風祭文庫・アスリート変身の館






「真夏の転身」


作・風祭玲

Vol.1040





それは夏休みを間近に控えた”とある午後”のことだった。

期末テストが終わり、

世に言う試験休みと言う名の休暇を学生たちが満喫している最中、

わたしはシンと静まり返る校舎の廊下を歩いていた。

校舎の中…と言う事はその日、わたしは登校していたことになる。

そう、確かにわたしは登校をしていた。

だからと言って好きで登校してきたわけではない。

ある人物から呼び出されたのだ。

そして、その人物と面会して1つ目の用事を済ませ、

その用事によって発生した2つ目の用事をこなすために廊下を歩いているのである。



カタン

下駄箱の扉の音を響かせた後、

わたしは表へと出た。

その途端、真上から容赦なく照りつけてくる初夏の日差しを受けると、

「あちぃ…」

わたしは掲げた右手で日差しを遮り、

恨めしそうに空を見上げつつ、

先日までの雨の季節が残した湿気と

容赦ない熱線が渦巻く校庭へと踏み込んでいく。

試験休みにも関わらず練習に稽古に汗を流しているであろう、

物好きな運動部員たちの掛け声を横に聞きながら、

わたしは殆ど愚痴にしか聞こえない独り言を言いながら歩いていくが、

今のわたしの立場はそんな物好き連中のお仲間なのである。

【相撲部マネージャ】

10分程前…

わたしが面会した人物=担任より押し付けられた

二つ目の用事をこなすための肩書きだ。

「はぁ…」

愚痴の次に溜息が漏れた。

なんでこうなったのか。

思い返せば今年の2月に志望校に落ちたのがケチのつけ始めだった。

わたしが中学1年だった夏。

ソフトテニス部の遠征先で出会った好青年。

あぁ、相手はわたしよりいっこ上だから14歳の少年…と言った方が当っているな。

手っ取り早く言うとその少年に一目惚れをしたわけだ。

無論、わたしの一方的な片想いだが、

ラケット片手にコートに立つ彼の凛々しい姿に心を奪われたのだ。

…彼の息遣いを感じていたい。

…彼の体臭に包まれたい。

…彼が流すものは全て飲み干したい。

齢13歳の乙女の妄想世界にわたしはどっぷりと浸っていた。

いいじゃないか、妄想の世界だ。

どんな非道徳だって、

どんな犯罪行為だって許されるのだ。

そして、自ずとわたしの進路は決まった。

憧れの彼が進んだ高校。

もぅそこしかない。

その学校目指してわたしは一直線に突き進んだ。

なりふり構わず。

脇目も触れず。

けど…

けどけどけど、そんな順調一直線のわたしに志望校が突きつけたのは

”試験の点数が足りなかったので、お断りします”

と言う趣旨を遠まわしに告げる文章だった。

そんなぁぁぁ!!

奈落の底に突き落とされると言うのはこういう事だろう。

そして滑り止めとして適当に選んでいたこの学校への不本意な入学。

人生の何もかもが狂いはじめたわたしの春〜夏。

本来なら花びらをまき散らし、

彼の背中を追いかけて乙女ロードを邁進していくはずが…この様である。

当然、気合なんて入らない。

わたしの魂は斜め上を漂い授業は右から左…である。

そんな自堕落な生活を続けておいて只では済まないとは思っていた。

判っていた。

理解していた。

覚悟は…ちょっとしていた。

でも、わたしから貴重な夏休みを奪い取ることを宣言している

期末テストの成績を突きつけられたとき、

わたしの目の前は真っ暗になった。

嘘でしょう?

冗談でしょう?

やだぁ、先生ったらウケを狙っているの?

もぅこういう事はやめてよぉ!

可愛い娘ぶって現実からいくら目を逸らしても結果は変わることはなかった。

玉砕です。

完敗です。

無条件降伏です。

だからお願い、わたしから夏休みを奪わないでぇぇぇ!

