風祭文庫・アスリート変身の館






「勧誘」


作・風祭玲

Vol.472





カッ!!

真夏の鋭い日差し照りつけてくる午後のグランド。

ピィィ!!!

ホィッスルの音が響き渡ると、

ドカッ!

「おーしっ」

「行け行け!!」

「おらっ、何をしている!!」

蹴り上げられたボールを追い、

白地に赤のストライプが入ったユニホームに身を包んだサッカー部員達が一斉にフィールドを駆け抜けて行く。

そして、そのフィールドの横にある武道館では、

ドドンッ

ドタンッ!

「メーン!!」

「ドォーッ!」

パパンッ

パパンパンパン!!

館内に威勢の良いかけ声と共に竹刀が鳴る音が響き、

色褪せした刺し子の剣道着と濃紺の袴を翻し、

傷だらけながらも黒い輝きを保っている黒塗りの胴、

使い込まれたネーム入りの垂れ、

赤の縁取りがされている面金を光せて剣道部員が激しい稽古を繰り返していた。

やがて陽が幾分西に傾いた頃、

「ピピー!!」

練習試合の終わりを告げるホイッスルの音が再び響き渡り、

フィールド内に散っていたサッカー部員達が一斉に集合し、

そして離散していくと、

ジャァァァァ!!!

「ぷはぁ…ふぅ生き返るぅぅぅ」

サッカー部員としてグラウンドを駆け回っていた1年の後藤憲次は

猛暑と練習試合ですっかり煮えたぎってしまった体を冷やすかのように

手洗い場の蛇口から噴出す水を頭から被りながら大きく息を吐いて見せていた。



「はぁ…気持ちいい」

「ゴクゴク」

「ぷぅぅぅ…」

「はぁ、いきかえるぅ〜っ」

息つく憲次の横では同じように乾いた体を潤すかのように水を被る者、

蛇口に口を寄せ無我夢中で水をガブ飲みしている者の姿があり、

部員達が仲良く並んで手洗い場に立っていると、

「ようっ後藤!!」

と言う声と共に剣道着に胴垂れ姿の中西達也が手洗い場越しに挨拶をしてくる。

「ん?

 あぁ中西か」

達也の声を聞いた憲次はタオルで顔を拭きながら返事をすると、

「お前のトコも終わりか?」

そう尋ねながら達也は回り込むと空いている蛇口で顔を洗い始めるが、

しかしその途端、

ムワッ

達也の体より漂ってきた饐えた臭いが憲次の鼻を突いてくると、

「あぁお前のところも終わりなのか?」

その臭いから逃れるようにして憲次は少し間合いを取り返事をする。

ジャァァァ…

水が流れる音が鳴り響き、

一人、二人とサッカー部員達が去っていくと、

ついには憲次と達也のみがその場に残ってしまった。

すると、

「なぁ

 で、あの話…考えてくれたか?」

二人っきりになるのを待っていたかのように顔を洗い終えた達也は尋ねてきた。

「え?

