風祭文庫・アスリート変身の館






「奉納相撲」
(第3話:部活襲撃)


作・風祭玲

Vol.1005





「はっ

 どすこいっ」

「はっ

 どすこいっ」

広い弓道場を占有するかのように横たわる土俵。

その土俵の中で黒いマワシを締め

髷結うあたしは足を高く上げてシコを踏み始めると、

「菜摘山っ、

 何をボケっと見ているんだ。

 さっさとシコを踏まないか」

あたしとの勝負に負けた後も

悔しそうに唇をかみ締めてジッとこちらを見ている弓長菜摘を見るなり、

あたしは足を止め乱暴に言い放った。

すると、

「いっいやよっ!」

あたしの言葉に菜摘は頬を赤らめながら拒否をしてみせる。

「ほぉ」

それを聞いたあたしは菜摘を睨み付けながら、

「マワシを締め見事相撲を取った奴が何を躊躇うっ、

 菜摘山、お前はもぅ力士なのだ。

 さぁ、シコを踏めっ!」

と怒鳴り声をあげると、

「うっうぅっ」

あたしの言葉に臆したのか菜摘は涙を流しながら腰を上げ、

おずおずと土俵の中へと入ってくる。

そしてあたしの後ろに立つのを見届けた後、

パァンッ!

「どすこぃっ」

あたしは気合を入れるようにして自分の尻を叩いた後、

改めてシコを踏み始めると、

「どすこい…

 どすこい…」

と菜摘もそれに続いた。

こうして二人並んでシコ踏んでいると、

『うんうん、

 良い姿ですねぇ。

 それでこそ相撲取りと言うものです』

あたしと瓜二つの顔の神様は満足そうに頷きながら、

『相撲勝負に負けた者は勝った者に従う。

 それが相撲というものです』

そう囁くと、

「どすこいっ」

その言葉に応えるようにして大きく足を上げたあたしは、

ズンッ!

と足を下ろしてみせる。

菜摘との大一番。

ある意味神様との大一番を制したあたしは

心の中を覆っていた黒いモヤを飲み込み変化し始めていた。

そう、単に相撲を取るだけではない。

自分と同じマワシを締め髷を結う仲間を増やし、

その者たちと相撲勝負に勝って勝ち名乗りを受けつつ精を放つ…

その異様な快感を求める様になっていたのであった。



「うりゃぁ」

ズバァン!

「おっしゃぁ!」

バスンッ

その後、土俵ではあたしと菜摘のテッポウやすり足、

さらにぶつかり稽古と相撲の稽古が延々と行われ、

最初は満足な相撲が取れなかった菜摘だったが、

しかし、稽古が進むにつれ次第に上達していく。

そして、

「はっ」

パァァンっ

辺りがすっかり暗くなった頃、

懇親の力を込めた菜摘の当たりをモロに受けたあたしは土俵際まで追いやられてしまうと、

「はぁはぁ

 菜摘山ぁ、

 やるじゃないか」

汗を噴出しながらあたしは押す菜摘に向かって話しかける。

しかし、

「うわぁぁっ」

髷を結う菜摘は何も答えずにむしゃらになって押してくるが、

「うりゃぁぁぁ」

得俵に足をかけながらあたしはがら空きになっている菜摘のマワシに手を掛けると、

一気に投げ技を掛け、

「だあぁぁ」

菜摘の体をそのまま土俵の外へと放り出てしまったのであった。

『はぁぃ、

 よろしいですよぉ』

その様子を見た神様は満足そうに手を叩いてみせると、

『菜摘山さんもすっかり相撲が板についてきましたね、

 その調子で精進してください。

 ところで、ここにはあなたお一人しか居ないのですか?』

弓道部員が菜摘一人であることを訝しがる。

「はぁはぁ

 はぁはぁ

 きっ今日の練習は休み…なのです」

その神様の問いかけに菜摘は汗だくの肩を上下に動かしながら答えると、

『そうですか、

 それは残念です。

 でも、ここに人が来ないとなりますと、

 いつまでも居るわけには行きませんですね』

と神様は呟き、

チラリ

まだ荒い息をする菜摘を見るなり、

『それでは、菜摘山さんに”精”を奉納していただきましょうか』

と告げる。

「え?

