風祭文庫・アスリート変身の館






「奉納相撲」
(第1話:相撲の神様)


作・風祭玲

Vol.1003





あたしの名前は神無月初音、もうすぐ17歳の高校2年生。

好きなことは…食べること、寝ること、遊ぶこと。

無論、勉強なんて二の次なんだけど、

でも学校での評判はそれとはちょっと違っていて、

どういうわけか容姿端麗、学業優秀、運動神経抜群なぁんてもてはやされ、

挙句果てに生徒会長なんて面倒くさい仕事を押し付けられる始末。

はっきり言って迷惑千万なんだけど、

でもまぁいいか、こういうのって…

さて、あたしの家は某学問の神様をお守りする神職の家柄。

神無月って苗字なのに神職ってヘンな取り合わせでしょう。

でもまぁ、これで千年間やってきているんだから問題ないってことか、

と言うわけであたしのもぅ一つの顔は髪を水引でくくり、

白衣に緋袴姿で境内の掃除から参拝客の応対までこなす

お社の何でも屋さんこと巫女さんなのです。

これって結構重労働なんだけど、

でも生徒会長しているよりもずーっと面白い。

ところがこの格好目当てか、

「おーとふぉーかす!」

最近高価そうなカメラを持つ怪しげな男子がチラホラと見かけるようになって…

「こらぁ、境内は撮影禁止って言ったでしょう!!」

「あっあぁぁ…」

カランコロン

カランコロン

ふぅ…気を抜く暇もありゃしない。

それにしてもあの学生服に下駄履きの男子って最近よく見かけるけど、

近所の子なのかしら…



「よっしっ、

 やるか」

梅雨の晴れ間が広がる日曜日の朝。

巫女装束に着替えたあたしは気合十分に竹箒を握り締めて見せる。

創建から千年の歴史を誇るこの社はシーズンともなると

もぅ猫の手も借りたいほどの大繁盛…もとい、大盛況なんだけど、

でもオフシーズンのいまは参拝者もチラホラで広い境内のお掃除もあたし一人で十分。

ザーッ

ザーッ

古木に囲まれシンと静まり返る境内に響き渡る箒の音。

世の中の喧騒とは隔絶された空間に久方ぶりの陽の光と

木々が放つ新鮮な空気を吸いながらの作業はとっても気持ちが良い。

軽く汗ばみながらのお掃除が一段落すると、

「ふぅ」

あたしは大きく息を吐きながら綺麗に清められた境内を改めて見回して見る。

「うん、よしっ」

隅々まで行き届いた境内の様子に満足気に頷き、

あたしは隣接する別社へ向かっていく。

別社はあたしが通っている学校を見下ろす崖の上に建っていて五穀豊穣の神様を奉っている。

大昔、この地を暴れまわっていた鬼に相撲勝負を挑んだ神様は見事鬼を打ち負かしてしまうと、

負けた鬼を地の中へと封じ込め、

飢えに苦しんでいた人々に五穀を下されたとか。

軽く一礼して境内に踏み入れると社殿の脇でじっと佇む土俵が目に入ってくる。

そうこの土俵がこの社のもう一つの顔でもある。

旧暦六月晦日の大払い。

鬼が封じられた日でもあるこの日、

この土俵では相撲部屋の力士達を招いて盛大な奉納相撲が行われていたけど、

でも、相撲部屋が移転し、

さらに相撲を取る人たちも居なくなったために

由緒ある奉納相撲も土俵脇で祝詞を上げるだけの素っ気無いものへとなってしまった。

「こういうのってなんか寂しいね…」

時の流れから忘れ去られようとする土俵を眺めながらそう思っていると、

『初音は女の子なんだから、土俵に入ってはならん』

不意に土俵に近づこうとする小さなあたしを戒めるおじいちゃんの声が頭の中に響いた。

「でもね、おじいちゃん。

 相撲を取る人が居なければ意味が無いでしょう」

数年前に他界したおじいちゃんに話しかけるようにしてあたしは呟くと掃除を始めだす。

陽は高く昇り、冷たかった空気も熱気を帯びてくる。