 う〜ん、

 やっぱ無理だよ」

憲次は手を横に振り、

達也より誘われていた事を断る仕草をしてみせると、

「そうか…」

それを聞いて達也は少し残念そうな表情をしてみせる。

「わっ悪いなぁ、

 俺もサッカーでレギュラーになっちまったしな、

 とても剣道部を掛け持ちで持つなんてできないよ」

やや後ろめたさを感じつつ憲次はそう言うと、

「なぁ籍を置いてくれるだけでいいんだよ、

 別に稽古に出ろとか言うんじゃないんだからさ…」

諦めきれないのか達也は再び説得を始めだした。

しかし、

「あっ悪い、

 もぅ集合時間だ、

 他…当たってくれないか。

 なっ」

達也の話を断ち切るようにして憲次はそう告げると、

グラウンドに向かって走り出して行った。



「ふぅ…」

走り去っていく憲次の後ろ姿を眺めながら

達也は五厘に刈り上げた坊主同然の頭を掻き上げため息をついていると、

「だめだったか?」

と言う声とともに、

スッ

手洗い場の影から剣道防具をフル装備した3人の剣道部員が姿を見せる。

「あっ」

彼らの登場を見た達也はあわててその傍に駆け寄っていくと、

「先輩…

 本当にやるんですか?」

と恐る恐る尋ねた。

すると、

「何を言っている、

 説得が駄目ながら実力で従わせるしかないだろう。

 お前がわが剣道部に入ったときのようにな…」

自信満々に3人の剣道部員達はそう達也に告げると、

ニヤ

面の中の口が笑みを浮かべる。



「達也って何で剣道部に入ったんだろう…

 アイツ、剣道には興味が無かったはずなのに」

休憩後、再びグラウンドで行われたミーティングの最中、

ふと憲次はそのことを思っていた。

達也と憲次は中学時代、同じサッカー部に所属し地区大会にも優勝した経験を持ち、

高校に入ってもサッカーを続けるはずだったのが、

しかし入学後、達也はサッカー部には入ることなく、

これまで竹刀すら握ったことの無い剣道部へと入部してしまったのであった。

「では、解散」

「しゃす」

顧問とキャプテンからの締めくくり言葉でサッカー部は練習を終えると、

「おいっ

 1年、ちゃんとグランド整備と後片付けして置けよ」

と言う言葉を残して先輩である2年・3年生は更衣室へと向かい、

憲次たち1年は散らかっているボールの片付けやグランド整備に最後の汗を流しはじめた。

そんな後片付けもラストになったとき、

「コレで最後か?」

サッカーボールが詰まった籠を傾けながら憲次が声を上げると、

「あぁ、

 それでお仕舞いだよ」

と返事が返ってくる。

「んじゃ、倉庫に持っていくぞ」

その返事を聞いた憲次はそう言いながら、

ザザザザ…

籠を引きずり用具倉庫へと向かい始めたのであった。



ザザザ

ザザザ

満杯のサッカーボールが入ったこの籠を倉庫へ入れれば憲次の今日は終わりである。

そう思うと重い籠を引きずる憲次の足は心なしか軽くなり、

そして、

バタン!!

ボールが入った籠を用具倉庫へ押し込んでドアを閉めると、

「よしっ」

部活後のことをアレコレ考えながら憲次は確認の声を上げる。

その時、

「あっ憲次、

 ちょっとちょっと」

っと憲次に向かってあの達也が声をかけて来たのであった。

「ん?」

達也の声に憲次が振り返ると、

相変わらず剣道着・胴垂れ姿をした達也が憲次の元に駆け寄ってくると、

「なんだよ、

 俺はもぅ帰るだけなんだから」

憲次は文句を言う。

「なぁちょっと来てくれないか」

そんな憲次に向かって達也はそう言うと、

いきなり憲次を手を引き走り出した。

「おっおいっ」

自分の手を引く達也に憲次は怒りながら声を上げるが、、

「悪い、ちょっと来てくれないか、

 お前しか頼めないんだよ」

と達也は言うだけで手を引く理由は告げなかった。

やがて、憲次が連れて行かれたところは武道館の倉庫の前で、

その前には山と詰まれた剣道の防具が異臭を放っていたのであった。

「なんだよ、

 これ?」

「いやぁ、

 先輩たちに防具の後片づけを頼まれたんだけど、

 俺一人では片付かなくて」

防具を指差しながら達也は泣き出しそうな声を上げると、

「あぁ?

 で、俺に手伝えって言うのか」

達也が指差す防具を横目で見ながら憲次は尋ねる。

「すまん」

そんな憲次に達也は手を合わせて見せると、

「悪いけど、

 これは達也の仕事だろう。

 一人でやれよ」

と告げ、憲次は立ち去ろうとする。

ところが、

「待ってくれ、

 俺たち親友だろう?

 これまで困っているときには助け合ってきたじゃないか」

と言いながら達也が追いすがると、

「あのな、俺はサッカー部なのっ

 なんで、剣道部の手伝いをしないとならないんだよ」

不服そうに憲次は指摘する。

「いやっ

 だから…そこを曲げて…」

「いやだ」

「奢るから…なっ?