いざとなったら涙を流して許しを請おう。

女の涙で男のハートを鷲掴み。と言うではないか。

時代はフレッシュではない、ハートキャッチなのである。

その決意の元、わたしは綿密な計画と共に行動を起こしたのだが、

しかし、相手は既に準備万端迎え撃つ準備を整えていたのであった。

わたしの口からハートのハの字も出る前に担任は試験結果との取引条件として

相撲部マネージャを斡旋をしてきたのである。



無理もない…わたしの担任は相撲部の顧問。

しかも担任と生徒である。

この件に関しては向こうは先手、わたしは後手である。

勝負は始まる前から決まっていた。

でも、

でもでもでも

ささやかな抵抗ぐらいはできるはずである。

お断りします。

考えさせてください。

別のは無いのですか?

残念ながらわたしの口からはその言葉は出ては来なかった。

なぜって、

わたしの後ろにはハチマキを締め、

”歓迎!、地獄の補習・追試ロード”と書かれた幟を掲げる亡者が

おいでおいでをしているのである。

え?

幻だって?

いや、気配はちゃんとある。

わたしの妖怪レーダーにはしっかりと機影を確認している。

担任のゴーザインとともにわたしを拉致し、

春に続いて奈落の底へと再度突き落とすつもりなのである。

万事休す。

絶対絶命。

こう言う状況に追い込まれてしまった場合、

わたしが取る行動は只一つ、

少しでも負担を軽減するように努力するのが

高1女子としての夏を迎えようとする乙女の務めである。

なぁに、潰れかけた部活のマネージャ業だ。

あれやこれやと雑事に追われることなどあるはずはない。

適当に流して、

適当に笑っていればカタがつく仕事のはず。

取らぬ狸の皮算用。

などと突っ込まれるかもしれないが、

それくらいの皮算用ぐらいさせて欲しい。

大丈夫よ、大丈夫。

絶対大丈夫。

幸せゲットだよ。

どこかで聞いたようなセリフを自分に言い聞かせるように呟いたところで我に返った。



てくてく

てくてく

目的地は校庭の向こう側、

わたしとの相対的な位置関係を説明するにはちょっと難しいのだが

簡単に言えば体育館の裏手になる。

いつにも増して長く感じられる道のりを歩き、

相変わらず部活の声が響く体育館の横を通り過ぎると、

行く手に古い建物が見えてきた。

築60年、木造一部モルタル2階建て相撲部稽古場である。

担任より校内でもっとも古い建造物と聞いたが、

元々別のところに建っていたのを移築してきたそうだ。

物好き…いや、経費の無駄遣いである。

大体、これが移築される前は相撲部はどうしていたの?

そんな疑問を抱きながら近づいていくと、

パァンッ

パァンッ

掛け声とともに中で何かを叩いているような音も聞こえてきた。

「うわっ、

 この暑いのに真面目に練習しているっていうの?」

響き渡る音を聞かされた途端、

一気に暑さを感じてしまたわたしは

制服のポケットから取り出したハンカチで顔を拭くものの、

その脳裏を期待外れと言う名のガッカリ津波が第一波として押し寄せていた。

負けるものかっ。

津波に押し流されまいと踏ん張り、

その勢いを維持したまま

半開きに開いていた引き戸のドアに手をかけるや、

「たのもぅ!!」

大声を張り上げつつ引き戸を引いた。

ふっ、奇襲成功!

わたし、完璧ぃ!

何事も最初が肝心である。

担任の前では後手に甘んじたが、

ここでは先手をとらせてもらう。

完璧なまでの奇襲攻撃にわたしは酔いしれるが、

しかし、そんなわたしを待ち構えていたのは、

ムワッ

っと不快指数100%の熱気とともに漂ってきた饐えた匂いであった。

「うっぷっ、

 臭い…」

悪臭から逃れるように思わず鼻をつまんでみせると、

「ん?」

建物の中に居た者”たち”の視線が一斉にわたしに向けられる。

その数、

ひぃ

ふぃ

みぃ

よぉ

4人分の瞳である。

「え?」

想像もしていなかったその数にわたしは思わず呆然と立ち尽くしてしまうと、

ヒソヒソ

日焼けなのか赤銅色の肌を汗で濡らし、

茶色く染まったフンドシを叩きながら、

剃り落としたような光を放つ坊主頭が4つ、

互いに顔を見合わせた後、

わたしを指さし囁き合う。



なっなによっ感じ悪い。

そりゃぁ女子とはまったく縁が無いであろう場違いなところに

空気も読まずに顔を突っ込んだことは問題があるだろうけど、

でも、この対応はいかがなものかと思う。

そんな後味の悪さを感じながらわたしは立っていると、

坊主頭の一人が体を揺らしながら歩いてきた。

「え?

