風祭文庫・アスリート変身の館






「沼ノ端四拾八手」


作・風祭玲

Vol.1097





煌びやかな衣装を身にまとい

ファンの声援を受けながらスポットライトを浴びて踊り歌う

少女達のグループ・NHM(沼ノ端)48。

下積みである研修生も含めると100人を超える彼女たちのグループは

センターと呼ばれる女帝が君臨するいわば”王国”であるが、

しかし年に一度開催される”総選挙”と言うイベントによって、

1年間の間の王国の主となる女帝が決まるのである。

そして、そのセンターを目指して、

少女達は熾烈な競争を繰り広げているのであった。



では、競争に負けた者はどうなるのか。

ある者は己の才覚を信じてグループから卒業し、

ソロ活動を行うことでグループに在籍したことを誇りとし、

またある者は、

そのすべてから身を引き、経験を胸に抱いて一市民へと戻って行く。

しかし、それらの道を選択できるのは運の良かった子達であり、

多くの少女達はいつの間にか姿を消していたのである。



深い朝霧に包まれた沼ノ端の早朝。

晩秋のこの時期の沼ノ端は端ノ湖からわき上がるこの霧に包まれ、

街は幻想的な姿を見せている。

その霧を裂いてヘッドライトを輝かせる一台の車が通り過ぎていくと、

煌々と明かりが点る建物の前に停車した。

”四十八手部屋”

建物の正面玄関にかかる荒々しく木を削り出した表札にはそう書かれ、

パァンッ

「おっすっ」

パァン!

「おっすっ」

建物の奥からは何かを叩く音ともに、

朝から稽古に汗を流す野太い声などから、

ここが相撲部屋であることを物語っていた。



「ふふっ、

 もぅ稽古が始まっているようですわね」

絶え間なく響いてくるその音に

車から降り立った女性は笑みを浮かべると、

「もぅすぐ場所が始まるから、

 居ても立っても居られないんでしょう」

と運転席に座る彼女のマネージャが言う。

「とても感心ですわ」

手を合わせながら女性は喜んでみると、

「リハーサルは10時からですから、

 それに間に合うように用を済ませてください。

 私はここで待機していますので」

とマネージャは言うと、

「はいっ」

女性は返事を残して、

髪を靡かせながら相撲部屋へと入っていった。



「おっしゃっもぅ一丁!」

「おらっ、寝てんじゃねーぞ」

「おらっ、来いっ」

建物の奥にある稽古場では巨漢の力士達が廻しを締め、

体を紅潮させながら相撲の稽古を行っている。

そして、

「おはようございます」

汗と鬢付けの臭いがこもる稽古場に

NMH48のセンターを務める馬場美歩の元気のよい声が響き渡ると、

「!!!」

皆の動きが一斉に止まり、

その視線が美歩へと向けられた。

「あら?

 稽古のお邪魔をしちゃったかしら?」

唇に人差し指の先を当て、

美歩は小首をかしげる仕草で尋ねると、

「いっいえ」

皆は緊張した面持ちでそう返事をすると稽古を再開するが、

しかし、力士達の注意は美歩に向けられたままだった。

「あらあら、

 私ごときに気が散っているようでは、

 今度の場所は思いやられますわ」

ガッカリする素振りを見せながら美歩は桟敷へと上がると、

スカート姿にも関わらず、

真ん中に置かれた座布団の上にどっかと胡座をかいて見せる。

その途端、美歩の眉がつり上がり、

口がへの字に曲がっていくと、

「うぉらっ、

 気の抜けた稽古をするんじゃ無いぞ!」

とまるで親方のようなドスのきいた声を上げたのであった。



「うっすっ」

彼女の声に力士達は一斉に美歩の方を向くと髷結った頭を下げ、

土俵の中に集まると申し合いが行われ、

熱気の籠もったぶつかり稽古が始まる。

「ったくぅ、

 いいかっ、

 ここを抜け出たければ、

 最低、幕内に入ることだ。

 優実乃山っ、

 おまえの番付はどこだ!

