風祭文庫・アスリートの館






「百合子の罠」


作・風祭玲

Vol.311





メーン!!

パパン!!

剣道場にかけ声と竹刀の音が響き渡ると、

「一本!!」

っと審判の声が響き渡った。

「おぉ…

 5人抜きだぞ」

「すげーな…」

剣道場を遠巻きにしているギャラリーから一斉にため息混じりの声が漏れる中、

礼を終えた防具姿に白袴の剣士が下がると、

おもむろに篭手を外すと防具の面を取った。

「ふぅ」

ふぁさぁ…

大きく深呼吸をしながら流れるような髪を振る一人の女性の顔が出てると、

「百合子さん…」

ギャラリー達の中に混じり

じっと試合の流れを見ていた俺は顔を真っ赤にして呟く、

「さすが、一乗寺だな」

「あぁ…」

その声の中、

百合子は仲間達と笑みを浮かべて声を掛け合っていた。

「くそっ、よく見えないな…」

ズリズリ

俺は少しでも百合子さんに近づこうと匍匐前進をしていくと、

「コラッ

 お前はそこで何をしているの?」

と言う声と共に、

ダンッ

数本の素足が俺の前に立ちはだかった。

「へ?」

思わず顔を上げると、

ジロッ

剣道着に胴と垂れを付けた女子の剣道部員達が俺を見下ろしていた。

「あはははは…」

俺は笑って誤魔化しながらすぐに後退をすると、

トン

俺の背中に何かが当たる。

冷たいモノを感じながら恐る恐る振り返ると、

ギリッ

俺の後ろにも竹刀を振りかざした剣道部員の女の子が取り囲んでいた。

「なっなんだよぉ」

追いつめられた俺が声を上げると、

「見つけたわよ、高山克昌!!」

一人の女子がそう声を上げると、

ザワッ

ギャラリー達の視線が一斉に俺に降り注いだ。

すると、

「ちょっと、こっちに来なさいっ」

そう言うなり俺の襟首が捕まれると、

ズルズルと俺は引きずられていった。



ピシャン!!

体育倉庫の扉が閉められると、

ジロッ

俺を前にして女子剣道部員達が一斉に俺を睨み付けた。

ズィ

女の子達の中から明石と書かれた垂れを付けた少女、

明石美保が俺の前に一歩出てくると、

「ここ最近ね、

 夜な夜な変な鼠が剣道部に出てね、

 置いてあるあたし達の防具に悪戯をして困っているのよ」

と俺に向かって言った。

「なっなんのことだ?

 俺は何も知らないぞ」

彼女の言葉に俺は強く否定をすると、

「でもね、

 不思議なことにその鼠は男子には何も悪戯はしなくって、

 女子のモノだけに悪戯をするのよねぇ」

と言いながら、

ダンッ!!

俺の前に竹刀が床に垂直に叩いた。

ビクッ

部屋に響き渡ったその音に俺が飛び跳ねると、

「本当にあなたの仕業じゃないの?」

っと美保が俺に迫りながら尋ねた。

「知らんっ

 知らんっ
 
 俺は何も知らん!!」

俺はクビを横に振って疑惑を否定すると、

ヒタッ!!

俺の首筋に一本の竹刀が据えられた。

「え?」

視線を横に向けると、

「本当にあなたじゃないの?

 あたしの防具にこんな嫌がらせをしたのは…」

といつの間にか俺の真後ろに百合子さんが立つと、

そう言いながら、

ガンッ

と手にした面を俺の前に放り出した。

「あっ」

放り投げられた面を見てみると

ちょうど面の喉元の部分に何か液体がかけられた様な跡があった。

「………」

それを見た俺の顔から血の気が引いていくと、

「それをやったのはあなたでしょう?

 高山君?」

と百合子さんは俺に向かって囁いた。

「ちっ違う…

 俺じゃない」

ブルブルと震えながらなおも俺は否定すると、

「どうします?」

「やっちゃいます?」

「でも…証拠が…」

女子の部員達から戸惑いと困惑の声が漏れる。

「今だ!!」

彼女たちの一瞬の隙をついて俺はダッシュで包囲網を突破すると、

微かに開いていた扉を開け一気に剣道場から脱出をした。

「あっ、こらぁ!!」

「待てぇ!!」

ドタドタドタ!!