 あっあの…

 その、

 きっ今日から相撲部のマネージャをすることになった1年3組の鹿角月子です。

 よっよろしく」

低めに見積もっても体重100sは確実にありそうな巨体に向かって

わたしは一方的に自己紹介をすると、

ペコン

と頭を下げる。

4人も部員が居ただなんて計算外だ。

どこが潰れかけている部活だ。

心で大泣きをしながらわたしは頭を下げ続けていると、

「先生から聞いたよ、

 君が新入りか」

とかすれた声が上から響いてきた。

「いや、新入りというか、

 そのマネージャで…」

”新入り”と言う言葉に引っ掛かりを覚えながらわたしは返事をすると、

「マネージャは稽古合間の片手間でいい。

 これまでそうしてきた。

 君が相撲部に入ってくれたおかげで私たちは5人となり堂々と試合にでられる。

 感謝するぞ」

と礼を言ってきた。

え?

5人?

試合?

それって…

話が違う。

様子が違う。

なんだか…わたしもカウントに入っている??

え?

わたしもフンドシ締めて相撲を取るの?

ちょっと先生!!!

顔から血の気が引いていくのを感じながらわたしは回れ右をしようとしたとき、

ムンズ!

いきなり腕を掴まれ、

「まーまーまー

 そんなところで立っていないで、

 こっちに来なさい」

と言いながら坊主頭はわたしの腕を引いて見せる。

「いやっ!」

身の危険…

ううん、もっと怖いものを本能的に感じ取ってしまったわたしは

彼の手を拒絶しようとしたものの、

しかし、強い力で一気に稽古場に引き込まれてしまうと、

背後で響くピシャリと言う音が響いたのであった。

助けて…

懇願する表情でわたしは坊主頭達を見上げる。

元々感は鋭い方である。

テストでヤマを当てることなど造作も無いことである。

え?、

なんで受験に失敗したのかって?

それは…インフルエンザ。

この冬最先端の流行である新型インフルエンザに罹ってしまい、

受験勉強が思うように捗らなかったためだ。

15歳でも乙女は常に流行には敏感でなくてはならない。

新型インフルエンザも経験をしないとならないのである。

結果がどうなろうとも…と言う話は横に置いといて、

まさに絶体絶命のピンチに陥っていることは間違いない。

坊主頭達に取り囲まれてわたしは硬直していると、

「この稽古場に踏み込んだ以上、

 君は相撲部員だ、

 さぁ歓迎の儀式をするぞ!」

フンドシを叩いて坊主頭の一人が声をあげる。

威勢が良い、

ってことはこいつが部長なのか?

こいつがキャプテンなのか?

って言うかそんなことよりも儀式ってなにそれぇ!

彼の口から出た言葉がわたしをさらに混迷の世界に突き落としていく。

しかし、

「うっすっ」

そんなわたしの都合などお構いなく、

3人の坊主頭達は自分が締めているフンドシを外し始めた。

やっぱり…

間違いない…

わたしはここで処女を散らすのだ。

こんな汗臭いところでわたしは純潔を失ってしまうのだ。

あぁ…お父様、お母様ごめんなさい。

わたしは…もぅお嫁にけません。

頭の中をそのような言葉が頭の中のC1・環状線を駆けまわるが、

その一方で、何をされるのか…な(わくわく)

と言う奇妙な期待感が同じく頭の中のC2・外環状線を爆音立てて走っていた。



「あの…

 儀式ってなんですか?」

なんとかかすれ気味の声を上げて坊主頭達に問いかけると、

「君を正式な相撲部部員にする儀式だ」

わたしを指差して最初に声を上げた坊主頭が返事をする。

だぁーかぁーらぁー

それって何なの?

