいっ」

神様が消えた後、

あたしはその声と共に、

バァァンッ

楠の向きを力強く叩いて見せると、

「!!!」

皆の視線があたしに向けられる。

その視線を一身に感じながら、

「お前達、

 もうすぐ今日の授業が始まるっ

 判っていると思うが本日の夕刻、

 奉納相撲を執り行うっ、

 それまでにもっと多くの力士を確保するのだ」

とあたしは声を張り上げ、

パァァァン!

幹を力いっぱい叩いた。

「ごっつぁんですっ」

その音に皆は一斉に返事をすると、

「ただしぃ、

 力士の確保を露骨に行って、

 学校側に我々の意図を知られるわけには行かない。

 そうなった場合、力士集めは出来なくなる。

 それ故、一旦髷を解きお前達の姿を元に戻す。

 そして私からの指示が出るまで何事もなかったかのように振る舞え、

 しかし私からの指示と共に再び髷が結われマワシが締められたら、

 例え相手が親しい友人であっても躊躇うことなく力士にしてしまうのだ。

 いいかっ」

と言い聞かせ、

ダメを押すようにして、

パァンッ!

再度幹を叩くと、

それを合図にして、

シュルンッ

バサッ

少女力士達の頭に結われていた髷が解け、

同時に股間を締めていたマワシも外れ何処とも無く消えていく、

そして、元の部活で着ていた武道着・ユニフォーム姿に戻った彼女たちは校内へと戻っていくと、

学校内を制服に身を包んだ少女力士達が歩し始めたのであった。



程なくして何も知らない生徒達が登校し、

キーンコーン!

いつもと同じチャイムの音色と共に授業が始る。

「さぁて、

 どの時点で始めようか、

 今日は確か午前中で授業が終わり、

 午後は体育大会の練習時間。

 行動を起こすなら昼休みだな」

あたしは今日の予定を確認しながら授業には出ずに

マワシの上に浴衣を羽織った姿で生徒会長室より眼下に望む校庭を眺めていた。

すでに2時限目の授業が終わり、

長めの休み時間の開始と共に校内には制服姿の少女達でごった返している。

「ふふっ、

 どいつもこいつも何も知らずにはしゃいでいるな。

 しかし、私の指示一つであいつ等が髷を結いマワシを締め、

 力士となってシコを踏む…」

マワシを締め足裏を土で汚しながらシコ踏む皆の姿を思い浮かべると、

「くくっ、

 ぶわぁはっはっはっ!

 さぁ、わたしの下僕どもよ。

 しばし待て、

 もうすぐだ。

 私が用意する最高の場面で皆を襲うのだぁ!」

と声を上げて笑い声を上げていた。



そして迎えた昼休み、

「時は満ちた!」

満を期してあたしは生徒会長室を出ると、

朝、テッポウを打った木のところへと向かって行き、

バッ

羽織っていた浴衣をはぎ取ると、

「はっ!」

パァァァン!

気合いを込めて木の幹を叩いたのであった。

そして、

「はっ」

パァァン!

「ほっ」

パァァン

パァァン

パァァン

パァァン

まるで太鼓の如くあたしは幹を叩き続け、

校内にその音が鳴り響くと、

「!!っ」

「どうしたの?

 小百合?」

校内の廊下でおしゃべりをしていた友人が急に黙ってしまったことを不審に思った女子生徒は問い直した。

すると、

「あっあっあっ」

彼女の友人は小さく声を上げてゆっくりと手を自分の頭の両側に当てるや、

シュルンッ

友人の髪から鬢付けの香りが漂い始め、

髷が結われて行くではないか。

そしてさらに、

モコモコモコモコ!

友人が穿いているスカートが暴れ始めると、

ググググッ

そのスカートを持ち上げるようにして黒い木綿が顔を出す。

「いやぁぁ、

 なによこれぇ!」

校内に女子生徒の悲鳴が響き渡ると、

「!!っ

 よしっ

 始まったな」

待ちに待ったその声をあたしは聞くと、

テッポウを打てつ手に力を込める。

そして、

「どうしちゃったの?