 こっここで精を奉納するのですか?」

それを聞いたあたしは驚くと、

『はぃっ、

 わたし達にとって迸る精は何よりも滋養なのです。

 それと初音力さん。

 あなた先ほどの取り組みの最中に射精をしてしまいましたね。

 困るのですよ、そういうのは…

 ですので、あなたに代わって菜摘山さんにお願いするのです』

神様は理由を言い、

それに併せて、

ストンッ!

菜摘が締めていたマワシが落ちてしまうと、

ブラン…

と締めこまれていた男根が垂れ下がってみせる。

「…うっ、

 あたしのより大きい…」

まさに巨根といえるその姿にあたしは嫉妬をしてしまうと、

『さっ、

 その巨根を扱いて精を放ってください』

と神様は催促をする。



「ハッハッハッ」

シュッシュッ

土俵の中央部、

仕切り線の前で腰を落として蹲踞した菜摘は股間から伸びるオチンチンを扱きつつ、

あえぎ声を上げる。

シュッシュッ

シュッシュッ

次第にその手の動きが早くなっていくと、

「うぐぅぅ

 あぐっ、

 あっ

 あっ

 あぁっ

 でっ出るぅぅぅぅ」

体を震わせながら菜摘は声を上ずらせ、

その直後、

シュシュシュシュッ!

猛々しく鎌首を擡げる男根より生臭いにおいを放ちながら精が噴出すが、

しかし、その精は下に落ちることなく何処へと消えていく。

『はぃっ、

 とってもたくさん出してくれましたねえ。

 嵯狐津姫さまも喜ばれると思います。

 さて、弓取りはお一人居れば十分ですし、

 今度は、太刀持ちを確保してはいかがです』

と神様は誰かの名前を出して喜んだ後、

今度は太刀持ちの確保をあたしに言った。

「判りました神様っ

 確かに土俵入りには太刀持ちも必要です。

 太刀持ちなら剣道部に行きましょう。

 このすぐそばですし、

 まだ部員が残っているはずです」

部活の時間をとっくに過ぎていることを示している道場の時計を見ながら

あたしは神様に向かって返事をすると、

「行くぞ、菜摘山っ」

マワシを締めなおした菜摘を引きつれ弓道場を後にする。

剣道部が稽古をしている剣道場は弓道場の目と鼻の先。

しかも、キャプテンの菜摘が一人だけだった弓道部とは違って、

「メーンッ」

「ヤーッ!」

剣道部にはまだ多数の部員が残って稽古しているらしく、

その熱気は道場の外まで伝わってくる。

『おぉ、ここなら元気な者が多そうです。

 それではあなたにこれを授けましょうう』

熱気あふれる剣道場を前にして神様は手にしていた軍配をあたしに授けてくれると、

「これがあれば…どこでも相撲が取れる」

まさに天下無敵の軍配を手にしたあたしは力強く思い、

ガラッ!