理解不明。

意味不明。

答えになってない。

所詮は相撲部。

期待していたわたしが馬鹿でした。

わたしの頭の中はたちまち失望で埋め尽くされていく。

そして、

「すみません。

 理解が…」

と言いかけたところで、

フンドシを外し終え、

股間からブラブラと男の人のアレを揺らしながら坊主頭達が寄ってくるなり、

わたしが着ている制服に手を掛けたのだ。

「やっやめてぇぇぇぇ!!!!」

割れんばかりの声を張り上げるが、

ここは校庭の隅、

しかもこの暑いのに戸締まりはしっかりとされ、

周囲は蝉の声の大合唱である。

あぁ…わたし…ここで散っていくのね。

この汗臭いフンドシ坊主たちによって食い散らかされていくのね。

さよならわたし…この恨み忘れません。

涙を振りまきながら

相変わらず頭の中の外環状線ではわたしは身に起きている不幸を楽しんでいた。

えぇ、楽しみますともっ、

そうでないとやってはいられませんっ。

次にくる辱めに期待しながらわたしはしなを作りつつ、

左右の片手で剥き出しにされた胸と股間を隠して見せるが、

しかし、そんなわたしに襲いかかったのは幅広の布束…

そう坊主頭達がさっきまで締めていたフンドシである。

「えぇ!!!

 やめてぇぇぇ」

嫌悪感丸出しの悲鳴を上げて抵抗を試みたものの、

ムギュっ

たちまちわたしはフンドシによって簀巻きにしてしまったのあった。

「臭いっ、

 なんてことをしてくれたのよ。

 もぅ最低!

 どう言うつもりよぉ」

立ち上るフンドシの匂いに包まれながら土俵の中に転がされたわたしは、

唯一自由になっている足をばたつかせつつ思いっきり抗議をすると、

「ふんっ」

ズシンっ

止めを刺すようにして一人がわたしの上に腰をおろした。

うげぇ!

目の前に降ってきた剥き出し尻を見つめながらわたしは目を白黒していると、

ガシッ

ガシッ

さらに両足首が握られ、

股が大きく開かされる。

イヤ

イヤ

イヤ

抵抗をすれども見えるのは日に焼けたお尻だけ、

腕は動かせず、

体も起こすことが出来ない。

完全にわたしの動きは封じられたのだ。

しかも、他人には見せたことが無い股間をさらけ出している状態である。

言いようも無い恐怖感がわたしの頭の中を駆け抜けていく。

「やめて…

 お願い。

 変なことはしないで…」

と言いかけたところで、

くぱぁ!!!

わたしの大切なところが大きく開かれた。

………

もはや声は出なかった。

無限に感じる時を全身で感じていると

姿が見えなかった坊主頭の一人が恭しく1つの箱を持ってきた。

そして、目の前のお尻の向こうに姿を消すと、

箱を開ける音が聞こえたのである。

なにをするつもり?

この手の事前知識とはまったく違う展開にわたしは困惑していると、

ぐにゅぅ!!!

わたしの大切なところに冷たく柔らかい侵入物体がもぐりこんできた。

「ひっ!」

いきなりの展開にわたしは悲鳴を上げかるが、

しかし、お腹を押さえられて思うように声が出ない。

パクパク

と口を開け閉めしている間にもそれはわたしの体の奥へ奥へと潜り込んでくる。

痛いも痛くないも何も感じられない。

けど、

にゅにゅにゅ…

わたしの大切なところに潜り込んできたそれはゆっくりと温まりながら、

さらに体の中を進行していく。

はぁはぁ

はぁはぁ

これってやっぱり犯されているの?

侵入物体の感触を体全体で感じながらわたしは荒い呼吸をしていると、

パンッ

パンッ

体の奥の2箇所で何かが大きく膨らんだ。

と同時に、

ギュッ!

今度はその侵入物体が引っ張られたのである。

だけど動かない…

さらに2・3回引っ張られたが、

侵入物体はわたしの体から抜けることはなかったのだ。

?

??

???

またしても理解不能である。

抵抗と言うことすら忘れてわたしは客観的に状況の整理に勤しんでいると、

スッ!

わたしの上半身を押さえつけていた尻が浮き上がり、

それと同時に起こされると、

簀巻きにしていたフンドシが外されていく。

終わった。

終わった。

あぁ、終わった。

最悪の時を乗り越えたことに安堵するが、

しかし、

最悪の時はまだこれからだ。

ってことに気付かされるまでさほど時間は掛からなかった。

そう、

ビンッ!

わたしの大切なところから起立している”それ”に気づいたのである。

へ?

なにこれ?