 小百合ぃ」

怯える女子生徒に向かって彼女の友人は躙り寄っていくと、

「あたしと一緒にお相撲を取ろう、

 マワシ締めてあげるからぁ」

と囁きながら膨らんだスカートをめくり上げると、

そこには分厚い黒マワシが締め込まれていたのであった。

「ひぃ!」

衝撃の光景に女子生徒は声を失うと、

友人はゆっくりと体を近づけ、

そして女子生徒を抱きしめながらマワシをスカートに密着させる。

すると、

シュルン

友人が締めているマワシの前袋が外れて、

その先端が女子生徒の股間へと潜り込むや、

下着を引き裂いて彼女の股間に巻き付き始めた。

「やっやだぁ!

 お股を締め込んでくるぅ、

 いやだ、

 いやだ、

 やめてぇ!!」

鬢付けの香りを漂わせ、

頭に髷が結われてていく女子生徒は引き叫ぶが、

しかし、どんなに彼女が拒否しようとも、

女子生徒は友人の手によって少女力士へと変身させられていく。

やがて、

「どすこぃっ」

「どすこいっ」

着ていた制服をはぎ取り、

黒マワシ姿となった少女力士達が次々と姿を見せると、

すり足稽古をしながら廊下を行進しはじめ、

「マワシを締めろぉ」

「相撲を取れぇ」

と変身していない女子生徒達に迫まっていく。

そして、

「やだぁ、

 ちょっと来ないでぇ」

それを見た他の女子生徒達は悲鳴を上げながら逃げ出していくが、

「どすこぃっ!」

彼女たちの背後よりその声が響くと、

シュルン

少女力士が締めているマワシの前袋が解け、

その先端が女子生徒の方へと伸びて股間に絡みつくと、

ギュッ!

っと制服のスカートもろとも彼女の腰を締め上げる。

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

黒マワシを股間に締められた女子生徒は悲鳴を上げて座り込んでしまうと、

「やだぁ!」

「助けてぇ!」

衝撃の光景に廊下は混乱に陥っていくが、

「どすこいっ」

「どすこいっ

 どすこいっ!」

混乱を尻目に他の力士達も掛け声を上げながらマワシを叩くと、

シュルンッ!

前袋を解いたマワシは彼女達に襲い掛かり、

次々とマワシを締めていったのであった。

わずかの時間の間に累々とマワシを締められた女子生徒が座り込み、

ある者は泣き、

またあるものは腰に締められたマワシを興味深そうに触り続けている。

すると、

「さぁ、お前達、

 上履きを脱げ、

 ソックスを取れ、

 裸足になるんだ」

と胸を張る少女力士達は指示をすると、

「いやよっ」

一斉に拒否をする声が響く。

しかし、

「ふんっ」

その声を聞いた部員は鼻で笑うと、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

その場でシコを踏み、

さらに

バシンッ!

バシンッ!

と続いて壁に向かってテッポウを打ち始めると、

どうしたことだろうか、

マワシを締められても頑なに断っていた少女達の頬が赤らみ、

無粋なマワシが覆う股間を弄り始める。

そして、

「うっ!」

体の中からオチンチンが飛び出したのか苦痛と辱めが混じった表情を見せた後、

一人、

また一人と立ち上がり、

「…どっどすこいっ」

「どすこいっ」

「どすこいっ」

と壁に向かってテッポウを打ち、

さらにすり足で廊下を動き始めたのである。

程なくして

「何ごとだぁ」

騒ぎを聞きつけた教師達が駆けつけてくるが、

「どすこいっ!」

その声が伝わったらしく迫る教師に向かって臆することなく力士達はマワシを叩き、

それと同時に、

シュルンッ!

「うっうわぁぁぁぁぁ!!!」

伸びるマワシは駆けつけた教師に襲い掛かかり締め上げていく、

そして、

「どっどすこいっ

 どすこいっ

 どすこいっ」

校庭よりマワシを締めた教師がテッポウやすり足を始めるのを見ながら、

「くくっ、

 いいぞいいぞ」

あたしは笑い声を上げていたのであった。

こうしている間にも校内の至る所でマワシは伸び、

逃げ惑う女子生徒たちの股間を締めこんでいく。

『とてもよろしいです』

そんなあたしに向かって、

あたしと同じ姿の神様は話しかけてくると、

「えぇ、

 校内の生徒や教師にマワシを締めました。

 残っているのはわずかの生徒だと思います」

と生徒会長室内でシコを踏むあたしはそう答え、

神様へと視線を動かしていく。

すると、

『期待していますよ』

と神様は目を細めながらあたしを見つめてみせる。



キーンコーン!