虚をつかれた形になった女子部員達は俺を追いかけてくるが、

しかし、俺の逃げ足に追いつける者は居なかった。



夜…

シーンと静まりかえった剣道場の床が

ギシッ

っと鳴り響くと、

「ふふふ…」

俺は剣道場に忍び込んできた。

雲に隠れていた月が顔を出し、

その月明かりが剣道場に差し込むと、

これまで闇だった剣道場がまるで昼間のように見えてくる。

「いやぁ…

 昼間は危なかった…」

俺はそう呟くと、

そっと、防具倉庫の扉に手を掛けるとそれを開けた。

カラッ

扉は乾いた音をたてながらユックリと開いていく、

そして、俺は周囲に人が居ないのを確認すると、

その中に素早く潜り込んだ。

窓が閉め切られている倉庫内は昼間の熱気がこもり、

そしてその為に防具から沸き上がってくる汗の香りが部屋中に籠もっていた。

「すぅぅぅぅっ」

おれはその匂いを嗅ぐと、

「いいなぁ、女の子の匂いは…

 男のは悪臭にしか感じないけど

 女の子のはどこか芳香剤の様な感じがする」

と言いながら室内を物色し始めた。

昼間あんな事があっただけに

女子の防具は一カ所に集められ、

そして、その近くには妨害をするかのように、

様々なモノが置かれていた。

「ふっふっふ、

 こんなモノなんの意味がある」

俺はそう呟きながら障害物を取り除き、

防具の中から一乗寺と書かれた防具を見つけると、

「なんだ、昼間あんな事を言っておきながら、

 全然無防備じゃないか」

と言いながら防具を手に取った。

そして、防具の中から面を取り出すとそれを被る。

「あぁ…百合子さんの匂いだ…」

顔中を包み込む百合子さんの汗の臭いに酔いしれながら

シュッ

シュッ

俺は硬く勃起したペニスを扱き始めた。

「あぁいっいくぅ」

それをオカズに俺は一発目の射精をすると、

射精後の倦怠感のなか、

ゆらりと動くあるモノが目に入った。

「こっこれは…」

そう、倉庫の隅で干されていたのは

それは紛れもない百合子さんが来ていた剣道着だった。

「間違いない、

 これは百合子さんが来ていた剣道着…」

俺は胸の高鳴りを押さえつつ剣道着を手に取ると、

思わずその匂いを嗅いでしまった。

「あぁ…百合子さん…」

これをオカズにもぅ一発と行きたいところだったが、

しかし、俺はその行為を躊躇うと、

着ていたトレーナーを徐に脱ぎ捨て、

そして、その剣道着の袖を通した。

ヒタッ

彼女の汗の冷たさが俺の身体を束縛していく、

「あぁ…百合子さんが俺を…」

恍惚としながら上着を着るとそのまま袴に足を通すと、

モリッ

盛り上がるはずのない百合子さんの袴に俺のペニスの山が出来た。

「はぁはぁ」

荒い息をたてながら俺は誘われるようにして、

垂れ・胴・面と防具を付けていく、

そして、最後に篭手を両手に填めると、

そこには一人の剣士が立っていた。

「あぁ…いっいぃ…

 まるで百合子さんに包み込まれたみたいだ」

そう思いながら俺は転がっている竹刀を手に取ると、

そのまま剣道場へと部屋から出ていった。

シュッ

シュッ

人影のない剣道場で百合子さんの剣道着・防具を身につけた俺は竹刀の素振りをする。

すると、

ムズ…ムズ…

っと身体がムズ痒くなり始めた。

しかし、その時の俺はそのことに大して気にとめず素振りを続けていた。

そして、

「あぁ…夢みたいだ…

 このまま百合子さんと試合が出来れば」

と妄想をしながらオナニーをしようと股間をまさぐって見たが、

しかし、幾ら探しても俺のペニスは見つからなかった。

「あっあれ?

 何処にいったんだ?」

なかなか見つからないペニスに業を煮やした俺は

竹刀を床に置いて幾度も探してみたが、

けど、何処にもペニスの感触はなかった。

「?」

取りあえず篭手を外してもぅ一回探そうと、

篭手を引っ張ってみると、

ガシッ

まるで篭手が俺の手に噛みついたかのように取れなくなっていた。

「え?、とっ取れない…

 どうなってんだ?」

予想外に事態に俺は焦り始めた。

「そんな…面も取れないぞ…

 おいっ」

焦りは危機感へと変わっていく、

「くっそう、どうなってんだよ

 おいっ」

どうしようもなくなり剣道場から飛び出そうとしたとき、

カッ!!