 俺の頼みだよ」

「ったくぅ」

そんな押し問答を続けていく内に、

いまは部が違えどもかつては共に汗を流した仲間だった達也の頼みにイヤといえず、

「判ったよ、

 言っていくけどコレは貸しだからな」

そう捨てセリフを言いながら憲次は防具を拾い上げた。



「で、これはどこに入れればいいんだ?」

「あっ、

 倉庫の中に棚があるだろう、

 そこに並べてくれ」

「んあ?

 ここか?

 しかしクセーなー」

「悪いな…」

鼻を突く悪臭に文句を言いながらも

憲次はバラバラになっている防具をまとめると倉庫内へと手で運び、

指定された棚の上に手際よく並べていく、

そして、憲次の手伝いもあって山と積まれていた防具はあっという間に片付けられてしまうと、

「おーぃ、

 コレで最後だぞ」

最後の防具を持った憲次はそう言いながら倉庫に入っていく、

そして、それを棚に行こうとしたとき、

ガタッ!!

倉庫の中にある別室へ繋がるドアの向こう側より物音が響いたのであった。

「ん?

 なんだろう?

 おーぃ、達也。

 なんか変な音がしたけど」

その物音に気がついた憲次が声を張り上げるが、

しかし、

「………」

表にいるはずの達也からの返事は返ってこなかった。

「達也ぁ?

 ったく、なにをやっているんだよ」

防具を抱えながら憲次は文句を言うと、

ガタッ

再び音が鳴り響く、

「もぅ」

音の正体に興味が沸いてきた憲次は口をとがらせつつも、

持っていた防具を足元に置き、

音がしたドアのノブに手を伸ばす。

すると、

ガチャッ!!

鍵が掛けられてなかったのか、

ドアは軽く開いてしまったのであった。

「おっ、

 鍵がかかってない」

それを見た憲次はドアを開け放つと中に首を突っ込みながら、

「ん?

 真っ暗だな?」

と明かりが閉ざされている隣の部屋の中を覗き込んだ。

その途端、

バッ!!

いきなり強い力で憲次のユニフォームを掴み上げられてしまうと、

グィ

っと力任せに部屋の中へと引きずり込んだのである。

「え?

 うわっ!!」

突然のことに憲次は悲鳴をあげながらぽっかり空いた闇の中へと消えていき、

そして、憲次の姿が倉庫から消えると、

バタンッ!

憲次が開けたドアが閉められる。

憲次の姿が倉庫から消えた後、

達也が恐る恐る倉庫の中に入ってくると、

「憲次…すまん」

と謝りながら憲次が置いた防具を手に取り、

そして

ドタンバタン!

と音が響く憲次が消えた闇の中へと消えていった。



ドタバタ

ドタバタ

「はっ離せ!!」

闇の中で憲次は自分を押さえつけようとする無数の手と戦うが、

しかし、相手は数人掛なのか、

何本もの手が憲次の身体に絡まり

そしてグイグイと床へと押し付けてくる。

「くそぉ!!

 この野郎!!」

自由が利かない苛立ちからか、

憲次は手当たり次第に腕を殴り始めると、

「おいっ

 やれ!!」

という声が響き、

その声と同時に

ズシン!!

憲次の上に誰かが追いかぶさった。

「うわっ」

何者かに圧し掛かれ、憲次が床の上に突っ伏してしまうと、

グイッ

一気に組み伏せられる。

「え?

 これは袴?」

バサッ

自分の身体に纏わりつく布の感触に憲次は自分を組み伏せている者の姿を見ると、

日の光がわずかに差し込み薄明かりになっている部屋なかに4・5人の人影があり、

どれも剣道着を着ている様子であった。

「剣道…」

それを見た憲次がそう呟くと、

「おいっ」

「あぁ」

何者かの合図と同時に

バッ

憲次の顔に布が被され何も見えなくなる。

「おいっ

 こらぁ

 何をしやがる」

一切聞かない視界に憲次は声を上げ暴れると、

「早くしろ」

「待てよ、

 暗くて良く目が見えないだよ」

「脱がすか、これ?」

「構わねえよ、

 そのまま上に着せてしまえ」

そんな声が響くと同時に、

バサッ

バサッ

憲次の身体に何かが着せられていく。

ザラッとした木綿の肌触りがする上着と、

ヒラヒラとするスカートのような袴の感触、

そんな感触を感じながら

「これって、

 剣道着?」

憲次はいま自分が剣道着を着せられていることに気づく、

そして

ギュッ!!