校内にチャイムの音が響き渡ると、

軍配片手にあたしは悠然と生徒会長室から出て行く。

その途端、

「ごっつぁんですっ」

制服に無粋なマワシを締めた少女力士達は一斉に周りに集まり頭を下げてみせると、

「うん、ご苦労」

それらの姿を眺めつつあたしは満足そうに返事をし、

そして、

「マワシを締めたのだから、

 制服なんか要らないだろう」

と言いつつ軍配をひとふり振って見せる。

すると、

ボロッ!

少女達の制服は崩れるように砕け散り、

皆黒マワシ一本の姿となった。

「くくっ

 チンポはしっかりと生えているか?

 そうか、

 じゃぁ、髷を結わなくてわな、

 そうだ力士らしく下がりもつけてやろう」

マワシ一本の姿となった少女力士達に向かってあたしは声をかけ軍配を振ると、

シュルンッ

少女力士達が締めているマワシの淵から下がりを垂れ下がり、

頭に髷を結われ、

鬢付けの香りが漂いだした。

こうしてスタイルは少女なれど、

力士となった少女達を引き連れてあたしは校内を進んでいくと、

部室に立てこもり力士となることを拒んでいる部活へと向かっていく。



「たのもぅ!!」

「くっくるなっ!」

最初に襲ったところはバスケ部であった。

インハイにも上位に食い込み、

強豪として知られるバスケ部は皆長身ばかり。

そして、力士として見た場合、

組みたくは無い相手である。

でも、奉納相撲のためには仕方が無い。

キッ!

あたしは箒を持ち身構えるバスケ部員を見据えると、

「どすこいっ!」

と声を上げて軍配を振ると、

ズゴゴゴゴゴゴッ!

部室の中に土俵が姿を見せる。

そして、

「さぁ、お前達も相撲を取るのだ!」

と言い放つと、

既にマワシを締められ力士となっている者と共に

パァンッ!

マワシを叩いて見せた。

たちまち黒い布の帯が部室の中を舞い、

「いやぁぁぁ!!!」

「たすけてぇぇぇ!!!」

とマワシを締められていく部員達の悲鳴が響き渡った。

「くくくっ、

 いいぞいいぞ」

抵抗した後、

マワシを締められて泣き叫ぶバスケ部員の姿を見てあたしは笑うと、

「みんなに何てことをしてくれたのっ」

と叫びながらマワシ姿のキャプテン・城弾久美子が飛び掛ってきた。

しかし、

「ふんっ」

たちまち久美子はつかまってしまうと土俵上に放り込まれ、

「俺が相手をするぜ」

の声を共にレスリング部キャプテンだった組伏百合花がその前に立つ。

「はっけよーぃ」

軍配片手にあたしが仕切ると、

パァンッ

百合化は威勢よくマワシを叩き、

仕切り線の前で蹲踞をしてみせる。

「何をしているんです?

