風祭文庫・アスリート変身の館






「百花の謀」


作・風祭玲

Vol.735





バシーン!!!

「一本!

 そこまで!!」

「はいっ!

 次っ」

放課後の剣道場に竹刀の音と共に東冬美の声が響き渡る。

「よろしくお願いします」

彼女のその声に呼応するように、

剣道着に防具を着装した剣士が立つなり、

「はじめっ」

審判役の部員の声が上がった。

「うわっ

 東先輩、これに勝てば10人抜きよ!」

防具着装のまま正座をしている女子部員が

男子部員を相手に竹刀を構える冬美の姿に興奮気味に話すと、

「そうねぇ、

 男子相手に10人抜きをするなんて

 やっぱり凄いわぁ」

と話しかけられた女子部員もまた目を輝かせた。



パァン!

「面あり、一本!」

一際高く竹刀の音が響き渡ると、

剣道場に冬美が相手から一本を取った声があがった。

その途端、

「きゃぁぁ!!」

「東先輩スゴイ!」

と女子部員から一斉に冬美を称える声が響くが、

フゥ…

面を取った冬美の表情はどこか優れず、

「ふぅ、

 腕を上げたなぁ」

「いやぁ、東っ

 相変わらず強いよ」

「いい汗をかいたよ」

「その調子でがんばれよ」

その一方で、

冬美に負けたはずの男子部員達は清清しい表情をしながら、

まるで応援をしているような言葉を言うと、

「おいっ、

 女に負けてニヤニヤするなっ

 稽古始めるぞ」

の声の元、

手際よく防具を纏めると剣道場から出て行った。



女子剣道部を率いる東冬美は剣道にのみにとどまらず、

柔道、空手等、あらゆる武道系スポーツに長け、

その腕前は男子ですら凌駕するものであった。

無論、冬美の両親はそんな彼女に対し、

もう少し女らしくなれないものかと頭を抱えるものの、

当の冬美はそんなことなど気にするわけなく、

武道に明け暮れ、

言葉遣いもまた男が使うような荒い言葉を話していたのであった。

そして、そんな彼女が常に願っていることは、

公式の大会で男子と互角に戦うことであるが、

だが、男女の区分けが特に明確な格闘技では

その望を叶えることは無理な相談なのであった。



「はぁ…

 勝たせて貰ったか…」

男子との稽古後、

剣道着に胴・垂を着けた姿で、

剣道場から出て来た冬美は

サプリ飲料が入ったペットボトルを口に当てつつ

隣の剣道場で始まった男子の猛稽古を羨ましそうに見つめ始める。

そして、

「どうして女なんかに生まれたのかな…」

と悔しそうに自分の女らしい細い腕を見つめていると、

「どうなさったんです?

 先輩?」

少女の声が冬美の背後から響き渡った。

「え?」

突然響いた声に冬美は驚きながら振り返ると、

ニコッ

真新しい剣道着に身を包んだ一人の少女が微笑んだ。

「えっと、

 あなたは…」

剣道着の新しさから1年生と推測しつつ、

新入部員の名前を思い出しながら冬美が聞き返すと、

「はいっ

 1年B組の西川百花です。

 東先輩っ」

と少女・百花は元気良く返事をした。

「あっ、そっそうでしたね」

百花の返事に押し返されるように冬美はそう返すと、

「横…いいですか?」

冬美の横を指差して百花が尋ねるや否や、

「よいしょっ」

冬美の返事が返ってくる前に横に座り込んでしまった。

そして、

ピタッ

と自分の体を冬美に寄せると、

「さっきの男子相手の掛かり稽古、

 凄かったですよ、
 
 男子を相手に10人抜きだなんて普通出来ませんよ」

と百花は褒め称える。

だが、

「本気じゃない10人抜きだなんて、

 何の価値もない」

冬美は自傷気味に返事をした。

「本気じゃない?」

彼女からのその言葉に百花が驚くと、

「良く言えば、

 手加減をして貰った…

 悪く言えば、

 ウォーミングアップ…」

驚く百花を横目で見ながら冬美は悔しそうに呟く。

すると

「あたし…

 東先輩に憧れて剣道部に入ったんです」

突然、百花は剣道部に入った理由を言い始めた。

「え?