「もうすぐ夏かぁ…」

この鬱陶しい梅雨が明ければ、待ちに待った夏。

額から流れ落ちていく汗を拭いつつあたしは体を動かしていると、

目の前に社殿が迫っていた。

ちょっと一休みしよ…

社殿を仰ぎ見ながらあたしは箒を止めると。

社殿に上がり、その中をひょいと覗いてみる。

あるある…

社殿の中央部。

そこにご神体として置かれている黒塗りの軍配を取り囲むようにして

綺麗な刺繍がされれた化粧マワシがいくつも置かれているのだ。

人々のために鬼を封じた神様を労い、

そして、社の奥深くに封じられている鬼が再度出てくるのを禁ずる結界とするために

かつての相撲取りたちが己の化粧マワシ奉納したもの。

って亡きおじいちゃんに聞いていたけど、

「それにしても誰が手入れしているんだろう…

 いつまでたっても全然色あせないし、

 破れも無い…全く不思議だわ」

奉納されたから長い年月が経っているにもかかわらず、

まるで新品のような輝きを放っている化粧マワシをあたしは感心しつつ眺めていた。

とその時、

バタバタバタバタ!!

境内から一斉に鳥が飛び立つのと同時に、

ズズズズズンンンン

鈍い地鳴りが響き渡ると、

ユサユサユサ…

地面が揺れ動く。

「ひっじっ地震!」

ガタガタガタガタ!!

地面の揺れにあわせて音をたてる社殿の中であたしは思わず近くの柱にしがみつき、

同時にガタン!

ガタガタガタガタン!

中の化粧マワシが倒れていく。

「あぁ!」

それを見たあたしは思わず声を上げるけど、

どうすることもできずにただ眺めていただけであった。

程なくして地震は収まるものの、

「あーぁ、

 みんなひっくり返っちゃった。

 もぅ、これ直さないとダメよね」

社殿の中を惨状を見たあたしはそうつぶやくと、

鍵を取りに社務所に向かおうとする。

ところが、

『ふふ…』

社殿に背を向けたあたしの背後を微かな笑い声と共に影のようなものが横切ると、

ファサッ

尻尾を思わせる大きな筆に背中を押された感じがした。

「え?」

突然の感覚にあたしは慌てて振り返ったその時、

キシッ!

何かが軋んだかのような音が響くと、

グラッ…

「うっ」

あたしは強烈なめまいに襲われ、

周囲の景色が一斉にうねり出す。

「なっ何かしら?

 まっまた地震?」

地震とは違いまるで生き物のごとくウネウネと蠢く世界の中、

あたしは頭を押さえながらもまた社殿の柱にしがみつくが

しかし景色はなおも蠢き続け、

柱にしがみつくことすら困難になっていく、

「何よこれぇぇぇ!!」

全く理解不能な怪現象の中、

あたしは泣き叫ぶと、

『…ちょっとくすぐったいかもしれませんが、我慢してくださぁい…』

と言う男とも女ともわからない声が響き、

それと同時に

フワッ

ケモノの臭いがあたしの鼻をついてくる。

「うっ、

 猫?

 それとも犬?」

強烈なケモノの臭いにあたしは反射的に鼻を押さえながら周囲を見回すと、

キシッ!

またしても軋む音が響いた。

その途端、

フッ

あれほどうねっていた景色が気を付けをするがごとく

シャンと元の佇まいに戻ったのである。

「え?

 え?

 えぇ?」

狐につままれる…

まさにその通りの展開にあたしはキョトンとしたまま、

シンと静まる世界の中で一人呆然と立ち尽くしていたのであった。

「何も居ない…

 変なの?」

動物の気配が全く感じない境内の佇まいに小首を捻りつつ

あたしは自分の頬を2・3回叩いて改めて中を覗くと、

「あれ?」

地震で散乱した化粧マワシの中にあっても、

何事もなかったかのように置かれていた軍配が消えていたのである。

「え?