 お前もさっさと仕切れ」

尻を土俵につけたままの久美子に向かってあたしは声をかけると、

「お前が勝てばバスケ部は放免してやるよ」

と続けた。

「それって本当?」

あたしのその言葉に久美子は聞き返すと、

「あぁ、お前が勝てば全員のマワシは外してやるよ」

とあたしは言う。

「判ったわ、

 いいでしょう」

締められたマワシの力か、

それを聞いた久美子は俄然やる気を出すと、

腰を挙げ仕切り線の前で蹲踞する。

そして、

「見合って見合ってぇぇ

 のこったぁぁ!」

あたしの声を共に久美子と百合花の一番が始まるが、

元々球技と格闘技、

久美子が百合花に敵うはずなどなかったのであった。



「どすこいっ」

「どすこいっ

 どすこいっ」

泣きながらバスケ部の面々がシコを踏むのを聞きながらあたしは部室を後にすると、

バレー部、

バドミントン部、

卓球部、

ソフトボール部、

ラクロス部、

フットサル部と立て続けに襲い、

情け容赦なく部員達にマワシを締めさせていく。

そしてあたしは始まりの地である弓道部の前に立つと、

「そういえば、弓道部員ってまだマワシを締めてなかったわね」

と弓道部・キャプテンの菜摘に向かって話しかける。

「お任せください」

あたしの言葉に菜摘は傅きながら返事をすると、

一人、弓道部の道場へと向かっていく。

そして、

「コンコン」

と閉じられたドアをノックすると、

「キャッ!」

道場の中から部員のものと思える叫び声が響いてきた。

すると、

「…みんな、あたしよっ、

 弓長菜摘よ」

と菜摘は表から声をかけたのである。

「!!っ」

菜摘のその言葉に動揺してか立てこもる部員達の同様が広がっていく声が聞こえ、

それに畳み掛けるようにして、

「お願いだから、

 ココを開けて」

と菜摘は懇願するように声を上げる。

そして、しばらく間を開けて

カチャリ

弓道場のドアがわずかに開くや、

ガシッ

このときを待っていた菜摘はわずかに開いたドアに手を掛け、

「どすこいっ」

の掛け声と共に弓道場の中へと入っていく、

その途端、

「きゃぁぁぁぁ!!」

「いやぁぁぁぁ!!」

「やめてぇぇぇ!!」

道場の中から立て篭もっていた少女達の悲鳴が響き渡るが、

程なくするとその悲鳴も止み、

変わって

「どすこいっ」

「どすこいっ」

と相撲稽古の声が響くようになっていったのであった。

「ふっ、

 弓道部、陥落っと」

その音を聞きながらあたしは生徒手帳に×印をつけると、

「最後はここね…」

この学園で最も歴史があり、

多くのプレーヤーを産んできたテニス部の前にあたしは立っていた。



「たのもーっ!」

その声と共にテニス部部室のドアを開けると、

「きゃぁぁぁ!」

それと同時にテニスルックに身を包んだ部員たちが悲鳴を上げる。

「さぁて、

 ここで最後だなぁ

 くくっ、

 その格好でマワシを締められる感想はどうかな?

 キャプテンの庭珠静香はいるかっ」

テニス部を球追先生と共に支えているキャプテンの名前をあたしは叫ぶと、

「待ちなっ、

 あんたの相手はこのあたしだよ」

の声と共にこれまで姿が見えなかった夏川弘美があたしの前に立った。

「お前は…」

ついに姿を見せた弘美にあたしは驚くと、

「この変態相撲取りっ

 学校のみんなをおかしくして何をたくらんでいるだい」

とあたしを睨みつつ声を上げる。

「くくっ、

 勝負を挑みながら逃げた奴に言われる筋合いは無い。

 最も、マワシを締めれば俺の目的を教えてあげてもいいが」

軍配を掲げながらあたしは嫌味を言うと、

「けっ、

 好きで逃げたんじゃないよっ」

弘美は負け惜しみを言う。

「なるほど、

 じゃぁ、勝負だ」

あたしもまた弘美を睨みながら、

「のこった!」

と言いつつ軍配を振ると、

ズゴゴゴゴゴゴ…

テニス部の部室の中に土俵が姿を見せる。

「いやぁぁ」

姿を見せた土俵を見てテニス部員たちが声を上げると、

「この野郎…

 あっちこっちに土俵をつくりやがってぇ、

 みんな迷惑しているんだよ」

と怒鳴りながら弘美はあたしに飛び掛ってくる。

「まったく、

 短気な奴だ」

瞬間湯沸かし器…ともあだ名されている弘美の短気さを実感しながらあたしは笑うと、

余裕で彼女が繰り出す拳をよけてみせる。

「弘美ぃ

 がんばってぇ」

部員の間から顔を覗かせる野原葵が声援を送ると、

「任せておけって、

 ったくぅ、

 チョロチョロと逃げるなっ」

弘美はあたしに向かって怒鳴り声を上げる。

「逃げるだってぇ?」

その言葉にカチンとあたしは来ると、

パシッ!