「たのもーっ」

臆することなく剣道場のドアを開け声を張り上げた。



ザワッ

剣道場にあたしの声が響くのと同時に

道場で稽古をしていた防具姿の部員達は一斉に動きを止め、

あたしの方へと面をかぶった顔を向けてみせる。

「だれ?」

「さぁ?」

「見てよ、

 褌締めているわ」

「やだぁ髷も結っている」

「男?」

「変態さん?」

髷を結いさらに男の体に黒マワシを姿である為か、

ここでも生徒会長であることに気づかない部員達は一斉にそんなヒソヒソ話を始めだし、

程なくして、

「あのぅ、

 何の御用でしょうか?」

と迷惑そうに尋ねながら

剣道着に胴・垂姿の剣道部キャプテンである剣持薫子が話しかけてくる。

「用…そうだ、

 お前に大切なお話がある」

薫子の顔を見据えてあたしは返事をすると、

スッ、

神様から預かった軍配を薫子に向け、

「俺たちと相撲を取れ」

と申し出る。

「はぁ?」

あたしの申し出に薫子は一瞬呆気に取られた後、

改めてあたしを見据えると、

「あのぅ…ここは剣道場ですよ。

 相撲を取るようなところではありません」

とキッパリと言い切り、

そして、

「ところで、そのお姿を見る限り男性のようですが、

 ちゃんと許可を取ってここまで参られたのですか?」

と怪訝そうに尋ねてきた。

確かに女子高の剣道場に黒マワシを締め、髷結う力士が押しかけたとなれば警察沙汰になる。

しかし、そんな彼女の態度にあたしは次第に苛立って来ると、

「うるさいっ

 うるさいっ

 うるさいっ

 さっさと相撲を取れ。

 どすこいっ!」

と声を上げて腰に締めているマワシを大きくはたいて見せた。

その途端、

シュルンッ

マワシの前袋が外れて一気にマワシの端が伸びていくと、

「あっ!」

薫子が身につけていた防具を弾き飛ばして、

無理やりその股間を締めこんでいく。

「キャプテン!」

それを見た他の部員達が声を上げるが、

「来てはダメっ!」

剣道着をボロボロに崩されながらも薫子は腕を上げて部員達を制し、

シュルルルル…

締めていくマワシには手を出さず好きにさせたのであった。

「ほぅ…」

度胸のある薫子の態度にあたしは関心をしてみせると、

「うっ」

マワシが締められた股間からオチンチンが突き出したらしく、

すましていた表情が微かに歪み、

そっと手を股間へと当ててみせる。

そして、

「これは…」

股間を膨らませるオチンチンを触りつつ驚いた顔をしてみせると、

「ふふっ、

 土俵は女人禁制だからな。

 どうだ、相撲が取れる体になった感想は?」

前袋から伸びるマワシを切った後、

あたしはそう問いかけながら、

「のこったぁ」

の声と共に軍配を仰いで見せる。

すると、

ズズズズズンンンンン

弓道場の時を同じく剣道場の中央部に土俵が姿を見せたのであった。

ザワッ!

その光景に剣道部員達はみな驚くと、

「どうだ、立派な土俵だろう?

 この土俵で相撲勝負だ。

 俺たちが勝ったらお前はは太刀持ちとして仲間に加わる。

 無論、そこの部員達も皆マワシを締めてもらうぞ」

とあたしは条件を言う。

「なっ何を言い出すの?」

「イヤよ、褌を締めるなんて」

「キャプテンっ、

 こんなイカれた奴さっさと叩きのめして」

薫子の身に何が起きたのか気がつかない部員達は

あたしの話を聞いた途端みな声を揃えると、

「えぇ、判っているわ…」

締め上げてくるマワシを叩きつつ薫子は土俵へとのぼっていく。

そして、

「さぁ、ご希望通り相撲を取ってあげるわ、

 あなたものぼりなさい」

催促をしてきたのであった。

『おやぁ、

 なかなか肝が据わった子ですねぇ

 勝てますかぁ?』

壁をすり抜けてやってきた神様は感心してみせると、

「ふっ、勝つに決まっている。

 だが、お前との勝負はこいつがつける」

笑みを見せつつあたしは菜摘を軍配で指し示した。

「あたしが…ですか!」

それを聞かされた菜摘は驚きの声を上げると、

ザワッ

「あれ?