 えぇ!

 うっそぉ!」

いきなり消えた軍配にあたしは驚き、

社殿のあちこちを探し回ってみるけど、

しかし、どこを探しても軍配を見つけることが出来ず。

「この周りを探してみるか…」

軍配を探しつつ土俵へとその足を向けた。

色あせた屋根の下にある土俵はいつでも相撲が取れるように掃き清められている。

女であるあたしは土俵の中には入れないので土俵の整備は3歳年下の弟の担当。

いつもブツブツ文句を言いながらも綺麗にしてくれている。

かつてこの場で褌姿の男達が汗飛沫を撒き散らせつつ相撲と取っていたなんてウソみたい。

土俵脇で腰をかがませ耳を澄ませば

戦う男達の粗い息遣いと土俵を取り巻く観衆の歓声が響いてくるようだ。

「そういえば明後日だっけ奉納相撲の日って。

 ねぇ神様っ、

 軍配知りません?

 奉納相撲の日に軍配無いと寂しいよね」

幻の歓声を振り払うかのように土俵に向かってあたしは話しかけた途端、

モコッ!

それに答えるようにして土俵のほぼ中央部が直径約30cmほどの大きさで

瘤のようにこんもりと盛り上がったのであった。

「なっなにぃ?」

突然起きた不思議な現象を目の当たりにしてあたしは思わず目を丸くすると、

キョロキョロとあたりを見回してみせるが、

しかし、

シーン…

物音一つ聞こえない景色の中、

あたしは視線を泳がせた後、

改めて土俵を見ると、

土俵の中央部で盛り上がった瘤は消えては無かった。

原因はなんだかさっぱりわからない。

地震のせい?

まさか。

そんな言葉で自問自答して見せるけど、

でも弟が見たらあたしが悪戯したと怒鳴り込んでくるのは間違いなく、

そうならないようにする為にもあたしが瘤を潰すしかない。

「もぅ、この忙しいのに…

 余計な仕事を増やすなぁ!!」

と文句を言いつつ箒の柄を伸ばして瘤を潰そうとするけど、

いくら柄先で押しても瘤はびくともしなかった。

「う〜ん」

箒を引っ込めたあたしは唸りつつ、

目に付くものは手当たり次第に利用して瘤を潰そうとするものの、

しかし、叩いても引いても払っても瘤は砂一粒すら崩れ落とすことはなく。

土俵の中でその雄姿を見せ付けていた。

「なっなんなのこれは!」

万策尽きたあたしは土俵脇でペタリと座り込み、

ヒステリックに叫ぶと、

『…道具を使わず、ご自分の手で潰したらいかがです?』

と言う声が頭の中に響いた。

「(ゾク)

 誰?」

突然響いた声にあたしは全身の鳥肌を立たせて声を上げるが、

「……」

またしてもあたしの周囲には人影一つ無かった。

「…誰か居る」

体中の毛を逆立たせてあたしは息を殺し気配を探るが、

しかし、いくら探っても何一つ感じることは出来ない。

「…どうしよう…」

鼓動を早める胸を押さえるように胸に手を当てながらあたしは考え、

そして、相変わらず誰の気配も無いことを感じ取ると、

このまま土俵の中に入って手で潰せばいいじゃない。

と言う考えが頭の中を駆け巡り始めた。

「そっそうよねっ、

 誰も居ないんだし、

 あたしが入っても…」

まるであの声に促されるようにあたしは腰を上げると、

目の前に広がる土俵を見定める。

そして戒律を破るハラハラ感を胸に土俵に上がるため一歩を踏み出した。

が、

「あっ」

白足袋に草履を履いた足に気がつくとすぐに引っ込める。

そうあくまでも土俵は神域。

それを忘れては巫女の名に恥じる。

そそくさと草履と白足袋を脱いて素足になると、

「いざっ」

あたしは大きく息を吐き土俵へと踏み込んだ。

そして足先が土俵に付いた瞬間。

ピリッ!