黒ずんだ肌、

しっかりと伸びている茎、

その先端はツルリとしたキノコのような丸い先端と、

その先端で縦に開いている口。

贔屓目に見ても間違いなく男の人のアレが

しっかりとわたしのお股の中から伸びていたのである。



「うそっ

 うそでしょう?

 なんで、わたしにおちんちんが生えているの?」

お父さんや弟、兄貴のモノとは明らかに違い、

いや、それよりもグロテスクで立派なそれを眺めながらわたしはうわ言のように言うと、

「君はもはや女ではない。

 相撲部員だ」

と坊主頭はわたしに言う。

「ちょっとぉ!」

その言葉にわたしは驚きながら振り返ると、

ビンッ!

坊主頭の股間からも同じようなそれがそびえ立っていた。

同じだ。

わたしと同じものがついている…

じゃぁなに?

わたしもこの坊主頭と同じ相撲部員になってしまったの?

4つの股間からそそり立つそれを順に眺めていると、

「おいっ、

 いつまでちんぽをおっ立てているんだ。

 これより男のオナニーを教えてやる」

さっきまでわたしを縛っていたフンドシを締めながら坊主頭が言うと、

パンッパンッ

と締め終わったフンドシを2回叩き、

そのままわたしの両手を握るや、

股間から伸びているおちんちんを握らせた。

そして、ゆっくりとその手を上下に動かし始めたのだ。

あぁぁ

あぁぁ

股間からそそり立つ棒を握らされたばかりか、

両手を上下に動かされていることにわたしは驚いていると、

「これが、男のスタイルだ。

 さぁ、思いっきりぶちまくんだ」

と坊主頭は命令をする。

ぶちまくって…

それって…

あれをこうしてこうやって…

それで、そのぉ…

っていうことをわたしがやるのぉ!!!!!

パニック寸前である。

だって…

だってだってだって、

約16年間女の子として生きてきたわたしが、

男の子のそれをするのである。

できるわけが無い。

やれるわけが無い。

無理っ

絶対に無理!

「できませんっ、

 そんなこと!」

首を左右に振り、

語気を強め、

わたしは思いっきり拒否をした。

けど…

しゅっしゅっ

しゅっしゅっ

頭では拒否をしてたものの、

わたしの手は硬く伸びているそれをしごき始めていたのであった。



坊主頭から指摘される前にそのことには気づいていた。

だって…こうしていると。

落ち着くし、

気持ちいい…

でも、わたしは女の子。

女の子なんです。

こんなことをしている上に、

アレも出すだなんて、

できません!

シュッシュッ

シュッシュッ

おちんちんをしごきながらまったく説得力の無い言葉を

坊主頭たちに向かって言おうとすると、

ニヤッ

坊主頭は笑みを浮かべ、

「おぉ、忘れていた。

 オカズが必要だな。

 こっちに来い」

と言うやわたしを稽古場の奥へと引っ張っていく。

そして、ある部屋の中に押し込まれてしまうと、

いーちっ

にぃーぃっ

いーちっ

にぃーぃっ

窓越しに体育館の内部が見え、

そこで体操着姿の女子達が柔軟運動をしている様子が目に入ったのだ。

「これは」

目を丸くしてわたしは驚くが、

シュッシュッ

シュッシュッ

アレを掴んでいる手は激しく上下に動き始めていた。

「そうだ。

 相撲部員ならそれでよい」

そんなわたしを見下ろしながら坊主頭は満足そうにうなづいてみせる。

「やめてくれぇ!!

 わたしをそんな目で見ないでくれぇ、

 わたしは…

 わたしは…女の子だ」

シュッシュッシュッ

シュッシュッシュッ

激しく手を動かしながらわたしは抗議するが、

ドロッ

それの先端からは粘性を持った体液が流れ始め、

潤滑油のごとく茎にまとわりついていくと

手の動きをサポートする。

と同時に、

ジンッ

股間に奇妙な痺れを感じてしまうと、

それがどんどんと大きくなってきた。

「やだ、

 なにこれ?

 なにがか…

 なにかが…

 だめ、手が止まらない。

 止めて!

 お願いだからわたしの手を止めて、

 いやだ、

 いやだ、

 いやだぁぁぁ!