 祐子嵐っ、

 三段目から落ちてみろ。

 容赦しないぞ」

力士達に向かって美歩は檄を飛ばすと、

「ん?」

桟敷に居るはずの人の姿を探す。

「…早苗…

 …幸塚早苗はいないのか?」

腕を組みながら美歩は尋ねると、

「…実は…」

稽古を段取っていた力士が一人近寄り、

美歩に耳打ちをする。

すると、

「なにぃ?」

美歩の顔が苦虫を噛みつぶしたかのように歪むと、

「脱走を図っただとぉ」

と聞き返す。

「申し訳ありません。

 昨日、目を離した隙に…」

「で、捕まえたのか?」

「それは大丈夫です。

 うちの者が直ぐに発見して…」

「なら良い

 ったくっ、

 直ぐにでも脱走できない体にしてやるか」

顎を掻きながら美歩はつぶやくと、

「うっ」

耳打ちをした力士の表情が曇った。

そして、

「決めたっ、

 早苗をここに連れてこいっ、

 それと同時に例のアレもだ。

 もぅ届いているんだろう。

 早苗に付けるチンポ」

と美歩は力士に言う。

「はっはいっ」

彼女の指示に力士は顔を赤くしながら離れると、

「いやっ、

 助けてぇ!

 お願い」

声をあげて抵抗する君塚早苗が稽古場に連れ込まれ、

美歩の前の土間に放り出された。

「お久しぶりね。

 君塚さん」

土間に巻かれている砂によって

文字通り砂まみれになってしまった早苗を見下ろしながら、

美歩は笑みを浮かべると、

力士達にかけている声とは違う優しい声を投げかける。

しかし、

キッ!

早苗は美歩を睨み付けると、

「馬場ぁ!

 センターだからって何様のつもり?

 いい気になるんじゃ無いわよ。

 こんなところに私を連れ込んでどうするつもり?

 さっさと解放しなさいよ。

 警察、裁判、マスコミ、

 ありとあらゆる手を使って、

 お前をつぶしてやるから」

と急に口調を変えて怒鳴り散らした。

しかし、

「うふふっ、

 やれるものなら、

 やってみたら?」

彼女の暴言に美歩は余裕で返事をすると、

「ちくしょう!」

早苗は唇るをかみしめ、

そのまま力士達を睨み付けると、

「ちょっと、

 あんた達、

 なにぼさっと見ているの?

 私よっ、

 NMH48の君塚早苗よ、

 あんた達の中にも私のファンが居るでしょう。

 居るなら私を助けなさいよ」

と怒鳴るが、

誰一人として早苗に手をさしのべるものは居なかった。

「誰も居ないって、

 どうなっているのよ、

 ここは!」

その様子を見て、早苗は再度唇をかみしめると、

「総選挙に落選してしまったあなたについてくるファンなんてもぅ居ないわ。

 そうでしょう。

 あれだけ、露骨な選挙違反をすればね。

 それにね、

 ここの力士達はね、

 NMH48なんて興味ないの。

 いえ、存在自体を忘れたい…そう思っているわ」

と美歩は言う。

「なにそれ?

 どう言う意味?」

彼女の言葉の意味がわからない早苗は聞き返すと、

「そうだ」

美歩は何かを思い出す表情をして見せ、

そして、

「撫子さんはどうしている?

 もぅ、体ができたころじゃないのかな?」

と力士たちに向かって話しかけた。

「撫子?」

美歩の口から出た名前を聞いて早苗は思い当たる表情をしてみせると、

「加藤撫子か?

 彼女、

 ここに居るのか?」

と聞き返した。

「あら、覚えていたの?

