風祭文庫・アスリート変身の館






「螺旋」
(第1話:わたしの土俵)


作・風祭玲

Vol.709





「おしゃっ!」

「まだまだっ!」

早朝の稽古場に男達の声が響き渡り、

バシンッ!

そ廻しを締めた巨漢の男達が汗しぶきを上げながら、

土俵の中でぶつかり合います。

バシンッ

バシンッ

髷を振り乱し、

体中から滝のような汗を流して幾度も男達はぶつかり、

そして転がされると、

汗ばんだ身体に土俵の砂が付いていき、

やがて彼らの身体はまぶしたように砂だらけになっていきます。

そして、

そんな彼らの横でわたしは黙々と四股を踏み続けているのです。

クンッ

ビシッ

クッ

ビシッ

まるでリズムを取るようにして、

わたしは片足を天井に向けて大きく上げ、

地面に打ち込むようにしてその脚を落とします。

四股踏み500回。

しかも、片足分で…

それがわたしに課せられた今朝の稽古です。



この相撲部屋に連れてこられて、

どれくらいの月日が流れたのでしょうか、

1年。

2年。

途方もない月日が流れたように感じますが、

でも、親方が言うにはまだ半月だそうです。

そう、わたしはこの相撲部屋の新弟子なのです。

クッ!

すっかり太くなった足が高々と上がり、

ビシッ!

地面に打ち付けると、

ブルンッ!

大きく膨れたお腹が震えます。

妊婦の如く膨れたお腹…

去年の夏のわたしは、

こんなに姿ではありませんでした。

細身の身体にビキニが似合う女子大生でした。

無論、学内の美人コンテストで準優勝もしたことがありました。

でも、かつてビキニを付けていた股間には無粋な廻しが締められています。



パンッ!

土俵に手を叩く音が一斉に響きわたり、

今日の稽古は終わりました。

無論わたしも稽古から上がるのですが、

でも、わたしはここで廻しを外すことは出来ません。

食事の支度にお掃除、そして兄弟子達のお世話。

新弟子であるわたしにはまだまだすることがいっぱいあるのです。

そして、それらが全て終わったところでやっと稽古は終わり、

廻し姿のまま走り回っていたわたしもやっと一息付けます。

場所の初日まであと3日…

稽古のあと表で兄弟子たちの廻しを干していると、

「あっママ、

 お相撲さんだ」

と言う声がわたしの傍で響きました。

”え?”

その声にわたしが振り向きますと、

歳は5歳くらいでしょうか、

1人の女の子がわたしを指さしていました。

その直後、

「あっすみません…」

その女の子の母親らしい20代半ばの女性が飛び出してくると、

わたしに謝りながら女の子の手を引いていきます。

「………」

そんな親子を見送りながらわたしは俯くと、

すっかり膨れたお腹と、

その下で締められている廻しを見ます。

「確かにお相撲さんだ…」

そう呟きながらわたしは顔を上げると、

傍のガラス窓にいまのわたしの姿が映し出されます。

ギュッ

それを見ながらわたしは唇をかみしめますが、

でも、髷が結われた頭、

袖を通すことなく肩に掛けたままの相撲部屋の名前が染め抜かれた着流し、

そして、腰に締められた廻しの中には男のシンボル・オチンチンがあります。

わたしは女ではなかったのです。



切っ掛けは些細なことでした。

大学を卒業し商社に就職したわたしはそこで友達が出来ました。

友達と言っても職場の同僚です。

けど、彼女たちと付き合うのには何かとお金がいりました。

無論、月々の収入は私とそんなに変わりません。

しかし、彼女たちは付き合っていた男性になにかとブランド物を貢がせ、

そして、わたしに見せつけながら、

”このようなブランド物を持つのが当たり前。

 嗜みである”