 それは…あっありがとう」

百花の意外な言葉に冬美は戸惑っていると、

「さっきの総掛かり稽古

 東先輩がまるで鬼のようでしたよ

 うふっ、

 女の子なのに男達に果敢に向かっていく東先輩の姿。

 あたし、そんな東先輩の姿に痺れちゃって」

と百花は言うと、

「…でも、だめ…

 鬼って言うのは

 あの男子のような吹っ飛ばされるくらいのことを言うんだ」

それを聞いた冬美は

たったいま男子の道場から文字通り飛ばされた防具姿の部員を見る。

「ひゃぁぁ、

 ケガしたかなぁ」

それを見た百花は身をすくめると、

「これだから女は…」

冬美は小さくため息をつく。

すると、

「ひょっとして、先輩?

 男の人になりたいのですか?」

と百花は探るように尋ねてきた。

「え?」

思いがけない百花の質問に冬美は驚くと、

「ふふっ、

 ちょっと聞いてみただけです」

百花は悪戯っぽく笑ってみせる。

「男かぁ…

 そうだな、

 なれるものならなってみたい。

 男になって、

 あの男子達と共に稽古をしてみたい」

百花から視線を戻した冬美はそう言うと、

大きく背伸びをし、

「でも、そんなことは夢物語、

 さっ、戻るぞ」

と言いながら百花の肩を叩いた。

すると、

「…はい」

意味深い笑みを浮かべながら百花は立ち上がり、

「あっそうだ、先輩。

 これ、あたしが焼いたんですけど」

と小さな袋を見せるや否や、

やや強引に冬美へ手渡した。




それから程なくしてのことである。

「あれ?

 東さん、風邪でもひいたの」

「え?」

休み時間、

冬美がクラスメイトと話をしていると、

ふと彼女が放つ声についてクラスメイトからそう指摘された。

「あ…

 あぁ…

 うっうんっ

 んーなんか最近、

 声の調子がおかしいんだよなぁ」

咳払いを幾度か繰り返しながら冬美はそう説明すると、

「剣道に夢中になるのはいいけど、

 あまり声を張り上げないほうがいいわよ」

クラスメイトは笑うが、

「うん…」

冬美は小さく盛り上がり始めた喉をさすりつつ頷くだけだった。



「メーン!!」

バシィ!!

声を轟かせながら冬美の一太刀が男子部員の面を思いっきり叩くと、

「一本!!」

ほぼ同時に審判の手が上がった。

「つぅぅぅ!!」

礼をした後に

叩かれた相手の男子部員は面を取ると、

「おいっ、

 東っ

 少しは手加減しろよ」

と文句を言う。

「えぇ?

 手加減?

 何寝ぼけたことを言っているんだよ」

そんな男子に向かって冬美は悪態に似た言葉で返すと、

「あはは…

 手加減って、

 それを言うお前のほうが情けないぞ」

と試合を見ていた男子部員がコバカにする。

「わかったよぉ!

 もぅ

 男っぽさに磨きがかかりやがって…

 そのうちチンコが生えるんじゃないか?」

負け惜しみなのか、

冬美に向かって男子部員はそういうと、

「なんだとぉ!

 もぅ一回言ってみろ!」

頭に血が上った冬美は男子部員に掴みかかった。

「やるかぁ!!!」

「うるせーっ」

たちまち険悪な空気が二人の間を包み込むと、

「ちょちょっと待て!」

「やめてよ、

 やめてよ、

 やめて」

その途端、

男子部員と冬美の間に部員達が詰め寄り、

そして、引き離そうとするが、

男子部員の袖口を掴んだ冬美の握力は予想以上にあり、

なかなか二人を引き離すことは出来なかった。



「ちょっとぉ冬美ぃ

 どうしちゃったのぉ?」

「そうよぉ、

 そりゃぁ、冬美は男の子みたいだったけど、

 でも、喧嘩早くはなかったわよ」

女子更衣室に押し込まれた冬美に向かって、

女子部員が冬美の言動に戸惑いを見せるが、

「知るかっ」

当の冬美は彼女達の心配をよそに、

自分のロッカーに向かうと剣道着を脱ぎ始めた。

「どうするつもり?」

それを見た女子部員が尋ねると、

「どうするって…

 帰るんだよ、

 ったく」

冬美はぶっきらぼうにそう答えると、

バッ!