 彼女のこと?」

それを聞いた美歩は上から目線で聞き返すと、

「当たり前だ。

 撫子はずっと私が目をかけてきた子だ。

 それが、いきなり居なくなって、

 もぅ、半年だ。

 お前っ、

 彼女をここに監禁していたのか」

土間から身を乗り出して早苗は怒鳴ると、

「監禁だなんて、失礼ね。

 拾ってあげたのよ。

 わたしが」

と返事をする。

「拾っただとぉ?」

「そう、撫子さんは戦力外通告されたのよ。

 グッズの売り上げ、握手会。

 人気が出なくて戦力外通告された子はNMH48には居られないわ。

 だから拾ってあげたの」

「恩着せがましく調子の良いことを言うんじゃないわよ。

 撫子に会わせなさい。

 彼女と一緒にここから出て行く」

桟敷の床を叩き、

早苗は激しくまくし立てると、

「判りましたわ」

と美歩はすまし顔で返事をし、

そして、

「撫子さんをこちらに回してください」

と力士達に指示をした。

「え?」

彼女のその言葉に力士たちの表情が動き、

皆の視線が美歩に向けられる。

すると、

「判りました

 お連れします」

その言葉とともに一人の力士が動くと、

稽古場の奥に向かっていく、

「おいっ、

 さっき言っていた体が出来ている。

 ってどういうこと?」

美歩の口から出た言葉の意味を早苗は尋ねると、

「お会いすれば判ります」

と美歩は言う。



程なくして稽古場に異様な臭いが漂ってくると、

「くせっ」

力士たちは口々にそう呟くと自分の鼻を抑えはじめた。

「ふふっ、

 そんなことを言わないの。

 この臭い、

 あなた達も一度は漂わせたじゃない。

 半年近く洗わずに

 ひたすら体を作り続けた人間の臭いを」

次第に強くなってくる臭いに鼻を押さえずに

美歩は涼しい顔で居続けていると、

「なんだこの臭いは…」

早苗も同じように鼻を押さえていた。

やがて、

「お連れしました…」

鼻を押さえながらさっきの力士が稽古場に戻ってくるなり、

ドォンッ!

「うわっ」

その力士が突き飛ばされてしまうと、

「美歩ぉぉぉ!」

の声と共に白い肉塊が稽古場に飛び込んでくる。

「あら、お久しぶりね、

 撫子さん。

 お元気そうじゃない」

体重は200kgを越えているだろうか、

悪臭を放ち目の前に立ちはだかる肉塊を見上げながら、

美歩は落ちつた口調で話しかけると。

「…私をこんな体したお前を許さない」

と肉塊は声を上げる。

「あら、

 許さないですって?

 でも、その前にその体を絞り込んだ方が良いかと思いますわ。

 その姿ではとてもお相撲が取れませんわ」

美歩は相変わらずの口調で言うと、

「私を…

 こんな体にしたのはお前だろうがっ、

 私をこの相撲部屋に連れ込み、

 そして、無理やり男の人のチンポをつけさせて、

 外したかったら力士になれって、

 そのままあのその変な部屋に押し込まれて拘束されて

 半年近く監禁されたんだ。

 その間に私の体はこんな姿に…

 くっそぉ!

 どうしてくれるんだ。

 こんな体じゃ

 もぅ、ファンの人の前に立てないよ」

肉塊はそう声を上げて泣き出すと、

「あなた、撫子なの?」

と早苗の声が響いた。

「え?

 その声って…

 まさか、早苗さん?」

早苗の声に肉塊は反応すると、

巨体の顔が早苗を見下ろした。

そして、

早苗の姿を見た途端、

「いっ

 いっ

 いやぁぁぁぁ!!!!」

肉塊、

いや、加藤撫子は悲鳴を上げてその場に蹲ってみせるが、

しかし、巨体が蹲っても小さくなることは無かったのである。

「どうして?

 何でこんなことに」

失踪前とは姿形が変わってしまった撫子を見ながら

早苗は声を失っていると、

「NMH48は競争が激しいの。

 半年近くも姿を消していたあなたのことを覚えているファンなんて

 もぅ居ないわ。

 心置きなくここで力士におなりなさい。

 あなたが活躍する場ばステージじゃなくて土俵よ」

彼女に向かって美歩は言うと、

「こっ殺してやるっ」

撫子は肉塊と化した体の中に埋もれている顔より

美歩をにらみつけながら立ち上がり

ズシンッ

ズシンッ

体を揺らしながら突進を始めだした。

「あらあら、

 短気は損気と言うのに」

体についている脂まみれの垢を振り落し、

横につぶれてしまった乳房と、

股間に押し込まれた”偽りのペニス”を揺らしながら、

美歩に向かって撫子はブレーキの壊れたダンプのごとく突進してくるが、

「その気迫、

 ずっと持ち続けなさい」

そんな撫子に向かって美歩は教訓めいたことを言うと、

バッ!

着ていたスカートを外してみせる。

すると、

彼女のスカート下には廻しが締め込まれていて、

バラッ

同時に”さがり”が大きく広がった。

「ふんっ」

パァンッ!

美歩は締め込んでいる廻しを叩くと、

「体を洗って出直して来いやっ!