 あの子って…弓道部のキャプテンに似ていない?」

「やだぁ、おっぱい丸出しじゃない」

「なんで、褌を締めているの?」

「ちょん髷まで結っちゃって、

 あんな趣味があったなんて」

「まさか、あの変態の仲間なの?」

菜摘の存在に気づいた部員達は皆声を上げる。

すると、

「うぅっ」

自分の素性が知れ渡っていくことが恥ずかしく感じたのか、

菜摘は顔を真っ赤にしてみせる。

しかし、

「どうした菜摘山っ

 何を恥ずかしがっている。

 この連中にマワシを締めさせれば問題はないだろう」

とあたしが指摘すると、

「それはそうですが、

 でも…」

菜摘は泣き出しそうな顔であたしを見つめた。

すると、

「みんなっ

 騒がないのっ」

薫子は噂する部員達を一喝した後、

「いいわ、弓道部のあなたが相手ね、

 褌を締めている以上、

 あたしとあなたは相撲を取るしかないのよ。

 さっさといらっしゃい」

と経緯は気にせずに菜摘を招いてみせ、

「どすこいっ」

自らシコを踏み始めた。

『ほぉ…

 相撲との相性が良いらしいですね。

 自らシコを踏むとは見上げたものです』

その姿を見た神様は大いに感心しながらも、

『…マワシを締めたものは最初は嫌がっていても、

 だんだんと相撲を取りたくなってくるのです。

 それがマワシの魔力でもあるのです』

と小声で呟いてみせる。



「菜摘山、グズグズしてないで行け」

軍配を手にするあたしはなおも拒む菜摘に向かって催促をすると、

「はっはいっ」

胸を晒し黒マワシ姿の菜摘は覚悟をしたのか言葉短い返事を残して、

薫子が待つ土俵へとのぼって行く。

そして、

「見合って見合って」

剣道部員達の視線を一身に浴びながら、

土俵上で睨み合う二人の間に軍配を差し込んであたしは声を上げると、

「のこったぁぁ」

の声と共に一気に軍配を引き上げた。

その途端、

パァンッ!