白い剣道着を勢い良く放り投げた。

「わっ!」

それを見た女子部員が声を上げると、

「なんだよっ

 鬱陶しい!」

冬美は怒鳴るが、

「あっ、

 冬美っ

 むっ胸!」

と冬美の胸に気づいた女子部員が声を上げた。

「ん?

 あぁこれか、

 最近、急に小さくなってきたんだよ、

 まぁデカ過ぎな胸が小さくなるのは構わないけど。

 それにしても最近体が変なんだよなぁ

 力がみなぎってくるっていうか、

 こう、爆発させたくなるっていうか」

ニヤリと笑いながら冬美はそう答えると、

筋肉が張り出し始めた腕を構えると、

ボクシングのまねをし始めた。

「冬美ぃ、

 一体どうしちゃったの?」

心も体も変化していく冬美の姿に皆が困惑する中、

「ふふっ、

 先輩、

 大分あたしの好みになってきたわ」

と一人、百花が笑みを浮かべながら呟いていた。



「あれ?

 冬美は?」

数日後、地区大会の日

「え?

 先輩、さっきまで居ましたよね」

「うんっ、

 防具を着装してそこに…

 って、居ない?

 何所に行っちゃったんだろう」

試合開始直前、

冬美が姿を消したことに皆が気づくと、

「ちょちょっとぉ、

 試合、始まっちゃうよぉ」

「探さなくっちゃ!」

青くなりながら冬美の姿を求めて皆が一斉に散っていった。

無論その中に剣道着姿の百花も居たのだが、

だが、百花は冬美の行き先に心当たりがあるらしく、

一直線にあるところへと向かっていった。

そして、百花が向かっていく一室では

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

薄暗い部屋の中で防具姿の一人の剣士が荒い息をはきながら、

モソモソと袴と垂を揺らしていたのであった。

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

「はぁはぁ

 はぁはぁ」

「くはぁ、

 あぁたまらねぇ…

 感じるぜ、

 へへっ、

 籠手で扱くってこんなに気持ちいいのか…
 
 えへへ…」

面の顎を高く上げながら剣士はそう呟くと、

モソモソ

モソモソ

盛んに腕を動かす。

そして、

「うぅっ

 あぁっ
 
 くぅ
 
 いっいくぅぅぅぅ!」

身体を硬直させると、

ピクピクと身体を小刻みに動かしながら、

剣士は快感の高みへと一気に駆け上がり果てた。



ポタッ!

ポタポタポタ…

袴の裾から白みがかった液体が床へとしたたり落ち、

その直後、

ドッ!

それを押しつぶすが如く剣士の身体が落ちてくると、

「ふぅぅぅ…

 ふぅぅぅ…」

防具を着装したままの剣士は荒い呼吸をはじめだした。

とそのとき、

「あらら、

 すっかりオチンチンの虜になっちゃんだ」

百花の声が響き渡ると、

ハッ!

その声に我に返った剣士は百花の方を振り向くと、

「うわぁ臭い臭いっ、

 汗臭い防具を付けたまま

 オナニーに更けるなんて、
 
 東先輩ってそう言う趣味があったんですか?」

蔑む視線で剣士を見つめながら百花はそう言うと、

「にっ西川…」

防具姿の冬美は驚きながら腰を上げると、

「みっ見たなぁぁぁ!!!」

自分の痴態を見たことに腹を立てながら、

百花の肩を掴み一気に壁へと押し当てた。

すると、

グニッ!

百花の手は冬美の股間へとまっすぐ伸び、

垂をはねのけつつ、

袴のある一点を思いっきり握りしめた。

「グハッ!」

その途端、

冬美の絶叫が響くと、

「うふふっ

 先輩のオチンチン…
 
 すっかり大きくなって…」

と百花は冬美の股間から起立するイチモツを掴み上げた。

「いっ痛ぇぇぇ!!