とまで言ってのけたのです。

そんな彼女達からわたしは距離を置こうとしましたが、

けど、わたしはいつの間にか彼女たちのグループに

すっかり取り込まれれてしまっていたのです。

抜け出したくても抜け出せない。

そんな状況の中、わたしは次第に借金を重ねていき、

自分の部屋にはブランド物が増えていきます。

そして、その借金を返済するためにわたしは副業としてホステスを始めたのです。

これも、彼女達の斡旋でした。

けど、元々引っ込み思案だった性格が災いしてわたしにはあまり客がつかず、

その結果、収入は伸びずに借金はさらに膨れていく有様、

そんなとき、わたしを目当てに来てくれる男性が現れました。

なんでも、某IT企業の社長をしていて、

毎晩豪遊をするお得意様だったのです。

彼の名前は知っていました。

無論、TVや新聞でしたけど、

でも、そのようなところから伝えられる彼の姿はスポーツに明るく、

倒産しかけたプロ野球球団を買収したり、

サッカーのチームに巨額の出資をしたり、

果てはオリンピックの招致を考えているとまで伝えられていました。

そして、もぅ一つ、

有名相撲部屋のタニマチであること…



社長と出会って数ヶ月後、

わたしと社長はいつしか男・女の関係となり、

またわたしも社長、いえ、彼を愛するようになっていました。

無論、彼もわたしを愛し、

なんと、わたしの借金を彼が立て替えてくれたのです。

それに応えるようにわたしは昼間の勤めも辞め、

彼に尽くすようになりました。

そんなとき、

彼は突然、人気絶頂のアイドル・AYAと結婚したのです。

あまりにも唐突なニュースにわたしはしばし呆然としました。

”わたしへの愛はなんだったの?”

とも思いました。

けど、このときにわたしは気づくべきでした。

彼から距離を置くようにと…

でも、その時のわたしは彼が自分に向けて注いでくれる愛情は

間違いなくAYAよりも上と思いこんでいたのです。

そして、あわよくば彼女を追い出し、

自分がその玉の輿に座るべきだとも…



意を決したわたしは

彼が女優と共に暮らしているマンションへと向かっていきました。

それが全ての始まりでした。

結婚はわたしと彼との仲を引き裂こうとする悪い奴らの陰謀、

わたしが乗り込めば彼は絶対にわたしを選ぶ。

そう確信してわたしは彼の部屋のベルを鳴らさずに押し入りました。

”ここは、わたしと彼が愛を語ることろ。

 あなたは出て行って”

そう言うつもりで乗り込みましたが、

けど、事もあろうか彼はAYAの足下に跪き許しを請うたのです。

彼女のとの一瞬で勝負は決まりました。

わたしの惨敗です。

AYAに指示され、うなだれる彼の姿が消えると、

彼女は私に近づいてきました。

そして目の前に立つと、

徐に片手をあげて見せたのです。

すると、

それを合図にして黒スーツにサングラスを掛けた男達が姿を見せたのです。

まるで、ドラマの1シーンを見ているようです。

彼女は余裕の表情で姿を見せた男達に命令をすると、

男達は無言でわたしの腕を掴み上げたのです。

「やめて」

わたしの悲鳴が響きます。

けど、その声を聞きつけて助けに来る人は居ません。

そして、その次の瞬間、

AYAの手が振り上がると、

パンッ!

平手でわたしの頬を叩きました。

パン!

パン!

パン!

AYAの平手打ちは何度も続き、

最後には拳でわたしを殴ると、

ガクッ

膝の力が抜け、

項垂れたわたしは男達に抱えられる姿になってしまいました。

しかし、それで終わりではありませんでした。

AYAは男達に手を放すように命じると、

倒れたわたしの上に馬乗りになったのです。

その時の彼女の顔をハッキリと覚えています。

鬼の顔とはまさしくあの形相のことを言うのでしょう。

”抵抗をすると殺される”