 あっあぁぁぁぁ!!!!」

粘液が絡まり、

ヌチャヌチャ

と音を立てて手を動かすわたしを追い詰めるように、

股間から込みあがってきた力がついに弾けてしまうと、

猛烈な快感の津波となってわたしの股間から吹き上がった。



ハッ

ハッ

ハッ

肩で息をして、

潮が引いていくような虚脱感を感じながらわたしはぐったりとするが、

ドロドロドロ

握っているそれの先端からは止め処もなく粘液が流れ続けていた。

してしまった。

やってしまった。

知ってしまった。

そう、男の快感をついさっきわたしは味わってしまったのだ。

もぅわたしはあの体育館で女子の体操着に身を包んで

柔軟運動をしている向こうの人間ではない。

頭を坊主にし、

汗臭いフンドシを締め

汗しぶきを吹き上げて相撲を取る汗臭い野郎である。

「あは、

 あはははは」

気だるさを感じながらわたしは乾いた笑い声を上げていると、

「おらっ新入りっ、

 一発抜いたのなら、稽古だ。

 廻しを巻けっ」

そんなわたしに向かって坊主頭が怒鳴ると、

「立て!」

坊主頭たちは座り込んでいるわたしを立たせるや、

ギュッ!

股間にフンドシを締めさせ、

そして、そのまま土俵へと連れ戻されてしまうと、

相撲の所作を1から叩き込まれたのであった。



わたしの股間に付けられたもの、

それはきわめて巧妙に作られた男の人のアレだった。

仕組みはいまひとつ良くはわからないが、

わたしのオンナに巧みに食い込み、

男の快感を見事にまで再現する優れものである。

そして、その日からわたしは相撲部の合宿に強制参加させられると、

稽古にオナニーにと汗を流させられたのである。

こうして、日を追うごとにわたしの心は雄化し、

1学期の終業式こそは女子の制服姿で出席したものの、

しかし、2学期の始業式には他の相撲部員と同じ坊主頭に

相撲部のネームが入ったジャージを窮屈そうに着て出席したのである。

そして夏休み中の猛稽古とサルのように繰り返したオナニーによって、

わたしの体は倍以上に膨らんでしまったのだ。

そして、

バァンッ!

「次ぃ!」

日に焼けた逞しい体に肌と同じ色に染まった廻しを締めて、

土俵の中で汗を流すようになったとき、

わたしは相撲部を引っ張っていく立場になっていた。



「おかしい!」

秋風が吹き抜ける教室でわたしは一人文句を呟いていた。

「どうした?

 相撲部っ

 一人でいきり立って」

そんなあたしに独り言に気づいたのかクラスの男子生徒が話しかけてくる。

柔道部の奴だ。

「おかしいことに気づかないの?」

そんな彼に向かってあたしは言うと、

「おかしいところ?

 別に…」

周囲を見回しながら彼は刈り上げた頭を掻いてみせると、

「何をいきり立っている知らないが、

 そんなことでは今度の試合には勝てないぞ」

と笑って剥き出しになっているわたしの肩を叩いてみせる。

そう、相撲の試合が迫っている。

だから稽古は欠かせない。

朝の稽古。

昼休みの稽古。

夕方の稽古。

わたしの日常は稽古と稽古の間に授業があるようなものである。

そしてすぐに稽古ができるようにと、

わたしは日中も廻しを締めたままで授業を受けているために、

いつしか皆は私のことを”相撲部”とあだ名するようになっていた。

ぐるりと見回すと武道着やユニフォーム姿の男子達の姿ばかり…

無理も無い、

皆、わたしと同じ練習に稽古にと忙しく、

授業のたびに制服に着替えるのが面倒なのである。

けど…誰か一人ぐらい気づいてほしい。

つい1学期までここに座っていた女の子のことを…

セーラー服にお下げ髪の典型的な女子学生のことを…

っていうか、

バンッ!

「ちょっとみんなっ!

 この間まで普通の女の子が座っていた席に

 坊主頭に廻しを締めている相撲部員が

 いまこうして座っているんだけど、

 誰が一人ぐらい疑問に思ってよ!」

机を叩いてわたしが声を上げた瞬間。

「あれ?」

あることに気づいた。

そう…わたしが入った学校って確か…

ううん、間違いない。

そうよ、女子高のはずよ!!!



おわり