突然、剣道場の灯りがつけられた。

「ウッ」

まぶしさに俺は一瞬怯むと、

「どう?

 あたしの防具のお味は」

と言う声と共に百合子さんが剣道場に入ってきた。

「百合子さん!!」

百合子さんの姿に俺は驚くと、

「そこまでよ!!」

ドタドタドタ

たちまち女子剣道部員が俺の周りを取り囲んだ。

「現行犯逮捕ね、

 もぅ逃げられないわ」

勝ち誇ったように美保が俺に言うと、

「くっそう!!!」

防具姿のままでは逃げられないと踏んだ俺はその場に座り込んでしまった。

「さぁて、どうしようか」

ジリジリ

女子達が俺に近づいてくると、

「お待ちなさい」

そんな彼女たちを百合子さんが制止した。

「何故止めるんです?」

「こんな変態袋叩きにしましょうよ」

と女子部員達は一斉に百合子さんに言った。

すると

「ふふふふ…」

百合子さんは笑みを浮かべながら、

「ねぇあなた…

 その防具脱げないんでしょう?」

と俺に尋ねた。

「あっあぁ…そうだよ」

悪態を付きながら俺はそう返事をすると、

「え?」

女子部員達は一斉に百合子さんを見る。

「ふふふ…

 実はね、その防具にはある仕掛けをして置いたのよ」

百合子さんは俺の傍に寄るとそう囁いた。

「仕掛け?」

「そう…あたしの防具に悪戯をする鼠にね」

含みを持たせた笑みを浮かべながら百合子さんはそう俺に言うと、

「その防具はあたしが許すまで永遠に外すことは出来ないわ」

と告げた。

「…なにぃ!!」

「うそぉ」

その言葉に全員の目が百合子さんを見る。

そして更に

「ねぇ、あなた気づいてない?

 自分の身体の異変を…」

と続けた。

「え?」

百合子さんのその言葉を聞いて俺は自分のペニスのことを思い出した。

「百合子さん…一体何を…」

思わず詰め寄りながら俺は尋ねると、

「あら、心当たりがあるの…

 …さて、みんなも見ると良いわ」

百合子さんはそう女子部員達に言うと、

バッ

っと俺が穿いている白袴を思いっきりたくし上げた。

「きゃっ」

その光景に女子部員の小さな悲鳴が上がるが、

一歩遅れて、

「うそぉ!!」

と言う叫び声が響き渡った。

「え?

 え?
 
 え?」

女子部員のアクションに俺は驚くと、

スッ

百合子さんの手が俺の股間に滑り込んでくると、

そっと股間をまさぐり始めた。

ゾクッ

ジーン…

言いようもない快感が俺の体の中を突き抜けていく、

「あっあぁ…」

あまりにものの快感に俺は喘ぎ声をあげると、

「ふふ…

 これはなーんだ」

と言いながら百合子さんは俺の目の前に粘液が滴る手を差し出した。

「そっそれは…」

なおも続く快感に身をよじりながら俺は聞き返すと、

「これはねぇ…

 あなたのオマンコが出した愛液よ」

と百合子さんは俺に告げた。

「おっ俺のオマンコ?」

「そうよ、高山君、

 あなたは女の子になっているのよっ」

と百合子さんは俺に言う、

「そんな…

 おっ俺、女に?」

「えぇちょっとした術の心得があってね、

 あなたが来ている剣道着や防具に仕掛けをしていたのよ

 そして、あなたはまんまとその罠に掛かった。

 うふっ

 ちょうどオモチャも欲しかったしね…

 ねぇみんな

 この子を剣道部員として迎え入れてあげない?」

と言いながら百合子さんが他の女子部員達に同意を求めると、

「奴隷って訳ですか?」

と美保が尋ねると、

「そう言うことになるかな?

 これまでのお礼もたっぷりと含めてね」

そう言う百合子さんの目はまるで獲物を前にした野獣の目をしていた。

「そんな…」

ドサッ

俺はその場に座り込むと、

鏡のように磨かれた床に映り込む自分の姿を呆然と眺めていた。



おわり