電気のような痺れを伴った快感があたしの足から入ってくると、

背骨に沿って体の中を突き抜けて行く。

「あっ、

 うっ、

 うんっ、

 くぅぅぅ…

 ぷはぁぁ

 はぁはぁ

 はぁはぁ

 なっなに?

 いまの?」

ひとりエッチでも味わったことの無い”突き抜けていく快感を”全身で感じ取った後、

あたしは慌てて足を引っ込めて土俵を見るが、

けど、土俵には何の変化も無かった。

「…変なの……」

ツンッ!

しばらく間をおいておっかなびっくり足先で土俵を突っついてみるが、

今度はなにも起こらず、

「?

 気のせい?

 変なの?」

困惑した表情を見せつつ、

ヒタ

素足で土俵へと入る。

「うわぁぁ、

 冷たい…」

足の裏から沁みるように感じる湿気を帯びた土の感触につい声を上げてしまうと、

その感触を味わうようにして一歩一歩慎重な足取りで土俵の中央へと向かっていく、

そして中央部を挟んで引かれている仕切り線のところに着た時、

「そうだ…」

あたしの頭にある考えが浮かび、

仕切り線に足の指先が掛かるところで手を掲げながら、

「ひがぁしぃ〜初音力ぃぃ〜」

と声を上げてみせる。

それから一呼吸置いた後、

「いよぉっ」

その掛け声と共にあたしは片足を上げると、

ペタンっ!

とその足を下ろし、

さらに左右の足をそれぞれ上げた後、

「はっ」

ぱぁぁんっ

拍手を打って見せると、

「へへっ、

 一度、こんなことしてみたかったんだ」

あたしは土俵入りをして見せたのであった。

「…とはいっても褌なんて締める気は無いけどね」

拍手を打った後、

悪戯っぽくそう呟くと、

「さて」

気を取り直して中央で盛り上がっている瘤へと目を向ける。

そして、瘤の前で改めて腰を下ろすと、

「やっぱりモグラの仕業なのかな?」

と呟きつつその頂上部を素手で押し込んでみるが、

コリッ

意外なことに手の平に硬い感触が突き当ったのであった。

「え?」

思いがけないその感触にあたしは驚きつつ手をゆっくりと上げて、

改めて眺めてみると、

崩れた小山の中から黒い色をした何かが顔を出しかけている。

「木の根っこ?

 それともタケノコ?」

地中から突き上げているなぞの物体を見て、

あたしは興味津々に両手で小山を崩し始めると、

ズブズブ

どういうわけか顔を出しかけていた”それ”は中へと引っ込み始める。

「なっなによっ」

押し込もうとした時は反抗しながら、

掘り出そうとすると引っ込んでいく”それ”の姿に

あたしは内心苛立ちながら土の山を崩していくと、

シュポッ!

ついに”それ”は土俵の真ん中に空いたの穴の中へと引っ込んでしまったのであった。

「あーったく、往生際が悪いわねっ」

巫女装束の袖を大きくまくり、

あたしは穴の中へと腕を突っ込むとその中をさぐり始める。

そして穴の奥で棒のような硬い物体を掴むと、

「捕まえた。

 どりゃぁぁぁ!」

のかけ声共に”それ”を一気に引っ張り上げて見せる。



「こっこれって!!」

土俵の中から出てきたもの…それは一振りの軍配であり、

社殿の中から消えたあの軍配であった。

「なんで、

 なんで、ご神体が土俵の中から出てくるの?」

キョトンとしながらあたしは黒塗りの軍配を眺めてみると、

『おやおや、軍配を知らないのですかぁ、

 失礼ですねぇ』

今度は聞き覚えのある女の子の声が耳元で響いた。

「だっ誰?

 どこにいるの?」

周囲を見渡しつつあたしは姿の見えない声の主に向かって叫ぶと、

『どこを見ているのです?