憲次の腰周りを思い切り締め付けられると

「おいっ」

という声と共に、

「はいっ」

達也の声が微かに響いたのであった。

「達也?

 おいっ

 達也、ここにいるのか?」

それを聞いた憲次は声を上げるが、

しかし、

「………」

達也からの返事はなく、

無言のまま

ギュッ

ギュッ

っと憲次の両手にグローブのような物が填められ、

さらに体を起こされると腰と胸に防具らしきものが次々と付けられていく、

「おいっ

 達也、答えろ、

 返事をしろ」

自由を奪われている中で憲次は傍に達也に向かって叫ぶが、

しかし、相変わらずその声に返事は無かった。

すると、

ガボッ!!

憲次の顔に何かが被された。

「うえぇぇぇ、

 臭せぇぇぇぇぇ」

それが被されると同時に憲次に襲い掛かってきた咽るような悪臭に悲鳴をあげるが、

「ふふ、

 なぁにその臭いが堪らなくなるんだよ」

と声が響く。

「うるせー、

 とっととコレを外せ!!」

ギュッ!!

面を付けさせられた憲次が声を上げて暴れると、

「よしっ

 表に出ろ」

憲次の問いに答えるようにして声が響き渡ると、

ガラッ!

入ってきたところは別のドアが開けられ、

グイッ!!

襟を掴まれた憲次は引きずられながら連れ出された。



ドタン!!!

「イテェ」

暗い部屋からいきなりつれてこられた部屋は夕暮れでも憲次にとっては明るく感じられた。

そして、

「なにをするんだよ」

と文句を言いながら憲次は起き上がると、

憲次の視界は縁取りをされたように遮られていて、

さらに視界の中には幾筋もの横棒と1本の縦棒が走り、

グローブに包まれている両腕を持ち上げてみると、

その手には白く塩を吹き、

強い異臭を放つ籠手が填められていたのであった。

「うっくっせー」

自分から漂ってくる悪臭に顔を背けながら、

憲次は視線を落とすと、

そこから見える自分の身体には黒く光る胴となぜか後藤のネームが入っている垂が見える。

「うわっ

 なにこれ?」

両手に填められた籠手を掲げながら憲次が驚きの声を上げると、

カタン!!

憲次の前に1本の竹刀が放り出され軽い音を上げた。

「え?」

その竹刀に憲次が驚くと、

ドタドタドタ!!

たちまち、憲次の周囲に防具をフル装備をした剣道部員が取り囲み、

そして、

「その竹刀を取れ」

と憲次に命じる。

「え?

 なんだよ、

 何で俺にこんなことをするんだよ」

剣道部員を見上げながら憲次は文句というと、

パシン!!

いきなり憲次の脳天に一発の竹刀が炸裂をしたのであった。

「いてぇ

 なにしやがる」

竹刀で叩かれた憲次が怒鳴りながら立ち上がると、

「そうだ、

 その意気だ、

 さぁ竹刀を取れ」

憲次に一撃を食らわせた剣道部員はそう言いながら、

スッ

竹刀を中段に構えた。

「なんだとぉ?」

「どうした、竹刀を取らないのか、

 じゃぁ、私から行くぞ」

怒りながらも竹刀を取ろうとしない憲次に向かってその剣道部員はそう言うと、

「メーン!!」

大声を張り上げ振りかぶると憲次の頭上に再び一発を食らわせる。

「……」

直撃の痛みから憲次は頭を押させると、

「んだよ、

 俺がなにをしたっていうんだよ、

 もぅ帰る!!」

と叫んで憲次は手に填められている籠手を取り去ろうとするが、

しかし、

「え?」

ギュッ!!