ブラウン管で見るAYAの姿からは想像も出来ないその顔に

わたしは恐怖すると、

AYAはわたしを睨み付け、

徐にわたしが着ていた服に手を掛けると、

それを引き裂き始めました。

部屋に布を引き裂く音が木霊し、

その音の中、AYAはわたしの服を引き裂いてしまうと、

さらに下着をも取ってしまったのです。

わたしのオンナがAYAの前にさらけ出されます。

この後一体何をされるのか、

最悪の事態を想像したわたしの喉はカラカラに乾きます。

すると、あの鬼の顔が急に緩み、

言いようもない笑みへと代わると、

男達に何かを命じました。

笑みに変わった理由は何なのか、

わたしの心に未知への恐怖が広がってゆきます。

そして、程なくして男達からAYAの前に出されたのは、

細長く肉塊の様なものでした。

肌色…

いや、肌色よりやや黒みがかったその物体を

わたしは不思議そうに見上げていると、

AYAはわたしの目の前に近づけてきます。

その途端、わたしの声を殺した悲鳴が上がりました。

それは、肉塊ではなく、

間違いなく男のシンボル、

そう、オチンチンだったのです。

まさか、わたしに見せつけようと、

AYAが彼のオチンチンを切り取ってしまったのか。

そんな考えも浮かびましたが、

しかし、よく見てみるとそれは本物のオチンチンではなく、

オチンチンに似せて作られた作り物だったのです。

でも、茎部の肌の表現。

剥けている肉球のテカリ具合。

根元にある袋の皺まで精巧に表現されているので、

誰が見ても本物と見まごうばかりです。

ただ、本物と違う点は、

血が流れ出ていないことと、

そして、茎の下から伸びる2本の管でした。

けど、この時、AYAはいったい何の理由があって

こんな作り物を見せたのか判りませんでした。

するとAYAはそのオチンチンをわたしのオマンコに押し込み始めたのです。



彼に愛されてきたわたしのオマンコに作り物のオチンチンから伸びる管が差し込まれ、

それがわたしの奥深くへと向かってゆきます。

そして、管が子宮の中にまで差し込まれたとき、

モコッ!

何かが中で膨らみました。

また、同じようにオシッコの穴にも管が入り、

膀胱の中でも同じように何かが膨らみました。

”ふふっ

 これでお前は男になったわ。

 このチンコは外科手術をしない限り取り出せないし、

 お前は子供を産むことすら出来ない身体になったのよ。

 うふふ…わたしから夫を奪おうとした罰ね”

勝ち誇ったように彼女はわたしに告げ、

さらに、

”この身体も醜く改造してあげるわ、

 うふっ

 この袋にはねぇ…

 あなたを醜くするある薬が入っているのよ”

とわたしに言いました。

醜くするって…

AYAの口から出たその言葉にわたしの頭はパニックになります。

すると、

”さぁわたしと来るのよ”

とAYAは言うなりわたしの手を引っ張り、

マンションからわたしを引きづり出していきました。

そして、向かった先は、

彼がタニマチをしているあの相撲部屋…

そうAYAの手でオチンチンをつけられてしまったわたしは、

この相撲部屋に強制的に入門させられてしまったのです。

そして、彼に買って貰った高級下着を着けていた股間には、

無粋な黒廻しが締め込まれ、

また、ランジェリーが彩っていた身体には部屋の名前は染め抜かれた着流しを着せられ、

さらに、入念に手入れをしていた髪は無惨に切られ、

力士の証である髷を結われました。

”お前のしこ名は玉の山よ、

 うふふっ

 相撲取り達と共に稽古で汗まみれ、砂まみれになって、

 ちゃんこをいっぱい食べてそのしこ名に似合うようなおデブになるのね”

土俵の上で絶望に打ちひしがれるわたしに向かって、

彼女がしこ名を告げたとき、

わたしの夢は全て崩れ去ったのです。



そして、その日からわたしは力士としての稽古の日々を送るようになりました。

厳しい稽古です。

わたしはAYAの言った通りに汗にまみれ、砂にまみれ、

そして傷だらけになってゆきます。

さらに稽古が終わり、腰に締められている廻しを取ると、

そこにはAYAに付けられた男のシンボル・オチンチンが姿を見せます。

外科手術をしない限りこのオチンチンは取れない…

さらに、袋に仕込まれた薬がわたしの身体を改造し始めました。

激しい稽古にと共にわたしの食欲は旺盛になり、

それに連れて筋肉は膨れ、

また、脂肪もついて行きます。

そしてさらに、わたしの心も攻撃的に変わってゆきました。

もはや、わたしは力士になるしかなかったのです。

こうして、女性としての体型が崩れ、

わたしはAYAの手で力士として成長していたのです。



「あら、元気?」

そんなある日、

ふらりと相撲部屋を訪れたAYAは稽古中のわたしに向かって声を掛けました。

「あっ

 おっ奥様…」

その声に反射的にわたしの口からその台詞がこぼれます。

わたしに無理矢理オチンチンと付け、

この相撲部屋に放り込んだ張本人ですが、

でも、わたしは彼女を呼び捨てにすることは出来くなっていました。

そう、稽古と共にAYAはわたしの心に絶対服従を植え付けたのです。

「うふっ

 すっかり相撲取りらしくなって…」

いっとき、流行語になったセレブと言う言葉の香りをプンプン漂わせ、

AYAはわたしを見ます。

「くっ」

いまこの手でコイツをはり倒せたらどんなに気持ちが良いだろうか。

そう思いますが、

でも、手はぴくりとも動きません、

「あら?