弘美の拳を片腕で受け止め、

「俺は逃げやしないぞ」

と言いつつ、

バッ!

一瞬のうちに受け止めた拳を付き離すや

ドォンッ!

と弘美の胸の真ん中を突き押して見せた。

すると、

「うわっ」

弘美は声を上げながら土俵の中に押し込まれてしまうと、

パンパン

「勝負はそこでつけよう、

 相撲のルールは判っているな、

 その中から押し出されたり、

 体のどこかに土がついたら負けだ」

と手を叩きつつあたしは言う。

「そんなのっ、

 判っているわっ」

あたしの言葉に弘美は威勢よく言い返すと、

「お待ちなさいっ」

今度は球追先生の声が響く。

「…先生」

出来れば会いたくは無かった先生の登場にあたしの心は次第に萎えてしまうと、

「何でこんなことをするの?

 目的はなんなの?」

と先生は聞いてくる。

「それは…」

その言葉にあたしはシドロモドロになってしまうと、

『なにをためらっているのです?

 さっさとその女にマワシを締めて差し上げなさい』

と神様が姿を見せるとそう指図する。

「でも、神様っ」

神様に向かってあたしはそういいかけたとき、

「誰としゃべっているんだコイツ!」

弘美が飛び掛ってくると、

ズザザザザザ…

一気にあたしを土俵際にまで押し込んで見せる。

「くっ」

「けっ、これであたしが勝ったら、

 皆を元の姿に戻せ!」

土俵際での攻防の中、

あたしに弘美はそう怒鳴るが、

「なっなめるなぁぁ!」

俵に足をかけたあたしは渾身の力で押し戻してしまうと、

「このぉ!」

ドォォォン!

一気に弘美をつき押し、

そのままの勢いで土俵外へと押し出した。

「あぁっ!」

「くっ、

 俺の勝ちだな」

呆気なくついた勝負に弘美の顔から表情が消えていくのを見ながら、

「お前達」

とあたしは外に向かって声を張り上げた。

すると、

ザザッ

ザザッ

マワシ姿を締めた少女達がテニス部の部室内に入ってくるなり、

あたしの方へと集まってくる。

そして、

「この者にマワシを」

軍配を弘美に向けて指図をした途端、

「はい…」

マワシ姿の少女達は一斉に頷き、

そして弘美へと近づいていく。

「ちょっと、

 あなたたち…

 こっちに来ないで、

 いや、来るなぁぁ」

プルンと胸を露にして迫るマワシ少女達に向かって弘美は悲鳴を上げるが、

だが、多勢に無勢。

瞬く間に弘美は捕らえられてしまうとあたしの前に突き出される。

「くくくっ、

 マワシを締められた者達はどんなに嫌がってもマワシに支配される。

 さぁお前もマワシを締めて奉納相撲に出るのだ。

 そうだ、スポーツ万能を称えて横綱として迎え上げてやるぞ」

弘美に向かってそう告げると、

「どすこいっ」

改めてあたしはマワシを叩いてみせる。

すると、

シュルンッ

さっきは捉えることができなかったマワシは再び伸び、

「やめろぉぉぉぉ!!」

泣き叫ぶ弘美の股間に襲い掛かり彼女の股間をきつく締め上げる。

「ふっ、

 馬鹿な奴…」

着ていた制服が崩れ落ち、

肌が露になっていく弘美を眺めながらあたしはそう呟くと、

「ばっ馬鹿とはなんだぁ!」

その言葉が悔しかったのか弘美は立ち上がるとあたしにむかって突っかかってくるが、

しかし、腰を下げすり足で向かってくる様はまさに土俵上の力士のものであり、

パンパンパン

弘美はあたしに向かって張り手を打ってきたのである。

「あはは、

 上手いぞ上手いぞ」

張り手を受けながらあたしは笑い声を上げると、

「ちっ畜生っ、

 なんで、こんな動きになるんだ、

 あっあたしは…

 相撲なんか取りたくないんだ」

涙を流しながら弘美は訴えるものの、

「ほらほら」

煽りながらあたしはわざと腰をがら空きにして見せると、

ガシッ

弘美はあたしのマワシに取り付き掴みあげる。

ハァハァ

ハァハァ

あたしのマワシを掴む弘美は荒い息を吐きながら、

「くぉのぉぉ!」

歯を食いしばり吊ろうとするが、

グッ!