 わたしはここに居ます』

と再び声が響くや、

ピクッ!

あたしが手にしていた軍配が蠢き始める。

「いやっ」

まるで生き物のごとく蠢く軍配をあたしは放り投げてしまうと、

フワッ

投げられた軍配は中に浮き、

さらに

シュルンッ!

その軍配の柄から巻きを解くようにして黒い布が宙に舞い踊ると、

空中の一点でTの字型に纏まってみせる、

と同時に

ボンッ!

そのTの字型の中より肉質のものが大きく膨らむと、

左右の下から両足が伸び、

さらに上からは上半身が伸びていく。

そしてついいにあたしの目の前に一人の人間が姿を見せたのであった。



「うそっ」

目を丸くし口を両手で塞ぎながらあたしは自分の目の前に立つ人物を見ると、

パァァン!

『ふぅ…、

 外の空気は美味しいですねぇ』

腰に締めた黒い褌を気合を入れるかのように叩き、

頭に髷を結った男…

いや、胸に2つの膨らみがあるので間違いなく女…の人があたしを見下ろしていた。

「あっあなたは…」

その衝撃的姿にあたしは口をパクパクさせながら指差すと、

『わたしですかぁ?

 見ての通り、相撲の神様です』

と女は自己紹介をしてみせるが、

「神様ってそんな…

 だってその顔ってまるであたし…」

髷を結っているもののまさにあたしと瓜二つの顔を持つ神様を唖然としながら眺めると、

『誠に申し訳ありませんが、

 あなたのお姿とお声をお借りしました。

 こうしないと人間と会話をすることができませんので』

あたしの姿をした神様は笑ってみせる。

「借りるって…

 じゃぁあなたは本当に鬼を退治したといわれる相撲の神様・野見宿爾ですか?」

その声にあたしは声を震わせて聞き返すと、

『野見宿爾様…ですか。

 残念ですがちょっと違いますね。

 強いて言えば”通りすがりの相撲の神様”と申せばよろしいでしょうか…』

と神様はあたしから視線を外して返事をする。

「なぁんだ、違うのか」

それを聞いたあたしは少しがっかりて肩を下ろすと、

『おやぁ?

 あなた、

 いまガッカリしましたね。

 あたしってそういう顔をしているでしょ。

 って言ってますね』

あたしの態度が気に入らなかったのか神様は不機嫌そうな表情をしてみせると、

すっ

宙に浮いたままの軍配を手中に収めるや、

その先をあたしに向け、

『ならばわたしの神通力を見せてあげましょう、

 どすこぉいっ!』

の掛け声と共に

パァン!

腰に締めている褌を右手ではたいて見せる。

すると、

ピクッ!

ムクムクッ!

神様の腰の前面で中に収められている褌の一端がまるで生き物みたいに蠢きだし、

ペロンッ

と顔を出した。

そして、その先端があたしの方を見るなり、

シュルン!

と伸び始める。

「ひぃぃぃ!!!

 おっお化け!!」

まるで蛇のごとくあたしに向かって伸びてくる褌の姿を見て悲鳴を上げて、

あたふたと逃げ出だそうとするが、

しかし、

『ははは、

 残念ながらこのマワシからは逃れることが出来ませんし、

 神聖な勝負の前に土俵の外に出ることは許されませんよぉ』

あたしの顔と体で神様は声高に笑うや、

フワッ

「あっ」

逃げるあたしの体が宙に浮かんでしまったのであった。

「そんな…

 どうして」

足先が空しく宙を掻き、

あたしは必死でもがいていると、

シュルルル…

神様の股間から伸びる褌の先端はあたしの腰にまとわり付き始める、

そして、

ツンツン

ツンツンツン

あたしの腰から股間にかけを探った後、

シュルン!

と股間を通り

クンッ!