憲次の腕に填められている籠手はしっかりときつく結ばれ、

籠手が填められている手では外すことが出来なかった。

「なっなんだよ、これ」

籠手だけではない、

面や垂もしっかりと結ばれ、

籠手で指の動きを封じられてしまった憲次では一人で取ることなど出来なくなっていた。

すると、

「おいっ

 その防具を外したければ、

 俺達と試合をしろ、

 もしも、俺たちの一人でも勝てたらお前を自由にしてやる。

 しかし、勝てなければ俺達の稽古に付き合ってもらうからな」

驚いている憲次に剣道部員はそう告げると、

「何に言うんだよ。

 俺は剣道なんしてたことがないんだよ。

 勝てるわけ無いだろう」

それを聞かされた憲次はそう反論するが、

しかし、

「では、一番手は俺から…」

剣道部員達はそんな憲次に容赦することはなく、

一人が憲次の前に出て構えると、

たちまち襲い掛かってきた。

「メーンッ!」

パァンッ

「ドォ!」

パァン!

「メーンッ!」

パァン

「ほら、どうした。

 打たれっぱなしだぞ」

道場内に響き渡る声と共に憲次は次々と打たれていく、

「くっそう」

痛みを感じつつ憲次はようやく竹刀を取ると、

スッ

彼の前には竹刀を構える達也の姿があった。

中西と書かれた垂に憲次は相手が達也であることを知ると、

「達也…

 なんで」

憲次は声を上げる。

すると、

「そのうち判るよ。

 憲次…

 お前はもぅ剣道部員なんだ」

達也は憲次に告げると

ダン!!

憲次に向けて突っ込んできた。

その直後、

バシッ!!

暗くなった道場に竹刀の音が響き渡り、

ハァハァ

ハァハァ

防具から漂ってくる悪臭を嗅ぎながら憲次は膝を突いてしまうと、

剣道部員を相手に全敗してしまったのであった。

すると、

「さて、

 じゃぁ約束どおり俺達の練習に付き合ってもらおうか」

勝ち誇ったように剣道部員は憲次に迫ると、

「くそぉ!!!」

負け惜しみの憲次の絶叫が響き渡った。



「まだまだ、あと100本!!」

明かりがともされた道場に剣道部員の声が響き渡ると、

「メーン!」

「メーン!」

「メーン!」

「メーン!」

「メーン!」

防具姿のままの憲次が竹刀を構え素振りを続ける。

日が落ちたといっても、気温は27℃

蒸し暑い中で憲次はすでに100回近く素振りをさせられ、

噴出す汗で彼が着ている剣道着はずぶ濡れになり、

防具とともに一段と悪臭を放ち始めた。

「ごぉ

 ろくぅ

 しち

 はち

 くぅ

 200!!」

「よーし、次は地稽古だ、

 手加減はしないぞ」

ようやく素振りを終えた憲次に向かって

剣道部員達は次々と竹刀を構え憲次に向かって突撃してきた。

「うぉりゃぁ!」

ドンッ

パンパパンッ

パンパパン

響き渡る声と共に地稽古が始まり、

憲次はフラフラになりながらも襲いかかる剣道部員達の相手をさせられた。

すると、

「はぁはぁ…」

打たれっぱなしの憲次自身、

自分から漂ってくる悪臭が次第に感じなくなてくると、

少しずつその臭いが快いものへと感じるようになっていったのであった。

そして、

「あっ…」

その声と共に、

ドタ!!