腰を落としているあたしを持ち上げることは出来ず、

ただ顔を真っ赤にするだけだった。

シュルンッ

そして、その弘美の頭に髷が結われていくと、

鬢付によって光り始める。

「どうしたぁ、

 弘美岳っ、

 お前の力はそれだけか?」

あくまで余裕のあたしは落ち着いて話しかけると、

「くぉのぉぉぉ!!!!

 どっどっどすこぉぉぉいっ!!」

ついに弘美は掛け声を張り上げ吊り上げかける。

だが、

「ふんっ」

それよりも早くあたしは弘美が締めているマワシの結び目に手を掛けてしまうと、

「甘いわっ」

の声と共に投げ技を仕掛け、

「うわっ」

弘美は呆気なく投げ飛ばされてしまったのであった。



「お前は、一度ならず二度も負けた」

土をつけられた弘美に向かってあたしはそう言い放つと、

「くっ、

 ごっごっごっつあんですっ」

顔を真っ赤にして弘美は頭を下げ、

あたしに背中を見せながら、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

と壁に向かってテッポウを打ち始める。

あたしとの勝負に負けマワシの魔力に飲み込まれてしまった弘美は

既に相撲以外のことは考えることが出来なくなっていた。

「そんなぁ…」

まさに最後の砦だった弘美の陥落は部員達にとって衝撃であり、

と同時に、

「どすこいっ!」

シュルンッ

呆然とする部員達に向かって掛け声と共に黒マワシが延びていく。

「いやぁぁ!!」

「やめてぇぇ!!」

「助けてぇ!」

たちまち部室は逃げ惑うテニス部員達の悲鳴で満たされていくが、

しかし、それが収まっていくと、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

と掛け声が響くようになり、

部室の中は髷を結い、

マワシを締め、

シコにすり足・テッポウを打つ少女力士達で溢れ返る。

「くくくっ

 これでテニス部も相撲部になったな」

少女力士達の姿を眺めながらあたしは笑みを浮かべながらゆっくりと振り返ると、

部室の隅で顔を引きつらせながらあたしを見つめる球追先生を見据える。

そして、

「先生っ

 マワシ、締めてくださいますね」

と問いかけると、

「だっ誰がっ

 そんなものを締めますかっ」

持ち前の気の強さだろうか、

追い詰められた状況でも毅然と言い返してくる先生の姿を見て、

「やれやれ、

 先生。

 少しは空気を読んでくださいよ」

あたしは少し呆れながら告げる。

「うっ」

あたしの言葉を受けてか先生は改めて周囲を見ると、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

頼りにしていた弘美は壁に向かって無心にテッポウを打ち続け、

またテニス部員達は既にマワシを締め裸体を晒し、

この中でマワシを締めていないのは葵と球追先生のみ状況であった。

「せっ先生…」

「大丈夫よ」

マワシ姿の部員達に取り囲まれながらも先生と葵は励まし合うが、

「もぅ、面倒くさいから、

 みんな、ちゃちゃっとやっちゃって」

これ以上時間をかけたくなくなっていたあたしはそう命じると、

「ごっつぁんですっ」

テニス部員達の声が響き渡るなり、

「どすこいっ」

と掛け声が響き渡ると、

シュルンッ!

一斉に何本もの黒い帯が舞い上がり、

「きゃぁぁ!!」

「ひぃぃぃ!!」

先生と葵に襲い掛かっていく、

そして巨大な黒マワシの団子が出来上がった後、

それが崩れていくと、

「どすこいっ」

「どすこいっ

 どすこいっ」

中から髷を結い、

マワシを締めた球追先生と葵が出てくるなり、

すり足をしながら弘美の横に並び、

パァンッ

パァンッ

っとテッポウを打ち始めた。

「くくくっ

 これで全員…」

全てが終わったことを実感しながら、

「さぁ、これより神社で奉納相撲を行います。

 みんなっ、

 付いてくるんだ」

とあたしは声を張り上げたのでした。



つづく