風祭文庫・アスリートの館






「力士の呪い」



作・風祭玲


Vol.116





うりゃっ

ドッ!!

廻し姿の男2人が土俵の中で思いっきりぶつかる。

「おらおら、どうした」

「ふぬっ」

俺は力を絞り上げて覆い被さる先輩を押し上げていた。

「おらおら」

一瞬、

クイっ

っと体を捻じられると、

「あっあぁ…」

俺はそのまま土俵上に仰向けに倒された。

「ははは…

  正面から押してばかりじゃ駄目だぞ、

  相手の力を利用することも考えないとな」

そう言いながら先輩は俺に手を貸してくれた。

「はっ、はぁ…」

俺は起き上がると、

仕切り線のところで一礼をして土俵から降りた。



「秀治どうしちゃったの?、急に相撲を始めるなんて…」

部活が終わって部室から出てきた俺に朋子が声を掛けた。

「なんだ待ってたのか、別に俺が何をしたっていいじゃないか」

俺はそういうとサッサと歩き出した。

俺の名は本間秀治・高校2年生・相撲部に入部してほぼ1ヶ月が過ぎていた。

そして、彼女の名は安藤朋子、同じく高校2年の幼なじみだ。

「大体恥ずかしくない?、あんな”ふんどし姿”になるなんて」

セーラー服をなびかせながら朋子がそういうと、

「”ふんどし”じゃない、”廻し”だ”廻し”…」

と俺は彼女の台詞を訂正した。

「同じじゃない」

「ちがうよ」

「もぅ…」

と言って膨れる朋子に、

「牛かお前は?」

というと、

パチン

俺の頬に彼女からの一発が来た。

「あ〜ぁ、待ってて損したわ…」

そういうと、俺の前からさっさと走って行ってしまった。

「ったくぅ…」

俺は頬を押さえながら、

「”強い男が好きだ。”と言ったのはお前の方じゃないか」

と呟いた。


「まったく、秀治のバカ…

  あ〜ぁ、すっかり遅くなっちゃった…

  ちょっと、近道しよう」

朋子は文句を言いながらいつもとは違うコースを歩き始めた。

日は暮れ、あたりは闇が支配しつつあった。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ…

  この辺来るのも久々ねぇ」

街中と言っても、常にチョロチョロしていた小学生の頃とは違って

高校生になると十年以上ご無沙汰の場所も多々あった。

やがて、ある廃屋の傍を通ったとき、

……

パシッン

廃屋の中から突如音が聞こえた。

「え?」

朋子は振り向くと、耳を澄ませた。

すると

フンッ

バシッン

フンッ

バシッン…

朋子は廃屋から聞こえてくる音に、

「ここの相撲部屋って確かズッと前に移転してから、

  誰もいないわよね」

と思っていると、

フンッ

バシッン…

なおも音が聞こえてきた。

朋子にとってこの相撲部屋は彼女が小さかったろ、

父親に連れられて良く稽古の見学に行ったことがあった。

『あたしも、おすもうさんになりたい』

力士達の稽古が終わった後

『ハハハハハ、元気なお嬢ちゃんだ…

  そうだなぁ…

  大きくなったらここに来なさい』

そう言って、力士の大きな手で頭をなでられた思い出があった。

「なにかしら…」

音に興味を持った彼女は廃屋に近づくと表の扉に手を掛けた。

ぐっ

しかし表の戸は頑丈に施錠されているので、

朋子は裏口にまわると扉を引いた。

キィ…

扉は簡単に開いた。

「ごめんください…」

彼女はそう言いながら中を覗くと、

フンッ

バシッン…

音は中から聞こえてきた。

「誰かいるのかな…」

朋子は音に惹かれるように廃虚の中に入っていった。

フンッ

バシッン…

音は稽古場からしているようだった。

「あれ?、そういえばこの音って」

朋子は響いてくる音に聞き覚えがあった。

「確か……そうだ、これって、調体(テッポウ)の音だ」

そう、テッポウとは力士が肩の筋力を鍛えるために大きな丸太に

両腕を交互に叩く稽古だった。

「でも、誰が…」