二人の体がぶつかり合う音が響き、

弓道と剣道、二人のキャプテン同士が土俵上で4つに組み合ってみせる。

「のこったぁ

 のこったのこったぁ」

互いに相手のマワシを取ろうとする二人のそばであたしは声をあげると、

「きゃぷてーん」

「負けないで」

剣道部員達は一斉に薫子を応援し始める。

だが、

「だぁぁぁ!」

薫子が菜摘の懐にもぐりこもうとしたとき、

逆に菜摘の体がすばやく動き薫子の体を下に向けて落としたのであった。

「菜摘山ぁぁぁ!」

あたしは声を張り上げ菜摘に軍配を差し向けると、

「くっ」

菜摘の足元で薫子が突っ伏していた。

「きゃぁぁぁ!!」

「そんなぁ」

「キャプテーン」

部員達にとって最悪の結果に皆は一斉に声を上げる中、

「あたし…勝ったの?」

菜摘は信じられない表情をして見せる。

「そうだ、いまの勝負はお前の勝ちだ。

 相撲は稽古した分強くなる。

 だからとっても気持ちが良いだろう」

立ち尽くす菜摘の耳元であたしはそっと囁いてみせると、

「はぁぁん

 なんだかとっても気持ちいいわ…

 これがお相撲なのね…」

相撲勝負に勝利したことに酔い始めたのか、

菜摘は自分の体を抱きしめると、

「ごっごっつぁんですっ

 もっと相撲を取らせて…ください…」

と菜摘の口調が変わり始めた。

「ふふふふっ、

 そうだ、それでこそ力士」

そんな菜摘の姿を見たあたしは満足すると、

「薫子海ぃ、

 判っているな」

と相撲勝負に負けた薫子に話しかける。

すると、

「はい」

薫子は素直に頷いてみせると、

「うん」

それを見たあたしは体の向きを変え、

「約束は約束だ、

 そこの剣道部員達っ、

 約束どおりマワシを締めるんだ」

部員達に向かってそう告げるや否や、

「いやだぁ」

「誰が褌なんて」

あたしの言葉に従わずなおも部員達が反発して見せるものの、

「ふんっ」

あたしは鼻で笑いつつ目で菜摘に合図を送ると、

「どすこいっ!」

「どすこいっ!」

あたしと菜摘は声を揃えて自分のマワシを叩いて見せたのであった。



「どすこいっ(グズッ)」

「どすこいっどすこいっ(シクシク)」

剣道場に姿を見せた土俵の上で黒マワシを締める剣道部員達が

泣きながらとシコ踏みするのをあたしは眺めていると、

『実に良い光景です。

 この調子で参加者を増やせれば直ぐにでも奉納相撲が行えますね』

と神様はあたしに言う。

「ごっつぁんです」

その言葉にあたしは頷くと、

「では、次は柔道部に行きましょう。

 さぁ、お前も付き合うんだ」

と言うや菜摘・薫子の二人を引き連れてあたしは剣道場を後にすると、

次なる目標、柔道場へと向かって行く。

「たのもぅっ!」

あたしの声と共に柔道場のドアが開かれ、

マワシを大きく叩いて見せると、

ズラッ

まるで待ち構えた居たかのようにあたしの前を柔道着姿の部員達が並び、

「来ると思ったわ」

の声と共に柔道部キャプテン・谷和原美佐が腕を組みながらあたしの前に立った。

「ほぉ、俺たちが来るのを待っていたのか?」

ジッとあたしを見据える美佐に向かって問い尋ねると、

「えぇ…

 剣道場はすぐ隣、

 そこで何が起きているのか情報は常に入ってきます」

と美佐は答え、

「それなら話が早い。

 柔道部キャプテン・谷和原美佐。

 お前には奉納相撲で土俵入りをやってもらうぞ」

軍配で美佐を指しながらあたしはそう告げると、

「お断りします」

と彼女は即座に言い切った。

「ほぉ…」

その返事にあたしは感心する素振りを見せると、

「そうだ、

 帰れ帰れ!」

と他の柔道部員達も一斉に声を上げる。

しかし、その声を受けながらも、

「のこったぁ」

あたしは悠然と軍配を仰いで見せると、

ズズズズズンッ

柔道場に土俵が競りあがり、

「うわぁっ」

帰れコールはたちまち畏怖を帯びた声に変わる。

「その土俵は俺達との相撲勝負に勝つまで消えないぞ」

柔道部員達を見渡しながら腕を組むあたしはそう言うと、

「どうしても相撲を取らせる気ね」

あたしを睨み付けながら美佐は言う。

「ここまでされれば取るよな?」

畳み掛けるようにしてあたしは問い直すと、

「見ての通りあたしは柔道部員。

 勝負事は畳の上です。

 褌締めて土の上の勝負なんて出来るわけ無いでしょう?」

と言い返す。

「どうしてそのようなことを言うんだ?

 相撲と柔道、どちらも同じ武道だろう?

 ここで相撲を取っても罰は当たるまい」

彼女を見つめながらあたしは言うと、

「どすこいっ」

と声をかけマワシを叩いて見せる。

その途端、

シュルンッ

あたしが締めているマワシの前袋がはずれ、

美佐に向かって伸びていく。

「それね、

 剣道部の人たちをおかしくしたのは」

自分に向かって伸びる黒マワシを見て美佐は声を上げると、

「おかしく?…

 何を言っているんだ。

 相撲を取れるようにマワシを締めただけだ。

 さぁ、お前もマワシを締めろ」

美佐に向かってあたしはそう言うが、

「はっ」

間一髪、美佐は身を翻しマワシをかわしてしまったのであった。

「ほぉ、さすがは柔道部キャプテンを務めるだけはあるな。

 しかし…」

美佐を見据えあたしは笑みを見せると、

パンッ!

再び腰のマワシを叩いてみせる。

すると、

クンッ!

彼女を捕らえられなかったマワシはその向きを返え、

再度襲い掛かる。

だが、

「はっ」

受身を使って美佐はまたしてもマワシをかわしてしまい、

目標を見失ったマワシは空しく空を切ったのであった。

「ちっ

 すばしっこい」

なかなか捉えられない美佐の姿を見てあたしは舌打ちをすると、

「いいぞ、キャプテーン」

「変態褌野郎なんかに捕まるなぁ」

と美佐への声援が響き渡る。

「ふーん」

それを見たあたしは目標を美佐から部員達へと返え、

「どすこいっ」

パンッ

マワシを叩いて見せると、

クンッ!

美佐を追いかけていたマワシはその向きを変え、

部員の一人へと向かっていったのであった。

「きゃぁぁぁぁ!!!」

突然部員が上げる叫び声が響き渡ると、

「あっあっあっ」

シュルルルル…

青ざめた顔の部員の股間を下穿きを崩しながらマワシが締め上げていく。

「ひっ卑怯よ!」

それをみた美佐があたしに向かって怒鳴ると、

「お前が相撲を取らないというなら、

 他の奴に頼むしかないだろう。

 さぁ、マワシを締めたお前。

 柔道部を代表して土俵に上がれ」

と柔道着を消され、

代わりにマワシを締められた部員を指差してあたしは命令する。

すると、

「きゃっキャプテン…」

部員は露になった胸を両手で隠しながら助けを求めるかのように美佐を見るが、

すぐに、

「あうっ」

マワシの魔力によってオチンチンを生やされたのか、

マワシが締め上げる股間を押さえ体を震わせて見せた。

「!!っ

 いま何をやったの」

それを見逃さずに美佐はあたしに尋ねると、

「さぁな?