あたしの股を二つに分けていく。

グッグーッ

「あぁぁぁ…」

容赦なくお尻に食い込んでくる感覚にあたしは声を上げると、

ボロボロボロ…

穿いていた巫女の緋袴がまるで砂のごとく崩れてしまい、

さらに上着の白衣も同じように崩れていく。

「そっそんなぁ、

 いやっ恥ずかしい」

瞬く間に一糸纏わぬ姿にされたあたしは恥ずかしがるものの、

シュルルル

褌はそんなあたしに遠慮することなく縦に横にと2重3重に腰に巻きつき、

ギュッ!

っと締め上げてたのであった。

「あぁっ、

 きっキツイ…!」

Tの字型にあたしの股間を締め上げる褌の力にあたしは悲鳴を上げてしまうと、

プツン

神様から伸びていた褌が切れ、

キリキリキリ

さらに締め上げてくる。

『ははは、どうです。

 身が引き締まる思いでしょう。

 その出で立ちでこそ相撲が取れる。と言うものです。

 しかし、相撲を取るにはその髪が邪魔ですね。

 そぉれっ、のこったぁ!』

褌を締めたあたしの姿を眺めつつ神様は大きく軍配を振ってみせる。

その途端、

ブワッ!

一陣の風があたしを襲い、

その風の中で髪を束ねていた水引が千切れてしまうと、

髪は一旦大きく乱れるが、

しかし、すぐに纏まり結い上げられてしまうと、

なんと力士が結う髷となってしまったのであった。

「いっいやぁぁ!」

腰を締め上げる褌と頭に結われた髷の感覚を感じながら、

あたしは降ろされた土俵の上で悲鳴を上げると、

「お願いです、もとの姿に戻してください。

 褌を締めて相撲なんて…取れません」

神様に向かって訴える。

ところが、

『褌ではありません。

 マワシです。

 それになんです?

 その情けない声は…

 さぁてお遊びはこれくらいにして早速相撲を取りましょうか』

満足げに神様はそういうと、

ザッ

高々と片足を上げシコを踏み始める。

あたしと瓜二つの女が力士と同じ黒いマワシを締め、

シコを踏む様子を目の当たりにしてあたしは呆然と立ち尽くしてしまうと、

『何をしているのです?

 シコを踏まねば体が動きませんよ』

と注意をしてきた。

「さっきも言いましたが、

 あたし相撲なんてできませんっ」

汗を流しシコを踏み続ける神様に向かってあたしは怒鳴るが、

『ほぅ…』

何か言いたげそうな表情をしつつ女は動きを止め、

再び軍配を手にすると、

『はっけよいっ』

と声をかけながらあたしに向かってその軍配を仰いでみせる。

「くっ

 また…」

髷を結われた時と同じ展開にあたしは身構えるが、

しかし、腰に締めさせられた褌…いや、マワシが消されることは無かった。

「何をしたの?」

何も変わらなかったことに疑問を感じつつ神様に聞き返すと、

『ふふっ、

 土俵は女人禁制ですよ。

 その禁を犯したのですから、

 あなたをそれに相応しい体にしてあげましょう。

 そうれっ』

と神様は言う。

「え?」

その言葉にあたしは思わず両股を締めて見せると、

グニッ

マワシの中であたしの体から飛び出す何かが圧迫を受ける感触を感じる。

「!!!っ

 こっこれって」

さっきまで感じることの無かった感触にあたしは驚くと、

『なんならその邪魔そうな胸も消してあげましょう。

 そうだサガリも付けて…

 そうすればあなたに残された道は相撲を取ることしかなくなります』

驚くあたしに追い討ちをかけるようにして神様は軍配を仰いで見せると、

容姿端麗の一端を担ってくれていたあたしの両乳房は消えて胸板となり、

マワシの裾から簾のような黒い紐が下がっていく。

「やっやっやめてぇぇぇぇ!!!」

胸板となった棟を隠し、

紐が下がるマワシを恥ずかしそうに隠しながらあたしは座り込んでしまうと、

『いかがです?