ついに竹刀を持ったまま憲次が倒れてしまうと、

「なんだ、もぅ終わりか?」

動けなくなった憲次の周りに剣道部員達が集まり、

足先で憲次の身体をつつき始める、

とそのとき、

「おいっ」

何かに気づいた一人が声を上げると、

「こいつのチンポ、

 おっ立っているぜ」

と指摘しながら垂れの中に足をつっこみ、

袴の中で勃起している憲次の肉棒を足で摩って見せた。

「あっ」

剣道部員のその行為に憲次は朦朧としながらも声を上げてしまうと、

「へへ、

 なんだよ。

 お前イヤなんじゃないのかよ」

「あはは

 倒れるまで稽古をしてもチンポをおっ立てるだなんて、

 お前、剣道の素質はあるぞ」

「ふふっ、

 気持ちいいんだろう…

 そのクサい臭いと防具の拘束感が」

と剣道部員達は憲次の肉棒を足で摩りつつ尋ねてくる。

「くっ、

 誰が…」

彼らが発した問いに向かって憲次はそう言い返そうとするが、

しかし、立ち上がることも出来ない状態の憲次にはあがなう術が無かったのであった。

すると、

「よぅ

 なんなら、もっと気もしよくしてやろうか」

突然一人が声を掛けてくると、

「えへへへへ、

 一人前の剣士にしてやるよ」

剣道部員達は薄笑いを上げながら次々と膝を落とし、

一人が憲次を羽交い締めにするように後ろから担ぎ上げると、

別の一人が籠手を填めたまま袴越しに憲次の肉棒を握り扱き始める。

「あっ

 うっ」

彼らその行為に憲次はうめき声を上げると、

「中に着ているユニフォームがじゃまだろう」

と言いながらさらに別の一人が憲次の袴をたくし上げ、

その中で汗でずぶ濡れになっているサッカーのパンツをずり下ろして見せると、

直接、籠手で憲次の肉棒を引きずり出し扱き始めた。

「あっ

 やめっ

 そんな」

直接籠手に掴まれたそのキツイ感覚に憲次は悲鳴をあげてしまうと、

「よう、

 お前のここの竹刀、随分と立派じゃないかよ

 こんな立派なものを持ちやがって」

と憲次の肉棒のサイズに驚いた部員は肉棒を強く扱き始めた。

「あっあぁぁ!」

サッカー部の練習がきつく

ここのところオナニーをしていなかった憲次の肉棒は籠手の感触にすぐに反応し、

そして、その内側に溜まっていたマグマを吐き出そうとし始める。

「あっ

 だめ」

「なにが駄目なんだ?」

「でっでる…」

「あん?

 もぅ出ちゃうのかよ

 早漏なやつだな」

「よし、

 じゃぁ俺たちが鍛えてやろうか」

射精が近いことを憲次は訴えるが、

しかし、剣道部員はそんな憲次の訴えには耳を貸さず

さらに扱き続ける。

「あっ

 だっだめぇぇ

 でるるる」

そう訴えながら憲次が腰を振るわせた途端、

シュッ

シュシュッ

っと水鉄砲の如く精液を吹き上げてしまった。



「あははは

 見ろよ

 こいつ

 あっけなく射精したぜ」

周囲に精液をまき散らし

ぐったりとしている憲次を小馬鹿にするようにして剣道部員たちは一斉に笑うが、

互いの視線で合図を送るなり、

抱き起こしていた憲次を突き飛ばし、

「おいっ

 何をしやがった、

 神聖な道場を汚しやがって、

 綺麗にふき取れ!!」

と態度を豹変させると、

憲次の身体を蹴り上げ命令したのであった。

「うぐぅぅぅ」

蹴り上げられた痛みに憲次は蹲ると、

「なんだ?

 誰が寝ていいって言った」

さらに怒鳴り声が響き再び憲次は蹴り上げられる。

そのとき、

ニヤッ

剣道部員たちの口が緩むと、

カシャ…

さっきまで憲次が使っていた竹刀を持ち出し、

そして、その先に憲次が放った精液を念入りに擦りつけながら、

「出したものは返さないとな…

 おいっ

 そいつのケツの穴を出せ!」

とじっと眺めていた達也に命じのであった。

「はっはいっ」

剣道部員のその命令に達也は即座に答えると、

スル…

憲次が穿いている袴を腰上までにたくし上げ、

そして、腰を突き出させる。

ヒヤッ

外気に直接晒された憲次の菊門の周囲が冷やされるが、

しかし、

「あっ

 くっ」

指一本動かせられない憲次は彼らの行為に抗することは出来ず、

まさになされるがままだった。

そして、

「いくぜ」

と言う声とともに、

ズィ!!