 土俵は女人禁制だからね」

とあたしはワザとらしく答え、

「さぁ早く土俵に上るんだ」

部員を急かして見せる。

「はっはいっ」

その言葉に部員は従い土俵に向かって歩き始めると、

「待って」

美佐は声を上げたのであった。

ニヤッ

嫌味っぽくあたしは声を上げた美佐を見ると、

「部員に相撲を取らせるわけには行かないわ、

 あたしが相撲を取る。

 さぁその褌を締めさせなさいよ」

と美佐はあたしに言う。

「やっとその気になったか」

彼女の決断を誉めつつあたしはその前に立つと、

「覚悟はいいか?」

と問い尋ねる。

「出来ているわよっ、

 さっさとお化けのような褌を締めなさいよ、

 ただし、彼女を解放してからよ」

部員を指差して美佐は決断を交換条件とした。

「いい心がけだ」

その条件にあたしは頷くと、

ブンッ

マワシを締めさせた部員に向かって軍配を仰いでみせる。

その途端、

ボロッ!

彼女の股間を締め上げていたマワシは崩れるようにして消え、

「あっ

 いやっ」

マワシを失った部員は素っ裸の状態になったことに気づくと、

オチンチンが生える股間を見せまいと両手で隠し更衣室へと駆け込んで行く。

「さぁ、約束は守ったぞ

 こんどはそっちがマワシを…」

振り返りながらあたしは美佐に言おうとしたとき、

「だれがっ!」

怒鳴りながら美佐はあたしの元に飛び込み、

腰に締めているマワシに手をかけると柔道技で投げ飛ばそうとした。

しかし、

「おっと…」

彼女の技を見切っていたあたしは余裕で交わしてしまうと、

「そっちからワザワザ飛び込んできてくれてありがとう」

そう礼を言いながら、

「どすこいっ」

とマワシを叩いたのであった。

シュルンッ

たちまちマワシの前袋がはずれ、

その先端が美佐の股間に取り付くと、

ギュッ!

「あぁっ」

美佐が着ている柔道着を崩しながら

彼女の股間をマワシが締め上げていく。

「きゃっキャプテーン!」

柔道部を引っ張ってきた美佐の衝撃の姿に他の部員達が悲鳴を上げるが、

「ふふっ、

 マワシを締めたお前はもぅ力士だ。

 さぁ、土俵の上で勝負だ」

とあたしは言いつつ切れたばかりの美佐が締めているマワシを取ると、

「どりゃぁぁ!」

の掛け声と共に彼女を土俵上へと放り込んだのであった。

そして、

「さぁ、ここでのお前の相手をするのは、

 さっきまで剣道に汗を流していた剣持薫子こと薫子海ぃ」

と軍配で薫子を指し示すと、

「えぇ!」

胸を隠す薫子が悲鳴を上げたのであった。

「なんだ、その情けない声は?」

それを聞いたあたしは不満そうに聞き返すと、

「だってぇ」

頬を真っ赤に染めて薫子は恥らってみせる。

「ほらほら、さっき相撲を取ったばかりだろう。

 グズグズしているとシコを千回踏ませるぞ。

 判ったらさっさと土俵にのぼれ」

恥らう薫子の尻を軍配で叩いてあたしは彼女を突き押すと、

「うぅっ」

マワシが締め上げるお尻を庇いつつ薫子は土俵へとのぼっていく。



「見合って、

 見合って、

 はっけよぉーぃ」

両拳を土俵に着け、

睨み合う両者の間に割って入ったあたしはそう声を上げると、

「のこったぁ!」

の声と共にその軍配を引き上げる。

その途端、

「たぁぁぁ!」

「やぁぁぁ!」

マワシ姿の二人は互いに飛び出し、

バシーン!