 土俵が臭くて仕方がないだろう!」

そう怒鳴りながら桟敷がら飛び、

伸び放題の髪が絡みつく撫子の頭に手を付けると、

一気に下へと押し込んだ。

ズシンっ!

決まり手、押し倒し。

美歩の圧勝である。

撫子は潰れるように倒されてしまうと、

そのまま動かなくなってしまった。

「まったく、

 勢いがあるのはいいけど、

 突進するだけじゃ相撲にはならないって」

白目を剥いている撫子に向かって

土間に降り立った美歩はそう言い放つと、

足で彼女の体を蹴り上げて仰向けにして見せる。

すると気が付いたのか、

撫子の目に光が戻ると、

「あら、もぅ気が付いたの?」

と美歩は話しかける。

「くそっ!」

撫子は一瞥し悔しそうに右手で土俵を叩くと、

「うふっ」

美歩は小さく笑い、

そして、自分の手を撫子の股間に押し込んだ。

「なっ何をするの?」

思いがけない美歩の行動に撫子は驚くと、

「ねぇ、ココ、

 もぅ出したの?」

と美歩は尋ねる。

「そっそれは…」

「あなたに付けたチンポを付けてからもぅ半年。

 すっかり馴染んだでしょう?

 毎日ちゃんとオナってる?

 それだけ体を作れば結構出るんじゃ無いの?」

ピストンのように腕を動かしながら美歩は言うと、

「撫子っ、

 お前、そこに何が付いているんだ?

 さっき、こいつは男の人のオチンチンが付いているようなことを言ったが、

 ほっ本当に付いているのか?

 オチンチンが」

撫子に向かって早苗は尋ねた。

すると、

「うっうっうわぁぁぁぁん!」

いきなり撫子は大声で泣きだすと、

「ごめんなさい。

 あたしはもぅ女の子じゃないんです」

そう訴えながら美歩の手を叩き、

自分の腕を股間へと押し込んだ。

そして、

何かを掴み、

ギュムギュム

その掴んだ腕を動かしながら、

「これが、今の私なんです」

の声とともに太い足を大きく開いて、

早苗の前でM字開脚をして見せると、

ペニスを扱く男のオナニーを始めたのであった。



「そんな…ばかな」

自分の目に飛び込んできた衝撃の光景に早苗は言葉を失うと、

「そのチンポは作り物よ。

 でもね、一度付けたら外科手術をしない限り外す事は出来ないの。

 そしてキンタマに仕込んだ薬によって、

 チンポを付けられた女は男の体…力士になってしまうの。

 素晴らしいでしょう」

と美歩は言う。

「狂っている。

 あなた狂っているわ」

美歩を指さして早苗は声を上げるが、

「ありがとう。

 そうねぇ、

 確かにあたしは狂っているかもね。

 そう、お相撲に狂っているのよ。

 床山っ、

 私に髷を結いなさい」

上着と肌着を脱ぎ、

乳房をさらした美歩は声を上げる。

「え?」

脇に控えていた床山は驚いた声を上げると、

「大丈夫、

 今日のステージは夕方から、

 それまでに鬢付けを落とせばいいだけ、

 さぁ髷を結って」

美歩はそう言うと、

ドッカ

と桟敷の端に腰を下ろす。

「はっはいっ」

彼女の言葉を受けて床山は美歩の頭に大銀杏を結い上げると、

パァンッ

美歩は顔を叩き、

「ふんっ!」

腰を落として気合を入れると、

パァンッ

己の腿を思い切り叩き、

ザッ!

右足を高々と引き上げて見せる。

そして、

ビシッ!

股関節を180度に開いて綺麗に足を延ばしきると、

今度は掲げた足を地面に打ち付けるように落とす。

ズンッ!

彼女の右足が地面についたその瞬間。

杭を打ち込んだような音が響き、

土俵がかすかに揺れた。

「………」

その音と振動に稽古場に詰めている力士たちは声を殺し、

畏怖の表情で美歩を見る。

「ふんっ!」

ザッ

彼らの視線を意識せず美歩は左足を上げると

同じように土俵に打ち付け、

さらに右。

そして左と交互に足を上げ打ち付けると、

筋肉と脂肪で盛り上がった力士の肉体とは全く異なる姿で

その音を奏でていく。

そして、

「ふぅ…」

全身から滝のような汗をしたらせながら美歩は一息入れると、

「はぁ、とても気持ちいいわ

 やはり相撲を取るときは髷が一番ね」

そう言いながら、

パァンッ

締め込んでいる廻しを叩いた。



「この変態っ!