精液で濡れた竹刀が憲次の菊門に押し当てると、

「ツキィーッ!」

のかけ声と共にグィっとねじ込んで来る。

その途端、

「うがぁぁぁぁぁ!!」

夜の剣道場に憲次の悲鳴が上がったのであった。



「よーしっ、

 明日の朝練まで休憩だ」

夜遅く、

武道場にその声が響き渡ると、

ハァハァ

ハァハァ

道場の床には倒れこんだままの憲次と、

憲次が倒れた後に猛烈な地稽古をつけさせられ、

同じく倒れてしまった達也の姿があった。

「達也…

 なんで…」

防具姿のままの憲次は肛門の痛みを感じながら、

倒れている達也に向かって話しかけると、

達也は面金が覆う顔を憲次に向け、

「どうだった?

 剣道の稽古は」

と問い尋ねる。

「うっ」

光の加減で陰になり面金だけが光ってみせる達也の顔を見た途端、

憲次の胸の奥を何か突き抜け、

ムクッ

彼の股間が急に熱くなってきたのであった。

「なに?」

胸の奥に急激に沸いてきた感覚に憲次はとまどいながらも、

モソモソ

と籠手を填めた手を袴の中に押し込み己の肉棒を扱き始める。

すると、

「憲次…

 俺をオカズにしてオナるのか?」

それを見た達也はそう指摘すると、

「ちっ違う…

 けど…

 達也を見ているうちに、

 こうしないと居られなくなったんだ」

その指摘に憲次はしどろもどろになりながらも返事をしてみせる。

「ふふっ、

 いいんだよ。

 憲次、

 お前、剣道の魅力が判ってくれたんだ。

 剣道の防具を見てチンポが勃つようになれば一人前の剣道剣士だよ。

 臭いも感じなくなって居るんだよね?」

それを聞いた達也はさらに問い尋ねると、

「うっ、

 それは…」

憲次は答えに詰まり、

そして袴から挙げた手の臭いを改めて嗅いでみると、

あれほど悪臭として感じていた臭いが悪臭と感じられなくなっていて、

それどころかずっといつまでも嗅いでいたい。

と思えるようになっていたのであった。

「達也…

 おっ俺」

上半身を起こして憲次は訴えると、

「良いんだよ、

 それで良いんだ」

憲次に向かって達也はそう言い、

そして、憲次の横に腰を下ろすなりいきなり抱きついてくると、

「憲次ぃ、

 やっと憲次も剣道の魅力が判ってくれたんだなぁ」

と嬉しそうに声を上げたのであった。

「達也…」

喜ぶ達也の姿に憲次は何も言えなくなると、

「おっ俺…

 剣道部に入るよ、

 だから、

 その、

 先輩達がしてくれたことをしてくれないか?」

そう訴えながら肉棒がいきり立つ股間を見せたのであった。

その後、

シュッシュッ

シュッシュッ

「いいかぁ、憲次ぃ、

 俺の言う言葉以外の言うな!」

「はいっ」

「いくぞ、メーン!」

「メーン!」

「ドゥッ!」

「ドゥッ」

と言葉が道場内に響き渡り、

その道場の中では互いの股間に手を入れた防具姿の剣士二人が激しく手を動かしている。

そして、

「んっく

 はぁ」

付けられたままの面の中から憲次から呻き声が響くと、

達也の手が早く動き出す。

「メーン!」

「メーン!」

「メーン!」

「メーン!」

の声と共に二人の手の動きが早くなったとき、

「メッ…あうぅぅぅぅ…」

二人は共に声を上げ、

ビュッ!!

袴の中から白濁した精液を吹き上げてしまったのであった。



翌朝、

「え?

 サッカー部をやめるって、

 おっおいっ

 一体どういうことだ。

 それにその頭は…」

憲次の突然の申し出にサッカー部のメンバー達は一斉に驚くと、

「わがままを言って申し訳ありません」

憲次は五厘に刈り上げた頭を下げサッカー部の部室から去って行く、

そして、その足で剣道場に行くと、

「よう、待っていたぜ」

と剣道部員たちが憲次を出迎えたのであった。



「よし、お前は今日から剣道部員だ」

「たっぷりと可愛がってやるからな」

「はいっよろしくお願い致します」



おわり