ギシギシ

足元から板がきしむ音がする。

フンッ

バシッン…

そして、音は徐々に大きくなっていった。

「!!!」

朋子は稽古場に出た。

しかし…

夕暮れで薄暗くなっていた稽古場には力士の姿は言うに及ばず、

人の気配はまったく無かった。

「なに…?」

彼女は下に降りると大勢の力士達が

これで稽古したと思われる丸太の傍に行ったが、

一面に埃がついているだけで、誰一人叩いた形跡は無かった。

「そんな…じゃぁ…あの音は誰が?」

朋子がそう思いながら土俵に足を踏み入れたとたん。

『誰だ!!』

無人のはずの稽古場に男の声が響いた。

「誰?」

振り向くと何時の間にか廻し姿の一人の力士が立っていた。

「えっ、いえっ、あのぅ…」

力士の突然の出現に朋子が驚いていると、

力士は近づいてくるなり、

『ばか野郎!!、神聖な土俵の上に土足で上がるとは許さんぞ!!』

と怒鳴り声を上げた。

「すっすみません!!」

朋子は謝ると大急ぎで土俵から降りようとしたとき、

『おいっ、何もしないで土俵から降りる気か』

と力士が再び怒鳴った。

「え?」

『土俵は相撲を取るところだろうが、

  ふん、

  ちょうど俺の稽古相手が欲しかったところだ』

そう言うと力士はズイっと朋子に迫ってきた。

「えっえ?」

『おいっ、靴を脱いで裸足になれっ

  稽古をつけてやる』

そう言いながら力士は四股を踏み出した。

ズン!!

パシン!!

ズン!!

そんな…相撲なんて…

戸惑った朋子は土俵の外に出ようとしたとき、

グニッ

見えない壁が朋子の前に立ちはだかった。

「なに?」

『何もしないで土俵降りようとしても駄目だ』

力士は仕切り線の上に立つと勝ち誇ったように言う

『さぁ、何をしている…稽古を始めるぞ』

力士は構えた。

すると

グィ

朋子は目に見えない何者かに靴を脱がされると

そのまま力士とは反対側の仕切り線に立たされた。

「やっやめて…!!」

思わず声を上げたが、

スッ

ダン!!

朋子が仕切り線に立つと同時に構えた力士が飛び出した。

「!!!」

一瞬、何が起きたか判らなかった。

彼女が気づいたときは土俵の上を這いつくばっていた。

ズキン

痛みが朋子の全身を襲う、

「痛ぁ〜ぃ」

余りものの痛みに泣き始めると、

『何を泣いている…

  相撲をやる奴がその程度で泣なねぇっ

  稽古はまだ始まったばかりだ…』

と言うと再び力士は仕切り線に立った。

「そんな…」

朋子は力士を見つめていると

『ん?、お前…廻しをしていないな』

力士がそう呟いたとたん。

プチッ

朋子のセーラー服のスカートが外れると、

シュルシュルシュル

見る見る木綿の布帯となって延び始めた、

「いっいやぁぁぁぁぁ」

朋子は股間を押さえながら座り込むと、

伸び切ったスカートだった布帯は、

シュル

彼女の股間を通り、

クルクルクル

っと腰に巻きついていった、

やがて、

ギュッ

っと腰を締め上げると、

スカートは黒い廻しとなって朋子の腰を締め上げていた。

「きゃぁぁぁぁ…」

朋子の悲鳴が稽古場にこだまする。

『さぁ、稽古を続けるぞ…』

力士が再び構えた。

ヒックヒック…

おびえる朋子の目に迫ってくる力士の姿が写っていた。

「助けて…秀治…」




「!!」

その時、俺は誰かに呼ばれたような気がした。

すると、

プルルルル

家の電話が鳴った。

「はい…本間ですが、

  あぁ、朋ちゃんのおかあさん」

「………」

「えっ、帰ってこない?」

「………」

「はぁ…いや、心当たりが無いのですが…」

「………」

「えぇ…はい、わかりました」

その電話で俺は朋子が未だに自宅に帰ってこないのを知った。

「あいつ…どこで何やってんだ?」

そして翌日、

朋子の行方不明は事件として扱われ警察や先生などが

彼女の行方を捜したが一向に消息はつかめなかった。


バシン!!