 はっ離せ
 
 離せ西川!!」

股間を握りしめられる冬美は必死で百花を引き離そうとするが、

だが、百花の指は冬美のイチモツを確実に掴み上げ、

さらにその奥にある”袋”をも掴みはじめた。

「痛てぇぇぇ!!!」

冬美の悲鳴がさらに大きくなり、

引き離そうとする力も断然強くなっていく、

しかし、百花は手を離すことはなかった。

それどころか、

「うふっ、

 キンタマを捕まれた気持ちは如何ですか?」

と余裕の表情で尋ねてきたのである。

「にっ西川…

 お前、何で驚かないんだよぉ
 
 おっ俺…
 
 男になってしまったんだぞ」

そんな百花に向かって冬美は理由を尋ねると、

「うふっ、

 知っていますわ、
 
 東先輩が男性になってしまったこと、
 
 男のオナニーの快感が忘れられずに
 
 毎日所構わずに男のオナニーをしていることも…」

と笑みを浮かべながら返事をする。

「貴様ぁ、

 なんで俺が男になってしまったことを知っているの!!」

それを聞いた冬美が目を丸くしながら再度尋ねると、

「うふっ、

 だって、この前先輩に差し上げた手作りクッキー、

 あの中に秘伝の性転換薬を入れましたの。

 あたし、前から先輩が男の人だったらって思っていたんですよ。

 そして、機会があれば…って思ってクッキーの用意をしていたんです。

 そうしたら先輩は男になりたいって言ってくれたんですよ。

 嬉しかったわ、

 あたしのクッキーが役に立つときが来たってね」

「じゃ、

 じゃぁ、俺が男になったのは…

 西川がくれたクッキーのせいだったのか…」

「はいっ、

 でも、自信がなかったんです先輩。

 とは言っても自分の身体で実験するわけにも行かないし、

 文字通りぶっつけ本番だったけど、
 
 でも見事に先輩は男になってくれて、

 あたし、嬉しいです」

驚く冬美をよそに

百花は自分が作ったクッキーの威力に感心するかのように幾度も頷いて見せた。

「そんな…

 そんな…

 おっ俺を…
 
 俺を元の身体に戻せ!
 
 元の女の身体に戻せよ」

全てを聞かされた冬美は肩を震わせながら百花を掴み上げるが、

「そばによると、

 さらに臭いますよ先輩。

 うふっ
 
 この臭い…
 
 男子の臭いと同じだわ」

と百花は防具姿の冬美から漂ってくる臭いを指摘する。

「うっ

 うるせぇ!
 
 ふざけたことを言ってないで、
 
 今すぐ俺を戻せ!」

その言葉をかき消すように冬美は声を上げると、

「それは出来ないわ」

と百花は告げた。

「なんで?」

「だって…

 あたしの作ったクッキーは一方通行、

 異性に変身させることは出来るけど

 一度変身した者を元に戻す方法までは知らないのよ」

「うそだ!」

「本当よ、

 それよりもさっ、

 オナニーばかりで飽きてない?」

突然、百花は話を変えると、

「良いのよ、

 あたしに入れても…」

とまるで誘うかのように百花は着ていた剣道着の袴の紐を緩め、

そのまま腰板を外すと、

ペロンと白い尻を露わにして見せた。

「うっ、

 にっ西川、なにを…」

目の前に現れた女性の丸いヒップに冬美は戸惑っていると、

「先輩…

 その熱い竹刀であたしを思いっきり突いて下さい」

と百花は懇願する。

「西川…」

「さぁ…は・や・くぅ」

百花の妖艶な誘いに、

いつの間にか冬美の股間は固くなり、

ビンッ!

袴の中のイチモツはすっかり硬くなり、

痛いくらいに伸びきってしまっていた。

そして、

籠手を嵌めたままの手を百花へと延ばしてゆくと、

グイッ!

っと彼女の肩を掴み上げ、

そして、ゆっくりと袴の裾を捲り上げてゆくと、

ムリッ!

これまで隠されてきた股間から赤黒い面持ちの肉球が飛び出した。

「ふぅぅ

 ふぅぅ
 
 いっ行くぜ」

鼻の穴から幾度も息を吐きながら、

冬美はそう告げると、

「いつでも良いわ、

 さぁ、先輩の熱いモノであたしを突きまくって!」

と百花は返事をした。

それから程なくして

百花の喘ぎ声がこの部屋から響き渡るのと同時に

一人の男子剣士が誕生したのであった。



おわり