 正真正銘の力士になったお気持ちは?』

と神様は勝ち誇ってみせる。

「ひどい…

 何でこんなことを」

神様を見上げながらあたしは涙ながらに訴えると、

『長く祭りを怠ってきた罰ですよ。

 この土の下で五穀豊穣のために勤しむわたしの唯一の楽しみ、

 それが年に一度の奉納相撲なのです。

 奉納相撲の百番勝負にて流される人間達の汗がわたしへの慰みとなるのに、

 人間はそれを怠っています』

腕を組み厳しい視線で見つめながら神様はそう言うと、

「それは…

 だって、相撲を取る人が居なくなってしまったんですから仕方が無いでしょう」

あたしは負けずに言い返す。

『だからこそ、

 わたしとあなたが相撲を取れば良いのです。

 わたしとあなたの百番勝負。

 あなたが流す男の汗がわたしへの慰みとなります。

 さぁさぁさぁ』

やる気満々で神様はあたしに迫ってくるが、

「そんな事言われても…

 第一、百回も相撲を取ったら死んじゃうって」

そうあたしは思うと、

「そっそうだ、

 神様はここで奉納相撲が行われれば良いんでしょう。

 ならばあたしと百回も相撲を取らなくても、

 他の人たちがここで百回相撲を取れば文句は無いんでしょう?」

と持ちかけたのであった。

『うっ…

 まぁ確かに、それはそうですね』

あたしの提案に神様は考えるそぶりを見せると、

「しめた」

切っ掛けを掴んだあたしはさらに畳み掛けるようにして、

「あたしの学校には大勢の人が居るわ、

 その中から百人連れてきてここで奉納相撲も開催してあげる。

 大丈夫よ、

 こう見えてもあたしは生徒会長だから百人ぐらいあっと言う間に集められるって、

 だから…この格好と男の子にした体を元に戻してよ。

 約束は絶対に守るって。

 だってあたしはこの神社の巫女なんだから」

とにかくこの場を切り抜ければの一心であたしはそう言うと、

『うーん…』

神様は考えた後、

『良ろしいでしょう』

と答え。

『どすこいっ』

の掛け声と共に軍配を仰いでみせる。

すると、

シュルンッ

あたしの股間を締め上げていたマワシが消えてなくなると、

結われていた髷が解かれ、

さらにさっき消された巫女の装束が元に戻る。

しかし、

「あのぅ…

 オチンチン忘れていますが…

 それに胸も戻して…」

と相変わらず男の子のままである体について遠慮気味に問いかけるが、

『男根は担保ですよ。

 あなたが見事、この場にて百人相撲を奉納すれば男根を消し体は戻してあげましょう。

 しかし出来なければマワシを締め力士となってここで百番勝負を取ることになります』

と神様は条件を持ち出してきたのであった。

「そんなぁ〜」

それを聞かされたあたしはがっくりと膝を突いてしまうと、

『そもそも、土俵は女子禁制のはず。

 女のあなたがここに踏み込んだだけでも神罰が下るのです。

 男にされただけでもありがたいと思ってください』

神様はあたしの耳元でそう囁くと、

『それはそうと、

 あなたにはある神事をこれから行っていただきます』

と付け加えた。

「神事?」

思いがけない神様の言葉にあたしはキョトンとして見せると、

『はい、

 マワシを締め力士となったあなたはご自分が放つ精を奉納していただかねばなりません。

 さぁ、あなたの精を…』

と神様は言うと、

シュルッ

腰に締めているマワシが緩み、

ストン

と下に落ちた。

「!!っ」

いきなりマワシを外され股間を露出してしまったあたしが驚くと、

『マワシを締めたままでは精を捧げられないので、

 わたしの手でマワシを外してあげましたよ。

 さぁ、その男根を扱いて精を捧げるのです。

 さぁさぁさぁ』

と言いながら神様は迫ってくると、

「これって…やっぱり神罰なんですか…」

あたしは一人そう呟いていていたのである。



つづく