「痛ってぇぇぇぇぇ」

「どうした、本間っ、気が抜けているぞ」

「すみませんっ」

相撲部の稽古でも俺は彼女のことが気になって稽古に集中することが出来なかった。


それからしばらくして、奇妙な事件が起こり始めた。

夜な夜な廻し姿の男が通行人に相撲の勝負を挑んでくるという話だった、

とは言っても、無差別と言うわけでもなく

現役もしくは相撲経験者、また、柔道の高段者と言う具合だった。

「相撲の辻斬りとは面白いな」

「辻斬りって言うんですかね?、

  こういうのって」

先輩達が噂する。

そして数日後、ついに先輩の一人がそいつに出会い、勝負を受けた。

「…で、どうだったんです、先輩」

俺は朋子のことは忘れて先輩に相撲男のことを聞いていた。

「いやぁ、妙な奴だった…

  昨日の帰り道、突然

  ”あたしと勝負をしてください”

  って言ってきてな…

  見ると、物陰から廻し姿の男が出てきたじゃないか」

「それで」

「あぁ、

  ”こいつがいま噂の相撲男か…”

  と思ってな

  ”よしっ、勝負をしてやる”

  俺がそういって構えたとたん、

  あいつが鉄砲のように飛び出してきて、

  俺とがっぷり四つ…

  いやぁ、なかなか強いのなんの…」

「で、勝負は…」

「あぁ、あと一歩で俺が勝てたところで

  人が来てな勝負は水入り…

  何時の間にかヤツはいなくなっていたわ、

  はははは…」

っと先輩は軽く笑っていた。

「なんだ…」

先輩が相撲男の正体を見たのか、

と期待していた俺はちょっとガッカリしていた。

「でも、変な奴だったな」

「え?」

「男の癖に”あたしと勝負してください”なんていうし、

  また髪の毛もまるで女みたいに長かったもんなぁ…」

「オカマですか?」

「さぁなぁ…」

その時、俺は妙にその事が気になっていた。


「お疲れ様でしたっ」

「おぅ」

部活の稽古が終わった後、

俺はいつものコースではなく、

先輩が相撲男と出会った道に足を向けていた。

日は落ち、夕闇が周辺を支配しはじめていた。


「たしか…この辺だったよなぁ…」

俺は先輩は相撲男と出会ったというところを何回か往復していた。

そのとき、

ザッ

誰かが俺の後ろに立つと、

「あなたは、相撲…お強いですか…」

突然声を掛けられた。

「出た!!」

俺は振り向くと、

そこには体中パンパンに張り詰めた筋肉に黒い廻し姿の男が立っていた。

「お前が、相撲男か…」

俺はそういうと奴の顔を見ようとしたが、

あいにく陰になっていて良く見え無かった。

「あなたは…相撲お強いですか?」

再び相撲男が尋ねてきた。

「あぁ、そこそこ強いが…」

俺は半分ウソを言うと上着を脱ぎ、

「さぁ、掛かって来いよ」

と言って、構えた。

スっ

男が構えた。

肩までかかる髪が電灯の灯かりに照らし出される。

確かに女のように長い髪だ、

「どこかの相撲部屋の奴か?」

俺は男の素性を考えていると、

ダンッ

男が飛び出してきた。

バシッ

「んなろっ」

俺は男の勢いを全力で止めると、

グィ

っと押し返した。

「ふん」

男が俺のズボンのベルトに手を伸ばしてきた。

「させるか」

その手をすかさず切ると、

今度は俺が奴の廻しをとる。

ググググググ

猛烈な力で奴は俺を潰してきた。

「くっそぉ…」

必死にこらえる俺。

そして、一瞬奴の力が途切れたとき、

「しめた」

俺は躊躇わず左を刺そうとしたが、先に奴が俺を掬っていた。

ドシン

「やられたぁ」

と思っていると、

「秀治…」

男が声を上げた。

「え?」

一瞬男の顔が見える。

「朋子…」

相撲男の顔は紛れも無く朋子だった。

しかし、その姿は腰にしっかりと締めたれた廻し姿に

鍛え上げられた筋肉が逞しく盛り上がった、