音を立てながら二人は土俵の中央でがっぷり4つに組み合う。

そして、

「主将ぉっ負けるなぁ」

「みんなの為に頑張ってぇ」

剣道場の時と同じく自分達の運命が掛かっている柔道部員達は

一斉に美佐に声援を送り始めるが、

「のこったぁ、

 のこったぁ」

あたしは嬉々としながら軍配を片手に声を上げつつ、

チラリ

さっきマワシを解いた部員が戻ってきているの見つけるや、

「どすこいっ」

と自分のマワシを叩いてみせた。

すると、

シュワァァァ…

さっき崩れ去ったはずのマワシが彼女の股間に復活し、

ギュッ

とその股間を締め上げるや、

「ひやぁぁぁ!」

体を隠すように他の部員の柔道着を羽織っていた彼女が悲鳴を上げてみせる。

その途端、

「きゃぁぁぁ!」

それに気づいたの部員達が一斉に悲鳴をあげて逃げ惑い始めたのであった。

「あっちょっと、

 卑怯よ、

 こんなの」

その光景を土俵上の美香が見るなり抗議の声を上げるが、

「卑怯はそっちが先にしただろう?

 これはお返しだ」

とあたしは取り合わず、

それどころか、

「薫子っ、

 何をしているっ

 相手の体が止まっているんだ、

 チャンスだろうが」

と美佐のマワシにしがみついている薫子にハッパをかけた。

すると、

「うらぁぁぁ!!!」

顔を真っ赤にして薫子が美佐のマワシを掴み上げ、

一気に土俵際へと押し込み始める。

そして、

「のこったぁ

 のこったぁ」

攻めに転じた薫子を応援するようにあたしは声を張り上げると、

「だぁぁぁ!!」

ついに薫子は美佐を土俵から押し出してしまったのであった。

「薫子海ぃ〜っ!」

軍配を薫子に差し出し、

あたしは勝ち名乗りを上げてみせると、

「畜生!!!」

よほど悔しいのか美佐は土俵脇に膝を付き何度も土俵を手で叩き始める。

その一方で、

「くっくっくっ、

 約束だからなっ」

笑みを浮かべるあたしは一箇所に固まって怯える柔道部員達に向かってそう指摘すると、

薫子や菜摘と共に

「どすこいっ!」

あたしは声をあげてマワシを叩いてみせ、

程なくして、

「いやぁぁぁぁ!!!」

柔道部員達の悲鳴が道場に響き渡りると、

あたしの前には胸をさらけ出し、

腰にマワシを締める柔道部員達が座り込んでいたのであった。

「さぁ、いつまで座り込んでいるんだっ、

 マワシを締めたら稽古だ稽古だ」

呆然と座り込んでいる柔道部員達に向かってあたしは声を荒げると、

パァンッ!

自分の尻を叩き、

ザッ!

足を高々と上げる。

そして、

「どすこいっ」

の掛け声と共に下ろすと、

「どすこいっ」

「どすこいっ」

菜摘や薫子がそれに後に続く、

「さぁ、お前もシコを踏め」

と美佐を促すと、

「くっ」

美佐は歯を食いしばりながら土俵の中で足をあげ、

「どすこいっ」

とシコを踏み始める。

信望してきた柔道部キャプテンのその姿に部員達は絶望感を味わってしまうと、

一人、

また一人と立ち上がりシコを踏み始める。

「そうだその調子だぁ、

 さぁ、シコ踏みが終わったら、

 全員、壁に向かってテッポウ。

 その後はすり足!」

矢継ぎ早にあたしは命じると、

パァンッ

パァンッ

柔道部員達は皆壁に向かいテッポウを打ち始める。

そして、数珠繋ぎになって土俵の中をすり足で回り始めたのを見届けた後、

「さぁて、次はレスリング部だな」

あたしは美佐を加えて柔道場を後にし

部員が残っていそうなレスリング部、新体操部、水泳部と立て続けに襲い、

それらのキャプテンと部員達にマワシを締めさせていく。

「ふぅ…

 残っているのは主に球技系や文化系だけど…

 みんな帰っちまったし、
 
 こっちは明日にするか」

校内の至る所から響くシコ踏みやテッポウ、すり足の音を聞きながら

あたしは満足そうに頷くと、

『はぁいっ、

 その調子その調子』

と言いつつ神様は笑顔を見せていたのであった。



つづく