 わたしが憎い?
 
 うふっ
 
 そうでしょうねぇ…
 
 女性だったあなたを男にして、
 
 そして、この相撲部屋に入門させた張本人ですから…
 
 でも、
 
 それは身から出たサビ…
 
 わたくしの夫に手を出したあなたが悪いのよ、
 
 まぁ頑張ることね」

と彼女はわたしを嗾けるように言います。

「だったら…

 何しにきたのですか…」

そんな彼女に向かってわたしはそう尋ねると、

「うふっ

 決まっているでしょう。

 あなたがどれだけ男になったのか、
 
 確かめに来たのよ」

とAYAは返事をし、

「玉の山を借りていくわ、

 いいでしょう?」

親方に一言挨拶をして、

廻し姿のわたしを表へと連れ出してゆきました。

そして、待たせてあったクルマにわたしを押し込むと、

クルマはあるところに走り出してゆきました。



「うわぁ、

 汗くさいわねぇ…」

クルマの中でAYAはそう声を上げながら鼻をつまみます。

「………」

その声にわたしは無言でAYAを見ると、

「うふっ

 すっかり男の臭いになっているわよ」

とAYAは言い、

さらに、

「ねぇ、

 もぅ使ってみたの?」

と股間に手を差し込み意味深に尋ねてきました。

「なっなにが?」

「なにがって…

 決まっているでしょう、

 あなたに付けてあげたオチンチンよ、
 
 付けてから日数が経って居るんだから、
 
 元から自分に付いているような錯覚になって居るんじゃない?」

「うっ」

笑いながら言うAYAの言葉がわたしの胸に突き刺さりました。

確かに、

最近、この女に付けられたオチンチンに馴染んできているような気がしていました。

最初の頃はオシッコすら出来なかったオチンチンが、

いまでは自由自在に操れ、

さらに、稽古後にはそれを扱く男のオナニーすらもしています。

もっとも、オナニーは兄弟子達に教えられたものですが…

でも、相撲取りとしての日々を過ごしているウチに、

わたしは女としての自覚を失ってきているのは事実です。

「あっそうそう、
 
 夫にはあなたが相撲取りになっていることは
 
 まだ教えていませんけど、
 
 でも、何時の日か教えなければなりませんね、
 
 あなたが土俵の上で高らかに脚を上げているとき、

 わたしは夫に言うの…
 
 ほら、あなたご覧なさい。

 いま、脚を上げているあの力士…
 
 あなたがぞっこんにしていた、
 
 あのホステスのなれの果てよ。ってね」

まるで悪魔のような笑みをたたえてAYAはわたしに告げました。

まさに悪魔の言葉です。

「ヤメテ」

横に座るAYAにそう懇願しようとしましたが、

しかし、それを口にすることは出来ません。

やがて、クルマはとあるホテルの中へと吸い込まれると、

その一室で、廻しを外したわたしはAYAを抱いていました。

「あぁ、いいわっ

 もっと、
 
 もっと突いて!」

どんな男をも魅了する肉体を曝し、

AYAはわたしの偽りのオチンチンをその胎内に飲み込んでいます。

そして、

フッ

フッ

フッ

わたしは一心不乱に腰を振り、

AYAを突きまくっていました。



次の場所でわたしは前相撲に出ます。

そうです、1人の力士として土俵に上がるのです。

辛くはありません。

悲しくはありません。

でも、一度で良いからこのオチンチンを外して、

女の子に戻りたい。

一度で良いから、また女として抱かれたい。

そう思っていると、

廻しの中のオチンチンが固くなってきました。

いつの間にかわたしは興奮してきたみたいです。

このオチンチンは興奮してくると本物と同じように固くなるのです。

わたしには生理がありません。

薬がわたしの生理を止め、男にしてしまったのです。

わたしは力士になってしまったのです。

髷を結い、裸一貫、廻し一本で相撲を取る力士です。

もぅ女の子に戻ることは出来ません。

わたし…お相撲さんなのですから。

涙を流しながらわたしは腰を振り、

そして、

「あっあぁぁぁぁ!!」

わたしは絶頂に達したAYAの奥深く目がけて精液…

いえ愛液を射精してしまいました。

AYAにとってわたしは欲求不満の解消要員でもあるようです。

いまはAYAには逆らえません。

でも、いつか、

機会があればAYAにもこのオチンチンを付け、

AYAを力士にしてやろうと考えています。

いつの日かきっと…



おわり