 変態っ

 変態変態変態!!」

稽古場に早苗の怒鳴り声が響き渡る。

しかし、

「その言葉、

 褒め言葉していただくわ。

 さっ、

 私の準備運動は終わり。

 誰から相手をしてくれるのかしら」

乳房をプルンと揺らして美歩は力士たちに話しかけると、

「怖気づいているの?」

と付け加える。

その途端、

ノソッ

一人の力士が前に進み出てくると、

「お願いしますっ」

と言葉短く言う。

「あなたがお相手してくれるのね」

山のごとく迫る力士を見上げながら美歩は言うと、

クルリ

力士は美歩に背を向け、

土俵の端に向かうと美歩の方に再び向きを変えて蹲踞をして見せる。

「判りました」

力士のその姿に美歩は返事をして蹲踞をすると互いに塵手水を行い、

仕切り線まで進み出て向かい合う。

そして、

互いの腰を落として息を合わた。

クンッ

ドッ

まさに一瞬の出来事だった。

美歩と力士は風を纏って土俵の中でぶつかり合うと、

パァン!

体がぶつかり合う音を響かせる。

しかし、その音の余韻に浸っている時間などは無く。

「しっ!」

「しっ!」

目にもつかない速さで体を動かし、

互いの廻しを取り合いを始めた。

ザザッ

ザザザッ

音を聞くだけでは同じ体格同士の力士による相撲かと思われるが、

しかし、目を見開いてみれば、

倍以上の体格と体重の差がある力士と女性の相撲勝負。

当然、力士と比べて華奢な美歩が土俵の外に出されるものであるが、

だが、

パァンッ

美歩が廻しを取りに来る力士に張り手を喰らわせて突き放すと、

パンパンパンパンパン

機銃掃射のごとく連続して張り手を打ち始めた。

「うぐっ」

張り手を喰らう力士は押され、

瞬く間に土俵際まで追い詰められると、

すかさず美歩は力士の懐へと飛び込み、

廻しを取るとそれを捩じりあげた。

「どうしたっ」

力士を追い詰めた美歩は声を上げると、

「うぐっ!」

力士もまた美歩に覆いかぶさると、

彼女の廻しを後ろからとり引き上げ始める。

ギリギリ

ギリギリ

互いの廻しを取り合う二人の力勝負。

しかし、

「ふんっ」

グッ!

美歩が力を入れて腰落とすと、

力士の手が美歩の廻しから離れた。

次の瞬間。

「どせぃっ!」

美歩は力士の廻しを思いっきり振り回して放り投げると、

ブンッ!

力士の黒い影が下から上へと動いて、

ズンッ!

美歩の横で力士は一回転して土をつける。

パァンッ!

勝ち名乗りのごとく美歩は己の廻しを叩き、

「つぎっ!」

そう声を上げると、

「うっすっ」

と土俵脇で相撲を見ていた力士が前に立った。



ドォンッ!

「次っ」

バァン!

「次っ!」

ズシンッ!

「次っ!」

相撲部屋に地響きと美歩の怒鳴り声が続き、

その声が止まった時、

「はぁはぁ」

「ふぅふぅ」

体中を砂だらけにする力士たち中で、

一人、砂をつけていない美歩が仁王立ちになっていた。

「これでおしまい?」

相手の廻しから砂が移った手を叩きながら美歩は話しかけると、

「ごっつあんですっ」

激しい相撲で髷を乱す力士たちは俯きながら返事をする。

「まったく、

 いつになったら

 私とまともにぶつかり合いが出来る力士が出てくるのかしら」

力士達を見下ろしながら美歩はそう言い切ると、

「撫子さん。

 オナニーもほどほどにね。

 早く私のステージにいらっしゃい」

土俵脇で膨れあがった体を揺らし、

一心不乱に己の肉棒を扱き続ける撫子に向かって言う。

と、そのとき、

「あっちいけ!