まさに相撲取りの身体になっていた。

「おっ、お前なんで…」

俺が指をさして驚いていると、

「修治ならあたしを負かしてくれると思ったのに

 なんで…

  なんで…あたしを負かしてくれなかったの」

と朋子が声を上げると、

グィグィグィ

彼女のからだの筋肉がさらに盛り上がり始めた。

「秀治に勝ってしまったから…あたしは…」

スルスルスル

廻しに”下がり”が現れ、

「あたしは…」

長い髪が見る見る結い上げられると、

綺麗な大銀杏が頭を飾った。

「あたしは…もぅ…」

と言う声と共にドン!!強烈な付き押しが俺を襲った。

「うわぁぁぁっ」

俺は吹き飛ばされて道路上に倒れると、

スッ…

朋子の姿はその場から消え去るように消えてしまった。

「とっ、朋子っ」

俺は起きあがって朋子の名を呼び、彼女の姿を探したものの、

まるで霧が消えたように消え去っていた。

「一体…あいつに何があったんだ…

  それになんで相撲取りになっているんだ?」

とその時、

俺は近所に元相撲部屋の廃屋があったことを思い出した。

「そう言えば、この近所に相撲部屋があったよなぁ…」

確信はなかったが、なぜか俺はそこに向けて足を進めた。

やがて、街並みから少し外れたところにその相撲部屋があった。

「まさか…ここに居るわけはないか」

と思ったとき、

バシンッ

バシンッ

中から音が聞こえてきた。

「なんだ?」

俺は躊躇わず中に入ると、

音のする方へと進んでいった。

やがて、

月明かりが差し込む稽古場で大銀杏を結った廻し姿の男が四股を踏んでいた。

「朋子…」

俺は声を出すと、

「秀治…」

男は四股を止め俺を見ると声を出した。

「おっ…お前…その体に、その格好……なんで」

俺はそう言いながら土俵に近づくと、

「ここに来ては駄目!!」

朋子が叫んだ。

「え?」

「あたし…

  ずっと相撲を取らされていたの…

  そして、相撲に勝つ毎にあたしの体は

  見る見るお相撲さんになっていって…」

そういうと朋子は視線を落とし、

「お願い…あたしのことは忘れて…」

と呟いた。

「なっ、何を言っているんだ?」

「だって、あたしはもぅ…」

そう朋子が言うと、突然彼女の口から男の声で、

『……お前っ、さっきはいい勝負だったな』

と言い出した。

「なっ」

『ふふふふふ…ついに俺の体を手に入れたぞ!!』

そう言いながら朋子が笑い出す。

「なっ、何を言っているんだ」

『十両まで上り、あと一歩で幕内に上がれるはずだったのに、

  先に体が壊れやがって…

  しかし、今度は違うぞ、

  今度はこの体で横綱を目指してやる』

と叫んだ。

「おっお前は誰だ!!」

俺が声を上げると、

『ふふふ…鷹荒山だ』

と言った。

「鷹闘山?」

俺は聞いたことの無い名前に困惑した。

しかし、

俺は直感的に朋子にその鷹闘山という力士のなにかが

取り付いていることを察すると、

「鷹闘山っ、どうすれば朋子を返してくれる」

と訊ねると、

『この体を返せだとぉ…

  はん、そんなことはイヤだね』

と答えた。

「なっ」

そのとき

「…秀治っ、もぅ一度こいつと勝負して…

  勝てば、こいつは消えるわ…」

という朋子の声が奴の口から聞こえてきた。

『うるさいっ』

鷹闘山は声を上げると、

「そうか、お前と勝負して勝てば消えるのか」

俺は服を脱ぐと廻しを締めた。

「勝負だ、鷹闘山」

そう言うと、俺は土俵の中に入った。

『ふっ、若造が…面白い』

鷹闘山も土俵に入る。

『血祭りに上げてやる』

「さぁて、そうは言ったものの朋子の体は完全に力士の体になっているし

  相手は十両まで上った元力士だ、どう勝負するか」

思案をしながら構えると、