 撫子に近寄るな」

その声とともに、美歩の顔に砂がかけられた。 

「なに?」

顔に付いた砂を拭いながら美歩は顔を向けると、

「変態。

 いや、化け物めっ

 あんた、

 人間じゃないよ」

と早苗は言いながら幾度も砂をかけてくる。

「てめぇ…」

声を上げる早苗を睨み付け、

美歩はゆっくりと迫っていくと、

「寄るなっ!

 来るなっ」

声を上げて抵抗する早苗の髪を鷲づかみにして引っ張り上げる。

「ぎゃぁぁぁぁ!

 痛いっ

 痛いっ

 放してぇ!」

稽古場に早苗の絶叫が響き渡るが、

しかし、彼女を助ける者の姿は無く、

早苗は自分から立ち上がるように美歩の前に立たされた。

「で、誰が化け物ですって?」

ピタピタ

と早苗の頬を叩きながら美歩は詰め寄ると、

彼女か着ている服の胸元に叩いていた手を掛け、

布地をねじり上げるなり、

それを一気に引き裂いた。

布が引き裂ける音ともに早苗の絶叫が響き渡るが、

美歩は手放しても

自分の手に絡まり残る彼女の髪の毛を叩きつつ、

まるで、肉食獣が草食獣を喰らうかのごとく、

早苗の衣服を剥ぎ取っていく。

そして、

「ひぐっ」

頭から血を流しながら怯える早苗を全裸にしてしまうと、

「ふふっ、

 無様ね」

布きれを手に絡ませ、

荒い息をする美歩が立ちはだかった。

「ひっぐっ」

顔中を自分の涙と鼻水・唾でグシャグシャにして、

早苗は美歩を見上げていると、

「さぁ、

 お前にオチンチンを付けてあげるよ。

 オチンチンを付けて、

 いっぱいちゃんこを食べて、

 あの撫子のような姿に作り替えてあげるわ。

 ふふっ、

 なぁに、たった半年よ。

 半年後にはあなたも200kgを越える巨体になってお相撲を取るの。

 大丈夫、安心して、

 早苗山ってシコ名にしてあげるから」

と美歩は片手に男性器と瓜二つにつくられた張り型を持ち、

言い聞かせるように美歩は迫っていく。

「やめて、

 いやっ、

 そんなのを付けないで、

 女の子でいさせて、

 いやぁぁぁ!」

稽古場に早苗の絶叫が響き渡り、

程なくして、

ガシャンッ!

稽古場の奥の部屋の鍵が重々しくかかると、

その中では、

『うぐぅぅぅぅ』

股間から偽りの男性器を突き上げる姿にされた早苗が、

手足の自由を奪われ、

食事と排泄すらも管理された器具の中へと拘束されていた。

そして、その器具の中で半年を掛けて

早苗は己の肉体を作り替えることになるのである。

「ふふふっ、

 大相撲も新弟子不足が深刻でね。

 新弟子候補は引く手あまた。

 ふふっ、

 この部屋の力士達は皆、元NMH48のメンバー達だし、

 大相撲の各相撲部屋の新弟子の約半分は…

 うふっもうすぐだわ。

 もぅすぐ、私は大相撲を支配できる。

 そうなれば、

 この姿で堂々とお相撲を取ることが出来るわ」

乳房が膨らんだ体に廻しを締め、

髷を結う美歩はほくそ笑みながらそう呟くと、

悠然と部屋から去っていく。



NMH48でセンターを務める馬場美歩。

彼女にはある秘密があった。

それは、少女の姿ながら横綱並みの怪力の持ち主であることと、

そして、相撲に多大な興味を持っていることだった。

さらに、彼女の実家は彼女の野望を叶えることが出来るだけの権力と財力と、

ファンからの莫大な支持があるため、

美歩の野望は近い将来叶えられることが約束されていたのであった。


 
”さぁ僕と契約してNHM(沼ノ端)48に入って、

 入ってくれればどんな願いも叶えることができるよ。”

今日もまたNMH48のTVCMが街に流れる。

そして、そのCMを信じた少女達がアイドルを目指して門を叩く。

その先にあるのは絶望であることには気づかずに…



「朝稽古は終わったの?」

「えぇ、すっきりしたわ」

「そう、それは良かった。

 ところで、美歩?

 その頭とその格好でリハーサルに出る気?」

「え?

 あっ

 しまったぁ!」



おわり