「…正面から当たらずに、相手の力を利用しろ」

と言う先輩が言っていたことを思い出した。

「相手の力…か…」



ニッ

鷹闘山が一瞬笑うと、

ドン

もの凄いスピードで迫ってきた。

「うわっ」

俺は一瞬体をよける、

『なっ』

目の前の相手が居なくなった鷹闘山は勢いまま土俵際まで行ってしまった。

「これだ!!」

俺は有りったけの力を絞り出すと鷹闘山を後ろから押した。

『貴様っ』

すでにバランスを崩していた鷹闘山はそのまま土俵外へと送り出された。

『そんな…負けたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………』

ドシュン!!

朋子の体から湯気のような物体が飛び出すとそのまま上へと上っていった。

すると、朋子はがっくりと膝をつくと動かなくなってしまった。

「おっおい…」

俺は朋子の肩を思いっきり揺すった。

すると、朋子の手が動くとそっと俺の肩に手を置き、

「…秀治……今度は勝てたね…」

っと朋子の声が呟いた。

「あぁ…そうだな」

「…秀治のおかげでアイツは消えていったわ」

「そうか…」

俺はそう言うと朋子を思いっきり抱きしめた。



しかし、事態はこれで終わらなかった。

「えぇ!!、元に戻らないって…?」

声を上げた俺の目の前には髷を結い、

黒染めの廻しを締めた朋子がすまなそうな顔をしていた。

「そうなの…

  色々な霊能者のところに行ったんだけど、

  鷹闘山が残した呪いを解くことが出来なくて」

と朋子はポツンと言うと、

「で、どうするんだ」

俺はすかさず聞き返した。

すると朋子は廻しに手をやり、

「うん…この体ではもぅ女の子の服着られないし…

 それに、この廻しに身体が慣れちゃったから

  それで、あたし…

 思い切って学校を辞めて、相撲部屋に行くことにしたの。

  幸い、鷹闘山が所属していた相撲部屋がこの話を聞いて

  それじゃうちに来ないか。

  って誘われてね…」

と答えた。

それを聞いた俺は驚きを隠しながら、

「そっそんな…

 …だっだっていくら身体が力士の様になっていると言っても、

 女のお前が相撲部屋には行けないんじゃないのか?」

ともっとも基礎的な質問をすると、

朋子はちょっと恥ずかしそうな顔をすると、

「実はあたし…まだ言ってなかったけど、もぅ女の子じゃないの」

と言いながら廻しを外し始めた。

スルスル

っと朋子の足下でとぐろを巻いていく廻しの下から出てきたのは、

ビン!!

っと勃起している男の逸物だった。

「なっ!!」

俺の目は彼女の股間に釘付けになった。

「そんな…朋子が男になっているなんて…」

勃起している彼女の男根を見ながら驚いていると、

「鷹闘山があたしに稽古をつけようとしたとき、

 ”女のお前が土俵に立つことは許されない。”

 と言った途端、コレが生えてきて…」

そう朋子が顔を赤くしながら言うと、

「はぁ………………俺の努力は…」

俺はがっくりと肩を落とした。



それからしばらくして、

朋子は学校を辞めると鷹闘山が居たと言う相撲部屋に入門した。

そして。入門してからは鷹闘山に仕込まれた体を生かして、

あれよあれよいう間に幕内まで出世していった。

ところで、俺はというと

高校卒業後、大学に進んだものの2年で中退、

朋子がいる相撲部屋にそのまま入門してしまった。

で、今は元朋子の鷹闘山の付き人をしているんだが…


「おいっ、本間っ、今日はみっちりをシゴいてやるからな」

朝起きて廻し姿になって稽古場に行くと、

すでに土俵の上には白廻しを締めた鷹闘山が俺を待ち構えていた。

「お願いします」

俺は頭を下げると土俵に入った。

「まっこっちはゆっくり出世するしかないか

  でも、少しは手加減しろよな、朋子」



おわり